上 下
50 / 73

王子と殺し屋

しおりを挟む
 翌朝、俺は早朝から国定公園の兎の罠がある付近に来ていた。
「チッ、頭が痛い」
 俺に古すぎるワインは合わない。
 そしてこんな朝早くから森に分け入っている俺はどうかしている。
「約束した訳でもないから、あいつが来るとも限らないのに」
 俺は前回と同じ切り株に腰掛け、持参したノートパソコンで資料の確認を行う。
 俺はこんな所で何をやってるんだか。
 しかも二日酔いで。
 昨日の今日で特定の人物に会いたくなるなんて初めてだ。
「ふっ、あいつ、面白いからな」
 俺は人がいない事をいい事に堂々と思い出し笑いをする。
「次期王を消すとか笑」
 しかも元スナイパーが言うとか、リアル過ぎていっそシュールだろ。
「もう少し話を聞いてみたい」

「誰のですか?」

 いきなり後方から殺し屋の声がして俺の心臓はひっくり返る。
「おわっ、びっくりした、いたのか?」
 振り返るとそこに黒いビニール袋を持った殺し屋が全身黒尽くめの出で立ちで立っていた。
「いえ、来たんです」
 足音ひとつしなかった。疑ってはいなかったが、元スナイパーというのは本当なんだな。
「1人でニヤけて、どうしたんですか?」
 ……見てたのか?
 小さい頃から、威厳を保つ為に人前ではあまり歯を見せて笑うなと躾けられてきたものを、ガッツリ見られてしまった、というか、全く気配がしなかったが、こいつはいつから俺を見てたんだ?
「やっぱり、来たんじゃなくて、いたんじゃないか。早く話し掛けろよ」
 油断も隙もないな。おかげで恥ずかしいところを見られた。
「狙撃する時は息を殺して対象の動きを観察してから撃ちますから」
「狙撃すな」
 殺し屋はこれをピクリとも笑わず真顔で言うのだから逆に可笑しくて堪らない。
「こんな所に来てまでお仕事ですか?それとも貴方は大自然で美味しい空気を吸いながら仕事がしたい、という意識高い系のビジネスマンだとか?」
「いや、お前を待ってた。待ってたついでに仕事をしていた」
 俺はパソコンを閉じ、背負っていたリュックにそれをしまう。
「もの好きもいたものですね。献上品相手に一目惚れとかくれぐれも止めて下さいね」
「分かってるって」
 失笑するかと思った。片手で口元を押さえていなかったらいかれてた。
 そうか、こいつは俺が誰なのか分かっていないのか。逆に何だと思っているんだろう?
「お前、俺を誰だと思ってるんだ?」
「仕入れ担当」
 即答だった。
 シイレタントウ?
 鷹狩を、ジビエの仕入れだと認識しているのか?
 俺はまた片手で口元を押さえる。
 ツボだな。うん、ツボだ。
「はたまた王室で飼われている鷹の調教師ですかね?」
 殺し屋の『ははーん、さては──』という仕草や言い方が地味にジワる。
「そんな感じだ」
 面白いから正体は隠しておこう。それに殺し屋は曲がりなりにも献上品だ。俺の正体を知れば俺を色眼鏡で見るかもしれない。
「やっぱり」
 そう言ってハニカム殺し屋が子供っぽくてかわいい。
「兎は捕れたか?」
 俺がそう聞くと殺し屋は徐ろに手にしていた黒いビニール袋を掲げて見せた。
 その中に兎が?
 怖っ。
「捕れて、さっき川で血抜きをして皮を剥いだんで戻って料理しま──」
「待て待て」
 俺は引き返そうとした殺し屋を食い気味に引き止めた。
「は?」
「この先にコテージがあるから、そこで捌かないか?」
 そんな提案で俺達は道中、他愛も無い話(茸や山菜、野草の話)をしながら王室所有のコテージに向かった。
 コテージは、一家族が余裕で滞在出来るくらいの規模で、中は鹿の角や暖炉のある渋めの内装になっている。窓からは目の前に広がる湖が一望でき、今のシーズンはカルガモの親子がチラホラ見れた。
「お前、野草とかにも詳しいんだな」
 目から鱗の情報ばかりだった。こんなに若いのに、生きる為の知識が豊富で素直に尊敬する。
「そりゃあ、戦地では食材を現地調達していましたから。それに毒草の知識があれば後々役に立ちますからね」

 何に?

