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【肆章】造られた殺意
遊戯
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「あの…」
柏木が大分落ち着いてきた頃、店の奥にある瓦礫の中から一人の男が誰かを引きずりながらこっちに向
かってきた。
引きずって来た男は町田で、引きずられていた方は丸山であった。
「あなたたちは一体…」
その二人が誰で、何で灯蛾に襲われていたのかを知らない蒼は戸惑う。
「僕たちは普通の会社員です。いきなり襲われて…」
おどおどした様子の町田がそう言うと、気絶していた丸山が目を覚ました。
「……ここは」
驚きながら周囲を見渡した丸山は、何かを思い出したかのように、いきなり体を起こした。
「灯蛾っていう奴は…あいつは…どうした?殺される…」
そう言って、丸山は町田の肩を掴んだ。
「もう大丈夫みたいだよ」
「…いなくなったのか?」
「この人達が追い払ってくれたんだ」
町田にそう言われた丸山は、蒼たち三人に顔を向け、そのままお辞儀をし始めた。
「助かりました。ところで…君たちは誰ですか?」
「俺たちは何というか、説明が難しいんだけど…」
本当の事を言っても信じてもらえるはずがない。蒼は説明に困った。
「私たちは、浄罪師の使徒なの」
はい?ズバリ答えをそのまま言った柏木に驚いた蒼と伊吹は思わず顔を見合わせる。
「ちょと…柏木、何言って…」
「浄罪師…?」
蒼は柏木を止めようとするが、彼女はそんな彼を無視して丸山の問いかけに答える。
「浄罪師ってのは、まぁ…人を殺した人の魂を捨てたり、軽い罪を消したりする人よ」
てか、ガチでそのまま話す柏木が理解できません…と蒼は唖然とする。大体、「浄罪師」って言ったって伝
わらないだろっ!
「人を殺した者の魂を捨てる…」
柏木の言葉にすっかり夢中になっている丸山達。二人とも真剣な顔で柏木を見ている。
「そうよ、因みに私たちはこれ以上汚れた魂が増えるのを未然に防いでいるってわけ」
「じゃあ、あの灯蛾って奴は…」
様子から判断して、どうやら二人とも柏木の言っていることをすっかり信じているようである。
「灯蛾は私達の敵。あいつは今までに沢山の人を殺した罪人よ。つまり、今あいつが死んだら魂は浄罪師
によって捨てられる。もう二度と生まれ変われないって訳」
すると、話を聞いていた丸山が首を傾げた。
「でも、一度死んで生まれ変わるとしても、記憶はリセットされるんじゃ…」
おいおい、この人達は本当に一般人なのか?と、言えるほど柏木の話に真面目に対応している。この調子
では今までに詐欺に騙されていたことがあるに違いない。
「普通はね、でもあいつは違う。特別なのよ」
「特別?」
「記憶が引き継ぎされるのよ、だから、自分が死ぬ前に浄罪師を消して生き延びようとしているの。それ
と、力を大きくする為に仲間を集めているみたいね」
見事その通り!柏木は全てのことを話した。
「もしかして…俺を仲間に…」
だんだん表情が青ざめていく丸山に、蒼は何か嫌な予感がした。
「何か、心当たりがあるのか?」
蒼にそう聞かれた丸山は、一瞬ビクついて顔を上げた。
「実は、二十年前に俺の前で、俺の手を使って自殺した男がいて…それで、俺が殺したみたいになって…」
丸山の言葉を聞いた町田は、大きく目を見開いた。
「あの時…奴は自殺だったのか?」
柏木はそれを聞くなり、全てを悟ったかのように話し始めた。
「恐らく、その時自殺した男は灯蛾本人よ、あいつは体が老体になるとそうやって自殺するの。生まれ変
わった時にその人間を殺人者にする為にね」
「なんだって…」
記憶の全てを取り戻している柏木は灯蛾についても詳しい。
「してもいない殺人を公表すると脅して、最終的に本物の殺人者に仕立て上げる…最低な方法ね」
柏木の言う通り、灯蛾はある程度年を取ると、一般人を巻き添えにして自殺する。大概は、自分を殺し
たと思わせ、生まれ変わった後にその人を追い詰め、自殺に追い込む。または、真の殺人者に仕立て上げ
る。今回は失敗に終わったようだが、灯蛾本人にとっては、単なるお遊びに過ぎない。若さを無くした身
体に飽きて、自殺するついでに…という具合だ。
「俺はハメられたのか」
絶望に突き落とされたような顔で丸山はそう言うと、その場に蹲ってしまった。
「大丈夫よ」
そう言って丸山を見る柏木の瞳の奥に強い決意が見られた。真剣そのものである柏木を目にした蒼と伊吹
は、改めて灯蛾との決戦が近づいていることを自覚する。
その後、二人と別れた蒼たちは、黒羽を探しに回ったが、見つけることが出来なかった。灯蛾の放った火で焼き鳥にでもなってしまったかと、心配に思ったが、灯蛾本人も黒羽が死んでは困るらしいので、その可能性は低い。
