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風斗襲来の秘密
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風斗さんが夜這いに来て、私のベッドに潜り込んできた時、私は緊張で体のあちこちがつってしまった。
「イテテテテ……か、体がつりました」
「えっ、大丈夫?」
風斗さんが添い寝するように私に体を寄せ、心配そうに顔を覗き込んでくる。相変わらず綺麗な顔立ちで尚更緊張した。
「少しそっとしてもらえれば治ります」
前世では何度となく風斗さんと体を合わせ、あられもない姿で凌辱されたのに、転生したというだけでこんなにも緊張するなんて……
「そんなに怖い?」
風斗さんはちょっとショックそうに言った。
「あっ、いえいえ、なんか久しぶり過ぎて……」
「緊張しちゃった?」
「はい」
嘘も方便。やっぱり少し怖くもある。それにすぐ外にセキレイさんがいるのかと思うと気が気ではない。はからずも小声になってしまう。
「俺も」
「え、意外」
「そりゃ人間だからね、緊張もするよ」
「そんな風には見えないですけど」
前世からの王様の品格というか、堂々たるオーラは現在の風斗さんをも大きく見せていた。
「俺の左胸、触ってみなよ」
そう言って風斗さんは私の手を取ろうとしたが、私はそれを軽くかわす。
別に風斗さんと色っぽい事をするのが嫌な訳ではないが、外にいるセキレイさんが気になってそれどころではない。
「や、それはいいです」
「え、断っちゃうんだ」
「はい」
「翡翠って結構冷めてるよね」
「自覚は無いですけど、自制心はある方かと」
「そう、セキレイが気になる?」
「いえ、そんな事は……」
「別に責めたりしないから」
「だってすぐそこに双子のお兄さんがいると思ったら気にならない方がおかしいじゃないですか」
「双子のお兄さん?」
風斗さんは涅槃像の体勢をとりながら仰向けだった私の胸板に手を乗せてそこをポン、ポン、と断続的に優しく音頭をとった。
なんか眠くなりそうだな。
「いや、誰がいても気になりますけど」
「特にセキレイにはベッドでイチャイチャしてる事を知られたくないだろ?」
「そんな、セキレイさんは元調教師で私達の濡れ場まで見届けた人ですよ?」
「じゃあ気にしなきゃいいじゃん」
風斗さんからニコニコと鋭い指摘を入れられ、私は頷くしかなかった。
「う……そうですよね」
なんか丸め込まれてるなぁ。いつだって私はこの人には逆らえない。それが例え普通の大学生ででもだ。
「大丈夫だよ、気乗りしないみたいだから無理矢理したりしないから。たださ、朝までこうしてくっついていたい。それも駄目かな?」
「いえ、私もその方が落ち着きます」
私はあからさまにホッとしてしまい、風斗さんに困り笑いされた。
「ま、いいけどさ」
「すみません」
「本当は足首に重りを付けた状態で三角木馬に乗せてさ、この小さなお尻を鞭で打ちたいんだけどね」
『この』というところで風斗さんから横尻を触られ、私は一本の棒の如くシャキーンと体を硬くする。
三角木馬というのはそもそも拷問器具じゃないですかあ。
「ハハ、またつるよ?」
「転生してもそういうの好きなんですか?」
「今世になってからはまだしてないけど、機会があればしたいかなって。勿論、翡翠の同意があればね」
「無いものと思って下さい」
というか、前世の時と話が違くないか?
最終的には好きだから傷付けたくないって事に纏まったと思ったけど、人の性癖はそうそう変えられないって事か。変態は死んでも治らないって訳ね。
「分かった、しないよ。嫌われたくないからね。でも凄く興味があって、めっちゃ我慢してるって事だけは忘れないでほしいな。それはもうね」
圧……
「冗談だよ、安心して」
どの部分が?
やっぱりこの人は転生しても計り知れない。
「俺とセキレイは前世でも今世でも血縁者だけど、あいつにはそんな趣味ないのかなぁ?」
「変態趣味ですか?」
「めっちゃズバッと言うじゃん」
「無いと思いますよ。ブルマの体操着を着た巨乳が大運動会する感じのは好きみたいですけど」
「え、なにそれ怖っ」
風斗さんがドン引きするのも解らないでもない。セキレイさんは見た目も中身もカタブツで何にも興味無さそうなくせしてそういうコアなシチュエーションが好きだっていうギャップがいっそ不気味なのだろう。分かります分かります。
「ブルマは解らないですけど、巨乳、というか爆乳は好きみたいですよ。多分、挟まれたいのかと」
「いやいや挟みたいの間違いだよ」
「は?」
何のハナシ?
「なんでも。でも近親相姦物が趣味じゃなくて良かったよ」
と言って風斗さんは私の胸板を人差し指でトントンと叩いた。
「それは……」
風斗さんは私とセキレイさんの仲を案じているって事だよね?