 殺し屋が採取したあの葉っぱは大丈夫なやつなんだろうか?
 キッチンの流しにある謎の葉っぱが気になる。
「市街戦の時は人の肉も食べましたけど」

 ん?

 聞き間違いか?
 何か今、物騒な事を言わなかったか?
 それで、その、既に捌かれている兎の肉だと言う肉片は本当に兎の肉なのか?
「冗談です」
「良かった」
 ほんとに。
「心配しなくても、今日は毒草や人肉は使いませんから」

 今日『は』

 引っ掛かるな。
「それはそうと、服が汚れるからエプロンくらいしろ」
 俺がそう言ってキッチン脇に掛けてあったエプロンを流しに立つ殺し屋に後ろから掛けてやると、彼女がハッとして振り返った。
「え?」
 今、物凄い殺気がした、
「あ、すいません。後ろから首を掻っ切られるかと思ったんです」
「あぁ」
 納得がいった。
 殺し屋は子供の頃から戦場に立っていたんだ、後ろから不用意に近付かれたらそうなるわな。
「私が包丁を握る前で良かったですね」
 ほんとにな。
 でも不思議なものだ。俺の権力無しにしても、見た目に釣られて寄ってくる女は多かった。それが近付いただけで拒絶されようとは、寧ろ興味が湧く。
 こんなに華奢で痩せているのに、触れたら逆に首を持ってかれるのか……

 いや、どんな献上品だよ。

 俺は手際良く調理する殺し屋のうなじを眺め、つくづくそう思った。
 手を出すと切りつけてくる献上品とは──
 こいつは何で献上品になろうと思ったんだ?
「なあ」
「あ、お皿を出して下さい」
「……」
 俺は黙って言われた通りにする。
 こいつは俺が第1王子と知ったらどんな顔をするんだ?

『あぁ、そうでしたか』

 こんなもんか。
 なんか想像できた。
「おい」
「はい?」
 俺が殺し屋の背中に話し掛けると、彼女は手を止めずに背中越しで返した。
「お前はなんで献上品になろうと思ったんだ?」
「騙されました」
「えっ」
 想定外の答えに思わず声が出る。
「騙されたんです」
「親に売られたのか?」
 そういう家庭も多いと聞く。
「親には戦場に売られて、そっから調教師になったんですけど、調教してた奴がどえりゃー悪い奴で、そいつのせいで気付いたら献上品になってました」
 何だ、そのサクセスストーリー。嘘みたいな人生を歩んできてるな。
「そんなのあり得るのか?」
 俄には信じ難い。
「いや、でも、私の言う事なんてあまり信用しちゃ駄目ですよ。7割りハッタリ、5割でまかせですから」
「120パー嘘だよな?」
 どこまで信じていいんだ。
「しかも二重人格」
「お前、最悪だな」
「女は皆二重人格ですから、信じちゃ駄目ですよ。パコッてる時なんかは全力で演技ですしね」
 パコッ……えっ?
 女の口から『パコッてる』なんて造語を聞く日がくるとは、しかもそんな下劣な話をよくそんなすました顔で言えるな。
「夢を壊すなよ」
「そこら辺、献上品なんかは演技指導もありますし」
 おい、言及するな。
「女優じゃないか」
「女は皆女優。男は皆狼。それで成り立ってるんじゃないですか?」
「冷めてるな」
 こいつはなんか、現実とは乖離しているような、常に他人事みたいに現実世界を傍観している節がある。
「貴方も同じでしょう?女に変に期待してない」
「まあな」
 こいつは俺と似ているのかも。
「女の事はビジネスパートナーくらいに思っとけばいいんですよ」
 殺し屋は謎の葉っぱのサラダと兎の唐揚げ、兎のソテーを皿に盛り付け、まるで調理の終わりを知らせるみたいに『カンッカンッ』とフライパンの端に菜箸を打ち付けた。
 ニンニクやバターの良い薫りがする。
「その心は?」
「近しいけれど、信用してはいけない相手」
「全然上手くない」
「ですよね。とどの詰まりは、誰も信用するなって事です」
 達観してる。俺も、王室にいると、そういった事は常々思い知らされていた。
「それは納得」
「さあ、何かの葉っぱサラダと、兎っぽい肉のコングラッチュレーションが出来ましたよ」
「それっぽい名前をつけるな」
「先刻の話を踏まえても、貴方はこれらを美味しくいただけるでしょうか?」
 殺し屋がニヤニヤしながら料理を指差した。
「食べづらいな」
 さてはさっきの話題は全て、この一言の為の伏線だったのか?

