囚われのカルマ

弓月下弦

文字の大きさ
上 下
4 / 7
第一章 アンダーグラウンドへ

1-4 再び外界へ

しおりを挟む
「さあ、みなさん。早速第1試練を開始したいと思います。ルールは「衣を血で染めない」ことですが、もちろん、殺人は厳禁ですから、お忘れなく。それから、武装に関しては自由に行って構いません。くれぐれもみなさんの貴重な魂を汚すことなく戻ってきて下さい」

「あのー、すみません。質問よろしいですか?」

スタッフに質問を投げかけたのは、綺麗な金髪ロングにエメラルドカラーの瞳をした女の人だ。年齢は俺と同じか少し上くらいだろうか。可愛い系のハルさんとはタイプが違うが、こちらも結構な美人である。

「はい、フロア様。何でしょうか」

「私達の課題が「外の世界で3日間無傷で過ごす」となっていますが、これは建物とかに隠れてても良いってことですよね」

何と、そんな簡単な課題もあるとは、、、
当然、周囲がざわめき始める。

「さようでございます。ただし、これは試練ですから、当然、みなさんが平等な難易度になるように工夫していますからご安心を」

「ご安心って、、、なるほどね。死神の力でも借りて私達の場所を特定して、何か仕掛けて来るつもりですね?まぁ、その方が面白そうですが」

「流石、首席合格のフロア様。おっしゃる通りです。ですから、ご安心して試練に挑んでください」

首席合格だと?俺はやっと7度目の正直とやらで合格したのに。あの試験覚えることが膨大にあったけど何点取ったんだろう。それに実技試験もかなり難しかった。うっ、思い出しただけでも頭痛が。

「さあ、みなさん!課題クリアを目指して頑張ってください!リミットはみなさん平等に3日後の午後13時とします。」


※※※


こうして俺たちの第1試練が幕を開けた。アンダーグラウンドの外扉が開かれるとあの嫌な空気が顔に当たる。俺が来ている白い衣が風に靡く。

「外の世界に戻るのはちょっと残念ですが、クリアして無事戻って来ましょうね。レイさん」

「そ、そうですね。一緒に頑張りましょう!ハルさん!」

「レイさん。ボクのほうが年下みたいですし、敬語じゃなくても良いですよ。それとボクのことは気軽にハルと呼んでください」

「ええ、え?そ、そうだな!よろしくハルさ、、ハル!俺のこともレイって呼んでくださ、、くれ」

「はい!よろしくお願いします。レイ!」

くーーー!ついに俺の名前をハルさんが呼び捨てでっ!何だか課題のことなんか忘れてしまいそうなくらいテンションあげあげになってしまう。俺は懸命にニヤける顔を隠す。

「ブラッドアイの少女が相手か、、ちょっと未知なことばかりだけど。一応親切に彼女が住んでる場所は説明書に書いてあるし、何とか見つけることはできそうだな」

「そうですね、第3試練まであるので、先は長いですが、足手まといにならないようにボクがんばります!」

「死神との契約。ちょっと抵抗あるけどせっかくここまで進んだんだ。こんな試練ちゃっちゃと片付けようぜ。そう言えば、ハルがアンダーグラウンドに入隊した目的ってなんだ?」

「そうですね...。ボクがここに来た目的は...母に会うためです」

「お母さんがアンダーグラウンドに入隊しているのか?それは心強いな!早く一人前になって会えるといいな!」

「そ、そうですね。早く死神と契約して一人前になりたいです。そして母に会うんです。ボクは会わなくちゃいけないんです」

ちょっと、ハルさんの顔が暗くなった気がしたが、俺の気のせいだろうか。


「じゃあ、レイがアンダーグラウンドに来た理由って何ですか?」

パッと明るい顔になったハルさんは俺にも質問した。俺がアンダーグラウンドに来た理由。それは...

