28 / 80
【参章】とある少女の魂
任務完了
しおりを挟む
「ねぇ、ひとつ提案なんだけど。亜美ちゃんの気分転換のために皆で買い物でもしに行こうよ」
蒼は場の雰囲気が悪くなっていくのに耐えられず、思い切って提案した。少女の気持ちを少しでも和らげてあげれば、きっと自殺なんか二度と考えないと思ったのだ。
しかし、蒼が話しかけた瞬間、少女はぎょっとして蒼を睨んだ。
「なんで私の名前を知っているの?」
その後、『いや、実は君の知り合いの知り合いでして…』的なことを言って、誤魔化した蒼だが、何とか少女に納得してもらえ、幸い、変な誤解は免れた。
そんな訳で、少女の気分転換に五人は商店街やゲームセンターなど、様々な所へ足を運んだ。初めは、口数の少なかった少女であったが、時間が経つに連れて笑顔も増えていき、普通の女子中学生と同じくらい明るくなった。話していると、案外面白く、お茶目な部分のある少女は、数時間前まで自殺しそうだったとは思えない程であった。
そして、拝島が少女と積極的に話していたのが驚きだ。普段、学校でほとんど人と会話をしなく、大体、蒼あたりと少し話す程度だった彼が今日は少女と楽しそうに話しているのだ。一体、どんな風の吹き回しなのだろうか、と蒼は真剣に考えた。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕方の四時となっていた。まだ周囲は明るいが、太陽が沈み始めていた。
「もう、こんな時間だ。そろそろ家に帰えらないと…」
蒼が腕時計を見ながらそう言うと、少女は残念そうな顔をした。
「家…そうだね…」
俯きながら、立ち尽くしている少女。そんな少女に言葉を掛けたのは、意外にも、あの拝島だった。
「心配だから、僕が家まで送るよ」
ぎごちない口調だったが、拝島は優しく少女にそう言った。
「いいの?」
「うん」
そうして、拝島は少女を家まで送りに行くことになった。
拝島がいなくなった後、三人は拝島の変貌ぶりに驚いていた。なんだって、あの拝島が少女を家まで送
るのである。あの内気な拝島が…
「拝島も変わったな…」
呆然と立ち尽くしながら蒼は言葉を漏らす。
「だな、あいつ、お前としかまともに話せなかったのによ」
「拝島くんって、案外良い人みたいね」
柏木は笑顔でそう言うと、
「よし、これで任務も終わったことだし、そろそろ帰りますか」
という、柏木の一声で三人は駅へと向かった。
ただこの時、三人はまだ任務が完全に終わっていない事に気づいていなかった。
蒼は場の雰囲気が悪くなっていくのに耐えられず、思い切って提案した。少女の気持ちを少しでも和らげてあげれば、きっと自殺なんか二度と考えないと思ったのだ。
しかし、蒼が話しかけた瞬間、少女はぎょっとして蒼を睨んだ。
「なんで私の名前を知っているの?」
その後、『いや、実は君の知り合いの知り合いでして…』的なことを言って、誤魔化した蒼だが、何とか少女に納得してもらえ、幸い、変な誤解は免れた。
そんな訳で、少女の気分転換に五人は商店街やゲームセンターなど、様々な所へ足を運んだ。初めは、口数の少なかった少女であったが、時間が経つに連れて笑顔も増えていき、普通の女子中学生と同じくらい明るくなった。話していると、案外面白く、お茶目な部分のある少女は、数時間前まで自殺しそうだったとは思えない程であった。
そして、拝島が少女と積極的に話していたのが驚きだ。普段、学校でほとんど人と会話をしなく、大体、蒼あたりと少し話す程度だった彼が今日は少女と楽しそうに話しているのだ。一体、どんな風の吹き回しなのだろうか、と蒼は真剣に考えた。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕方の四時となっていた。まだ周囲は明るいが、太陽が沈み始めていた。
「もう、こんな時間だ。そろそろ家に帰えらないと…」
蒼が腕時計を見ながらそう言うと、少女は残念そうな顔をした。
「家…そうだね…」
俯きながら、立ち尽くしている少女。そんな少女に言葉を掛けたのは、意外にも、あの拝島だった。
「心配だから、僕が家まで送るよ」
ぎごちない口調だったが、拝島は優しく少女にそう言った。
「いいの?」
「うん」
そうして、拝島は少女を家まで送りに行くことになった。
拝島がいなくなった後、三人は拝島の変貌ぶりに驚いていた。なんだって、あの拝島が少女を家まで送
るのである。あの内気な拝島が…
「拝島も変わったな…」
呆然と立ち尽くしながら蒼は言葉を漏らす。
「だな、あいつ、お前としかまともに話せなかったのによ」
「拝島くんって、案外良い人みたいね」
柏木は笑顔でそう言うと、
「よし、これで任務も終わったことだし、そろそろ帰りますか」
という、柏木の一声で三人は駅へと向かった。
ただこの時、三人はまだ任務が完全に終わっていない事に気づいていなかった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる