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献上の儀当日(氷朱鷺2)
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コンコンッ
ノックの音がしてすぐ、ドアが開けられた。
「エデン?」
俺はベッドから頭だけを起こして入室して来た人物に話しかける。
エデンは杵塚と来るはずが、天蓋の向こうには女性1人分の影しか無い。
「エデン?」
もう一度影に声をかけたが返答は無い。
様子がおかしいと、俺が上体を起こすと、ベッドサイドまで来た影が天蓋を開けた。
「ヤサカ」
感情の無い、冷たい表情でヤサカがこちらを見下ろしていた。
「妻の妊娠中に献上の儀をするなんてね。いえ、寧ろ、妻の妊娠中にこそ浮気をする男は多いみたいだけど」
夢から覚めたみたいだ。
「ここじゃそれが浮気にならない」
だからこそ王室の献上品制度が廃れないのだ。
第二夫人、第三婦人……愛人、お気に入り、お手つき、ワンナイト、その全てが王室内では公式に存在する。
「モラルは守るべきじゃない?」
ヤサカのガラスの様な目に蔑まれながら、俺は後ろに両手を着いて短くため息をつく。
「モラルを守っていたら、貴方は今頃妊娠なんてしていなかった」
言い合いなんて面倒だが、ここはお互い様で良くないか?
「これは人工授精よ。夫が抱いてくれないから。それにこの子は貴方の子でしょう?何しろ貴方がそう言ったんだから」
「そうですね。ぐうの音も出ませんよ」
水掛け論は事前に回避したいものだ。
「多摩川エデンは形式的な献上品だと言ってなかった?」
「形式的な献上品の、形式的な献上の儀ですよ」
女とホテルには入ったがやっていないと弁解する夫みたいだなと思った。
この場合、実際、やってはいないけど、ヤル気があった事の否定は難しい。
「献上の儀に形式的なんてのはないわ。だって献上の間はヤらないと出られない部屋なんですもの」
「ぐうの音も出ませんよ」
完全に分が悪い。言い訳のしようがない。白旗だ。
「ここに多摩川エデンが来ると思って楽しみに待ってたんでしょう?」
ヤサカは自分の事を棚に上げ、まるで侮辱するみたいに俺を皮肉った。
「そうですね」
しかしもう、ここまできて隠し立ては出来ないか。
俺は遂に観念した。
それはもう、天にも昇る思いだったさ。それが今は地獄に突き落とされたみたいだ。
「レスだからEDにでもなったのかと思いきや、とんだ侮辱だわ」
「……」
俺がここでヤサカに捨てられたらエデンはどうなる?
ここだから俺はエデンを囲えたのに、彼女が野に放たれたら完全に逃げられる。それも献上品の役を解かれたエデンは杉山さんの加護が無ければどっかに売られてしまうだろう。
「正妻には出来ない事を代わりに愛人にやるのが男のさがじゃないですか」
こんな事、言いたくはなかったけど、エデンを手中に収めておくにはこう言うしかなかった。
「出来ない事って?」
ヤサカが呆れた様子で両腕を組んだ。
「天下の王女様を凌辱して傷を負わせたら文字通り首が飛ぶでしょう?そう思うと緊張してたたないんですよ」
恥も外聞もどうだっていい。
「氷朱鷺はドSって事?」
「自分の加虐性を止められないんです。だから、元調教師で、指南をしていたエデンがちょうど良かった。何しろ俺の性癖を1番理解しているから」
「それで納得しろと?」
「それが真実ですから、後はもう煮るなり焼くなり」
「……多摩川エデンを愛してる訳じゃないの?」
「そんな、俺はただ、愛故に貴方を抱けないだけなのに」
ほんと、こんな事、嘘でも言いたくなかったのに。
「調子がいいわね。分かったわ。私が出産したら、私の尻を打つ事を許すわ」
ヤサカはまだ疑心暗鬼ではいるようだったが、この場は何とか収めてくれたようだった。
「それで、エデンは何処に行ったんですか?」
「あぁ、あの人なら今頃、兄に献上されてるでしょうね」
ヤサカが楽しそうに笑った。
「──え?」
エデンが春臣に献上?
「それはどういう事ですか?」
俺は何となく内情が透けて見えて腸が煮えくり返えりそうだった。
「兄が選んだ献上品と多摩川エデンをすり替えたの」
やっぱり。
クソ腹が立つ。
俺は話の途中でベッドから降り、足音もうるさく出口へ向かった。
「何をそう怒ってるの?貴方の恩人にしてみたらこの上もない絶好のチャンスじゃない。貴方がわざわざ恩人を囲ってあげなくても充分自立出来ると思うけど?」
だからじゃないか。
もしエデンが春臣に見初められようものなら、俺の手の届かない存在になる。
それだけは阻止しないと。
「恩人には、俺が恩を返さないと意味が無いんですよ」
俺は感情を押し殺して言った。
早く、早くエデンを春臣の所から救い出してやらないと。エデンだって見知らぬ権力者のいいようにはなりたくない筈だ。怖くて震えているかもしれない。エデンは俺じゃないと駄目なのに。エデンに必要なのは俺なのに。エデンに触れていいのは俺だけなのに。俺以外がエデンに触れるなんて気がふれそうだ。エデンは俺の物なのに。
「へえ、それで、話の途中で何処へ行くつもり?まさか多摩川エデンを連れ戻しに?」
「……」
背後から嫌味な言葉を投げつけられ、俺の、ドアノブを握る手に力が入る。
「無理よ。献上中は何人も儀式の間に入る事は許されない。いくら王女の王配でも、第1王子の献上の儀を邪魔したら無事では済まされないし、多摩川エデンだって、やらない限りは出してもらえないのよ」
そんなもの、分かってる。
「誰かが画策した間違いを正しに行くだけです」
俺は焦燥感からじりじりと身を焦がし、大きな音をたてて部屋を出た。
一刻も早くエデンを助けてやらないと。
俺は自分のいるフロアからエレベーターに乗り、最上階に最も近い献上フロアの階数ボタンを押すも、ランプがつかない。
「鍵が無いと上に行けないのか」
俺はすぐにエレベーターを降り、非常階段に出ようとするも、非常階段へ続く重い防火扉が開かない。
「くそ、献上中だからか?」
早くしないとエデンが!
「くそ、くそくそくそっ!!!!!!」
開かないのは分かっていたが、俺はガチャガチャと防火扉のノブを乱暴に回し続けた。
それから俺はエデンに会えないまま午後の公務で春臣を捕まえた。
「俺の献上品に手を出すなんて、どういうつもりですかっ‼」
春臣の姿を見つけるなり、俺は彼の腕を引っ掴んで問いただす。
「こんな通路で大声を出すなんてお前らしくないんじゃないか?」
そう言って春臣は互いの側近達に目配せすると、彼らに席を外させた。
「そもそも献上品は献上品だ。王族なら早い者勝ちだし、序列でいけば俺が優先して手に入れられる」
「何の事でもマナーはあって然りだ!」
「いやいや、ここでは俺がルールだからな」
春臣は俺の手を振り払い、体全体をこちらに向ける。
「エデンは絶対に貴方を受け入れません」
「お前と一緒にするな。何も俺は無理矢理献上の儀をエデンに強要した訳じゃない」
そんなもの、誰が信じるか。だってエデンはエデンじゃなくて、カザンがエデンを取り仕切っているんだから。エデン本人の意志じゃない。だから儀式を受けたのはカザンであってエデンじゃない、と俺は自分さえ誤魔化した。
「エデンは二重人格なんです。きっと目を覚ましたら貴方なんか受け入れない」
「まったくな言い分だな」
春臣は呆れて深く息を吐いた。
「エデンは何処ですかっ⁉エデンを返して下さい!!」
俺は勢いに任せて春臣に掴み掛かる。
他人相手にここまでみっともなく取り乱したのは今日が初めて、か、杉山さん以来かもしれない。
「俺は別に権力を傘に着るつもりは無いが、お前、自分の立場を分かっているのか?」
春臣から睨みつけられたが、腹立たしいだけで俺に恐れなど無かった。
「分かってますよ。でもいつか、立場が逆転する可能性だってある」
それには長い年月がかかるかもしれない。けれど何があろうと絶対にエデンは取り返す。
「見上げた執念だな。もはやストーカーじゃないか」
「ストーカー?生温い形容をするんですね」
「ストーカーを越えるものがあるのか?」
春臣はちょっと笑っていた。
嫌だな、俺は本気なのに。
「俺はね──」
言っても無駄か。
俺は春臣を開放した。
表面上だけでも少し落ち着こう。
「いえ、貴方はエデンの一部しか見えていないのに彼女を手に入れたつもりですか?」
どうせ春臣の相手をしたのはカザンに決まっている。性行為にトラウマを持つエデンが、エデンのままでいられる訳がないんだ。こいつはカザンにほだされて利用されているだけだろ。
「全てを知ったら嫌いになると?だがエデンの全てを知っているお前が嫌いになれないのなら、当然俺も嫌いになれないだろ」
ぐう正論。
「二重人格がどうのとか、知った事じゃないが、少し変なところがあった方が可愛げがある」
少し、か?
