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それからの事
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それから1ヶ月後、翡翠は晴れて王の妃となった。
翡翠の希望により式は王と2人、しめやかに行われたが、大国の王の結婚とあり、国をあげての大盛り上がりだった。特に歓びに沸いたのは翡翠の故郷である南部国。国中にお祝いの大きな横断幕が数多と掲げられ、国民は翡翠を故郷の星として賛美し、彼女は積年の願いであった『故郷に錦を飾る』事が実現でき、調教師であった俺も鼻が高かった。
その後、翡翠は王の戦地訪問にも必ず同伴し、特別枠の献上品制度を自然消滅させ、通常の献上品制度の方は自薦制になるよう手を回し、献上品に関して不幸になる者が出ないよう配慮したが、王は翡翠との結婚以来一切献上品には手を付けず、これもまた自然消滅する。
これより風斗は翡翠だけを愛し、死ぬまで彼女一筋を貫いた、とか。
更に翡翠の活動は留まるところを知らず、率先して民間の居住区の地雷除去作業に携わり、その地で脚や家族を失った人々の為に孤児院や病院、カウンセリング施設を建設し、貧困に喘いでいた苦学生達をインターンや職員として招き、地域の活性化にも努めた。尚、そこのスタッフの給料や施設の運営費を除いた収益金は『ユリ基金』と称して恵まれない家庭や、身寄りの無い子供達の為に遣われた。更にはユリ直伝の動物クッキーやらおっぱいプリンのブランド化にも成功し、失業者への雇用にも繋げている。
他にも翡翠はこの世から戦争を無くそうと各国の社交界にも足を運び、政治世界でも暗躍し、和平協定を次々と結ばせていく。
これらの功績により、多国で翡翠の記念像があちこちに建てられ、翡翠は歴史に名を残す事となる。
ただ、悲しい事に翡翠は地雷除去作業中に着弾し、右脚を失った。
一命はとりとめたが、それ以降翡翠は義足を着用するようになる。
それから翡翠は王の切望により前戦を退き、PTSDを克服したのか、結婚から4年後に次期王となる第一子を出産、その1年後には双子の王女を出産する。
かつて奴隷だった彼女が今や三児の母で、王の妃として大業を成し遂げ、家族で幸せに暮らしている。当時翡翠は俺の為に献上品として頑張ってくれていたけれど、今は心から風斗を愛し、愛され、本当にいい人生を送っていると思う。
あんなに臆病だった子が、ここまで立派な人間になるなんて、本当に舌を巻く。
翡翠が手の届かない存在になってから、俺は未だに雷の夜は翡翠が恋しくて堪らなくなるけれど、彼女が幸せになれて、俺はもう何も言う事は無い。
それから鷹雄はと言うと、驚く事に、ユリの遺骨と共に世界中を旅して回った後、なんと!そのまま仏門に入り、後生をユリの弔いの為に費やした。
あの遊び人でちゃらんぽらんだった男が、骨になった(恐らく)想い人の為に俗世を捨てるなんて驚きだったが、その決断に俺は初めて鷹雄という人間を尊敬してしまった。
きっとユリも、天国で驚いて、そして笑っている事だろう。
そうそう、木葉と駆け落ち(?)をした翠の事だが、情報はまるで入ってきていなかったが、近年、俺の元に彼らから富士山の絵葉書が届き、2人の生存を確認した。
絵葉書には俺への宛先しか書かれていなかったが、2人共元気でやっているらしい。
心配して損したよ。
顔を見れないのは寂しいが、どっかで元気にしているなら、それはそれでいい。
時に俺は何かに悩み、迷い、それを友人達に相談したくなる。勿論、彼ら2人はそばにいなくて、連絡もとれないけれど、どこかで俺を激励してくれているんじゃないかと勝手に思っている。
だって、そうすると悩んでいた事が軽減される気がするからね、心の親友とは不思議なものだ。
ああ、そうそう、その後の俺がどうなったかと言うと、翡翠の結婚と同時にかねてより希望していた東部国の国王就任の話が浮上したが、俺はこれを断り、翡翠の故郷である南部国を王として貰い受けた。
