2 王への元献上品と、その元調教師

華山富士鷹

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妙案

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「今日は朝からやけに暖かいな。地球温暖化が進んでいるのか?」

夕刻、俺は城の応接室で、契約書類を挟んでセキレイと頭を突き合わせながらスーツのジャケットを脱ぎ捨てた。
「ん?あぁ、そうか。後の手続きは俺がやっておきますから、王様は早くお帰りになられて下さい」
セキレイは何かに気付いた様子で大理石のテーブルに山積みになった書類を自分の方へと移動させる。
「珍しく兄さんが親切で、いよいよ地球が滅亡するんじゃないかって心配になってきた」
基本的にセキレイは、俺の事を変態でも見るような目で蔑んでいる。
まったく、お前も同じ穴のムジナじゃないか。
「そうだな。地球が滅亡する前に、最後の晩餐を愛妻と楽しんで下さい。このところろくに休んでいないようですし」
セキレイが言うように、最近は忙しくてあまり眠れていない。休んだところで、ソファーで仮眠か、献上の儀を行う間で献上品に背を向けて休む程度しかしていない。
やけに目の奥が重い訳だ。
「……新婚なんですから、新妻に寂しい思いをさせたらいけませんよ」
という言葉とは裏腹に、セキレイは面白くなさそうに憂鬱な顔をした。
なんだよ。
俺はしばし考えを巡らせ、1つの妙案を思いつく。

「なあ、兄さん、俺の代わりに1日だけ翡翠を外に連れ出してやってくれないか?」

これは所謂ハニートラップだった。

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