思わず突っ込みたくなる。
「エデンは貴方の後宮にいるんでしょう?話がある。会わせて下さい」
「会ってどうする?強引に連れ帰るつもりだろ?」
「強引?まさか、助け出すだけです」
「話だけじゃないじゃないか。それにエデンはお前を怖がってる。それはお前が1番分かっているはずだが?」
「だから、エデンは二重人格で、狡賢い一面があって……」
駄目だ、平行線だ。
「氷朱鷺、お前ももう結婚して子供も出来たんだ、ヤサカを大事にしてやれ」
そう言うと春臣は俺の肩をポンと叩いて先に行ってしまった。
くそ、どうにかしてエデンを助け出さないと、このままだとエデンが完全に春臣の物になってしまう。エデンさえ手に入れられれば、後は富も権力もかなぐり捨ててもいい。
エデンさえ手に入れられれば──
ノックの音がしてすぐ、ドアが開けられた。
「エデン?」
俺はベッドから頭だけを起こして入室して来た人物に話しかける。
エデンは杵塚と来るはずが、天蓋の向こうには女性1人分の影しか無い。
「エデン?」
もう一度影に声をかけたが返答は無い。
様子がおかしいと、俺が上体を起こすと、ベッドサイドまで来た影が天蓋を開けた。
「ヤサカ」
感情の無い、冷たい表情でヤサカがこちらを見下ろしていた。
「妻の妊娠中に献上の儀をするなんてね。いえ、寧ろ、妻の妊娠中にこそ浮気をする男は多いみたいだけど」
夢から覚めたみたいだ。
「ここじゃそれが浮気にならない」
だからこそ王室の献上品制度が廃れないのだ。
第二夫人、第三婦人……愛人、お気に入り、お手つき、ワンナイト、その全てが王室内では公式に存在する。
「モラルは守るべきじゃない?」
ヤサカのガラスの様な目に蔑まれながら、俺は後ろに両手を着いて短くため息をつく。
「モラルを守っていたら、貴方は今頃妊娠なんてしていなかった」
言い合いなんて面倒だが、ここはお互い様で良くないか?
「これは人工授精よ。夫が抱いてくれないから。それにこの子は貴方の子でしょう?何しろ貴方がそう言ったんだから」
「そうですね。ぐうの音も出ませんよ」
水掛け論は事前に回避したいものだ。
「多摩川エデンは形式的な献上品だと言ってなかった?」
「形式的な献上品の、形式的な献上の儀ですよ」
女とホテルには入ったがやっていないと弁解する夫みたいだなと思った。
この場合、実際、やってはいないけど、ヤル気があった事の否定は難しい。
「献上の儀に形式的なんてのはないわ。だって献上の間はヤらないと出られない部屋なんですもの」
「ぐうの音も出ませんよ」
完全に分が悪い。言い訳のしようがない。白旗だ。
「ここに多摩川エデンが来ると思って楽しみに待ってたんでしょう?」
ヤサカは自分の事を棚に上げ、まるで侮辱するみたいに俺を皮肉った。
「そうですね」
しかしもう、ここまできて隠し立ては出来ないか。
俺は遂に観念した。
それはもう、天にも昇る思いだったさ。それが今は地獄に突き落とされたみたいだ。
「レスだからEDにでもなったのかと思いきや、とんだ侮辱だわ」
「……」
俺がここでヤサカに捨てられたらエデンはどうなる?
