目覚めたら親友(草食男子)の推しAV女優になってました

華山富士鷹

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スミレの秘密

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追試も終わり、とっぷりと日も沈んだ頃、俺はスミレに送られて自宅の前まで来ていた。
「じゃ、どうもな」
俺が手を上げて颯爽と帰宅しようとすると、家の玄関や室内が真っ暗で、今日は片親である父親の出張の日であった事を思い出す。
「あっ、やっぱスミレんち泊まっていい?」
「えっ!」
珍しくスミレが目を見開いてたじろぎ、俺はちょっとまずったかなと上目遣いで彼の顔色を窺った。
「駄目?」
最近は近所で件の通り魔事件が多発しているのだ、一人で夜を越すのは男の俺でも心細い。
「や、いいよ。でもちょっとだけ待ってて」
そう言ってスミレは慌てて隣の自宅に飛び込んで行く。
「別におんなじ男なんだから、変な物見つけても何も言わないのに」
あのスミレがエロ本とかエロDVDを持ってるとか想像つかないな。
笑える。
俺は滲み出る失笑を腹で我慢した。

「じゃあ、どうぞ」
俺はスミレの部屋に通されるなり、キョロキョロと室内をくまなく見回す。
「何してんの?」
「え?いつもと違うとこはないかなって」
スミレの部屋はいつも通り隙のないくらい物が無くて整理整頓されていて、まるで主そのものを表しているようだった。
俺の部屋とは真逆だな。
「なんで?」
「や、エロ本とか何処に隠したのかなって」
「何言ってんの、弥生。そんなのあるわけないだろ?弥生が急に泊まるって言うから部屋を片付けて布団を出してたんじゃん」
まあ、そうだよね。スミレは真面目一辺倒だからシコシコすらしないだろうし。
「布団?別に一晩だけなんだし、おんなじベッドでいいよ」
俺がそう言うと、スミレは一瞬ピタリと動きを止め、俺から目をそらした。
「駄目だ」
「大丈夫大丈夫、俺、そんな幅取らないし、何処でも寝れるし」
スミレのベッドはセミダブルだ、男二人でも寝れない事はない。
「俺が眠れないんだよ」
スミレに素っ気なく突き放され、俺は拗ねてスミレのベッドに突っ伏した。
「ベッドがいい~!」
俺が足をバタつかせてごねると、その夜は俺がベッドで、スミレが床に寝る事になった。
やはりスミレって奴はどこまでも俺に甘い。

7時くらいにスミレの両親とカレーを食べ、8時にはお湯をいただき、湯上がりにアイスまでご馳走になり、9時にはスミレの部屋に戻ってゲームをして、10時にベッドに入った。
「寝心地はいい?寝られそう?」
下からスミレの声がして、俺はスミレのフカフカな枕に顔を埋めながらベッドの上を泳いだ。
「フカフカ~スミレの匂いがする~」
「嗅ぐな」
スミレに怒られたが、スミレと同じ石鹸の香りがして心が安らぐ。
「たまらん」
「親父か」
「そっちは?寝心地どう?」
「悪くない」
「良かったな」
「おい」
「あ、そうだ、明日休みだし初詣行かない?」
「別にいいけど、そろそろ2月だぞ?」
「うん。今年は俺が熱出して行けなかったから、遅くなったけど行きたいなって」
そう、元旦当日、俺はインフルエンザにかかり、毎年恒例のスミレとの初詣が叶わなかったのだ。スミレはクラスの女子から誘われていたようだけど、彼は正月の楽しい時間を俺の看病で費やし、挙げ句の果てには自身もインフルエンザを患うという悲惨な冬休みを過ごしてしまい、俺は未だにそれが申し訳なくて仕方がなかった。
「じゃあ、行こっか。マフラー貸してやるよ」
「うん、ありがとう」
毎年自分の願い(彼女が欲しい)ばかり神頼みしていたけれど、今年はこの優しい幼馴染みの為に何か願いたいなと思っていた。
「そんなに願いたい事でもあるの?」
「うん、まあ、色々あるじゃん」
俺は本音を言うのがちょっと照れくさくて嘯いてしまう。
「不純」
「お前は?」
「俺?俺は……家内安全。ついでに隣のお前んちの安全と」
「スミレらしいや」
俺はクスクスと笑い、仰向けになって天井の木目を数える。
見る景色が違うからか、全然眠気が襲ってこない。
「電気消すぞ?」
「うん」
スミレが立ち上がって明かりを消し、持っていたスマホの明かりを頼りに寝床に戻った。

「……」
「……」
静かだ。
寝息すら聞こえない。
「スミレ?」
「……」
返事が無い。寝たのか?
ベッドから身を乗り出してスミレを確認すると、彼は上を向いたままうっすら口を開けて眠っている。
すぐ横に置かれたスミレのスマホの明かりが、彼の寝顔を妖艶に引き立て、いつも見る同級生とは違った顔を見せていた。
睫毛長いな。同じ歳なのに、スミレはいつの間にこんな大人っぽくなったんだろう。こんなに鼻筋が通ってたか?
スミレってこんな顔してたっけ?
なんか以前にも増して格好良くなってる。男の俺でも見惚れるわ。こんなんで彼女いないとか、もはや罪だろ。
俺のせいで彼女作れないとかだったら申し訳ないな。
スミレは面倒見が良くて、いつでも俺を最優先にしてくれてたから、彼女なんか作ってる暇がなかったのかもしれない。そうでなければ辻褄が合わない。
「お前にいい彼女が出来たら、俺も安心なんだけどな……」
スミレは凄くいい奴だから、その分幸せになってほしい。
そして俺は枕を抱えて厳かに瞼を閉じた。
「……………………」
全く眠くないせいか、凄く暇だ。
かと言ってスミレを起こして付き合わせるのも悪いし。
俺が横になってボンヤリスミレの寝顔を見ていると、横にあるスマホの通知ランプが赤色で点滅しだした。
充電が切れそうなのか!
スミレは俺にコンセントを譲ってくれた為に充電出来ずにいたらしい。
まじお人好しだな。
やれやれと俺は静かに寝床から這い出ると、自分のスマホから充電コードを抜き取り、スミレのスマホに差し替えてやる。
ピカッとスマホのロック画面が明るくなり、俺は目を細めた。
「あれ」
ふと、スマホのロック画面にN字の指紋を見つけ、俺は好奇心からその通りに液晶を指でなぞってみる。
ロックが解け、待ち受け画面が開かれると、俺は目を疑った。
「えぇ……」
何故なら、そこに──

美女のビキニ姿があったからだ。
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