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【肆章】造られた殺意

倉庫にて

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「ねえ、灯蛾様?あの男、全部信じているようね。私たちが『白豹組』だって」

丸山が帰った後、女と灯蛾は煙草を吹かしながら話していた。二人の年齢は共に十七。未成年喫煙である。

「ふん、まあな。明日が楽しみだな…さて、どう動くか…」

灯蛾の口元から白い煙が漏れる。女はもう一本の煙草に火を付ける。

「まぁ、あの様子じゃあ明日に自殺かしら…それとも、自首…」

その時、灯蛾の目が女を睨みつけた。

「そうはさせない。自首はしないはずだ。あいつは自分が殺人者になることを恐れている。いや、世間に
バレるを強く嫌っているのだ」

「ふうん、既に家族構成とか調べ済みってことね」

「当たり前だ。あいつは幼い頃から警察官である両親の下で育ってきたんだ。嫌という程、正義とやらを
見せつけさせられ、嫌という程、殺人者が歩む道のりを知っている」

「確か、この国の法律だと、殺人は一人でも死刑だったかしら…」

「いや、二人で死刑だ。だが、一人でも禁固五十年以上だ。法律は昔と比べて随分と変わった。今や、刑
務所の面積は計り知れない。噂だと、地下の殆んどは務所らしい」

「あらま…」

「だから、務所内での殺人や自殺も耐えないらしい。どうせ出られないのなら死んでやるって考えだ」

「じゃああの男は、明日自殺するか、町田を殺すしか考えられないってことね」

灰皿に吸殻を擦りつけた灯蛾は澄ました声で言う。

「そうだ」

暴力団『白豹組』―一年前までは確かに多大なる勢力だった。しかし、一年前、灯蛾の率いるヘレティック
の力によって、あっさり白豹組は負けた。当時、団長であった白豹は、今やこの倉庫の外にある庭の下、
約五メートルの深さに眠って居る。

 灯蛾は自分が欲しい地位を難なく手に入れることが出来るのだ。

その後、倉庫のドアがノックされ、一人、中に入ってきた。それは拝島であった。
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