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【伍章】光に向かう蛾と闇に向かう真実
擬勢と犠牲②
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「ああ…ナムル様…」
ぽっかり空いた脇腹を抑えながら、目の前の敵が倒れ込んだ。その男が最後に言った「ナムル様」とはこ
の男の本名である。
仲間が倒れた姿を見ても、一切動揺を見せないナムルは、つまらなそうな顔で、唾を吐いた後、銃弾を
再びセットし始めた。
その僅かな間に、蒼はナムルの武器を狙って、刀を突き出す。
しかし、銃に刃が当たる前に、セットが終わり、瞬時に発泡されてしまった。刃に命中した銃弾は火花を
散らせながら粉々になっていく。
「くそ、なんて手が速い奴だ…」
銃弾を受けた反動で、多少バランスが崩れたが、再び姿勢を立て直す。すると、横から邪魔が入った。他
の敵が蒼に向けて大剣を振り回してきたのだ。
「おお?ちょ…」
慌てて、ジャンプで交わした蒼…と、その時蒼の脳裏にある考えが浮かんだ。
「これだ…」
蒼は空中で体勢を整え、そのまま自分の下を通った大剣の刃目掛けて、足を落とした。
なんと、蒼は大剣の上に乗ると、瞬時に飛び上がった…
「これで、あんたの頭が狙える」
大剣をジャンプ台代わりにして高く飛び上がった蒼は、空中で握りこぶしを造り、ナムルの頭上で急降下
する。
ナムルも蒼目掛けて銃口を向ける…
周囲に銃声が響き渡る。と同時に銃が地に落ちた。
「残念だな」
ナムルの頭から銃に狙いを定め直した蒼の拳は見事に銃を直撃して、ナムルの手から奪ったのだ。
「Shit!(クソッ!)」
落ちた銃を見下ろしたナムルは、側に着地した蒼の顔を拳で殴った。
「痛っ!」
派手に飛ばされた蒼は、数メートル先まで滑っていった。
蒼を殴った後、落ちている銃に手を伸ばしたナムル。
このままでは、銃を手にして、また撃たれてしまうと思った蒼の目に、例のオカマの姿が飛び込んでき
た。
「あんた一人じゃ、無理よ」
そう言うと、銃に向かってスライディングをして、そのままナムルから銃を遠ざけた。
「これで、手ぶら同士ね」
このオカマの武器は無い…どうやら、拳と足が武器なようだ。
「hemふん」
蒼も起き上がり、二人の間に入り込む。
「神社の中には行かせない」
そう言って、蒼は再び刀を振り回す。
人が斬れない刀は男に致命傷を与えられないが、盾の代わりにはなった。相手の拳を刀で抑えて、反対の
手で殴る…
オカマも負けず劣らずに、ナムルの急所を突いていく…
しばらくの間、蒼たちの優勢が続く。
「これで、終わりな」
二人からの攻撃に怯んだナムルの顔目掛けて、オカマが懇親の一撃を食らわす。
骨が割れるような音が耳に入って来て、蒼はこちらの勝利を確信する。
「これも食らっとけ」
それに続いて、蒼も最後の一撃をナムルに当てる。深く腹に入り込んだ蒼の拳によって、ナムルは胃液と
共に、外に腹の中のものを吐き出した。
「Unbelievable!(信じられない!)」
吐いた後、音を立てて派手に倒れたナムルはそのまま動かなくなった。
「やったのか…」
「そうみたいね」
蹴りを入れてもビクともしないナムルに蒼は少々不安になる。
「死んでは無いよな」
「当たり前でしょ?拳二つで死ぬアホが何処にいるのよ」
「そうだな…」
そう言って、蒼は周囲を見渡す。既に薄暗くなっているため、状況がうまく掴めないが、明らかに敵の数
が減っている事を確認した蒼は、こちらの勝利を確信する。
しかし、倒れている者の中には使徒の姿も見られた。
「皆、命懸けで…」
「ここは私たちに任せて、あなたは西門に行って…」
オカマは蒼にそう告げると、蒼の背中を大きな手のひらで押した。
「何で西門に?」
「さっき、敵の一人から西門に灯蛾が現れるって情報を聞き出したのよ」
「西門に灯蛾が…」
