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第二章 第1試練~己の衣を血で染めるべからず~
2-1 試練のはじまり
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「さてこれからどうします?ボク、ちょっとお腹すいちゃいました」
アンダーグラウンドから出て、恐らく1時間ほど経った。今のところ、敵に遭遇する気配はない。周囲一面森に囲まれているが、もう少し進んだら街に出るはずだ。
「そうですね、ずっと歩きっぱなしですし。街に出たら何か食べましょうか」
「そうしましょ、まだ午前で比較的安全だと思うので食堂に入るのはどうでしょうか」
「食堂良いですね!カレーとかうどんとか!想像しただけでお腹が空いちゃいますね」
「ボク、美味しいカレー屋さん知っているので、そこに行きませんか?」
「行きます行きます!俺カレー大好物なんですよ!」
「それは良かった!そうと決まれば急ぎましょう!腹が減っては戦はできぬです!」
ハルさんと二人きりで食事!もはやこれはデートなのでは!?
すると、後方でなにやら足音がした。
「ちょっと、今何か音がしましたよね?」
「レイも聞こえましたか、それじゃあ気のせいじゃ無さそうですね」
再び足音が聞こえた。恐らく一人の人間の足音であろう。だんだんこちらに忍び寄ってくる。
それにしても周囲が木々に囲まれているせいで視覚が狭い。朝なのにまるで夕方のような暗さだ。
「こんな森に囚われのカルマが現れるのか?」
「もうどこにいても彼らは突然現れるようですね」
すると、奥の茂みから突然人影が現れた。
「お前たちはアンダーグラウンドの候補生だな?」
全身真っ黒のコートを着ていてフードのせいで顔が殆ど見えないが、どうやらレッドアイではないようだ。
その少年は茶色の瞳をしている。年は15歳前後といったところだろうか。もし何の武装もしてない今、レッドアイに遭遇していたら衣を血で汚すどころじゃなかった。
「そうだ。俺たちはアンダーグラウンド候補生だ。お前は何者なんだ」
「俺はお前らとは非なるものさ、そしてお前らの敵だよ」
敵、ということはこいつは囚われのカルマということか。面倒なことになった。せめて街に行って武装した後にしてほしかった。しかも、ちょうど腹も減ってるじゃないか。今の俺たちに戦なんて無理だ。
「悪いが、俺たちは道を急いでるんだ。君とは争う気はない」
「ふん、俺にはお前らをここで殺す必要があるんだ。街には向かわせない」
「レイ、この人危ないです。ここは逃げましょう」
ハルさんは耳打ちでそう囁くと、俺の手をひいて猛ダッシュし始めた。
「ってぇぇぇ!?待て待てぇー?」
女性とは思えない強さ、そして足の速さ。俺の足が追いつかず、殆ど引きずられるようにして敵から遠ざかっていく。だが敵も諦めず、追いかけてくる。
「は、ハルー?手がち、ちぎれるー」
「ごめんなさい!でもちょっと我慢です!」
「そそそ、そんなぁぁー!」
※※※
どれほど遠ざかったのだろうか。遂に森から抜け、直射日光が体を照らす。
そして手が燃えるように熱い。というか痛い。
「ふー、ここまで来れば敵も追いつけないでしょう。取り敢えず、ひと安心です」
「そ、それは。よ、良かった…」
ものの数分で森を抜けてしまうなんて。時速いくらで走ったらそうなるんだ?ハルさんってもしかして、、、
「あの…ハルってもしかしたら…」
ハルさんは首をかしげながらこちらを見る。
「はい?」
「陸上競技選手とか?」
「あ、いえいえ違いますよ!実はボク、逃げるのが得意なんです。小さい頃から母親にガッツリ教え込まれまして。逃げ足が速くなければこの世で生き延びれないって脅されて…」
「なるほど。にしてもめちゃくちゃ足速いんだね!俺全くついていけなかったよ。足手まといでほんとごめん」
「そんなことないですよぉ!ちょっと危なかったんで全力出しちゃっただけですから」
「でもさっきの敵。いったい何者だったんだろう。俺たちがアンダーグラウンド候補生ってことも知っていたし。もしかしてずっとつけられてたのかな」
「そうかもしれませんね。彼はボクたちを街に向かわせたくないようだったので、アンダーグラウンドに恨みがある人間みたいですね」
アンダーグラウンドに恨みのある奴は大勢いる。この純白の衣を着ているということは今まで以上に敵から狙われるということを俺たちは改めて知った。
アンダーグラウンドから出て、恐らく1時間ほど経った。今のところ、敵に遭遇する気配はない。周囲一面森に囲まれているが、もう少し進んだら街に出るはずだ。
「そうですね、ずっと歩きっぱなしですし。街に出たら何か食べましょうか」
「そうしましょ、まだ午前で比較的安全だと思うので食堂に入るのはどうでしょうか」
「食堂良いですね!カレーとかうどんとか!想像しただけでお腹が空いちゃいますね」
「ボク、美味しいカレー屋さん知っているので、そこに行きませんか?」
「行きます行きます!俺カレー大好物なんですよ!」
「それは良かった!そうと決まれば急ぎましょう!腹が減っては戦はできぬです!」
ハルさんと二人きりで食事!もはやこれはデートなのでは!?
