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セキレイという男
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正直、私、翡翠は南部国の王室で甘やかされて育った。
だから、王室が陥落するその時まで、優しかった教育係に騙されていただなんて気付かなかったのだ。そのトールという優男に初恋まで捧げたというのに、彼は、探検と称して私に城内の隠し通路を案内させた。
結果、南部国の城は北部国軍に攻め入られた際、隠し通路を押さえられ、逃げ場を失った父、母、兄をその場で銃殺された。自分は、命ばかりは救われたが、まかり間違って自国の奴隷市で売られる事となる。
そこで、セキレイというやけに眉目秀麗な青年に買われた。
最初に彼を目にした時、こんな綺麗な顔をした人間が、自分みたいな子供を買うなんて信じられなかった。
変態なんだ、そう思った。
だって、彼の容姿と言ったら、瞳が黒真珠みたいに黒々と輝いていて、眼自体は切れ長で鋭く、鼻筋は高く通っていて、への字に曲げられた唇には無駄な肉はなく、動くポートレートみたいだと思った。漢漢はしていないが凛として、それでいて大人の男性の色気があり、あの黒真珠で見つめられるとその圧倒的なオーラによりいっそ緊張で居心地が悪くなる。
この男は変態だ。
セキレイは、誰もが振り返る様な恵まれた容姿をしていたが『枕』の為に自分を買ったのだ、常に仏頂面だがとんでもないムッツリに違いない。絶対に気を許してはいけない。隙をみてこの城から逃げ出さないと。
──それに何より、彼は自国に攻め入った北部国の人間だ。北部国の人間は常にスーツを着用するのが義務になっている。この男にも北部国の野蛮な血が流れている事だろう。セキレイの、私に対する扱いだって、そこらの犬猫に対するそれと変わりはなく、ぞんざいだ。彼が子供慣れしていないのもあるだろうが、この男は子供が嫌いなのだとあの冷たい目を見たらすぐに解った。
この男は子供嫌いのロリコンなんだ。
何て恐ろしい……
ただ、セキレイは私の不吉な眼の色を時折懐かしそうな目で愛でる事がある。不機嫌そうな顔が少しだけ目元を綻ばせる瞬間だ。
でも私は、セキレイが油断したところを狙って手に躊躇なく牙を剥いた。
好きにされてたまるものか。
王妃である母親が、もし私が北部国に捕まり、捕虜になったら、魔法の言葉を口にしろと言っていた。
『私はまだ6歳の子供です。大人の相手は出来ません』
世間知らずで無力な私には、この言葉にすがる他ない。震えて、捕らえられたケージに自らしがみつく事しか出来ない。
けれどセキレイは、そんないたいけな子供相手でも容赦なかった。
人に水分を与えるだけ与えて、自分は私が尿意で悶絶するのを煙草を吹かして楽しんでいる。
この男はとんでもない大変態なんだ!
この男は私に首輪や手綱を装着し、あまつさえ棒状の鞭まで準備して、人をいたぶるのが好きなサド公爵に違いない、そう思うと今にも腰が抜けそうだった。
怖い……兄ちゃん、助けて!
いつも私を守ってくれた優しい兄はもうこの世にいない。
──絶望しかなかった。
しかしセキレイが私を王への献上品として利用したい旨が解ると、少しだけほっとする。
この人は私にどうこうしようという訳ではないらしい。献上品としてうまくやれば、処断される事もないと言うし……献上品て?
私はもうすぐ十になろうも、要所要所に出てくる難しい言葉はよく解らなかったが、私が献上品として王に献上されるその日まで、セキレイは私を守ると約束した。
しかし当の私はこう思った。
私が献上品として王に近付く事が出来れば、家族の仇討ちが出来る、と──
それから使用人に連れられて風呂へ向かわされた。使用人は若い女性で、味気無いメイド服を着ていて、髪をオールバックで後ろに一纏めにしているせいかやけにつり目で高圧的な印象だ。それにそのアイラインも良くない。つり目を強調していて尖った人物に見える。
見た目で人を判断するのは良くない事だが、この女性は私の手綱を手荒に引き、エレベーターで何階か下に降りた先にある大浴場では私を無理矢理裸にひん剥き、焦げ付いた鍋でも洗うかの如く肘を立てて全身を擦ってきた。洗われているというより、これではすりおろされているという表現の方がしっくりくる。歯を食いしばって耐えていたさすがの私も、痛みで金切り声を上げた。
「ぅぁぁぁぁ……」
「せっかく洗ってあげているのに、うるさいわね。あなた、王様への献上品なんですってね?」
「……」
私は黙って排水溝に水が流れて行くのを見つめている。
誰とも喋りたくなかった。
「政略的に南部国の娘が候補にされたのは解るけど、たかだか落ちぶれた国の娘が側室になれるとは思わない事ね」
そう言って使用人は乱暴に私のシャンプーを始める。
この人はどうして初対面の私をこんなに憎むのだろう?
