にゃがために猫はなく

ぴぴぷちゃ

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第1話 にゃがために猫はなく

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 ここは、とある星系の一番外側を回る惑星、惑星アルファにあるハンターギルドの支部。そう、宇宙を駆け巡り、魑魅魍魎やモンスターの退治を生業とする荒くれものたちの集う場所だ。とはいえ、この建物は悪くない。宇宙でモンスターと戦争をするほどの技術力がありながら、この建物の内部はどこで取ってきたのか、木材で作られており、なかなかにいい雰囲気がある。

 そして、そんな建物の中にいるハンター達の雰囲気もまた悪くない。我輩達は猫だが、虎にライオン、犬に狼、熊に妖精、象に牛と、多種多様な種族がいるのだが、皆馬鹿騒ぎをするような連中じゃない。今も静かに昼のニュースを見ながら食事をしている連中が多い。

「緊急事態発生! 緊急事態発生! 当惑星の静止軌道から1000万キロ地点に、亜光速ゲートが出現! 子鬼の艦隊が攻め込んできます! 住民の方々は至急シェルターに移動してください!」

 ふう、やれやれ。せっかく今日はこのギルド支部のレストランに、おいしい新作デザートがあるという噂を聞いたから来てみたというのに、のんびりと食事すらさせてくれないようだ。突然緊急ニュースが流れる。そして、その緊急ニュースを見て、ギルド内がざわざわと騒がしくなり始める。

「1000万キロって、10時間くらいでここまで来ちまうじゃねえか!」
「なんでそんな近距離に亜光速ゲートが開くのを事前に察知できないんだよ! ったく、妖精軍の連中はなにやってるんだよ!」
「どういうこと? 子鬼達がこの惑星を取り返しに来たとでも言うの?」

 やれやれ、しょうしょう面倒くさい事態のようではあるな。

「皆さん、落ち着いて下さい! 現在妖精軍の宇宙防衛部隊が迎撃のために出撃中です。すぐに惑星に攻め込まれるような状況ではありません! ですが、妖精軍も万全の状態で迎撃出来るわけでもございません。そこで、妖精軍より緊急依頼で皆さんにも出撃の依頼が届きました。緊急事態につき、報酬の詳細はまだ決まっておりませんが、通常の3倍は出るものとお考えください!」

 すると、ハンターギルド職員の妖精族の女性が、ハンター達にも出撃の依頼をしてくる。さらに、巨大な虎の男性が現れる。

「お前ら、よく聞け! まだ正確な情報は入っていないが、今回の子鬼の侵攻は大規模なものとなっているようだ。パーティー単位で動くだけでは危険だろう。そこで、情報共有や、ギルドとの連携をしやすいように、俺の権限でこのハンターギルド支部軍もとい、大規模アライアンスを結成する。参加の意思のあるものは受付に来て番号札を受け取ってくれ、その番号が、ギルド支部軍の中での識別番号になる」
「この星の危機だ。俺はやるぜ!」
「おっしゃあ! 報酬3倍なら俺達もやるぜ!」
「俺たちもだ!」
「私達も出るわ!」

 どうやら、多くのハンター達は参戦するようだ。受付で番号札をパーティー単位でもらって、続々と店を出て行く。

 まったく、騒がしいことだ。これでは落ち着いてランチすら楽しめない。我輩はしゅわしゅわする液体を飲みながら、旗の立つ食事セットを優雅に楽しんでいる最中だというのに。我輩の相棒、ぴぴとぷうも横で大人しく食事を楽しんでいる。

「ふう、まったく騒がしいことだ」
「そうね。急いてはことを仕損じるというのに」
「だよね。ご飯は慌てて食べるものじゃないと思うんだ」
「うむ、我輩達は食事をしっかりと楽しもう」

 我輩は世界一のハードボイルドにゃんこ、はぴ。この程度のことで動揺して、慌てて食事を食べ、のどにつまらせるようなミスをする猫ではないのだよ。ぴぴとぷうもやはり、食事はゆっくり取る派だな。流石は我が相棒だ。さて、そろそろ噂の新作デザートを頼むとしようか。我輩はお店の人に声をかけてデザートを注文しようとするが。

「あれ?」
「どうしたの、はぴ?」
「美味しいと噂の新作デザートを頼もうと思ったんだけど、お店の人がいない」
「ほんとだ。私もデザート頼みたかったのにな~」

 するとその時、ハンターギルドの職員の女性が話しかけてきた。ふむ、先ほどの妖精の女性のようだな。

「あなた達以外のハンターは全員出撃、ハンターギルド職員も戦闘可能なものは全員出撃、非戦闘員はすでに避難しておりますが、あなた方はどうなさるおつもりですか?」
「お嬢さん、それよりも噂の新作デザートを注文してもいいかな?」
「いいわけ無いでしょう! 戦うんですか! 逃げるんですか! って聞いているんです!」

 噂の新作デザートがダメだと!? 我輩達にとっては、今日ここに来た目的の100%は噂の新作デザートだというのに。我輩がデザートが出ないことにショックを受けていると、妖精族の女性は少し苛立った様子で言葉を続ける。

「あ~、もういいです! 番号札は渡しておきますので、参加する際はギルマス。さっきの虎に連絡入れてくださいね! 私はさっさと出撃させてもらいます!」

 おっと、これは失敗、どうやらこの妖精族の女性は、さっさと戦いにいきたかったようだ。これは悪いことをしてしまったな。それにしても番号札の数字は22か。にゃんにゃんとは、なんとも縁起のいい数字を引いたようだな。

「ふう、デザートが出ないようでは仕方ない。新作が食べられないのは残念だが、船にもどってからデザートにするか?」
「わかったわ」
「わかった~」

 無いものは仕方ない。今日のところはあきらめるとしよう。だが、ちょっと失敗だったな。目当てのものは後回しにするべきではないということか、いくらデザートとはいえ、真っ先に頼むべきだったようだ。ふう、我輩もまだまだということか。

 我輩達はギルドを出る。空を見上げると、明らかに自然のものでは無い光があちこちで輝く。ギルドの駐車場に普段あれだけ大量にいる宇宙船がろくにいないということは、ハンター達はみんな出撃したのだろう。さて、我輩達もハンターギルドの駐車場に止めてある我輩達の宇宙船、ミニぴぴぷちゃ号に乗り込むとするか。

 ミニぴぴぷちゃ号は直径50mの球体のボディに、猫耳や鼻、口、ひげ、尻尾、手足などがくっ付いた宇宙船だ。勘違いしないでほしいが、手足は手首から先がくっ付いているようなとても愛くるしい姿だ。けっしてアームのようなものが付いてる、ゲテモノ風の見た目ではない。

 さて、まずは食べ損ねたデザートからだな。うん、さっそく2人からのデザートよこせコールが飛び出した。はいはい、すぐ用意するからちょっと待っててね。

「にゃ~!」

 ぴぴは、しらすがいいのね。

「うな~!」

 それでぷうは、おかかね。ぴぴとぷうに、デザートというよりも2人の好物を用意してあげる。さて、我輩も鳴いてみるかな。

「にゃ~!」

 ・・・・・・、気にするな、鳴いてみただけだ。自動でデザートが出てこないことは知ってたさ。さて、我輩は、そうだな、チョコレートにするかな。

 ふう、すっかりデザートも食べ終えたところで、次は食後のお昼寝とするか。ぴぴとぷうは、ふむ、もう寝ているのか。起きているときはなんだかんだわがままなところもあるが、寝てしまえばまさに天使だな。さて、我輩も一休みするか。

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