鷹雄からは『何でわざわざあんな枯渇した国を貰ったんだ?』と呆れられたが、一方で『お前らしいな』と納得してくれた。
勿論、経済的に豊かな東部国は魅力的だったけれど、俺は翡翠が育った国や城を守りたかったのだ。
南部国王就任後は、奴隷制度を無くし、砂漠でも育つ作物を広大な土地に作付けし、そこから得た収益でライフラインを整備し、国民の住みやすい地域づくりに奔走した。
数年後には、東部国に負けないくらいの豊かな経済国家にまで成長した。
もう誰もあの国を『枯渇した国』だとか『没落した国』等と呼ばなくなった。
ちなみに、ちなみになんだが、まあ、何と言うか、これが一番驚きなのだが、結論から言うと、つまり──
俺はダリアと結婚した。
俺とダリア、誰もが驚く取り合わせだが、彼女が献上品の務めを放棄し、自国にも帰れず行き場を失って難儀していたところを俺が南部国王の妻として引き取ったのだ。
当然、2人の間に愛は無く『あなたと子供を作る気は無い』とダリアからキッパリ牽制されたが、勿論、俺にもその気は無く、その代わりと言っては何だが、城で身寄りの無い子供達を引き取り、ダリアと2人で面倒を見ている。彼女は意外と姉御肌で面倒見が良く、俺はそんな彼女を敬愛し、何だかんだで(それなりに)いい関係を築けている、と思う。
まあ、喧嘩はしょっちゅうだけど。
ちなみに全くの余談だけど、俺は翡翠の献上の儀式を見て以降完全に不能になった。
恐らくPTSDだと思う。
翡翠とは社交界でたまに見掛けるくらいになってしまったけれど、言葉を交わさなくとも、心で繋がっているような気がする。かつての翠と紅玉がそうだったように。
もし来世というものがあるとしたら、俺と翡翠はどこか違う時代の、違う国の、違うストーリーで結ばれるんじゃあないかなと思う。どこぞの国では、前世で結ばれなかった悲運のカップルを神様が双子として転生させてくれると聞いた事がある……いや、双子は駄目だろ!!
今は今で幸せだが、来世に期待するとしよう。
翡翠の希望により式は王と2人、しめやかに行われたが、大国の王の結婚とあり、国をあげての大盛り上がりだった。特に歓びに沸いたのは翡翠の故郷である南部国。国中にお祝いの大きな横断幕が数多と掲げられ、国民は翡翠を故郷の星として賛美し、彼女は積年の願いであった『故郷に錦を飾る』事が実現でき、調教師であった俺も鼻が高かった。
その後、翡翠は王の戦地訪問にも必ず同伴し、特別枠の献上品制度を自然消滅させ、通常の献上品制度の方は自薦制になるよう手を回し、献上品に関して不幸になる者が出ないよう配慮したが、王は翡翠との結婚以来一切献上品には手を付けず、これもまた自然消滅する。
これより風斗は翡翠だけを愛し、死ぬまで彼女一筋を貫いた、とか。
更に翡翠の活動は留まるところを知らず、率先して民間の居住区の地雷除去作業に携わり、その地で脚や家族を失った人々の為に孤児院や病院、カウンセリング施設を建設し、貧困に喘いでいた苦学生達をインターンや職員として招き、地域の活性化にも努めた。尚、そこのスタッフの給料や施設の運営費を除いた収益金は『ユリ基金』と称して恵まれない家庭や、身寄りの無い子供達の為に遣われた。更にはユリ直伝の動物クッキーやらおっぱいプリンのブランド化にも成功し、失業者への雇用にも繋げている。
他にも翡翠はこの世から戦争を無くそうと各国の社交界にも足を運び、政治世界でも暗躍し、和平協定を次々と結ばせていく。
これらの功績により、多国で翡翠の記念像があちこちに建てられ、翡翠は歴史に名を残す事となる。
ただ、悲しい事に翡翠は地雷除去作業中に着弾し、右脚を失った。
一命はとりとめたが、それ以降翡翠は義足を着用するようになる。
それから翡翠は王の切望により前戦を退き、PTSDを克服したのか、結婚から4年後に次期王となる第一子を出産、その1年後には双子の王女を出産する。