すると、後方でなにやら足音がした。
「ちょっと、今何か音がしましたよね?」
「レイも聞こえましたか、それじゃあ気のせいじゃ無さそうですね」
再び足音が聞こえた。恐らく一人の人間の足音であろう。だんだんこちらに忍び寄ってくる。
それにしても周囲が木々に囲まれているせいで視覚が狭い。朝なのにまるで夕方のような暗さだ。
「こんな森に囚われのカルマが現れるのか?」
「もうどこにいても彼らは突然現れるようですね」
すると、奥の茂みから突然人影が現れた。
「お前たちはアンダーグラウンドの候補生だな?」
全身真っ黒のコートを着ていてフードのせいで顔が殆ど見えないが、どうやらレッドアイではないようだ。
その少年は茶色の瞳をしている。年は15歳前後といったところだろうか。もし何の武装もしてない今、レッドアイに遭遇していたら衣を血で汚すどころじゃなかった。
「そうだ。俺たちはアンダーグラウンド候補生だ。お前は何者なんだ」
「俺はお前らとは非なるものさ、そしてお前らの敵だよ」
敵、ということはこいつは囚われのカルマということか。面倒なことになった。せめて街に行って武装した後にしてほしかった。しかも、ちょうど腹も減ってるじゃないか。今の俺たちに戦なんて無理だ。
「悪いが、俺たちは道を急いでるんだ。君とは争う気はない」
「ふん、俺にはお前らをここで殺す必要があるんだ。街には向かわせない」
「レイ、この人危ないです。ここは逃げましょう」
ハルさんは耳打ちでそう囁くと、俺の手をひいて猛ダッシュし始めた。
「ってぇぇぇ!?待て待てぇー?」
女性とは思えない強さ、そして足の速さ。俺の足が追いつかず、殆ど引きずられるようにして敵から遠ざかっていく。だが敵も諦めず、追いかけてくる。
「は、ハルー?手がち、ちぎれるー」
「ごめんなさい!でもちょっと我慢です!」
「そそそ、そんなぁぁー!」
※※※
どれほど遠ざかったのだろうか。遂に森から抜け、直射日光が体を照らす。
そして手が燃えるように熱い。というか痛い。
「ふー、ここまで来れば敵も追いつけないでしょう。取り敢えず、ひと安心です」
「そ、それは。よ、良かった…」
ものの数分で森を抜けてしまうなんて。時速いくらで走ったらそうなるんだ?ハルさんってもしかして、、、
「あの…ハルってもしかしたら…」
ハルさんは首をかしげながらこちらを見る。
「はい?」
「陸上競技選手とか?」
「あ、いえいえ違いますよ!実はボク、逃げるのが得意なんです。小さい頃から母親にガッツリ教え込まれまして。逃げ足が速くなければこの世で生き延びれないって脅されて…」
「なるほど。にしてもめちゃくちゃ足速いんだね!俺全くついていけなかったよ。足手まといでほんとごめん」
「そんなことないですよぉ!ちょっと危なかったんで全力出しちゃっただけですから」
「でもさっきの敵。いったい何者だったんだろう。俺たちがアンダーグラウンド候補生ってことも知っていたし。もしかしてずっとつけられてたのかな」
「そうかもしれませんね。彼はボクたちを街に向かわせたくないようだったので、アンダーグラウンドに恨みがある人間みたいですね」
アンダーグラウンドに恨みのある奴は大勢いる。この純白の衣を着ているということは今まで以上に敵から狙われるということを俺たちは改めて知った。
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