 分からん。この女の人間性が全く掴めん。

 だからこそ知りたくなるのか。
 ひょっとして俺はこの摩訶不思議な献上品にその様に仕向けられているとか?
 こんなアホの子に?
 無いな。

 それから、だいぶ疑念はあったが、殺し屋が作った料理をダイニングテーブルで向き合って食べた。

『殺し屋が作った料理』

 凄いパワーワードだ。
 権力争いの渦中にいる俺が食べる料理とは思えないワード。そもそも王室の者は得体の知れない人間の手料理を迂闊に食べたりしないのだけれど、なんか、こいつの料理はやけに食べてみたくなった。
「旨いな。何の臭みもない」
 兎の唐揚げもソテーも、弾力はあるが獣の臭み等は一切無く、シェフが作った物と相違ないくらい美味しかった。サラダも、苦味の中に甘味もあり、唐揚げの油っこさを打ち消してくれる。
「採取した香草を練り込みましたからね、貴方の舌が騙されただけですよ」
「午後は鰻の罠を?」
「はい。鷹匠さんは?」
 鷹匠……
 間違ってはいない、のか?
「俺は──」
 今日中に終わらせたい仕事があったんだが……
「お前についてってもいいか?」
 徹夜すればいいか。
「勿論勿論。お好きですね~」
「何が?」
 全く退屈しないな。
 そんなこんなで2人して国定公園内にある近くの川原へ行き、殺し屋主体で鰻の罠を仕掛け、今日は解散という事になった。
 後はまたあの切り株の所まで戻ると、俺は乗って来たバイクに殺し屋を乗せて城の裏口まで送った。
「なんで裏口?」
「一応、献上品ですから、体裁は保たないと」
「献上品て、恋愛は禁止だけど勉強の為に疑似恋愛は黙認されてると聞いたが?」
 だから献上品は狡賢い奴が多いんだと思う。恋愛ゲームに長けてる。
「私に調教師はいませんけど、私の管理者がうるさい人でして、こんな所を見られたら、縛り付けられて鞭で打たれます」
 管理者とは?
『強いパイプを持つ偉い人』って奴か。
「王室の者以外が献上品に傷をつける行為は犯罪のはずだが?」
 何故なら献上品は王室の所有物だ。その所有物に傷をつけたとなれば罪に問われる。
「はい、九尾の鞭で打たれて、低温蝋燭で蝋を垂らされてヒーヒー言わされるんです」
「それはちょっと話が変わってくるな」
 プレイやん。
 いや、でも、献上品なら夜指南てのがあるからリアルにそういうのがあるのか(゚A゚;)ゴクリ
 こいつはとんでもない事を淡々と語るから何処までが嘘で、何処までが真実か全く分からん。
「とにかく、私の弟も調教師もそいつに殺されましたから」
 なるほど、7割りハッタリ、5割でまかせなんだったっけ。
 掴みどころが無いなあ。
「じゃあ、また明日、ここで」
 俺が当たり前の様にそう言うと、殺し屋は振ろうとした右手をピタリと止めた。
「え?」
「なんだよ?鰻の仕掛けを見に行くだろ?」
「見に行きますけど、鷹匠さんもいらっしゃるとは思わなくて」
 鰻の行く末も気になってはいたが、俺は友達と遊ぶ約束を取り付けた小学生の気持ちでいた。
「嫌なのか?」
 俺は鰻取りが楽しみだったが、まだ会って2日目だし、ちょっと温度差があるのか?
「別にウェルカムですけど、今日と同じ時間に現地集合という事で」
 なんで?
「今だってここまで送ったんだから明日もここでいいだろ?」
 回りくどいな。
「リスクは少なく、利益は大きくが基本です」
 殺し屋は大小を身振り手振りで表現した。
「お前は投資家か」
「とにかく現地集合で」
「管理者か?」
「管理者です」
 何なんだ、その、管理者て。
「関わったら貴方も殺されてしまうかも。では、次週お楽しみに」
 そう言って殺し屋は裏口から城に帰って行った。
「明日、な」
 アニメの次回予告かよ。
 えらい殺し屋に振り回されているが、そのひとつひとつが愉快でヤミツキになる。
 その夜、俺は次の日が楽しみ過ぎて眠れぬのを良い事に徹夜で仕事に没頭した。