かつて奴隷だった彼女が今や三児の母で、王の妃として大業を成し遂げ、家族で幸せに暮らしている。当時翡翠は俺の為に献上品として頑張ってくれていたけれど、今は心から風斗を愛し、愛され、本当にいい人生を送っていると思う。
あんなに臆病だった子が、ここまで立派な人間になるなんて、本当に舌を巻く。
翡翠が手の届かない存在になってから、俺は未だに雷の夜は翡翠が恋しくて堪らなくなるけれど、彼女が幸せになれて、俺はもう何も言う事は無い。
それから鷹雄はと言うと、驚く事に、ユリの遺骨と共に世界中を旅して回った後、なんと!そのまま仏門に入り、後生をユリの弔いの為に費やした。
あの遊び人でちゃらんぽらんだった男が、骨になった(恐らく)想い人の為に俗世を捨てるなんて驚きだったが、その決断に俺は初めて鷹雄という人間を尊敬してしまった。
きっとユリも、天国で驚いて、そして笑っている事だろう。
そうそう、木葉と駆け落ち(?)をした翠の事だが、情報はまるで入ってきていなかったが、近年、俺の元に彼らから富士山の絵葉書が届き、2人の生存を確認した。
絵葉書には俺への宛先しか書かれていなかったが、2人共元気でやっているらしい。
心配して損したよ。
顔を見れないのは寂しいが、どっかで元気にしているなら、それはそれでいい。
時に俺は何かに悩み、迷い、それを友人達に相談したくなる。勿論、彼ら2人はそばにいなくて、連絡もとれないけれど、どこかで俺を激励してくれているんじゃないかと勝手に思っている。
だって、そうすると悩んでいた事が軽減される気がするからね、心の親友とは不思議なものだ。
ああ、そうそう、その後の俺がどうなったかと言うと、翡翠の結婚と同時にかねてより希望していた東部国の国王就任の話が浮上したが、俺はこれを断り、翡翠の故郷である南部国を王として貰い受けた。
鷹雄からは『何でわざわざあんな枯渇した国を貰ったんだ?』と呆れられたが、一方で『お前らしいな』と納得してくれた。
勿論、経済的に豊かな東部国は魅力的だったけれど、俺は翡翠が育った国や城を守りたかったのだ。
南部国王就任後は、奴隷制度を無くし、砂漠でも育つ作物を広大な土地に作付けし、そこから得た収益でライフラインを整備し、国民の住みやすい地域づくりに奔走した。
数年後には、東部国に負けないくらいの豊かな経済国家にまで成長した。
もう誰もあの国を『枯渇した国』だとか『没落した国』等と呼ばなくなった。
ちなみに、ちなみになんだが、まあ、何と言うか、これが一番驚きなのだが、結論から言うと、つまり──
俺はダリアと結婚した。
俺とダリア、誰もが驚く取り合わせだが、彼女が献上品の務めを放棄し、自国にも帰れず行き場を失って難儀していたところを俺が南部国王の妻として引き取ったのだ。
当然、2人の間に愛は無く『あなたと子供を作る気は無い』とダリアからキッパリ牽制されたが、勿論、俺にもその気は無く、その代わりと言っては何だが、城で身寄りの無い子供達を引き取り、ダリアと2人で面倒を見ている。彼女は意外と姉御肌で面倒見が良く、俺はそんな彼女を敬愛し、何だかんだで(それなりに)いい関係を築けている、と思う。
まあ、喧嘩はしょっちゅうだけど。
ちなみに全くの余談だけど、俺は翡翠の献上の儀式を見て以降完全に不能になった。
恐らくPTSDだと思う。
翡翠とは社交界でたまに見掛けるくらいになってしまったけれど、言葉を交わさなくとも、心で繋がっているような気がする。かつての翠と紅玉がそうだったように。
もし来世というものがあるとしたら、俺と翡翠はどこか違う時代の、違う国の、違うストーリーで結ばれるんじゃあないかなと思う。どこぞの国では、前世で結ばれなかった悲運のカップルを神様が双子として転生させてくれると聞いた事がある……いや、双子は駄目だろ!!
今は今で幸せだが、来世に期待するとしよう。
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