私は彼女を不快にさせるような事は何もしていない筈だ。
国だってそうだ。私達王族は、貧しい国家でありながら略奪や違法行為等を一切やらなかった。民からの年貢さえ徴収していなかったと母から聞いた。細々と、自分達で小さな城をやりくりしてしていただけなのに、突然、何の縁故もない北部国軍によって家族や城の者を殺された。何もしていないのに、だ。こんな理不尽な事ってない。
父は、王として全てを投げ出すと北部国軍の兵士に申し出たが、南部国のシンボルである父を北部国は見逃さなかった。そして跡継ぎである兄、王妃である母も殺した。
もし、私が誰か人を殺すなら、今なら正当な理由がある。それは『復讐』だ。
私は使用人を突飛ばし、その場から逃げ出した。
裸同然のまま廊下に出るとエレベーターに乗り込み、出口がある1階のボタンを押そうとして、考え直し、元いた19階のボタンを押す。
この城に残って王を抹殺する。
そんな気概を持って19階のフロアに出たが、献上品としてあのドサドな調教師に調教されるのは抵抗があった。献上品として王に近付く事が出来れば簡単に王を抹殺する事が出来るが、私はあのセキレイという男が怖かった。
『俺がお前を守る』
あの言葉を信じてしまうのが怖かった。
あれは、私を騙したトールが言った言葉と同じ言葉だ。
安易な考えだったが、逃げる訳にもいかず、私はセキレイの部屋の隣のドアを叩いた。
別の、違った人間に拾ってもらおう。
藁にもすがる思いとはこの事だ。
夜中のせいかなかなか家主が出てこず、私は必死にドアを叩いた。
「はいはい、何かな、これじゃあうちの子が起きちゃうよ」
暫くして、小言を言いながら出て来たのは、見るからに優しそうで清涼感のある青年だった。
あ、あれ?
「兄ちゃん」
「兄ちゃん?俺は翠だよ」
その青年があまりに兄に似ていて、私は思わず彼の腰に抱きつき、その翠という青年を困惑させる。他人と思えないとはこの事だ。
「あれあれ、どした?迷子かな?こんな裸同然で、風邪をひくよ」
翠はずり落ちたバスタオルをかけ直し、その上から私の肩を摩擦で温めてくれた。
「こんな夜中に子供が城の廊下に出たら、何か間違いがあるかもしれないよ?特に、隣の部屋のセキレイって男は変態だからね。それで、君の名前は?保護者は?何処から来たの?可哀想に、こんなに顔を腫らして、誰にやられたの?て言うか、頭に泡がついてるよ?」
翠から矢継ぎ早に尋ねられ、私は何と答えていいものか口をパクパクさせる。
──というか、やっぱりセキレイは変態なんだ。
やけに合点がいくというか、納得だった。
「あぁ、あれか、もしかして、セキレイが探してた南部国の……そうか、引き取ったのか。それで隣と部屋を間違えたんだね?」
真実とは少し違っていたが、翠が勝手に自己解決したので私はただ黙って頷いた。
「へぇぇ、君がそうか。献上品?なら、うちの木葉のライバルだね。うちの子も可愛いけど、君もとても綺麗な顔をしているね。瞳も澄んでいてとても美しい。いいライバルだ」
翠から、裏の無い満面の笑みでそんな風に褒められ、私は面食らう。こんな腫れてみっともない顔を綺麗だなんて、この人は寛大な人間なのだと思った。そういうところも兄に似て好印象だった。
「じゃあ、セキレイのとこに戻ろうか」
翠に手を引かれ、私は兄に似たこの人から引き離されまいと彼の太腿にしがみつく。
「やだ」
「え?帰りたくないの?でも、セキレイのとこから来たんだよね?」
翠は苦笑いしながら私の頭を撫でてくれた。そうすると尚更翠から離れがたくなる。
「帰りたくない」
頑なに首を横に振ると、翠は困惑し、膝を着いて私を抱き締めてくれた。
「やだな。凄い可愛い。子犬に懐かれたみたいだ。帰したくないよ」
