はんぶんにゃんこ

ぴぴぷちゃ

文字の大きさ
上 下
106 / 126

第106話 船で釣りをしよう

しおりを挟む
「ではさくら様、ゼニアさん、今後のスケジュールについてお話します」

 出航式を無事に終えた私達は、お部屋へと戻ってきていた。うん、やっぱりお部屋が一番落ち着くよね。決して甲板で他の人達から凄い注目をあびてたから逃げこんだわけじゃないよ? だって、私はフードを被って他人の振りをしていたから、気付かれていないはずだからね。

「はい、お願いします」
「まず、主要なスケジュールですが、この後12時から昼食、午後の6時から夕食、明日の朝7時に朝食、明日の12時に昼食、そして、昼食後すぐに目的地である鬼が島へと到着予定です。料理は食堂もあるようですが、この部屋へと運んでもらうことも可能とのことです。いかが致しましょう?」
「どうしようゼニアさん、運んでもらった方が楽かな?」
「そうね、運んでもらいましょうか。あんな大きな花火を打ち上げたんですもの、きっとジェームズさん達はいろんな意味で注目されてしまうでしょうしね」
「う、ご配慮ありがとうございます」

 そうだね。ジェームズさん達はすでにみんなの注目の的だもんね。トラブル防止のためにも、ここは下手に出歩かないほうがいいね。

「では次に、ちょっとしたイベントになるのですが、昼食後の午後1時より午後5時までの4時間の間、甲板にて釣りを楽しめるということです。いろいろな種類の川魚が釣れ、また、釣れた魚は甲板で料理人に料理してもらえるということですが、こちらはいかが致しましょう?」

 川魚か~。イーヅルーの街ではちょこちょこ食べていたとはいえ、今後海に出ちゃったら食べれなくなっちゃうよね。ここは3時のおやつ代わりに川魚を食べるのもありかも知れないね。

 それに何より、鬼が島へ行く前の釣りの練習になるもんね。よし、ここはジェームズさん達の外出問題は棚上げして、参戦しよう!

「私は行きたいです!」
「そうね、私も久しぶりに釣りを楽しもうかしら」
「ジェームズさん達もいきますよね?」
「ええ、もちろんです。私達はさくら様の護衛ですので」
「ありがとうございます!」

 私達はその後、まったりとお昼ご飯を食べて、ちょっとくつろいでから甲板へと向かった。

「うわ~、結構大勢釣りしてるんですね」

 食休めですこしのんびりしていたから、時刻は午後2時くらい。すでに甲板では、多くの人が釣りを楽しんでいた。

「ほんとうね。しかも、みんななかなかの釣果のようね」
「それでは、空いてるところを探してきますね」
「それじゃあ、僕は釣り道具を借りてきます」
「ああ、頼んだ。俺は護衛に残る」
「俺もそうする・・・・・・」

 そう言ってジェームズさん達が、いろいろと準備を進めてくれる。



「お邪魔します」
「遠慮なくいらしてください。お互いに釣りを頑張りましょうね」
「はい!」

 いろいろと準備をしてくれたジェームズさん達だったんだけど、何故か私達は、お姫様の横で釣りをすることになった。というか、ここってきっと、王族が優雅に釣りをする場所だと思う。他の人達が釣りをしている場所からは、完全に隔離されてるし。

 え~っと、私、お姫様の前だと緊張しちゃうって言ったよね? そういう思いを全力で目に乗せてジェームズさん達を睨むも、ジェームズさん達は私以上にがっちがちに緊張しているっぽくて、ぜんぜん気付いてもらえない。

 まあ、気付いてもらったところで、お姫様の誘いを断ることは出来ないし、ここは大人しくお姫様の横で釣りをするしかないね。周りにだれもいないってことは、それだけ釣りやすいかもしれないし!

「お姫様はもう釣れたのですか?」
「はい。といっても、小物が2匹だけですが」

 私はお姫様の椅子の横にあるバケツっぽいものを見せてもらう。するとそこには、元気な魚が2匹およいでいた。お姫様は小物って言っていたけど、私的には大きいと思うんだけど。

「けっこう大きくて、食べ応えありそうですね」
「ふふふ、確かに一人で食べるには少し大き目かもしれないわね」
「これは・・・・・・、川の女王・・・・・・」

 すると、私の護衛をするって言って、私の側にいてくれていたアレックさんが、そんなことをいう。

「川の女王、ですか?」
「いや、失礼しました・・・・・・」
「そんなに緊張なさらないでくださいな。それより、川の女王というのは?」
「はい・・・・・・、私は休日に漁師をしている友人達と漁に行くことがあるのですが、彼等はそう呼んでおりました・・・・・・。滅多に取れない高級魚だそうです・・・・・・。川の女王という名称は正式なものではないと聞きましたが・・・・・・、申し訳ございません、正式名称は知りません・・・・・・」
「そうなのですね、ありがとうございます」

 イーヅルーの街の住人であるアレックさんがレアというほどのお魚か~、ということは、私も食べたことがないかも知れないってことだよね。美味しくてレアだから高級魚なんだろうし、ここは、是非とも食べたい! その前に釣り上げたい!

「さくらさん、もし食べるのでしたら、差し上げますよ?」

 え? もしかして、顔に出てた? ううう、ちょっとはずかしい。

「いえ、自分で釣るので大丈夫です!」
「それもいいわよね。自分で釣った魚は、何とも言えない美味しさがあるもの」
「ですよね!」

 よ~っし、私も頑張って釣るぞ~。

 私はジェームズさんから釣り竿をもらう。釣り竿は日本で見た釣り竿とそっくりだ。リールがついているし、竿には丸いわっかがたくさんついてる。唯一の違いといえば、あの伸び縮みする機能がないところくらいかな。あれ、ちょっとかっこいいのに。

 でも、これだけ似てるなら私でも十分使えそうだ。釣りをした回数は決して多くないけど、アジくらいなら釣ったことあるんだからね!