 翌朝、俺は徹夜明けでバイクに跨り、現地集合からの、殺し屋と鰻の仕掛けを見に行っていた。
「ここも駄目でしたね」
 全部で5つ仕掛けた内、4つ目の仕掛けにも鰻は引っ掛かっていなかった。
「そうそう捕れるもんじゃないのか?」
「うーん、場所によりますよね。生息数です」
 殺し屋は5つ目の仕掛けの回収に入る。
「まあ、そうか」
 鰻はそこまで好きでもなかったが、殺し屋と天然鰻で蒲焼きを作って食べてみたかった。
「後は日頃の行いですかね」
 俺の熱量とは裏腹に、殺し屋は作業の片手間に会話をしている様だった。
 無気力だなあ。
「悪いのか?」
「それはもう」
 力の入った『それはもう』だな。よっぽどだぞ。
「お前、最低だな」
「いえ、鷹匠さんの」
「おい」
 俺かよ。
「あれ、いや、でも、まさか、よもや、そんな事が……あっ‼」
 いきなり殺し屋が支離滅裂になったかと思うと、彼女は乗っていた岩場からバランスを崩し、川に落ちる直前で俺のシャツの襟元を掴んで俺を道連れにした。
 俺達が川へ落ちた水しぶきと同時に近くで鰻が暴れる水しぶきが上がり、俺と殺し屋は開き直ってずぶ濡れになりながらも鰻を直接手で掴み取った。
 鰻が手の中でヌルヌルウネウネ蠢いて気持ち悪かったが、俺達は大蛇の如き大鰻をバケツに入れてコテージに向かった。
「さ、寒いぃぃぃっ」
 殺し屋が唇を紫にし、両腕を組んで全身を震わせているので俺は大急ぎで暖炉に火を着ける。
「今、着火したから、もう少し待て」
「待てません。私は体を冷やしちゃいけないんです」
 殺し屋は暖炉にべったりくっついていたが、真っ青な顔をして何度も立ったり座ったりを繰り返した。
「仕方ないだろ、ちょっと待っ──」
『てろ』と言おうとして、思わぬ殺し屋が猫みたいに俺の懐に入ってきて言葉を失う。
「ちょっと懐を借りますね。何しろ私は体を冷やしちゃいけないんです」
「いや、いいけど」
 いいのか?
 何となく二つ返事で了承してしまったが、冷えた男女が山のコテージで体を温め合う、というフラグが立ってないか?
 いや、フラグと言うか、フラグそのものか?
「あぁ~温い~温いよ~」
 殺し屋が不満そうに背を丸める。
「文句言うな」
 とは言えこの凍えて震える華奢な体を抱いて温めてやるべきか?
 出会って数日のこの俺が?
 友達みたいな関係なのに?
 そんな事をしたらその後気まずくならないか?
 いや、でも、例えば人によってはトライアル無しでなし崩し的に初対面の献上品と献上の儀をやる王族も結構いる。それと比べたら出会って数日でどうのとかかわいいものじゃないか、て俺は、何を例え、何と比べているんだ。比較対象にならないじゃないか。 
 どうする?
 俺は別に構わないが、殺し屋は本当に寒そうにしている。
 俺は妥協案として後ろから殺し屋の腹に軽く、とても軽く腕を回した。
 あまり体を密着させないよう、触れるか触れないかの絶妙なポジションで殺し屋を温めていたが、互いの僅かな身動ぎで俺の胸板に彼女の背中が時折当たる。
 当たり前だけど肉質が軟らかいな。
