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【弐章】浄罪師と使徒
穢れた魂を持つ者
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職員室には誰も居なかった。真っ暗な職員室。千恵と紗香はそれぞれ持ってきた懐中時計を取り出して、明かりをつけた。
「なんか、出そうだね…」
「ちょっと、紗香…やめてよ」
「アハハハハ、ごめん、ごめん」
二人は早歩きで目的の場所へ向かった。
「ここが、例の先生の席だね?」
「うん…」
二人が向かった場所は秋山湊人の席であった。千恵は秋山先生の机にある一番下の引き出しを指差した。
「隠すとしたらやっぱり…鍵付きよね…」
「成程…」
紗香は背負っていたリュックから再び針金を取り出すと、不敵な笑みを浮かべた。
「ふふふ、これで鍵は外れるわ…」
紗香は自称、『ピッキング・スペシャリスト』であるそうだ。真っ直ぐな黒髪で清楚な容姿からは想像もつかない…今までも様々なものを開けてきたようで(母親の貯金箱や姉の部屋の鍵など)この世に開けられないものはないらしい…
ものの一分で鍵を解除した紗香は、緊張で震える手で引き出しを開けた。
「これか!」
引き出しの中には、三冊程のアルバム本が入っていた。紗香はさっそくその中の一冊を取り出して中身を見てみる…
「うわぁああああああああああああああああああああ」
「ぎゃぁあ」
余りにも大きな紗香の声に驚いて、千恵も悲鳴を上げた。
「これっ、犯罪!犯罪だよっ、やっぱり千恵が見たのは間違いじゃなかったんだよっ」
千恵も改めてアルバムの中を確認する。アルバムに入っている写真は普通の写真ではなく、最悪なものであった。
―女子学生のス○ートの中、更衣室で着替えている所の写真、生徒の後ろ姿、友達と話している女子の笑顔…
「盗撮男…最悪だね」
秋山湊人の正体…それは、几帳面で優しい先生ではなく、ただの『盗撮男』だったのだ。
千恵はこの前の金曜日、偶然先生が生徒を盗撮している所を見かけてしまったのだ。それで紗香に相談して、二人でこっそり夜まで学校に残って証拠を見つけ出す、という計画に至ったのだ。
二人はそれぞれのリュックにアルバムを詰めると、職員室を出ようと出口へ向かった。
と、その時、後ろで声がした。
「あ~ぁ、見つかっちゃったかぁ…」
千恵ははっとして、ライトを声の方に向けた。すると、ライトがナイフの刃に反射して目に入ってきた。ナイフを持っていたのは秋山先生だった。
「どうして…」
「どうしてかなぁ…親切な子が教えてくれてねぇ。君が見たって」
生きた心地がしなかった。千恵の顔から血の気が引いていく…
「ふざけんなっ、このエロおやじっ」
紗香は強気でそう言ったが、声はかすれていた。
「フフフ、ハハハハッ!」
「このアルバムは渡さないわよ」
「死んでもかい?」
秋山先生は不気味に笑うと、ナイフを握ったまま千恵たちの所へ走ってきた。慌てて二人は奥へ逃げる…
しかし、ついに二人は隅へ追いやられてしまった。先生はゆっくりと近づいてくる。
「こっち来るなっ」
もはや、紗香の言葉は彼の耳には届いていなかった。先生は顔を歪ませながら、ナイフを振り上げた。
恐ろしさのあまり、千恵は思いっきり目を瞑った。
(今じゃ)
その声が聞こえた瞬間、先生の「くそっ」という罵声が聞こえた。
目を開けると、目の前に先生の姿は無かった。先生は慌てて職員室から出ようと、出口へ向かって走り出している。どうやらまだ学校に人がいたようだ。
千恵たちも急いで先生を追いかける。
※ ※
「どけっ」
秋山湊人は職員室の入り口にいた蒼と伊吹を突き飛ばすと、全力疾走で階段を上がって行った。
「いてっ」
伊吹は顔を引きつらせながら起き上がると、急いで秋山の後を追う為、階段を駆け上がって行った。