 そして釣り竿を受け取った私は、次にエサを受け取る。良かった、エサは魚の切り身みたい。生きた昆虫を針につけるとかだったら、ここで挫折していたかもしれない。

「ふんふ~ん」
「あら、さくらさんご機嫌ね」

 するとゼニアさんが現れ、私の横に座る。ゼニアさんはもう針にエサもセットしてて、準備万端みたいだ。

「はい! 見ててください、美味しい魚を釣り上げますから!」
「ふふふ、楽しみにしているわ」
「さくらさん、頑張ってくださいね」

 ゼニアさんだけでなく、お姫様の応援をも受けた私は、釣りを開始する。

 さあこい川の女王よ! 私が釣り上げてやる!



 1時間後・・・・・・。

「あら? また川の女王が釣れたわ」
「見事な腕です、王女様・・・・・・」



 2時間後・・・・・・。

「ふふふ、たくさん釣れると楽しいわね」
「この辺りは普段漁をしないエリアだから、魚も豊富なのだろう・・・・・・」
「あら? そうなのですか?」
「ああ、この辺りは時々河に住むモンスターが飛び出してくる危険地帯・・・・・・。この船のような大型船なら安全でも、漁船のような小さい船では危険が多い・・・・・・」
「まあ、アレックさんは物知りなのですね」
「いや、ただ釣りが好きなだけだ・・・・・・」



 3時間後・・・・・・。

「ふふふ、いっぱい釣れたわ。アレックさんもありがとうございます。アレックさんのフォローがなければ、ここまで釣れませんでした」
「いや、王女様の実力だ・・・・・・」

 釣りが始まって3時間、お昼の後のんびりしてて2時から参戦したから、もう釣りは終わりの時間だ。

「ゼニアさんもたくさん釣れましたね」
「はい、こちらの席に招待して頂けたおかげです」
「いえいえ、私も楽しかったですから。それでええと、さくらさん?」

 なんですかお姫様? お姫様とゼニアさん、それにジェームズさん達が大量に釣り上げる中、1匹も釣れなかった私に、いったいなんのようでしょうか? 今の私は、不機嫌オーラを隠せるような精神状態じゃありませんよ?

「あの、私ではこんなに食べられませんし、川の女王、1匹食べますか?」
「え? いいんですか?」
「はい、さくらさんの護衛のアレックさんにフォローしていただいたおかげで、たくさん釣れましたので」
「やった~! ありがとうございます!」

 お姫様、なんて良い人なんだ。その釣りの腕前、鬼が島での海産物の捕獲に付き合ってほしいくらいだよ。

「なあジェームズ、薬師の嬢ちゃんって、現金なんだな」
「いや、俺には何とも」

 ジェームズさん達が何か言ってるけど、失礼しちゃうよね! 私の目的は美味しい川魚を食べる事であって、釣りそのものではないのですよ。そう、私は目的と手段を履き違えない、立派な大人なのです!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

気がついたら異世界に転生していた。

みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。 気がついたら異世界に転生していた。 普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・ 冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。 戦闘もありますが少しだけです。

緑の魔法と香りの使い手

兎希メグ/megu
ファンタジー
ハーブが大好きな女子大生が、ある日ハーブを手入れしていたら、不幸な事に死亡してしまい異世界に転生。 特典はハーブを使った癒しの魔法。 転生した世界は何と、弱肉強食の恐ろしい世界。でも優しい女神様のおかげでチュートリアル的森で、懐いた可愛い子狼と一緒にしっかり準備して。 とりあえず美味しいスイーツとハーブ料理を振る舞い、笑顔を増やそうと思います。 皆様のおかげで小説2巻まで、漫画版もアルファポリス公式漫画で連載中です。 9月29日に漫画1巻発売になります! まめぞう先生による素敵な漫画がまとめて読めますので、よろしくお願いします!

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

幼馴染み達がハーレム勇者に行ったが別にどうでもいい

みっちゃん
ファンタジー
アイ「恥ずかしいから家の外では話しかけて来ないで」 サユリ「貴方と話していると、誤解されるからもう2度と近寄らないで」 メグミ「家族とか気持ち悪、あんたとは赤の他人だから、それじゃ」 義理の妹で同い年のアイ 幼馴染みのサユリ 義理の姉のメグミ 彼女達とは仲が良く、小さい頃はよく一緒遊んでいた仲だった… しかし カイト「皆んなおはよう」 勇者でありイケメンでもあるカイトと出会ってから、彼女達は変わってしまった 家でも必要最低限しか話さなくなったアイ 近くにいることさえ拒絶するサユリ 最初から知らなかった事にするメグミ そんな生活のを続けるのが この世界の主人公 エイト そんな生活をしていれば、普通なら心を病むものだが、彼は違った…何故なら ミュウ「おはよう、エイト」 アリアン「おっす!エイト!」 シルフィ「おはようございます、エイト様」 エイト「おはよう、ミュウ、アリアン、シルフィ」 カイトの幼馴染みでカイトが密かに想いを寄せている彼女達と付き合っているからだ 彼女達にカイトについて言っても ミュウ「カイト君?ただ小さい頃から知ってるだけだよ?」 アリアン「ただの知り合い」 シルフィ「お嬢様のストーカー」 エイト「酷い言われ様だな…」 彼女達はカイトの事をなんとも思っていなかった カイト「僕の彼女達を奪いやがって」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...