セキレイの仏頂面は頭にちらついたが、このままこの人のうちの子になりたいと思った。
「君と離れるのは心もとないけど、きっとセキレイが心配してるよ?」
そんな訳がない。あの人は私を商品かビジネスのだしにしか思っていない。あの意地悪が心配だなんて、あり得ない。
私はあからさまに嫌そうな顔をする。
「そんな顔しないで。せっかくの美人さんが、そういう顔になっちゃうよ?セキレイはね、あんな仏頂面で、あいそが無くて、粗暴で、粗野で、慮外者で、厚顔無恥で、変態で、無口で何を考えているか解らない変態につぐ変態の大変態だけど、根はその割り悪い奴じゃあないよ。いい奴とも言わないけど、そこそこ、そこそこ希に優しいし、何より、君の親代わりだろう?」
気のせいか、翠の言葉の端々にセキレイへの積年の憎しみが込められている様に感じる。
「それに、セキレイは俺には適当だけど、1年前に飼っていた……犬には凄く優しかったんだよ。瑪瑙って言ってね、セキレイにとてもよく懐いていて、セキレイも、そりゃあもうベタ惚れで、凄く大事にしていて、溺愛してた。君だって瑪瑙みたいに可愛がってもらえるさ。セキレイは、本当は情の深い人間なんだから」
犬と比べられるのも何だかなぁ、と思ったが、動物を愛する人に悪人はいないと父から聞いていたので、少しホッとしたのが正直なところだ。
──ところで瑪瑙って?
「もしセキレイが君の事を要らないと言ったら、その時は責任をもって俺が君の面倒をみるよ」
翠からそんな風に提案され、私は引き摺られる様に隣に連れていかれた。
「散歩を嫌がる犬みたいだね。俺だって心苦しいけど、飼い犬に逃げられるセキレイだって可哀想じゃないか」
とは言いながら、翠は少し楽しそうだ。翠の話を聞いていると、セキレイがどれだけ日頃の行いが悪かったかが窺える。つまりセキレイの性格が歪んでいるという認識で合っているだろう。
2人でセキレイの元を訪ねると、彼はドアを開けるなり眉間に皺を寄せた。彼はなまじ顔が整っているだけに不機嫌な顔をするとやたらと迫力があり、私はそれが怖くて翠の後ろに隠れた。
怒られる。きっと折檻される。あの鞭はその為の物だ。
予想通り私はセキレイに叱られ、やはり翠の所に戻りたいと思ったのだが、彼は予想外に翠から私を取り上げ、私を必要としてくれた。それは勿論、私を献上品として利用する為だと解っていたが、自分が奴隷市で売れ残っていた経緯を思うと、誰かに必要とされるのは嬉しかった。
セキレイの元へ戻り、私は彼に頭を拭かれ、ドライヤーで髪を乾かしてもらった。心なしか、手つきが優しい様な気がする。怒鳴った分、彼なりの『アメ』なのかもしれない。
不器用な人。
寡黙で、人に思いを伝えるのが苦手で誤解されがちだが、本当は解り合える性格なのは、自分とどこか似ている、そう思ったら、ほんの僅かだが親近感が沸いた。
「熱い?」
労ってくるセキレイの冷たい指先が心地いい。手櫛が、まるで優しく撫でられている様で気持ちがいい。翠が言っていた瑪瑙という犬も、こんな風にグルーミングされていたのかと思うと、自分も可愛がられている様な錯覚を起こしそうだった。
自分が犬だったら、無条件にこの人に甘えられたのに。
でも、私には王抹殺の計画があり、セキレイには一国一城の主になるという野望がある。最終的に私は彼を裏切るのだ、手放しでは甘えられない。
その後全身に軟膏を塗られ、セキレイに案内されて私は子供部屋とおぼしき部屋に連れて行かれる。ここは私の為に用意された部屋というよりも、誰かが使っていたお古という感じがした。私の趣味ではないが、あのケージよりはましだ。
ベッドに入れられ、布団があまりに冷たくて身を縮めると、セキレイに足を掴まれ吐息で温められた。
どうしてこんな、母親みたいな事をするのだろう?
