にゃがために猫はなく

ぴぴぷちゃ

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第11話 羊のめめさん

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 開拓、それはまさしくロマンだ。ハードボイルドにゃんこ的にも、この偉大なるロマンに手を出さないわけにはいかないところだ。ん? なんでいきなり開拓なのかって? それはもちろん、いくら宇宙パワーが豊富な惑星アルファとて、開拓なくして使い道なし、ということだからだ。ぴぴとぷうが惑星アルファにいまだ残る子鬼達の地下基地攻略のために出発した今、我輩も暇なので開拓に着手することにしたというわけだ。

 まず、我輩が今居るのは惑星アルファに存在する我輩達の土地だ。ん? なんで土地なんて持ってるのかって? それが持っているのだよ。しかも結構広めの土地を。持ってる理由は簡単だ。我輩達も惑星アルファ侵攻作戦に協力していたハンターだからだ。早い話が報酬の一部に、土地があったというわけだな。そのため、我輩達だけでなく、多くのハンターが土地を持っている。まあ、真相としては、ある一定以上活躍したハンターには、現金のみでの支払いが難しいという話になったため、半ば強制的に報酬に土地を入れられたというわけだ。

 そんなわけで、ぴぴとぷうの活躍により、我輩達の土地は結構広い。なにせ縦横300m四方ほどあるからな。しかも、郊外の土地というわけではなく、予定では街中になる結構いい土地なのだ。まあ、地価の関係で郊外の土地だと半端無く大きくなるとか言われれば、こちらを選ぶしかなかったわけでもあるが。

 そして問題となるのが、この土地をどう利用するのかということだ。なにせ我輩達はハンターだ。土地を持ってそこに落ち着くという生活を普段はしていない。基本的には、ミニぴぴぷちゃ号こそが我輩達の拠点であり、ミニぴぴぷちゃ号の周囲が縄張りなのだ。

 とはいえ、もらっちゃったものはしょうがないので、何かしら利用方法を考えるべきだろうな。それに、入植してしばらくは良かったものの、最近では我輩の土地の周辺の開発が進み、なんか立派な街の中心部って雰囲気になってきちゃったからな。流石に生垣で囲んだだけの空き地じゃあ物足りない。ん? 入植からいままでそれなりに時間があっただろうって? まあそこは完璧な土地利用のために、周囲の設備が整うのを待っていたというわけだ。決して、お昼寝なんかを優先させていたわけではないのだよ。

 まあ、なにはともあれ、今日は気分的にも開拓をしたくなったので、開拓をするのだよ。

 とりあえず、現在はミニぴぴぷちゃ号の駐車場としてしか使っていないこの土地の有効利用方法を考えなければな。とはいえ、土地の利用方法なんてそう簡単に思いつかない。まずは、そうだな、他のハンターがどういう利用方法をしているのかを調査するかな。我輩は1人ハンターギルド支部に行き、食堂の片隅でデザートとジュースを片手に、ハンター達の会話に耳を澄ませる。するとさっそく、我輩の耳は、どこかのパーティーの土地の利用に関する話をしているのをキャッチする。

「拠点のほうはどうだ?」
「順調ですよ。現在7割ほど完成してますね」
「7割か、あとどのくらいで完成しそうなんだ?」
「そうですね、あと20日ほどですかね」
「そうか、わかった」
「ただ、ご安心下さい。すでに母艦の整備用のドッグは完成しているので、拠点とするには申し分ないですよ」
「ふむ、ということは、未完成区画はなにになるんだ?」
「メンバーの個室や、食堂などのある住居スペースですね」
「それは必要なのか? 船内にも個室や食堂はあるだろ?」
「今の船内の個室は狭いですからね」
「ふむ」
「個室の広さに関しては多くのメンバーが不満を持っていますし、女性メンバーを中心にお風呂の狭さに不満が、それから、料理長はキッチンの設備に不満があるようでして」
「なるほどな。まあ、みんなで決めて好きにやってほしいと言ったのは俺だ。内容に関しては文句はないさ。ただ、宇宙船での生活に戻れなくなるようなのは、勘弁してくれよ」
「そこは大丈夫ですよ。みんな生粋のハンターなのですから」
「だといいんだがな」

 なるほど、このパーティーは宇宙船のドッグ兼住居とする予定なのか。なかなか悪くない使い道だな。ミニぴぴぷちゃ号の大きさは直径50m、我輩達の土地が300m四方だから、大きさとしても十分だ。ただ問題は、ミニぴぴぷちゃ号に整備用のドッグが必要なのかということだよな。ミニぴぴぷちゃ号は基本メンテ要らずだ。かといって、本格的にメンテや補修をするなら猫の国に帰ってからじゃないと出来ない。惑星アルファに中途半端にそんなものを建てる意味は、う~ん、薄いか。