と、その時。聞こえるはずのない銃声の音が耳を貫いた…
ぽっかり空いた脇腹を抑えながら、目の前の敵が倒れ込んだ。その男が最後に言った「ナムル様」とはこ
の男の本名である。
仲間が倒れた姿を見ても、一切動揺を見せないナムルは、つまらなそうな顔で、唾を吐いた後、銃弾を
再びセットし始めた。
その僅かな間に、蒼はナムルの武器を狙って、刀を突き出す。
しかし、銃に刃が当たる前に、セットが終わり、瞬時に発泡されてしまった。刃に命中した銃弾は火花を
散らせながら粉々になっていく。
「くそ、なんて手が速い奴だ…」
銃弾を受けた反動で、多少バランスが崩れたが、再び姿勢を立て直す。すると、横から邪魔が入った。他
の敵が蒼に向けて大剣を振り回してきたのだ。
「おお?ちょ…」
慌てて、ジャンプで交わした蒼…と、その時蒼の脳裏にある考えが浮かんだ。
「これだ…」
蒼は空中で体勢を整え、そのまま自分の下を通った大剣の刃目掛けて、足を落とした。
なんと、蒼は大剣の上に乗ると、瞬時に飛び上がった…
「これで、あんたの頭が狙える」
大剣をジャンプ台代わりにして高く飛び上がった蒼は、空中で握りこぶしを造り、ナムルの頭上で急降下
する。
ナムルも蒼目掛けて銃口を向ける…
周囲に銃声が響き渡る。と同時に銃が地に落ちた。
「残念だな」
ナムルの頭から銃に狙いを定め直した蒼の拳は見事に銃を直撃して、ナムルの手から奪ったのだ。
「Shit!(クソッ!)」
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「痛っ!」
派手に飛ばされた蒼は、数メートル先まで滑っていった。
蒼を殴った後、落ちている銃に手を伸ばしたナムル。
このままでは、銃を手にして、また撃たれてしまうと思った蒼の目に、例のオカマの姿が飛び込んでき
た。
「あんた一人じゃ、無理よ」
そう言うと、銃に向かってスライディングをして、そのままナムルから銃を遠ざけた。
「これで、手ぶら同士ね」
このオカマの武器は無い…どうやら、拳と足が武器なようだ。
「hemふん」
蒼も起き上がり、二人の間に入り込む。
「神社の中には行かせない」
そう言って、蒼は再び刀を振り回す。
人が斬れない刀は男に致命傷を与えられないが、盾の代わりにはなった。相手の拳を刀で抑えて、反対の
手で殴る…
オカマも負けず劣らずに、ナムルの急所を突いていく…
しばらくの間、蒼たちの優勢が続く。
「これで、終わりな」
二人からの攻撃に怯んだナムルの顔目掛けて、オカマが懇親の一撃を食らわす。
骨が割れるような音が耳に入って来て、蒼はこちらの勝利を確信する。
「これも食らっとけ」
それに続いて、蒼も最後の一撃をナムルに当てる。深く腹に入り込んだ蒼の拳によって、ナムルは胃液と
共に、外に腹の中のものを吐き出した。
「Unbelievable!(信じられない!)」
吐いた後、音を立てて派手に倒れたナムルはそのまま動かなくなった。
「やったのか…」
「そうみたいね」
蹴りを入れてもビクともしないナムルに蒼は少々不安になる。
「死んでは無いよな」
「当たり前でしょ?拳二つで死ぬアホが何処にいるのよ」
「そうだな…」
そう言って、蒼は周囲を見渡す。既に薄暗くなっているため、状況がうまく掴めないが、明らかに敵の数
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しかし、倒れている者の中には使徒の姿も見られた。
「皆、命懸けで…」
「ここは私たちに任せて、あなたは西門に行って…」
オカマは蒼にそう告げると、蒼の背中を大きな手のひらで押した。
「何で西門に?」
「さっき、敵の一人から西門に灯蛾が現れるって情報を聞き出したのよ」
「西門に灯蛾が…」
と、その時。聞こえるはずのない銃声の音が耳を貫いた…
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