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【肆章】造られた殺意
赫い鎖
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「きゃはははは。バカな女ね。その子は私の思い通りに動くのよぉ?例えば…」
鎖に自由を奪われているままのジャノメは鎖の中で指を動かし、何やら呪文を唱え始めた。すると、天井
が砕け散る音がし、空中をものすごい勢いで駆け抜ける物体が見え、ジャノメがいる場所にそれはぶつ
かった。
その直後に体に巻き着いていた鎖が解け、床に音を立てて崩れ落ちてしまった。
「こんなふうに」
「嘘でしょ…」
電流にやられた肩を抑えながら、柏木は目を丸くする。
「あとね…」
床に落ちているブーメランを拾ったジャノメは、再び構える。
「ちょと、何する気…」
ジャノメが構えた先にあるのは、シャンデリアの塊。勿論、その下には伊吹がいるはずだ。
「とどめを刺さなくちゃね、もう死んでいるかもだけど」
そう言うと体を反らせて、ブーメランを放つ。
「だめ…」
「もう遅いわ」
低空飛行をし始めたブーメランは周囲の机や椅子の残骸を切り刻みながら直進する。
まるで、光線のように…
あっという間に、シャンデリアに辿りついたブーメランは膨大な電気を放ちながら突っ込む。
光が放たれた。シャンデリアの金属に流れ込む電流…
「これであなたのお仲間も丸焦げね」
柏木の目から一筋の涙がこぼれた。
「あんた…さ…」
「なによ、怖い顔しちゃって、まるで殺人鬼みたいよ?あなたも素質あるかもね」
顔を上げた柏木は、床に転がる鎖を持ち、それをまるでムチのように振り回しながらジャノメに向かって
突進した。
「ちょ…なんなの?」
「せいっ」
振り回された鎖はものすごい速さでジャノメを襲う。
「ちょっ…」
(なんなのこの速さ…これじゃあ武器が出せない…)
ジャノメは目にも止まらぬ速さで襲いかかってくる鎖を交わしながら、だんだん不安になっていく…
「当たれ、当たれ、当たれ」
何かに取り憑かれえたように鎖を打ち付ける柏木の目はとても人間とは思えなく、獣そのものであった。
ジャノメの息が上がる…とうとう交わしきれなくなった彼女の体に強く鎖は打ち付けられた。
「痛っ」
「まだまだ…」
その一発を引き金にして、柏木は次々に鎖を打ち付ける。
「まだまだ、足りない…」
「……、」
しばらく鎖を打ち付けていた柏木はジャノメの意識が無くなっていることに気がつくと、ようやくその手
を止めた。
ジャノメの黒いコートは引きちぎれ、顕になった皮膚には赤黒い痣ができていた。
「はっ…はっ…はっ…」
柏木はふらつきながら、その場を後にする。
しかし、2メートルも歩かない内に膝からガクリと崩れ落ちてしまった。そのまま意識を失った彼女はそ
の場に倒れ込んだ。
鎖に自由を奪われているままのジャノメは鎖の中で指を動かし、何やら呪文を唱え始めた。すると、天井
が砕け散る音がし、空中をものすごい勢いで駆け抜ける物体が見え、ジャノメがいる場所にそれはぶつ
かった。
その直後に体に巻き着いていた鎖が解け、床に音を立てて崩れ落ちてしまった。
「こんなふうに」
「嘘でしょ…」
電流にやられた肩を抑えながら、柏木は目を丸くする。
「あとね…」
床に落ちているブーメランを拾ったジャノメは、再び構える。
「ちょと、何する気…」
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「とどめを刺さなくちゃね、もう死んでいるかもだけど」
そう言うと体を反らせて、ブーメランを放つ。
「だめ…」
「もう遅いわ」
低空飛行をし始めたブーメランは周囲の机や椅子の残骸を切り刻みながら直進する。
まるで、光線のように…
あっという間に、シャンデリアに辿りついたブーメランは膨大な電気を放ちながら突っ込む。
光が放たれた。シャンデリアの金属に流れ込む電流…
「これであなたのお仲間も丸焦げね」
柏木の目から一筋の涙がこぼれた。
「あんた…さ…」
「なによ、怖い顔しちゃって、まるで殺人鬼みたいよ?あなたも素質あるかもね」
顔を上げた柏木は、床に転がる鎖を持ち、それをまるでムチのように振り回しながらジャノメに向かって
突進した。
「ちょ…なんなの?」
「せいっ」
振り回された鎖はものすごい速さでジャノメを襲う。
「ちょっ…」
(なんなのこの速さ…これじゃあ武器が出せない…)
ジャノメは目にも止まらぬ速さで襲いかかってくる鎖を交わしながら、だんだん不安になっていく…
「当たれ、当たれ、当たれ」
何かに取り憑かれえたように鎖を打ち付ける柏木の目はとても人間とは思えなく、獣そのものであった。
ジャノメの息が上がる…とうとう交わしきれなくなった彼女の体に強く鎖は打ち付けられた。
「痛っ」
「まだまだ…」
その一発を引き金にして、柏木は次々に鎖を打ち付ける。
「まだまだ、足りない…」
「……、」
しばらく鎖を打ち付けていた柏木はジャノメの意識が無くなっていることに気がつくと、ようやくその手
を止めた。
ジャノメの黒いコートは引きちぎれ、顕になった皮膚には赤黒い痣ができていた。
「はっ…はっ…はっ…」
柏木はふらつきながら、その場を後にする。
しかし、2メートルも歩かない内に膝からガクリと崩れ落ちてしまった。そのまま意識を失った彼女はそ
の場に倒れ込んだ。
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