そんな疑問もあるが、何より、照れくさいやら、くすぐったいやらで私はすぐに足を引っ込める。
──っくりした。
セキレイの事は鬼畜だと思っていたので、不意の『デレ』は心臓に悪い。それにこの布団も、私を迎える用意として日中干ししておいてくれたのだ。
私はセキレイという男を誤解していたのかもしれない。
子供部屋のドアが閉められ、私は1人きりになり肩の力を緩めたが、遠くの方でゴロゴロと空が鳴り出し、全身が強張る。
嫌だな、雷だ。
目の前で家族を殺されたあの日も、雷が鳴っていた。
怖い。雷を感じると、あの日を再現されている様でただただひたすらに怖かった。追っ手に追われて家族で真っ暗な地下通路をひた走り、雷の地鳴りで地が揺れ、やっと地上に出られたと思ったら、トール率いる北部国軍が大勢私達を待ち構えており、雷の閃光で数多の銃口がこちらを向いているのが見え、その中でも、私を裏切った裏切り者の心無い笑顔が照らし出され、身の毛がよだったのが鮮明に思い出される。
ゴロゴロゴロゴロ
瞼を閉じていもその裏で閃光が走ったのが分かり、そこから雷鳴が轟くまでの数を数えては、少しずつ近付く雷に怯えた。
怖い。あの男がやって来る。トールが家族を殺しに来る。
拭いされないトラウマが、雷によってその色を鮮明にさせた。
ゴロゴロ……ガラガラガラガラガラガラッ!!
すぐ近くに落ちた!
そう思ったら、もう居てもたっても居られずこの部屋のドアノブに飛び付いた。やけにしぶいノブだったが、私は火事場の糞力でそれをこじ開けてセキレイが眠るベッドに潜り込む。
朝方、彼が起きる前にベッドを抜け出せばバレない。
そんな風に考え、私はセキレイの背中にしがみついた。
温かい。ゴツゴツしていて、広い背中だ。大人の男の人だ。
そんな風に思っていると、なんと彼は起きていて、ぐるりと体を反転させ、両手で私を優しく包み込んだ。
胸板が硬いのに、居心地がいい。知り合ったばかりの人間、ひいては敵国の人間なのにどうしてこんなに安心感があるのだろう?そもそもこの人は、あんなに意地悪だったのに、私はセキレイにとってただの手駒なのに、どうして私を受け入れたのだろう?
「大丈夫」
かけてくれる言葉も、優しくて調子が狂う。私は照れくさくて狸寝入りを決め込む。
「なぁ、翡翠、絶対に俺の事を好きになるなよ」
旋毛に顔を埋められ、そんな事を言われたが、その時の私にその言葉はピンとこなかった。
私はセキレイに抱かれたまま朝を迎えた。昨日はお陰様で雷の恐怖を紛らわす事が出来たが、途中から尿意が気になるも、セキレイが私を抱き締めたまま寝入ってしまい、起こす事も出来ないまま私自身も夢の中へ……結果、朝方腰の生温さで恥ずかしいやら、申し訳ないやら、セキレイに怒られるのでは、とひと暴れしてベッドから落ちた。直後にセキレイに体を洗われ、先刻打った腰を見られ『蒙古斑』と屈辱的な事を言われる。
やっぱりこの人は意地悪だ。
私は今度雷が鳴っても、絶対にセキレイのベッドには潜り込まないと固く心に誓う。
──それでも、朝食にセキレイが手作りのフレンチトーストを出してくれて、ただのそれだけの事なのに、嬉しかった。
けれど、私はそれを半分も食べられなかった。
フレンチトーストは嫌いじゃないし、セキレイが作ってくれたそれも美味しかった。
でも、食べられなかった。
だから、王室が陥落するその時まで、優しかった教育係に騙されていただなんて気付かなかったのだ。そのトールという優男に初恋まで捧げたというのに、彼は、探検と称して私に城内の隠し通路を案内させた。
結果、南部国の城は北部国軍に攻め入られた際、隠し通路を押さえられ、逃げ場を失った父、母、兄をその場で銃殺された。自分は、命ばかりは救われたが、まかり間違って自国の奴隷市で売られる事となる。
そこで、セキレイというやけに眉目秀麗な青年に買われた。
最初に彼を目にした時、こんな綺麗な顔をした人間が、自分みたいな子供を買うなんて信じられなかった。