蒼も伊吹に続いて行く。
職員室は二階だが、秋山はどんどん上の階へ上がって行き、とうとう屋上についてしまった。
屋上へ出る扉を開けると、強い風と雨に打たれて、蒼はふらついてしまった。外は勿論、月明かりのみで薄暗い。伊吹は一足早く屋上へ着いたようで、秋山がいる手すりの所へ向かっていた。
「伊吹、止まれっ」
相手は殺人未遂犯である。蒼は伊吹の安全を考えて、大声で彼を呼び止めた。伊吹は一瞬、踏み止まったかのように見えたが、再び歩き出してしまった。
「あの、バカ」
蒼も急いで伊吹を追う。走る度に、コンクリートに溜まった雨水が跳ね上がってズボンも靴下もびしょ濡れになった。
「馬鹿だねぇ、こんな所まで追いかけて来るとは…」
秋山は馬鹿にしたような口調で吐き捨てるように言うと、包丁を構えた。
「よくも、俺の妹に手を出そうとしたなっ」
「仕方ないじゃないか、バレちゃったんだから…」
秋山は風で乱れた髪を手で抑えながら、伊吹の方へ向かって歩き出した。
「お兄ちゃん!」
すると、千恵の声がして、伊吹は振り返った。どうやら屋上までついて来たらしい…ここは、警察へ連絡しろよ!と、蒼は心の中で憤慨した。
しかし、秋山は伊吹がよそ見をしたのを見逃さなかった。
「危ない!」
蒼がそう叫んだ後、秋山は伊吹の両脇を抱え込み、彼を拘束して喉元にナイフを当てた。
「喉より、心臓の方が良いかなぁ?」
そう言うと、秋山は伊吹の喉元からナイフをなぞる様に移動させて、左胸に当てた。
「てめぇ…」
伊吹は何とか彼の腕から逃れようと藻掻いてみるが、秋山はビクともしない。
「いいかぁ?そこのお前たち、これ以上近づいたらコイツの心臓は終わりだ…」
蒼は舌打ちをして足を止めた。
「まぁ、どっちにしろ。全員ここで終わりだけどね」
「辞めろっ、人殺しなんかしたら一生が台無しだぞ」
そんな蒼の叫び声を、打ち消すかのように秋山は、
「俺の一生なんて、もうどうだっていいんだ!」
と、耳を劈くような大声で言った。相当気が狂っているのか、呼吸が荒かった。
「なんか、出そうだね…」
「ちょっと、紗香…やめてよ」
「アハハハハ、ごめん、ごめん」
二人は早歩きで目的の場所へ向かった。
「ここが、例の先生の席だね?」
「うん…」
二人が向かった場所は秋山湊人の席であった。千恵は秋山先生の机にある一番下の引き出しを指差した。
「隠すとしたらやっぱり…鍵付きよね…」
「成程…」
紗香は背負っていたリュックから再び針金を取り出すと、不敵な笑みを浮かべた。
「ふふふ、これで鍵は外れるわ…」
紗香は自称、『ピッキング・スペシャリスト』であるそうだ。真っ直ぐな黒髪で清楚な容姿からは想像もつかない…今までも様々なものを開けてきたようで(母親の貯金箱や姉の部屋の鍵など)この世に開けられないものはないらしい…
ものの一分で鍵を解除した紗香は、緊張で震える手で引き出しを開けた。
「これか!」
引き出しの中には、三冊程のアルバム本が入っていた。紗香はさっそくその中の一冊を取り出して中身を見てみる…
「うわぁああああああああああああああああああああ」
「ぎゃぁあ」
余りにも大きな紗香の声に驚いて、千恵も悲鳴を上げた。
「これっ、犯罪!犯罪だよっ、やっぱり千恵が見たのは間違いじゃなかったんだよっ」
千恵も改めてアルバムの中を確認する。アルバムに入っている写真は普通の写真ではなく、最悪なものであった。
―女子学生のス○ートの中、更衣室で着替えている所の写真、生徒の後ろ姿、友達と話している女子の笑顔…
「盗撮男…最悪だね」
秋山湊人の正体…それは、几帳面で優しい先生ではなく、ただの『盗撮男』だったのだ。
千恵はこの前の金曜日、偶然先生が生徒を盗撮している所を見かけてしまったのだ。それで紗香に相談して、二人でこっそり夜まで学校に残って証拠を見つけ出す、という計画に至ったのだ。