 それと、居住スペースも微妙だな。なにせミニぴぴぷちゃ号は直径50mもあるからな。3人乗りとしてはかなり大きいのだ。ぴぴとぷうのバトルパワードスーツこと、切り裂き王と噛み付き王がそれなりに大きくて場所を取るものの、十分すぎる居住空間がある。ほかの宇宙船との比較で言えば、妖精軍の1000m級花型宇宙船で、BPS1万機、乗組員2万人だったはずだ。そして、子鬼の1000m級生首型だと、BPS10万機、乗組員20万匹だったかな。まあ、形の複雑な妖精軍の花型宇宙船と、丸っこい子鬼の生首型宇宙船では、スペース効率に雲泥の差があるがな。まあなんにせよ、それらと比べても、50mで3人というのは、圧倒的に広いというわけだ。

 というわけで、先ほどのパーティーの宇宙船用ドッグと居住スペース案は却下だ。作っても使わない可能性のほうが高い。さて、次の会話に耳を澄ませよう。

「お前のところの草はどうだったんだ?」
「ああ、ばっちりだ。流石は宇宙パワー豊富な星で育った草なだけのことはある。食べるたびに疲れが吹き飛ぶかのようだぜ」
「ほう、そんなに違うのか」
「お前だってこの星のモンスターの肉は半端じゃなく美味く、栄養豊富だって言ってなかったか?」
「ああ、それはそうなんだが、俺は肉食だろ? ただの草がそこまでとは思わなかったんだよ」
「なるほどな。お前も土地を持て余しているんなら、何か育ててみたらどうだ? この草だ。どんな穀物だろうが野菜だろうが果物だろうが、100%当たりだぜ。お前、肉食って言ってるがよ。厳密には肉食よりの雑食だろ?」
「野菜に果物か、それは悪くないな。だが、俺は野菜も果物も育てたことが無いんだ」
「なるほど、じゃああれだ。その内本格的な開拓団が来た時に、土地を任せるってのもいいんじゃないか?」
「ふむ、それも悪くないが、その時期になったら、多分売っちまうだろうな」
「そうか、もったいない気もするが、遊ばせておくほうがよほどもったいないしな。それにかなりいい値で売れるだろうし、それもまた手だな」

 1人は草食動物で、もう1人は肉食よりの雑食動物か。だがなるほど、この草食動物は農業をやろうというわけか。確かに土地を考えれば悪い手じゃないな。そして話し相手の肉食動物は我輩達同様、土地を持て余しているようだ。だが、農業をするとなるとここに定住するつもりでもなければ難しいだろう。桃栗3年柿8年なんて言うし、定住する気の無い我輩達向きではないか。そういえば、草食動物のハンター達の中には、ハンター家業そのものが目的ではなく、より美味しい草の生える土地を探し求めるタイプも多いと聞く。恐らく彼はそういうタイプだったのだろう。まあ、我輩達肉食動物のハンターの中にも、お気に入りの美味しい肉、もとい美味しいモンスターが見つかったら、そこに定住する者も多いがな。

 ただ、この肉食動物はその気はないようだな。ま、話の内容から、報酬を100%金で受け取りたかったのに、受け取れなかったということのようだからな。それは金だけでの報酬の支払いがきついと判断された腕のいいハンターということでもある。まだ定住を考えるのは早いということか。

 しかし、なかなか参考になる意見というのも聞けないものだな。我輩が更なる情報収集をしようとしていると、1人の羊が話しかけてきた。

「あら、はぴさんじゃないですか? お久しぶりです」
「ん? めめさんか、久しぶりだな」
「お隣いいかしら?」
「ああ、かまわない」

 話しかけてきたのは元同業者のめめさんだ。惑星アルファ侵攻作戦時、この人がリーダーを勤めるハンターパーティーのピンチを、我輩達が助けたそうなのだ。そうなのだというのは、我輩はいつものようにぴぴとぷうから離れないようにミニぴぴぷちゃ号で飛んでいただけだったからな、記憶に無いんだよな。まあ、それはともかく、それ以来我輩達を慕ってくれているというわけだ。しかもその恩を返すとかで、我輩達の土地の草まで処理してくれている。つまり、良い人というわけだ。

「珍しいですね。はぴさんがハンターギルドに来るなんて」
「ちょっとした情報収集というやつだよ。めめさんは確かコーヒー農園をはじめたんだったよな?」
「はい、はぴさん達のおかげもあって、報酬で郊外に広い土地を頂けましたから、いまはパーティーメンバーでコーヒー農園をやらせてもらっています。みんな毎日お腹いっぱい、それこそ詰め込むように美味しいコーヒーが食べられると喜んでいますよ」