変態なんだ、そう思った。
だって、彼の容姿と言ったら、瞳が黒真珠みたいに黒々と輝いていて、眼自体は切れ長で鋭く、鼻筋は高く通っていて、への字に曲げられた唇には無駄な肉はなく、動くポートレートみたいだと思った。漢漢はしていないが凛として、それでいて大人の男性の色気があり、あの黒真珠で見つめられるとその圧倒的なオーラによりいっそ緊張で居心地が悪くなる。
この男は変態だ。
セキレイは、誰もが振り返る様な恵まれた容姿をしていたが『枕』の為に自分を買ったのだ、常に仏頂面だがとんでもないムッツリに違いない。絶対に気を許してはいけない。隙をみてこの城から逃げ出さないと。
──それに何より、彼は自国に攻め入った北部国の人間だ。北部国の人間は常にスーツを着用するのが義務になっている。この男にも北部国の野蛮な血が流れている事だろう。セキレイの、私に対する扱いだって、そこらの犬猫に対するそれと変わりはなく、ぞんざいだ。彼が子供慣れしていないのもあるだろうが、この男は子供が嫌いなのだとあの冷たい目を見たらすぐに解った。
この男は子供嫌いのロリコンなんだ。
何て恐ろしい……
ただ、セキレイは私の不吉な眼の色を時折懐かしそうな目で愛でる事がある。不機嫌そうな顔が少しだけ目元を綻ばせる瞬間だ。
でも私は、セキレイが油断したところを狙って手に躊躇なく牙を剥いた。
好きにされてたまるものか。
王妃である母親が、もし私が北部国に捕まり、捕虜になったら、魔法の言葉を口にしろと言っていた。
『私はまだ6歳の子供です。大人の相手は出来ません』
世間知らずで無力な私には、この言葉にすがる他ない。震えて、捕らえられたケージに自らしがみつく事しか出来ない。
けれどセキレイは、そんないたいけな子供相手でも容赦なかった。
人に水分を与えるだけ与えて、自分は私が尿意で悶絶するのを煙草を吹かして楽しんでいる。
この男はとんでもない大変態なんだ!
この男は私に首輪や手綱を装着し、あまつさえ棒状の鞭まで準備して、人をいたぶるのが好きなサド公爵に違いない、そう思うと今にも腰が抜けそうだった。
怖い……兄ちゃん、助けて!
いつも私を守ってくれた優しい兄はもうこの世にいない。
──絶望しかなかった。
しかしセキレイが私を王への献上品として利用したい旨が解ると、少しだけほっとする。
この人は私にどうこうしようという訳ではないらしい。献上品としてうまくやれば、処断される事もないと言うし……献上品て?
私はもうすぐ十になろうも、要所要所に出てくる難しい言葉はよく解らなかったが、私が献上品として王に献上されるその日まで、セキレイは私を守ると約束した。
しかし当の私はこう思った。
私が献上品として王に近付く事が出来れば、家族の仇討ちが出来る、と──
それから使用人に連れられて風呂へ向かわされた。使用人は若い女性で、味気無いメイド服を着ていて、髪をオールバックで後ろに一纏めにしているせいかやけにつり目で高圧的な印象だ。それにそのアイラインも良くない。つり目を強調していて尖った人物に見える。
見た目で人を判断するのは良くない事だが、この女性は私の手綱を手荒に引き、エレベーターで何階か下に降りた先にある大浴場では私を無理矢理裸にひん剥き、焦げ付いた鍋でも洗うかの如く肘を立てて全身を擦ってきた。洗われているというより、これではすりおろされているという表現の方がしっくりくる。歯を食いしばって耐えていたさすがの私も、痛みで金切り声を上げた。
「ぅぁぁぁぁ……」
「せっかく洗ってあげているのに、うるさいわね。あなた、王様への献上品なんですってね?」
「……」
私は黙って排水溝に水が流れて行くのを見つめている。
誰とも喋りたくなかった。
「政略的に南部国の娘が候補にされたのは解るけど、たかだか落ちぶれた国の娘が側室になれるとは思わない事ね」
そう言って使用人は乱暴に私のシャンプーを始める。
この人はどうして初対面の私をこんなに憎むのだろう?