 そう言えば少年兵とかスナイパーとか殺し屋とか言って、兎を獲ったり鰻を捕まえたりしてるけど、よく考えたらこいつも普通に女なんだよな。今になって気付いた。やる事がアウトドア過ぎて子供(少年)同士の友情を感じてた。
 殺し屋に女を感じるなんて何か変な感じだ。そう思うと照れくさくてあまり言葉が出てこない。
 うーん、嫌な気はしないし悪くは無いんだけど、なんかこう、むず痒いんだよなあ。
「鷹匠さんは寒くないですか?」
 俺だけが気にしているのか、殺し屋はケロッとして背を反る様にこちらを見上げてきた。
 顔と顔の距離が激近。俺次第でいつでもキス出来ますよ、の体勢だ。
 おいおい。
「そろそろ暖炉も暖まってきただろ。くっつくならそっちにくっつけ」
 実際、ほんのり室内も暖まってきたので俺は自分から体を離した。
「プワァーイ」
 何だ、そのエキゾチックな返事。
 殺し屋は恐ろしい程通常運行だ。
 こいつは自分が女である事や、俺が異性である事も意識していないのか?
 ガキなんだな。恐ろしくガキなんだ。そして天真爛漫なんだ。
 気を遣って損した。
 ちょっと疲れた。
「お前、例え凍えてても、あんまり知らない男にはくっついちゃ駄目だぞ?」
 俺はこいつの調教師じゃないが、心配になる。危なっかし過ぎる。
「プワァーイ」
 全然響いてない。
 そもそも目と目が合っていないんだから。
「お前は献上品なんだから、献上先の王族以外に体を預けない事」
 奔放過ぎて、こいつが献上品である事も忘れてた。
「おう」
「おう?」
 全然響いてない。
 俺は説得を諦めて風呂場へ風呂を沸かしに行き、そこから寝室のクローゼットに行って2人分の着替えを用意した。
「ありがとうございます。お風呂に入ったら今日はもう、すぐに帰ります」
 殺し屋は着替えを受け取ると軽く頭を下げた。
「え?鰻を捌いて食べないのか?」
 その気満々だったが。
「鰻は持ち帰って泥抜きさせます。あ、でも、2人で捕まえたんで、3日後、切り株の所に鰻重を持って現れますよ。昼の12時くらいですかね」
「そうか」
 3日後、少し間は空くが、次回の約束が出来てホッとした。
 しかしホッとしたのもつかの間、軽く干した衣類を入れた袋を殺し屋に渡した時、彼女の左手の薬指に指輪が嵌められているのを見つけてモヤッとする。
「なあ」
「はい?」
「献上品て任意で左手の薬指に指輪を嵌めていいんだったか?」
 俺が殺し屋の左手の薬指を指すと、彼女は言い訳でも考えるように二拍くらい間を開けて──
「あぁ、これ……単なるアクセサリーですよ」
 ──と言った。
 明らかに殺し屋の様子がおかしくて、俺は聞く前よりもモヤッとした。
「あぁ、そう」
 追求するのもおかしな話だし、その日は殺し屋の予定通り解散し、俺は3日間をモヤモヤしつつも首を長くして待った。

 そして3日間後、殺し屋は待ち合わせ場所に現れなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

処理中です...