 めめさん達のパーティーは、コーヒー好きが集まって出来たパーティーのようで、理想のコーヒーを作るための良い土地を探しているというパーティーだった。そして、宇宙パワーの豊富な惑星アルファの話を聞いて、惑星アルファで最高のコーヒーを育てるという目的で、惑星アルファ侵攻作戦に参加したと以前から言っていた。

 そういえば、めめさん達は飲むだけではなく食べることもあるのだな。めめさん達のパーティーメンバーは確か、象、ジャコウネコ、たぬき、さる、だったはずだ。ん? そういえばこの動物達って、フンから取れるコーヒーが美味しいとかいう動物達だったよな。そして、毎日お腹いっぱい? しかも詰め込むように? つまりこれは、あれか?

(おいお前ら、今日はこの量のコーヒー豆を食えっていっただろうが! 何サボってやがる!)
(ひい、お、お頭、もうこれ以上食えないですよ)
(あ、なんか文句あるのか? ちょっと腹見せろ腹)
(ひいい、止めて下さい。今お腹押されたら、リバースしちゃいますよ)
(どれどれ、っておい、何だこの腹は! これ以上食えないって割には腹の張り方があまいじゃねえか!)
(うぷ)
(はくんじゃねえ! いいか? 何のためにお前らの体には食道が付いてると思ってるんだ?)
(ううう)
(胃に少しでも隙間が出来たら、次のコーヒーをすぐに入れれるようにするためだろうが! いいか? 胃と食道を常にコーヒー豆で満たすんだよ! ほら口開けろ。私が詰め込んでやる! ほかの連中もだ!)
((((ひいいいいいい!))))

「はぴさん? どうかされました?」

 はっ、まずいまずい。恐ろしい想像をしてしまった。変に突っ込まれて、この話題を深掘りされても困るからな、ここは秘儀、話題そらしといこうか。

「そういえばめめさんこそどうしてギルドに? コーヒー農園を開いて、ハンター業は中止したのかと思っていたのだが」
「その通りなのですが、癖ですね。今日は農業ギルドにコーヒー豆の納品に来たのですが、ついついハンターギルドにも寄ってしまうのです」
「なるほどな。そういえば、めめさん達は喫茶店は開かないのか? 確か、人に飲ませるのも好きだっただろう?」
「それに関しては、商業ギルドで喫茶店を開く土地を探してもらっているんですよ。私達の土地では郊外過ぎますし、周辺も似たような農地だらけですからね。とはいえ、街中の土地ですと値段がかなり高いので、購入ではなく借地の予定ですが」

 ほう、それは良いことを聞いたな。めめさん達の作るコーヒーは美味いし、なにより我輩のハードボイルドにゃんこ的な生活という面を見ても、ミニぴぴぷちゃ号でごろごろしているより、木漏れ日の中、喫茶店でくつろぐ方が様になるというものだ。うむ、決めた。

「では、我輩達の土地はどうかな?」
「はぴさん達の土地ですか?」
「うむ、いつも草取りをしてもらっているからわかると思うのだが、見ての通り完全に持て余しているのだよ。我輩としては売るより開拓したいと思っているのだが、何をすればいいのかもさっぱりわからず、こうしてギルドで情報収集をしていたというわけだ」
「はぴさんがよろしければ是非!」
「うむ、では決定だな。ちなみにどのくらい使う? 我輩達としてはミニぴぴぷちゃ号の停泊場所さえあれば十分だから、残りは全部貸せるが」
「いえいえ、50m四方もあれば十分すぎますよ。いえ、はぴさん達の土地は一等地、借地料を考えるとそれでも大きいかもしれません。その辺はパーティーメンバーと、あと商業ギルドとも話をさせてください」
「うむ、かまわんよ。ただ、めめさん達には草取りをしてもらっているからな。相場より安くても問題ないぞ」
「いえ。草取りはそれ以外に恩を返す方法が思いつかなかったために自発的にやっているだけなので、気にしないでください。それに、商売は商売です。はぴさん達に絶対に損をさせないようにするので、少し時間をください」
「ふむ、そんなに気にしなくてもいいぞ。我輩としては、美味しい料理に美味いコーヒーを出す喫茶店が近くに出来るだけで、十分なメリットだからな」
「え~っと、はぴさん達って、料理はともかく、コーヒーは苦いってあまり好まれていなかったような」
「ん? 何か言ったか?」
「いえ! 早速話し合いをしてきますね!」
「うむ、決まったらミニぴぴぷちゃ号のほうにメッセージを頼む。ああ、急ぐ必要はないからな」
「はい! では、失礼します!」
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