私は彼女を不快にさせるような事は何もしていない筈だ。
国だってそうだ。私達王族は、貧しい国家でありながら略奪や違法行為等を一切やらなかった。民からの年貢さえ徴収していなかったと母から聞いた。細々と、自分達で小さな城をやりくりしてしていただけなのに、突然、何の縁故もない北部国軍によって家族や城の者を殺された。何もしていないのに、だ。こんな理不尽な事ってない。
父は、王として全てを投げ出すと北部国軍の兵士に申し出たが、南部国のシンボルである父を北部国は見逃さなかった。そして跡継ぎである兄、王妃である母も殺した。
もし、私が誰か人を殺すなら、今なら正当な理由がある。それは『復讐』だ。
私は使用人を突飛ばし、その場から逃げ出した。
裸同然のまま廊下に出るとエレベーターに乗り込み、出口がある1階のボタンを押そうとして、考え直し、元いた19階のボタンを押す。
この城に残って王を抹殺する。
そんな気概を持って19階のフロアに出たが、献上品としてあのドサドな調教師に調教されるのは抵抗があった。献上品として王に近付く事が出来れば簡単に王を抹殺する事が出来るが、私はあのセキレイという男が怖かった。
『俺がお前を守る』
あの言葉を信じてしまうのが怖かった。
あれは、私を騙したトールが言った言葉と同じ言葉だ。
安易な考えだったが、逃げる訳にもいかず、私はセキレイの部屋の隣のドアを叩いた。
別の、違った人間に拾ってもらおう。
藁にもすがる思いとはこの事だ。
夜中のせいかなかなか家主が出てこず、私は必死にドアを叩いた。
「はいはい、何かな、これじゃあうちの子が起きちゃうよ」
暫くして、小言を言いながら出て来たのは、見るからに優しそうで清涼感のある青年だった。
あ、あれ?
「兄ちゃん」
「兄ちゃん?俺は翠だよ」
その青年があまりに兄に似ていて、私は思わず彼の腰に抱きつき、その翠という青年を困惑させる。他人と思えないとはこの事だ。
「あれあれ、どした?迷子かな?こんな裸同然で、風邪をひくよ」
翠はずり落ちたバスタオルをかけ直し、その上から私の肩を摩擦で温めてくれた。
「こんな夜中に子供が城の廊下に出たら、何か間違いがあるかもしれないよ?特に、隣の部屋のセキレイって男は変態だからね。それで、君の名前は?保護者は?何処から来たの?可哀想に、こんなに顔を腫らして、誰にやられたの?て言うか、頭に泡がついてるよ?」
翠から矢継ぎ早に尋ねられ、私は何と答えていいものか口をパクパクさせる。
──というか、やっぱりセキレイは変態なんだ。
やけに合点がいくというか、納得だった。
「あぁ、あれか、もしかして、セキレイが探してた南部国の……そうか、引き取ったのか。それで隣と部屋を間違えたんだね?」
真実とは少し違っていたが、翠が勝手に自己解決したので私はただ黙って頷いた。
「へぇぇ、君がそうか。献上品?なら、うちの木葉のライバルだね。うちの子も可愛いけど、君もとても綺麗な顔をしているね。瞳も澄んでいてとても美しい。いいライバルだ」
翠から、裏の無い満面の笑みでそんな風に褒められ、私は面食らう。こんな腫れてみっともない顔を綺麗だなんて、この人は寛大な人間なのだと思った。そういうところも兄に似て好印象だった。
「じゃあ、セキレイのとこに戻ろうか」
翠に手を引かれ、私は兄に似たこの人から引き離されまいと彼の太腿にしがみつく。
「やだ」
「え?帰りたくないの?でも、セキレイのとこから来たんだよね?」
翠は苦笑いしながら私の頭を撫でてくれた。そうすると尚更翠から離れがたくなる。
「帰りたくない」
頑なに首を横に振ると、翠は困惑し、膝を着いて私を抱き締めてくれた。
「やだな。凄い可愛い。子犬に懐かれたみたいだ。帰したくないよ」