「なんでそんな事を言うんですか?」
「だから、兄妹間の結婚は犯罪ではないけど法律で認められていないだけで恋愛は自由なんだよ。それに転生して翡翠は自由の身になったんだ。セキレイにとられてもおかしくないかなって」
「それで?」
「セキレイは翡翠を大事にしてるし、二人が恋に落ちても俺には止める権利が無い。でも近親相姦については反対だなって。全てにおいて良い結末にならないから」
近親相姦か。口にするのも憚られるような忌まわしい言葉だ。そんな言葉を聞いただけで気が滅入る。
「恋に落ちるだなんて、私には風斗さんがいるのに」
「じゃあ俺がいなかったらどうなってた?」
「どうにもならないですよ、ずっと兄妹のまま。そのまま人生を終えるのかなって」
「他の人の事は考えなかったんだね」
「えっ、まあ、そうですね」
風斗さんがいなかった時はセキレイさん以外の事は考えつかなかった。
「あのね翡翠、ひとつ話を聞いてほしいんだけど」
「え?」
急に真面目な顔をして改まって、なんだろう?
「本当は俺がここへ来た理由はアパートの大規模修繕工事が理由じゃないんだ」
「渡辺家を乗っ取りに来たんですか?」
「それもある」
あるんだ。
「それもあるけど、本当の目的はまた別のところにあって、話は俺が神に遭遇した時まで遡る」
「風斗さんも転生の時に神様と契約したんですか?」
あれを契約と呼んでいいかは別として。
「したよ。聞きたい?」
「聞かせて下さい」
私は上体を風斗さんの方に向け、前のめりで聞き入る。
「俺は転生の際、神から二つの選択肢を提示された。一つは翡翠のいない世界で一生をまっとうする人生」
つまり風斗さんは一つ目の選択肢は選ばなかったって事か。そんなのを聞いたら胸が熱くなるに決まってるじゃないか。
私は感極まってちょっとだけじんときた。
風斗さんは落ち着いた様子で尚も続ける。
「もう一つは翡翠もいるけどセキレイもいて、ハタチで亡くなる人生」
「え……?」
今、ハタチで亡くなるって、言っ……た?
「えっ?えっ?」
聞き間違い?
ハタチって、風斗さんは大学生で、ナンサイだっけ?
私は動揺して起き上がり、目的も無くバタバタと宙で両手を彷徨わせた。
選択肢は二つで、今、こうして風斗さんが現世にいるって事は間違いなく後者を選択した訳で、風斗さんは──
──死ぬの?
「イテテテテ……か、体がつりました」
「えっ、大丈夫?」
風斗さんが添い寝するように私に体を寄せ、心配そうに顔を覗き込んでくる。相変わらず綺麗な顔立ちで尚更緊張した。
「少しそっとしてもらえれば治ります」
前世では何度となく風斗さんと体を合わせ、あられもない姿で凌辱されたのに、転生したというだけでこんなにも緊張するなんて……
「そんなに怖い?」
風斗さんはちょっとショックそうに言った。
「あっ、いえいえ、なんか久しぶり過ぎて……」
「緊張しちゃった?」
「はい」
嘘も方便。やっぱり少し怖くもある。それにすぐ外にセキレイさんがいるのかと思うと気が気ではない。はからずも小声になってしまう。
「俺も」
「え、意外」
「そりゃ人間だからね、緊張もするよ」
「そんな風には見えないですけど」
前世からの王様の品格というか、堂々たるオーラは現在の風斗さんをも大きく見せていた。
「俺の左胸、触ってみなよ」
そう言って風斗さんは私の手を取ろうとしたが、私はそれを軽くかわす。
別に風斗さんと色っぽい事をするのが嫌な訳ではないが、外にいるセキレイさんが気になってそれどころではない。
「や、それはいいです」
「え、断っちゃうんだ」
「はい」
「翡翠って結構冷めてるよね」
「自覚は無いですけど、自制心はある方かと」
「そう、セキレイが気になる?」
「いえ、そんな事は……」
「別に責めたりしないから」
「だってすぐそこに双子のお兄さんがいると思ったら気にならない方がおかしいじゃないですか」
「双子のお兄さん?」
風斗さんは涅槃像の体勢をとりながら仰向けだった私の胸板に手を乗せてそこをポン、ポン、と断続的に優しく音頭をとった。
なんか眠くなりそうだな。
「いや、誰がいても気になりますけど」
「特にセキレイにはベッドでイチャイチャしてる事を知られたくないだろ?」
「そんな、セキレイさんは元調教師で私達の濡れ場まで見届けた人ですよ?」
「じゃあ気にしなきゃいいじゃん」
風斗さんからニコニコと鋭い指摘を入れられ、私は頷くしかなかった。
「う……そうですよね」
なんか丸め込まれてるなぁ。いつだって私はこの人には逆らえない。それが例え普通の大学生ででもだ。
「大丈夫だよ、気乗りしないみたいだから無理矢理したりしないから。たださ、朝までこうしてくっついていたい。それも駄目かな?」
「いえ、私もその方が落ち着きます」
私はあからさまにホッとしてしまい、風斗さんに困り笑いされた。
「ま、いいけどさ」
「すみません」
「本当は足首に重りを付けた状態で三角木馬に乗せてさ、この小さなお尻を鞭で打ちたいんだけどね」
『この』というところで風斗さんから横尻を触られ、私は一本の棒の如くシャキーンと体を硬くする。
三角木馬というのはそもそも拷問器具じゃないですかあ。
「ハハ、またつるよ?」
「転生してもそういうの好きなんですか?」
「今世になってからはまだしてないけど、機会があればしたいかなって。勿論、翡翠の同意があればね」
「無いものと思って下さい」
というか、前世の時と話が違くないか?
