On my deathbed 〜せめて妻と子に看取られて~

弓月下弦

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俺の人生

俺は今、何処にいる?

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―赤の視界が黒に変わった。

 瞼をゆっくり開ける…ここは一体どこなんだ?先程まで俺の目の前に並んでいたグラタンと赤ワインはどこへ消えたんだ?正蔵は?大体、何で俺はこんな寒い夜に外で寝転がっているんだ?俺は訳が分からず、両手を使って体を起こし、辺りを見回した。
すると、とんでもない光景が目に飛び込んできた。雪が降っているのだ。しかも積もっている。季節は確か九月の終わり…秋だったはずだ。屈んで雪に手を伸ばす…すると腰辺りに鈍痛が走った。二十代の俺の腰がどうして…そんなことを考えていると、さらに驚くべき異変に気がついた。

皺くちゃの手。。。

 俺の頭の中は真っ白であった。これは、本当に俺の手なのか?そして俺は確信した。

これは夢なのだと。。。。

 夢なのだから問題はない…しかし、夢の中でこれは夢なのだと気が付くなんてことがあるのは驚きだ。大体夢だと、どんな世界でも実際に起こっているように考えてしまう。
それが例えどんなに有り得ない状況でもだ。俺はふと下に何か落ちているのを発見し、拾ってみた。紙っぽい物と硬貨一枚が落ちていた。

「え…」

紙の方はどうやら写真のようで、そこには男の子が嬉しそうにランドセルを背負っている姿が写っていた。俺はその写真に写っている男の子をどこかで見たことがあるような気がした…そして硬貨の方は良く分からないが、『500』と書かれていて、その下に『平成二十年』と書かれていた。俺は首を傾げ、裏を見てみた。裏側には『五百円』と書かれている。五百円?札じゃなかったっけ…

俺は不思議に思いつつ、その写真と硬貨をポケットにしまい込み、とりあえず歩いてみることにした。辺りはどうやらクリスマスの時期らしく、サンタクロースの衣装を身にまとった人が何か配っている。俺はそのサンタに近づいた。

「どうぞ」

そのサンタは俺に向かって微笑んだ。近くでよく見ると二十代の綺麗なお姉さんであった。俺も気分が良くなって微笑み返した。すると気のせいか、彼女は困った顔をしながら俺の全身を下から上に向かって睨みつけた。俺はそんなことは気にせずに、渡された物を受け取ると、そのまま歩き出した。俺の体に何か変なものでもくっ付いていたのか?まあ気のせいかと、俺は解釈し、渡されたものを見た。それはビニールに包まれたティッシュであった。その間にはツルツルの紙が挟まれていた。

―パチンコスロット蔵屋-

そう書かれたその紙には、よくわからないキャラクターの絵が書かれていた。
「なんだこれ?」
パチンコは知っているが何故、見ず知らずの他人からパチンコの紹介をされなくてはいけないんだ?俺にパチンコをしろと?パチンコは嫌いじゃないが…
すると、目の前に『パチンコスロット蔵屋』と書かれたガラス張りの建物が目に入った。近づいて見ると、その建物の壁に俺の姿が写って、絶句した。
ボロボロの薄茶色の服を身に纏って、白髪のボサボサの髪、白く長い髭を持つ一人の老人がそこに写っていた。目は死んだ魚のようで、俺は自分に睨まれた気がして思わず後ずさった。

これが夢の中の俺?早く覚めてくれ…周囲の人間の冷たい眼差しが急に気になり始めた。
なんて最悪な夢なんだ。さっさと起きろ!正蔵っ!俺の近くにいるのならさっさと起こしてくれよ!
 俺の必死な願いは叶わず、数分たっても夢は覚めなかった。ここにずっと立っていても仕方がないので、俺は目の前にあるパチンコ店のドアを開けようと歩み寄った。

「なっ、なんだ?」

すると、いきなりドアが自動的に開いて俺は驚きのあまりに、よろけてしまった。
体勢をなんとか立て直して、恐る恐る中へ入って見ると、耳を劈くような爆音にさらに驚かされた。ガヤガヤしていて、頭が割れそうである。この老人の耳にでも響くくらいなのだから、相当である…両耳を塞ぎながら、辺りを見回し、空いているパチンコ台の前の椅子に腰掛けると、俺はあることに気がついた。

金が無い「」

 どうやら硬貨投入口と書かれた穴に硬貨を入れなくてはパチンコができないらしい。
しかも、このパチンコはいつも俺がやっているパチンコとはタイプが違うらしく、手動ではないらしい。これは本当にパチンコなのか?隣の人が行っている様子を見ると、玉が物凄いスピードでクルクルと回っているのが見えた。金が無いので諦めて外に出ようとして席を立ったその瞬間、ポケットの中にさっきしまったあの硬貨を思い出して、俺は再び席に座って、ポケットからそれを取り出して手にとった。若干金色をしているこの硬貨はお金として使えるのだろうか?そもそもこれは500円の硬貨なのだろうか?良く分からないまま俺はその硬貨を投入口に思い切って入れた。

ジャラジャラジャラジャラ…

 すると、大量のパチンコ玉が出てきた。俺は、隣の人がやっている様子をじっくり観察し、なんとかやり方を理解した。玉を機械に入れると、ものすごい速さで玉が回りだしたので、俺は目が回ってしまいそうだった。
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