セキレイの仏頂面は頭にちらついたが、このままこの人のうちの子になりたいと思った。
「君と離れるのは心もとないけど、きっとセキレイが心配してるよ?」
そんな訳がない。あの人は私を商品かビジネスのだしにしか思っていない。あの意地悪が心配だなんて、あり得ない。
私はあからさまに嫌そうな顔をする。
「そんな顔しないで。せっかくの美人さんが、そういう顔になっちゃうよ?セキレイはね、あんな仏頂面で、あいそが無くて、粗暴で、粗野で、慮外者で、厚顔無恥で、変態で、無口で何を考えているか解らない変態につぐ変態の大変態だけど、根はその割り悪い奴じゃあないよ。いい奴とも言わないけど、そこそこ、そこそこ希に優しいし、何より、君の親代わりだろう?」
気のせいか、翠の言葉の端々にセキレイへの積年の憎しみが込められている様に感じる。
「それに、セキレイは俺には適当だけど、1年前に飼っていた……犬には凄く優しかったんだよ。瑪瑙って言ってね、セキレイにとてもよく懐いていて、セキレイも、そりゃあもうベタ惚れで、凄く大事にしていて、溺愛してた。君だって瑪瑙みたいに可愛がってもらえるさ。セキレイは、本当は情の深い人間なんだから」
犬と比べられるのも何だかなぁ、と思ったが、動物を愛する人に悪人はいないと父から聞いていたので、少しホッとしたのが正直なところだ。
──ところで瑪瑙って?
「もしセキレイが君の事を要らないと言ったら、その時は責任をもって俺が君の面倒をみるよ」
翠からそんな風に提案され、私は引き摺られる様に隣に連れていかれた。
「散歩を嫌がる犬みたいだね。俺だって心苦しいけど、飼い犬に逃げられるセキレイだって可哀想じゃないか」
とは言いながら、翠は少し楽しそうだ。翠の話を聞いていると、セキレイがどれだけ日頃の行いが悪かったかが窺える。つまりセキレイの性格が歪んでいるという認識で合っているだろう。
2人でセキレイの元を訪ねると、彼はドアを開けるなり眉間に皺を寄せた。彼はなまじ顔が整っているだけに不機嫌な顔をするとやたらと迫力があり、私はそれが怖くて翠の後ろに隠れた。
怒られる。きっと折檻される。あの鞭はその為の物だ。
予想通り私はセキレイに叱られ、やはり翠の所に戻りたいと思ったのだが、彼は予想外に翠から私を取り上げ、私を必要としてくれた。それは勿論、私を献上品として利用する為だと解っていたが、自分が奴隷市で売れ残っていた経緯を思うと、誰かに必要とされるのは嬉しかった。
セキレイの元へ戻り、私は彼に頭を拭かれ、ドライヤーで髪を乾かしてもらった。心なしか、手つきが優しい様な気がする。怒鳴った分、彼なりの『アメ』なのかもしれない。
不器用な人。
寡黙で、人に思いを伝えるのが苦手で誤解されがちだが、本当は解り合える性格なのは、自分とどこか似ている、そう思ったら、ほんの僅かだが親近感が沸いた。
「熱い?」
労ってくるセキレイの冷たい指先が心地いい。手櫛が、まるで優しく撫でられている様で気持ちがいい。翠が言っていた瑪瑙という犬も、こんな風にグルーミングされていたのかと思うと、自分も可愛がられている様な錯覚を起こしそうだった。
自分が犬だったら、無条件にこの人に甘えられたのに。
でも、私には王抹殺の計画があり、セキレイには一国一城の主になるという野望がある。最終的に私は彼を裏切るのだ、手放しでは甘えられない。
その後全身に軟膏を塗られ、セキレイに案内されて私は子供部屋とおぼしき部屋に連れて行かれる。ここは私の為に用意された部屋というよりも、誰かが使っていたお古という感じがした。私の趣味ではないが、あのケージよりはましだ。
ベッドに入れられ、布団があまりに冷たくて身を縮めると、セキレイに足を掴まれ吐息で温められた。
どうしてこんな、母親みたいな事をするのだろう?
