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【伍章】光に向かう蛾と闇に向かう真実
擬勢と犠牲①
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しかし、目に飛び込んできたのは、とんでもない光景だった。
「Unbelievable!(信じられない!)」
「私はただのガキじゃないわ…あんたの嫌いな浄罪師の使徒よ」
槍を構え直す少女は先程の不安な顔なんて一切持っておらず、自信と決意に満ち溢れていた。
何が起こったのか分からない蒼はただその光景を見ているしか出来なかった。
「あの子は槍の名士よ。銃弾なんて槍一つで防げるわ」
「銃弾を防いだ…」
あの小さな少女は銃弾を槍一本で防いだというのか。
すると、大男は懲りずに銃を発泡し始めた。しかし、銃弾は小さい少女の体には当たることなく、全て槍
によって交わされていく…
「Fucking brat!(くそ餓鬼が!)」
大男は英語でそう言うと、少女に向けて蹴りを入れた。
銃に気を取られていた少女は蹴り込まれた足に気がつかず、そのまま蹴り飛ばされてしまう。
少女は数メートル先に飛ばされ、苦しそうに咳をしながらよろよろと立ち上がる。
「てめぇ!」
蒼は刀を握りながら、大男に向かって走り出した。
しかし、相手は銃を持っている。当然、銃弾を交わすスキルなど持っていない蒼は、刀を構えると、銃が
発せられる前に振り下ろした…
「Drop dead(死ね)」
しかし、蒼が刀を振り下ろす手前で男は銃の引き金を引いていた。
大きな音を立ててあの嫌な音が響く。蒼の耳に一番響いたその音は鼓膜を小刻みに揺らした。
「痛て…」
幸い銃は蒼の頬をかすめただけで命中はしなかった。頬から流れる血を指で拭うと、大男を睨みつけた。
「Are you a boy of then?(お前はあの時の少年か?)」
大男はそう言うと被っていたフードを取り払った。フードに隠された素顔は予想通り彫りの深い顔であっ
た。
あの時の少年…蒼は首を傾げる。
「もしかして、あの時俺を襲った奴じゃ…」
記憶を戻す前、母親の墓参りに行ったあの時、襲って来た男の事を思い出した蒼ははっと息を飲む。
「It is a correct answer(正解だ)」
そう聞いた蒼は、構えながら後ずさる。
「なら、尚更お前を倒さなきゃな」
そう言うと、蒼は体を回転させながら、刀を振り回し、男に向かっていった。
目にも止まらぬ速さで動く蒼に狙いが定まらない男は、銃をただ握っているだけでなかなか発泡しない。
「ここだっ!」
男に狙いを定めた蒼は、思いっきり刀を振り下ろす。
しかし、男は刀を軽々と交わし、代わりに蒼の頭部に銃口を突きつけた。
「くっ…」
「Finished now (これで終わりだ)」
と、その時。男の体が蒼から引き離された。何事かと蒼は目を開くと、目の前にあのオカマが仁王立ちし
ていた。
どうやら、オカマが大男を殴ったらしい。
「助かったよ…」
オカマに続いて他の使徒も男に向かって攻撃を仕掛けだした。
「 Oh my God! (ああ、神様!)」
男はそう言うと、指を口元へ持って行って…
その直後、辺り一面に男が鳴らした指笛の音が響き渡った。何事かと、使徒達の動きが一瞬止まる。する
と前方から30人程度の人間が走って来るのが見えた。
「くそ、やっぱり仲間付きだよな…」
蒼は苦い顔をすると、気を取り直してもう一度、刀を強く握り直す。
「いいかっ!人数なんか関係ないぞ!全力で挑むんだ!」
蒼の一声で、他の使徒たちも、3倍はいる敵の群れに向かって突き進む。
刀を器用に使って敵の攻撃を何度も交わす蒼。敵の人数は4人…もう自分の身を守ることで精一杯であっ
た。
「I am surprised that you were S rank(お前がSランクだとは驚いたな)」
背後で、あの男の声がすると、耳元にカチンと、何かが突きつけられた。
「……、」
黙って横を見ると、不気味に笑っている顔の大男が見えた。
「I will kill you(お前を殺す)」
「そうはさせない」