「俺がここに来た理由は...。家族を殺した悪魔を、あいつらを全て捕まえて、外の世界を平和にする。これが理由なんだ」

「それじゃあレイさんの家族は...すみませんボク、嫌な質問しちゃいましたね」

「いや、良いんだ。さあ、行こうぜ。モタモタしてると3日なんてあっという間に過ぎちゃうからな」

悪魔をこの世から消すため。俺はそのためなら何でもしてやる。特に家族を殺したあのブラッドアイの男。
あいつは今どこで何をしているのだろうか。アンダーグラウンドの地下牢獄に収容されている可能性は極めて低いだろうが、必ず見つけ出して、、、

待てよ、見つけ出して俺は何をするんだ?地下牢獄にあいつを閉じ込めるだけ?あいつはブラッドアイだ。閉じ込めたところでそこで殺人を続けるだろう。それではあいつはこの先も笑い続ける。あの日みたいに。

俺がアンダーグラウンドに来た本当の理由。それは、ここの規則に背くことになるだろう。だって、

《あの悪魔を殺すこと》

なのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追憶の刃ーーかつて時空を飛ばされた殺人鬼は、記憶を失くし、200年後の世界で学生として生きるーー

ノリオ
ファンタジー
今から約200年前。 ある一人の男が、この世界に存在する数多の人間を片っ端から大虐殺するという大事件が起こった。 犠牲となった人数は千にも万にも及び、その規模たるや史上最大・空前絶後であることは、誰の目にも明らかだった。 世界中の強者が権力者が、彼を殺そうと一心奮起し、それは壮絶な戦いを生んだ。 彼自身だけでなく国同士の戦争にまで発展したそれは、世界中を死体で埋め尽くすほどの大惨事を引き起こし、血と恐怖に塗れたその惨状は、正に地獄と呼ぶにふさわしい有様だった。 世界は瀕死だったーー。 世界は終わりかけていたーー。 世界は彼を憎んだーー。 まるで『鬼』のように残虐で、 まるで『神』のように強くて、 まるで『鬼神』のような彼に、 人々は恐れることしか出来なかった。 抗わず、悲しんで、諦めて、絶望していた。 世界はもう終わりだと、誰もが思った。 ーー英雄は、そんな時に現れた。 勇気ある5人の戦士は彼と戦い、致命傷を負いながらも、時空間魔法で彼をこの時代から追放することに成功した。 彼は強い憎しみと未練を残したまま、英雄たちの手によって別の次元へと強制送還され、新たな1日を送り始める。 しかしーー送られた先で、彼には記憶がなかった。 彼は一人の女の子に拾われ、自らの復讐心を忘れたまま、政府の管理する学校へと通うことになる。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

罪人がいつか神様をぶん殴る異世界譚

智恵 理侘
ファンタジー
 日頃から生きていくために罪を重ねてきた牧島重蔵(まきしまじゅうぞう)は気がつくと異世界へ、それも少女にされていた。混乱する中、振り返ると自分は既に死んだ事、そしてこのような状況に追いやられているのは書物神のせいだと思い出す。流れに身を任せて過ごすと北区の領主に拾われ、孤児院で過ごすがこれは書物神の作った世界――物語が静かに始まる。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

Be The Ace! ~転生チートで世界征服!?~ アルファポリス用

荒波
ファンタジー
東郷樹(いつき)はパイロットを志望して防衛大学校に入るもその夢を断たれてしまう。 失意の樹はロープ1本持って富士の樹海へ行き、そこで死神ストナタと出会う。 チート能力を付けるから異世界で活躍して来いというストナタに空が飛べるならと応じる樹。 異世界に来たらエルフ3:ハーピー1のクォーターの女の子にTS転生。 混血児と言うことで村では白眼視される。 しかし、ハーピーと恋をしたエルフの祖父に稽古を付けてもらったら急成長。 魔法使いなら杖!杖なら魔砲少女でしょと自重せずレプリカを作成。 魔法陣も研究したら撃てました!みんな大好きSLBの似非バージョン。 私服を作れば魔砲少女のコスプレ!? 魔王の新設する空軍に入り込んで謀略を張り巡らしつつ、現場に出ては人間たちをせん滅する。 目指すは魔も人も統べる世界征服だ!  PIXIVで一七夜月さん(http://www.pixiv.net/member.php?id=9208359)に表紙を描いてもらいました。  文字はなのはフォントを使用しております。  ありがとうございます。

処理中です...