そんな疑問もあるが、何より、照れくさいやら、くすぐったいやらで私はすぐに足を引っ込める。
──っくりした。
セキレイの事は鬼畜だと思っていたので、不意の『デレ』は心臓に悪い。それにこの布団も、私を迎える用意として日中干ししておいてくれたのだ。
私はセキレイという男を誤解していたのかもしれない。
子供部屋のドアが閉められ、私は1人きりになり肩の力を緩めたが、遠くの方でゴロゴロと空が鳴り出し、全身が強張る。
嫌だな、雷だ。
目の前で家族を殺されたあの日も、雷が鳴っていた。
怖い。雷を感じると、あの日を再現されている様でただただひたすらに怖かった。追っ手に追われて家族で真っ暗な地下通路をひた走り、雷の地鳴りで地が揺れ、やっと地上に出られたと思ったら、トール率いる北部国軍が大勢私達を待ち構えており、雷の閃光で数多の銃口がこちらを向いているのが見え、その中でも、私を裏切った裏切り者の心無い笑顔が照らし出され、身の毛がよだったのが鮮明に思い出される。
ゴロゴロゴロゴロ
瞼を閉じていもその裏で閃光が走ったのが分かり、そこから雷鳴が轟くまでの数を数えては、少しずつ近付く雷に怯えた。
怖い。あの男がやって来る。トールが家族を殺しに来る。
拭いされないトラウマが、雷によってその色を鮮明にさせた。
ゴロゴロ……ガラガラガラガラガラガラッ!!
すぐ近くに落ちた!
そう思ったら、もう居てもたっても居られずこの部屋のドアノブに飛び付いた。やけにしぶいノブだったが、私は火事場の糞力でそれをこじ開けてセキレイが眠るベッドに潜り込む。
朝方、彼が起きる前にベッドを抜け出せばバレない。
そんな風に考え、私はセキレイの背中にしがみついた。
温かい。ゴツゴツしていて、広い背中だ。大人の男の人だ。
そんな風に思っていると、なんと彼は起きていて、ぐるりと体を反転させ、両手で私を優しく包み込んだ。
胸板が硬いのに、居心地がいい。知り合ったばかりの人間、ひいては敵国の人間なのにどうしてこんなに安心感があるのだろう?そもそもこの人は、あんなに意地悪だったのに、私はセキレイにとってただの手駒なのに、どうして私を受け入れたのだろう?
「大丈夫」
かけてくれる言葉も、優しくて調子が狂う。私は照れくさくて狸寝入りを決め込む。
「なぁ、翡翠、絶対に俺の事を好きになるなよ」
旋毛に顔を埋められ、そんな事を言われたが、その時の私にその言葉はピンとこなかった。
私はセキレイに抱かれたまま朝を迎えた。昨日はお陰様で雷の恐怖を紛らわす事が出来たが、途中から尿意が気になるも、セキレイが私を抱き締めたまま寝入ってしまい、起こす事も出来ないまま私自身も夢の中へ……結果、朝方腰の生温さで恥ずかしいやら、申し訳ないやら、セキレイに怒られるのでは、とひと暴れしてベッドから落ちた。直後にセキレイに体を洗われ、先刻打った腰を見られ『蒙古斑』と屈辱的な事を言われる。
やっぱりこの人は意地悪だ。
私は今度雷が鳴っても、絶対にセキレイのベッドには潜り込まないと固く心に誓う。
──それでも、朝食にセキレイが手作りのフレンチトーストを出してくれて、ただのそれだけの事なのに、嬉しかった。
けれど、私はそれを半分も食べられなかった。
フレンチトーストは嫌いじゃないし、セキレイが作ってくれたそれも美味しかった。
でも、食べられなかった。
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