そこで、ひとまず鴉ノ神社へ帰ることにした。
柏木が大分落ち着いてきた頃、店の奥にある瓦礫の中から一人の男が誰かを引きずりながらこっちに向
かってきた。
引きずって来た男は町田で、引きずられていた方は丸山であった。
「あなたたちは一体…」
その二人が誰で、何で灯蛾に襲われていたのかを知らない蒼は戸惑う。
「僕たちは普通の会社員です。いきなり襲われて…」
おどおどした様子の町田がそう言うと、気絶していた丸山が目を覚ました。
「……ここは」
驚きながら周囲を見渡した丸山は、何かを思い出したかのように、いきなり体を起こした。
「灯蛾っていう奴は…あいつは…どうした?殺される…」
そう言って、丸山は町田の肩を掴んだ。
「もう大丈夫みたいだよ」
「…いなくなったのか?」
「この人達が追い払ってくれたんだ」
町田にそう言われた丸山は、蒼たち三人に顔を向け、そのままお辞儀をし始めた。
「助かりました。ところで…君たちは誰ですか?」
「俺たちは何というか、説明が難しいんだけど…」
本当の事を言っても信じてもらえるはずがない。蒼は説明に困った。
「私たちは、浄罪師の使徒なの」
はい?ズバリ答えをそのまま言った柏木に驚いた蒼と伊吹は思わず顔を見合わせる。
「ちょと…柏木、何言って…」
「浄罪師…?」
蒼は柏木を止めようとするが、彼女はそんな彼を無視して丸山の問いかけに答える。
「浄罪師ってのは、まぁ…人を殺した人の魂を捨てたり、軽い罪を消したりする人よ」
てか、ガチでそのまま話す柏木が理解できません…と蒼は唖然とする。大体、「浄罪師」って言ったって伝
わらないだろっ!
「人を殺した者の魂を捨てる…」
柏木の言葉にすっかり夢中になっている丸山達。二人とも真剣な顔で柏木を見ている。
「そうよ、因みに私たちはこれ以上汚れた魂が増えるのを未然に防いでいるってわけ」
「じゃあ、あの灯蛾って奴は…」
様子から判断して、どうやら二人とも柏木の言っていることをすっかり信じているようである。
「灯蛾は私達の敵。あいつは今までに沢山の人を殺した罪人よ。つまり、今あいつが死んだら魂は浄罪師
によって捨てられる。もう二度と生まれ変われないって訳」
すると、話を聞いていた丸山が首を傾げた。
「でも、一度死んで生まれ変わるとしても、記憶はリセットされるんじゃ…」
おいおい、この人達は本当に一般人なのか?と、言えるほど柏木の話に真面目に対応している。この調子
では今までに詐欺に騙されていたことがあるに違いない。
「普通はね、でもあいつは違う。特別なのよ」
「特別?」
「記憶が引き継ぎされるのよ、だから、自分が死ぬ前に浄罪師を消して生き延びようとしているの。それ
と、力を大きくする為に仲間を集めているみたいね」
見事その通り!柏木は全てのことを話した。
「もしかして…俺を仲間に…」
だんだん表情が青ざめていく丸山に、蒼は何か嫌な予感がした。
「何か、心当たりがあるのか?」
蒼にそう聞かれた丸山は、一瞬ビクついて顔を上げた。
「実は、二十年前に俺の前で、俺の手を使って自殺した男がいて…それで、俺が殺したみたいになって…」
丸山の言葉を聞いた町田は、大きく目を見開いた。
「あの時…奴は自殺だったのか?」
柏木はそれを聞くなり、全てを悟ったかのように話し始めた。
「恐らく、その時自殺した男は灯蛾本人よ、あいつは体が老体になるとそうやって自殺するの。生まれ変
わった時にその人間を殺人者にする為にね」
「なんだって…」
記憶の全てを取り戻している柏木は灯蛾についても詳しい。
「してもいない殺人を公表すると脅して、最終的に本物の殺人者に仕立て上げる…最低な方法ね」
柏木の言う通り、灯蛾はある程度年を取ると、一般人を巻き添えにして自殺する。大概は、自分を殺し
たと思わせ、生まれ変わった後にその人を追い詰め、自殺に追い込む。または、真の殺人者に仕立て上げ
る。今回は失敗に終わったようだが、灯蛾本人にとっては、単なるお遊びに過ぎない。若さを無くした身
体に飽きて、自殺するついでに…という具合だ。
「俺はハメられたのか」
絶望に突き落とされたような顔で丸山はそう言うと、その場に蹲ってしまった。
「大丈夫よ」
そう言って丸山を見る柏木の瞳の奥に強い決意が見られた。真剣そのものである柏木を目にした蒼と伊吹
は、改めて灯蛾との決戦が近づいていることを自覚する。
その後、二人と別れた蒼たちは、黒羽を探しに回ったが、見つけることが出来なかった。灯蛾の放った火で焼き鳥にでもなってしまったかと、心配に思ったが、灯蛾本人も黒羽が死んでは困るらしいので、その可能性は低い。
そこで、ひとまず鴉ノ神社へ帰ることにした。
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