二人はそれぞれのリュックにアルバムを詰めると、職員室を出ようと出口へ向かった。
と、その時、後ろで声がした。
「あ~ぁ、見つかっちゃったかぁ…」
千恵ははっとして、ライトを声の方に向けた。すると、ライトがナイフの刃に反射して目に入ってきた。ナイフを持っていたのは秋山先生だった。
「どうして…」
「どうしてかなぁ…親切な子が教えてくれてねぇ。君が見たって」
生きた心地がしなかった。千恵の顔から血の気が引いていく…
「ふざけんなっ、このエロおやじっ」
紗香は強気でそう言ったが、声はかすれていた。
「フフフ、ハハハハッ!」
「このアルバムは渡さないわよ」
「死んでもかい?」
秋山先生は不気味に笑うと、ナイフを握ったまま千恵たちの所へ走ってきた。慌てて二人は奥へ逃げる…
しかし、ついに二人は隅へ追いやられてしまった。先生はゆっくりと近づいてくる。
「こっち来るなっ」
もはや、紗香の言葉は彼の耳には届いていなかった。先生は顔を歪ませながら、ナイフを振り上げた。
恐ろしさのあまり、千恵は思いっきり目を瞑った。
(今じゃ)
その声が聞こえた瞬間、先生の「くそっ」という罵声が聞こえた。
目を開けると、目の前に先生の姿は無かった。先生は慌てて職員室から出ようと、出口へ向かって走り出している。どうやらまだ学校に人がいたようだ。
千恵たちも急いで先生を追いかける。
※ ※
「どけっ」
秋山湊人は職員室の入り口にいた蒼と伊吹を突き飛ばすと、全力疾走で階段を上がって行った。
「いてっ」
伊吹は顔を引きつらせながら起き上がると、急いで秋山の後を追う為、階段を駆け上がって行った。
蒼も伊吹に続いて行く。
職員室は二階だが、秋山はどんどん上の階へ上がって行き、とうとう屋上についてしまった。
屋上へ出る扉を開けると、強い風と雨に打たれて、蒼はふらついてしまった。外は勿論、月明かりのみで薄暗い。伊吹は一足早く屋上へ着いたようで、秋山がいる手すりの所へ向かっていた。
「伊吹、止まれっ」
相手は殺人未遂犯である。蒼は伊吹の安全を考えて、大声で彼を呼び止めた。伊吹は一瞬、踏み止まったかのように見えたが、再び歩き出してしまった。
「あの、バカ」
蒼も急いで伊吹を追う。走る度に、コンクリートに溜まった雨水が跳ね上がってズボンも靴下もびしょ濡れになった。
「馬鹿だねぇ、こんな所まで追いかけて来るとは…」
秋山は馬鹿にしたような口調で吐き捨てるように言うと、包丁を構えた。
「よくも、俺の妹に手を出そうとしたなっ」
「仕方ないじゃないか、バレちゃったんだから…」
秋山は風で乱れた髪を手で抑えながら、伊吹の方へ向かって歩き出した。
「お兄ちゃん!」
すると、千恵の声がして、伊吹は振り返った。どうやら屋上までついて来たらしい…ここは、警察へ連絡しろよ!と、蒼は心の中で憤慨した。
しかし、秋山は伊吹がよそ見をしたのを見逃さなかった。
「危ない!」
蒼がそう叫んだ後、秋山は伊吹の両脇を抱え込み、彼を拘束して喉元にナイフを当てた。
「喉より、心臓の方が良いかなぁ?」
そう言うと、秋山は伊吹の喉元からナイフをなぞる様に移動させて、左胸に当てた。
「てめぇ…」
伊吹は何とか彼の腕から逃れようと藻掻いてみるが、秋山はビクともしない。
「いいかぁ?そこのお前たち、これ以上近づいたらコイツの心臓は終わりだ…」
蒼は舌打ちをして足を止めた。
「まぁ、どっちにしろ。全員ここで終わりだけどね」
「辞めろっ、人殺しなんかしたら一生が台無しだぞ」
そんな蒼の叫び声を、打ち消すかのように秋山は、
「俺の一生なんて、もうどうだっていいんだ!」
と、耳を劈くような大声で言った。相当気が狂っているのか、呼吸が荒かった。
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