ここだから俺はエデンを囲えたのに、彼女が野に放たれたら完全に逃げられる。それも献上品の役を解かれたエデンは杉山さんの加護が無ければどっかに売られてしまうだろう。
「正妻には出来ない事を代わりに愛人にやるのが男のさがじゃないですか」
こんな事、言いたくはなかったけど、エデンを手中に収めておくにはこう言うしかなかった。
「出来ない事って?」
ヤサカが呆れた様子で両腕を組んだ。
「天下の王女様を凌辱して傷を負わせたら文字通り首が飛ぶでしょう?そう思うと緊張してたたないんですよ」
恥も外聞もどうだっていい。
「氷朱鷺はドSって事?」
「自分の加虐性を止められないんです。だから、元調教師で、指南をしていたエデンがちょうど良かった。何しろ俺の性癖を1番理解しているから」
「それで納得しろと?」
「それが真実ですから、後はもう煮るなり焼くなり」
「……多摩川エデンを愛してる訳じゃないの?」
「そんな、俺はただ、愛故に貴方を抱けないだけなのに」
ほんと、こんな事、嘘でも言いたくなかったのに。
「調子がいいわね。分かったわ。私が出産したら、私の尻を打つ事を許すわ」
ヤサカはまだ疑心暗鬼ではいるようだったが、この場は何とか収めてくれたようだった。
「それで、エデンは何処に行ったんですか?」
「あぁ、あの人なら今頃、兄に献上されてるでしょうね」
ヤサカが楽しそうに笑った。
「──え?」
エデンが春臣に献上?
「それはどういう事ですか?」
俺は何となく内情が透けて見えて腸が煮えくり返えりそうだった。
「兄が選んだ献上品と多摩川エデンをすり替えたの」
やっぱり。
クソ腹が立つ。
俺は話の途中でベッドから降り、足音もうるさく出口へ向かった。
「何をそう怒ってるの?貴方の恩人にしてみたらこの上もない絶好のチャンスじゃない。貴方がわざわざ恩人を囲ってあげなくても充分自立出来ると思うけど?」
だからじゃないか。
もしエデンが春臣に見初められようものなら、俺の手の届かない存在になる。
それだけは阻止しないと。
「恩人には、俺が恩を返さないと意味が無いんですよ」
俺は感情を押し殺して言った。
早く、早くエデンを春臣の所から救い出してやらないと。エデンだって見知らぬ権力者のいいようにはなりたくない筈だ。怖くて震えているかもしれない。エデンは俺じゃないと駄目なのに。エデンに必要なのは俺なのに。エデンに触れていいのは俺だけなのに。俺以外がエデンに触れるなんて気がふれそうだ。エデンは俺の物なのに。
「へえ、それで、話の途中で何処へ行くつもり?まさか多摩川エデンを連れ戻しに?」
「……」
背後から嫌味な言葉を投げつけられ、俺の、ドアノブを握る手に力が入る。
「無理よ。献上中は何人も儀式の間に入る事は許されない。いくら王女の王配でも、第1王子の献上の儀を邪魔したら無事では済まされないし、多摩川エデンだって、やらない限りは出してもらえないのよ」
そんなもの、分かってる。
「誰かが画策した間違いを正しに行くだけです」
俺は焦燥感からじりじりと身を焦がし、大きな音をたてて部屋を出た。
一刻も早くエデンを助けてやらないと。
俺は自分のいるフロアからエレベーターに乗り、最上階に最も近い献上フロアの階数ボタンを押すも、ランプがつかない。
「鍵が無いと上に行けないのか」
俺はすぐにエレベーターを降り、非常階段に出ようとするも、非常階段へ続く重い防火扉が開かない。
「くそ、献上中だからか?」
早くしないとエデンが!
「くそ、くそくそくそっ!!!!!!」
開かないのは分かっていたが、俺はガチャガチャと防火扉のノブを乱暴に回し続けた。
それから俺はエデンに会えないまま午後の公務で春臣を捕まえた。
「俺の献上品に手を出すなんて、どういうつもりですかっ‼」
春臣の姿を見つけるなり、俺は彼の腕を引っ掴んで問いただす。
「こんな通路で大声を出すなんてお前らしくないんじゃないか?」
そう言って春臣は互いの側近達に目配せすると、彼らに席を外させた。
「そもそも献上品は献上品だ。王族なら早い者勝ちだし、序列でいけば俺が優先して手に入れられる」
「何の事でもマナーはあって然りだ!」
「いやいや、ここでは俺がルールだからな」
春臣は俺の手を振り払い、体全体をこちらに向ける。
「エデンは絶対に貴方を受け入れません」
「お前と一緒にするな。何も俺は無理矢理献上の儀をエデンに強要した訳じゃない」
そんなもの、誰が信じるか。だってエデンはエデンじゃなくて、カザンがエデンを取り仕切っているんだから。エデン本人の意志じゃない。だから儀式を受けたのはカザンであってエデンじゃない、と俺は自分さえ誤魔化した。
「エデンは二重人格なんです。きっと目を覚ましたら貴方なんか受け入れない」
「まったくな言い分だな」
春臣は呆れて深く息を吐いた。
「エデンは何処ですかっ⁉エデンを返して下さい!!」
俺は勢いに任せて春臣に掴み掛かる。
他人相手にここまでみっともなく取り乱したのは今日が初めて、か、杉山さん以来かもしれない。
「俺は別に権力を傘に着るつもりは無いが、お前、自分の立場を分かっているのか?」
春臣から睨みつけられたが、腹立たしいだけで俺に恐れなど無かった。
「分かってますよ。でもいつか、立場が逆転する可能性だってある」
それには長い年月がかかるかもしれない。けれど何があろうと絶対にエデンは取り返す。
「見上げた執念だな。もはやストーカーじゃないか」
「ストーカー?生温い形容をするんですね」
「ストーカーを越えるものがあるのか?」
春臣はちょっと笑っていた。
嫌だな、俺は本気なのに。
「俺はね──」
言っても無駄か。
俺は春臣を開放した。
表面上だけでも少し落ち着こう。
「いえ、貴方はエデンの一部しか見えていないのに彼女を手に入れたつもりですか?」
どうせ春臣の相手をしたのはカザンに決まっている。性行為にトラウマを持つエデンが、エデンのままでいられる訳がないんだ。こいつはカザンにほだされて利用されているだけだろ。
「全てを知ったら嫌いになると?だがエデンの全てを知っているお前が嫌いになれないのなら、当然俺も嫌いになれないだろ」
ぐう正論。
「二重人格がどうのとか、知った事じゃないが、少し変なところがあった方が可愛げがある」
少し、か?
思わず突っ込みたくなる。
「エデンは貴方の後宮にいるんでしょう?話がある。会わせて下さい」
「会ってどうする?強引に連れ帰るつもりだろ?」
「強引?まさか、助け出すだけです」
「話だけじゃないじゃないか。それにエデンはお前を怖がってる。それはお前が1番分かっているはずだが?」
「だから、エデンは二重人格で、狡賢い一面があって……」
駄目だ、平行線だ。
「氷朱鷺、お前ももう結婚して子供も出来たんだ、ヤサカを大事にしてやれ」
そう言うと春臣は俺の肩をポンと叩いて先に行ってしまった。
くそ、どうにかしてエデンを助け出さないと、このままだとエデンが完全に春臣の物になってしまう。エデンさえ手に入れられれば、後は富も権力もかなぐり捨ててもいい。
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