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俺の人生
浮浪者
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あれから十分が経過した。玉は半分以上無くなってしまい、俺は少し焦った。目の前の機械の前をクルクルと回っては消えて行く玉達…パチンコに夢中になってしまって、俺はここが夢であるということを全て忘れてしまっていた。
残りの玉が数個となった時、なんと奇跡が起こった。
ついに当たったのだ。俺は嬉しさのあまり、大きくガッツポーズをしてしまった。機械から溢れ出す玉の数は元の数を遥かに超えていた。胸を躍らせながら、俺は玉を抱え、とりあえず近くの店員に聞くことにした。
沢山の玉は一万円札に替えることができた。
「どうぞ」
店員のおばさんはにこやかに微笑むと俺に一万円札を渡した。
「どうもありがとうございます」
一万円札を受けとってお辞儀をした。
店を出て、一万円札を改めて眺める。でもこれは夢…この嬉しさも覚めてしまったら無になってしまうものだ。その時、一万円札に描かれた人物を見て俺は仰天した。
―これは…夏目漱石?
一万円札と言ったら、聖徳太子だろ!この世界はどうやらおかしいようだ。俺の架空の世界なのだろうが、めちゃくちゃ過ぎる。大体、何で俺がこんな浮浪者みたいな老人なんだよ。思いっきり右の頬をつねってみる…水分の無い肌はまるで脱皮した蛇の抜け殻のようだった。
「痛っ」
頬には痛みが残ってジンジンしていた。これは…ただの夢じゃない?じゃあこの世界はどこなんだ?俺は誰なんだ?パニックになった俺は走り出そうとした。しかし、体が自分の思い通りに動かない為、変な場所に力が入ってバランスを崩した俺は前のめりになって転倒した。
「うう…」
顔一面に冷たい雪がくっついてしまった。口の中にも雪の欠片が入り込んで非常に不快である。こんなに感覚がはっきりしているなんておかしい…
目を開けて、立ち上がろうと、近くの電柱に手を伸ばしてなんとか立ち上がった。
ふと、電柱に貼ってあるチラシが目に入った。
(あなたのアイデア試してみませんか)
それは発明創意工夫のアイデア募集のチラシであった。
アイデア…俺は便利グッズを発明している会社の社長である。アイデアにおいては誰にも負けない自身がある。ふと、賞金と書かれた場所に目をやるとそこには優秀賞百万円と書かれていた。百万…この世界は現実だと思いたくはないが、もし現実だったら、金が無いと浮浪者になってしまう…俺はもうやるしかないと思った。
宛先などをよく見て、覚えると俺は再び歩き出した。
それからどのくらいの時間が経ったのか、だんだん人数が少なくなってきた。周りの店舗もシャッターが下りて、街は静寂に包まれていった。俺は今日、どこで寝ればいいのだろうか…大体、自分が誰だかさえも分からないのだ。勿論、家の場所も分からない…
いや、もともと家は無いのかもしれない…自分が今着ている服装の薄汚さから考えると、やはり俺は家の無い浮浪者なのかもしれない…じゃあ、どこに行けばいいんだ?まさかこの俺が野宿…
誰も居ない細い道を延々と歩いていると、足腰にさらに鈍痛が走ったので俺は手前に見えた公園に向かった。
残りの玉が数個となった時、なんと奇跡が起こった。
ついに当たったのだ。俺は嬉しさのあまり、大きくガッツポーズをしてしまった。機械から溢れ出す玉の数は元の数を遥かに超えていた。胸を躍らせながら、俺は玉を抱え、とりあえず近くの店員に聞くことにした。
沢山の玉は一万円札に替えることができた。
「どうぞ」
店員のおばさんはにこやかに微笑むと俺に一万円札を渡した。
「どうもありがとうございます」
一万円札を受けとってお辞儀をした。
店を出て、一万円札を改めて眺める。でもこれは夢…この嬉しさも覚めてしまったら無になってしまうものだ。その時、一万円札に描かれた人物を見て俺は仰天した。
―これは…夏目漱石?
一万円札と言ったら、聖徳太子だろ!この世界はどうやらおかしいようだ。俺の架空の世界なのだろうが、めちゃくちゃ過ぎる。大体、何で俺がこんな浮浪者みたいな老人なんだよ。思いっきり右の頬をつねってみる…水分の無い肌はまるで脱皮した蛇の抜け殻のようだった。
「痛っ」
頬には痛みが残ってジンジンしていた。これは…ただの夢じゃない?じゃあこの世界はどこなんだ?俺は誰なんだ?パニックになった俺は走り出そうとした。しかし、体が自分の思い通りに動かない為、変な場所に力が入ってバランスを崩した俺は前のめりになって転倒した。
「うう…」
顔一面に冷たい雪がくっついてしまった。口の中にも雪の欠片が入り込んで非常に不快である。こんなに感覚がはっきりしているなんておかしい…
目を開けて、立ち上がろうと、近くの電柱に手を伸ばしてなんとか立ち上がった。
ふと、電柱に貼ってあるチラシが目に入った。
(あなたのアイデア試してみませんか)
それは発明創意工夫のアイデア募集のチラシであった。
アイデア…俺は便利グッズを発明している会社の社長である。アイデアにおいては誰にも負けない自身がある。ふと、賞金と書かれた場所に目をやるとそこには優秀賞百万円と書かれていた。百万…この世界は現実だと思いたくはないが、もし現実だったら、金が無いと浮浪者になってしまう…俺はもうやるしかないと思った。
宛先などをよく見て、覚えると俺は再び歩き出した。
それからどのくらいの時間が経ったのか、だんだん人数が少なくなってきた。周りの店舗もシャッターが下りて、街は静寂に包まれていった。俺は今日、どこで寝ればいいのだろうか…大体、自分が誰だかさえも分からないのだ。勿論、家の場所も分からない…
いや、もともと家は無いのかもしれない…自分が今着ている服装の薄汚さから考えると、やはり俺は家の無い浮浪者なのかもしれない…じゃあ、どこに行けばいいんだ?まさかこの俺が野宿…
誰も居ない細い道を延々と歩いていると、足腰にさらに鈍痛が走ったので俺は手前に見えた公園に向かった。
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