最終的には好きだから傷付けたくないって事に纏まったと思ったけど、人の性癖はそうそう変えられないって事か。変態は死んでも治らないって訳ね。
「分かった、しないよ。嫌われたくないからね。でも凄く興味があって、めっちゃ我慢してるって事だけは忘れないでほしいな。それはもうね」
圧……
「冗談だよ、安心して」
どの部分が?
やっぱりこの人は転生しても計り知れない。
「俺とセキレイは前世でも今世でも血縁者だけど、あいつにはそんな趣味ないのかなぁ?」
「変態趣味ですか?」
「めっちゃズバッと言うじゃん」
「無いと思いますよ。ブルマの体操着を着た巨乳が大運動会する感じのは好きみたいですけど」
「え、なにそれ怖っ」
風斗さんがドン引きするのも解らないでもない。セキレイさんは見た目も中身もカタブツで何にも興味無さそうなくせしてそういうコアなシチュエーションが好きだっていうギャップがいっそ不気味なのだろう。分かります分かります。
「ブルマは解らないですけど、巨乳、というか爆乳は好きみたいですよ。多分、挟まれたいのかと」
「いやいや挟みたいの間違いだよ」
「は?」
何のハナシ?
「なんでも。でも近親相姦物が趣味じゃなくて良かったよ」
と言って風斗さんは私の胸板を人差し指でトントンと叩いた。
「それは……」
風斗さんは私とセキレイさんの仲を案じているって事だよね?
「なんでそんな事を言うんですか?」
「だから、兄妹間の結婚は犯罪ではないけど法律で認められていないだけで恋愛は自由なんだよ。それに転生して翡翠は自由の身になったんだ。セキレイにとられてもおかしくないかなって」
「それで?」
「セキレイは翡翠を大事にしてるし、二人が恋に落ちても俺には止める権利が無い。でも近親相姦については反対だなって。全てにおいて良い結末にならないから」
近親相姦か。口にするのも憚られるような忌まわしい言葉だ。そんな言葉を聞いただけで気が滅入る。
「恋に落ちるだなんて、私には風斗さんがいるのに」
「じゃあ俺がいなかったらどうなってた?」
「どうにもならないですよ、ずっと兄妹のまま。そのまま人生を終えるのかなって」
「他の人の事は考えなかったんだね」
「えっ、まあ、そうですね」
風斗さんがいなかった時はセキレイさん以外の事は考えつかなかった。
「あのね翡翠、ひとつ話を聞いてほしいんだけど」
「え?」
急に真面目な顔をして改まって、なんだろう?
「本当は俺がここへ来た理由はアパートの大規模修繕工事が理由じゃないんだ」
「渡辺家を乗っ取りに来たんですか?」
「それもある」
あるんだ。
「それもあるけど、本当の目的はまた別のところにあって、話は俺が神に遭遇した時まで遡る」
「風斗さんも転生の時に神様と契約したんですか?」
あれを契約と呼んでいいかは別として。
「したよ。聞きたい?」
「聞かせて下さい」
私は上体を風斗さんの方に向け、前のめりで聞き入る。
「俺は転生の際、神から二つの選択肢を提示された。一つは翡翠のいない世界で一生をまっとうする人生」
つまり風斗さんは一つ目の選択肢は選ばなかったって事か。そんなのを聞いたら胸が熱くなるに決まってるじゃないか。
私は感極まってちょっとだけじんときた。
風斗さんは落ち着いた様子で尚も続ける。
「もう一つは翡翠もいるけどセキレイもいて、ハタチで亡くなる人生」
「え……?」
今、ハタチで亡くなるって、言っ……た?
「えっ?えっ?」
聞き間違い?
ハタチって、風斗さんは大学生で、ナンサイだっけ?
私は動揺して起き上がり、目的も無くバタバタと宙で両手を彷徨わせた。
選択肢は二つで、今、こうして風斗さんが現世にいるって事は間違いなく後者を選択した訳で、風斗さんは──
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