刀を持っていない方の手で、蒼は瞬時に銃口の向きを変える。その直後、銃が発泡し、弾が蒼を襲ってい
た敵の一人に命中した。
「Unbelievable!(信じられない!)」
「私はただのガキじゃないわ…あんたの嫌いな浄罪師の使徒よ」
槍を構え直す少女は先程の不安な顔なんて一切持っておらず、自信と決意に満ち溢れていた。
何が起こったのか分からない蒼はただその光景を見ているしか出来なかった。
「あの子は槍の名士よ。銃弾なんて槍一つで防げるわ」
「銃弾を防いだ…」
あの小さな少女は銃弾を槍一本で防いだというのか。
すると、大男は懲りずに銃を発泡し始めた。しかし、銃弾は小さい少女の体には当たることなく、全て槍
によって交わされていく…
「Fucking brat!(くそ餓鬼が!)」
大男は英語でそう言うと、少女に向けて蹴りを入れた。
銃に気を取られていた少女は蹴り込まれた足に気がつかず、そのまま蹴り飛ばされてしまう。
少女は数メートル先に飛ばされ、苦しそうに咳をしながらよろよろと立ち上がる。
「てめぇ!」
蒼は刀を握りながら、大男に向かって走り出した。
しかし、相手は銃を持っている。当然、銃弾を交わすスキルなど持っていない蒼は、刀を構えると、銃が
発せられる前に振り下ろした…
「Drop dead(死ね)」
しかし、蒼が刀を振り下ろす手前で男は銃の引き金を引いていた。
大きな音を立ててあの嫌な音が響く。蒼の耳に一番響いたその音は鼓膜を小刻みに揺らした。
「痛て…」
幸い銃は蒼の頬をかすめただけで命中はしなかった。頬から流れる血を指で拭うと、大男を睨みつけた。
「Are you a boy of then?(お前はあの時の少年か?)」
大男はそう言うと被っていたフードを取り払った。フードに隠された素顔は予想通り彫りの深い顔であっ
た。
あの時の少年…蒼は首を傾げる。
「もしかして、あの時俺を襲った奴じゃ…」
記憶を戻す前、母親の墓参りに行ったあの時、襲って来た男の事を思い出した蒼ははっと息を飲む。
「It is a correct answer(正解だ)」
そう聞いた蒼は、構えながら後ずさる。
「なら、尚更お前を倒さなきゃな」
そう言うと、蒼は体を回転させながら、刀を振り回し、男に向かっていった。
目にも止まらぬ速さで動く蒼に狙いが定まらない男は、銃をただ握っているだけでなかなか発泡しない。
「ここだっ!」
男に狙いを定めた蒼は、思いっきり刀を振り下ろす。
しかし、男は刀を軽々と交わし、代わりに蒼の頭部に銃口を突きつけた。
「くっ…」
「Finished now (これで終わりだ)」
と、その時。男の体が蒼から引き離された。何事かと蒼は目を開くと、目の前にあのオカマが仁王立ちし
ていた。
どうやら、オカマが大男を殴ったらしい。
「助かったよ…」
オカマに続いて他の使徒も男に向かって攻撃を仕掛けだした。
「 Oh my God! (ああ、神様!)」
男はそう言うと、指を口元へ持って行って…
その直後、辺り一面に男が鳴らした指笛の音が響き渡った。何事かと、使徒達の動きが一瞬止まる。する
と前方から30人程度の人間が走って来るのが見えた。
「くそ、やっぱり仲間付きだよな…」
蒼は苦い顔をすると、気を取り直してもう一度、刀を強く握り直す。
「いいかっ!人数なんか関係ないぞ!全力で挑むんだ!」
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刀を器用に使って敵の攻撃を何度も交わす蒼。敵の人数は4人…もう自分の身を守ることで精一杯であっ
た。
「I am surprised that you were S rank(お前がSランクだとは驚いたな)」
背後で、あの男の声がすると、耳元にカチンと、何かが突きつけられた。
「……、」
黙って横を見ると、不気味に笑っている顔の大男が見えた。
「I will kill you(お前を殺す)」
「そうはさせない」
刀を持っていない方の手で、蒼は瞬時に銃口の向きを変える。その直後、銃が発泡し、弾が蒼を襲ってい
た敵の一人に命中した。
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