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230話 「比較魔法 その1」
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私はクラベル。
王都出身の王都育ち。2年前に王都にある学園を卒業し、そのまま冒険者になった。今はDランクの冒険者として活動している。
学生時代はFランク。卒業後3ヶ月でEランクに昇格。1年経つ頃にはでDランクまで昇り詰めた。
早ければ今年中にCランクに上がれるだろうと言われている。2年でCランクになるのは滅多にいない人材らしい。Cランクになれば一人前と言われることから、まずはこれを目標にしている。
さて、私の身の上話はここまで。
「ここがコノマチ」
町が見えて来た。ガタゴトと揺れる馬車の上でどういう町だろうかと胸が弾む。
私は今、新たな拠点探しをしている。というのも王都は冒険者が多すぎるのが原因。
王都には学園があるせいで学生冒険者が多い。それとは別に若い冒険者の数も目立つ。こういう血気盛んなお年頃に限ってやたらと私に絡んでくる。初心者なくせに俺は出来ると口先だけの連中だ。
実力なんてないのにイキがるバカが多すぎて揉め事が頻繁にある。夢を求めて王都に来るやつほど問題行動が多いのだ。
それに私が女だからって近づいて来るバカも多いこと。男ども、視線でどこ見てるのか分かってるからな? こいつらはお断りすると逆ギレしてきて本当面倒臭い。
実際婚活のために冒険者になる女性が一定数いるのが悪い。私は冒険者としての仕事がしたいだけなので勘違いしないでほしい。
他にもどこへ行ってもパーティ組みませんかと声を掛けられる。基本的に冒険者は集団で動くもの。色々リスクが下がるからそれはしょうがない。だが報酬も分割されて少なくなるデメリットがある。それで私も何度か赤字になったことがある。これでは稼げない。
夢見る冒険者の大半はこういう現実を目の当たりにして止めていく。そういう世界だ。
このように王都にも色々と面倒な理由があって新たな拠点を探そうとしている。ここを訪れた理由は王都より人が少ないから。ただそれだけ。
コノマチに着いた。馬車から降り立った私はギルドを目指すことにした。
町に着いた感じだと、ここはのどかだ。王都の次ぐらいに大きい町だと噂で聞いていたが、思った以上に田舎だと思う。家の周りには大きな畑があり、農作業をしているのだろう。とても多くの人が住んでいる町には思えない。
それに子供やお年寄りの姿しか見えない。成人した若者達は出稼ぎにでもいっているのだろうか? 見渡した限りどこにもいない。
思っていたイメージと違う。情報が集まる場所といえばギルド。ここで確かめよう。
ギルドはどこかと近くにいた尋ねると、おばあちゃんが優しく教えてくれた。ありがたい。
「ギルドはね、この道を真っすぐ進んで大通りに出たら右。大きい看板があるから見たらすぐ分かるわよ。あっちは賑わっているから迷子に気を付けるのよ」
おばあちゃんと話をしたところ、コノマチの昔からの住民は、この辺りに住んでいるらしい。ここはのほほんとした村。平和なのよと言っているが何のことかはよく分からない。おばあちゃんに感謝を述べて私は歩きだした。
賑わっていると教えられた場所に向かうとだんだん建物が増えて来た。先程までの農村のような光景が一変し、都市のような建物が見えて来る。
「なにあれ……」
遠くからでも分かる大きな建物が見えて来た。その周りに店が集まっている。どうやらここがコノマチの中心らしい。大きな建物の周りには店がいっぱいある。若い大人たちはここで商売をしているのだろう。近づけば近づくほど活気が伝わって来る。
だんだんと先程道を教えてくれたおばあちゃんの話の意味が分かって来た。田舎の中で突然大都心のような賑やかな場所が現れるのだ。初めてここに来る人はびっくりするのではないだろう?
大通りと呼ばれる場所にたどり着くと、そこは王都と変わらないようなごちゃごちゃ感があった。王都生まれとしては懐かしい。
「すごい……」
ここだけ別世界のようだ。栄えているなあと思った。
周囲を見回すと、私と同じように驚いている立ち止まっている人がいる。多分ここに始めて来たんだろうなあ。見るからに観光客。私も今はただの観光客。邪魔にならないように道の端っこに移動した。
歩いている人を観察していると、冒険者らしき人を見かける回数が増えてきた。皆どこに向かっているのかと様子を見ていると、でかい看板があった。あそこがコノマチのギルドがある場所らしい。確かにこれなら迷うわけがない。それぐらい目立っていた。
少し歩くとギルドが見えて来た。王都より小さいけど普通の町のギルドよりは大きい。なにより建物が新しい。最近出来たのだろうか?
ギルドまでの道すがら大声を出して飲み食いしている冒険者の姿をよく見る。こういうところは王都と変わらない。
ギルドに着いた。中に入ると最初は視線を向けて来るが絡んでくるようなバカはいなかった。女性だからと何か言うようなやつを見たら即殴っていただろう。ここは王都と比べたら治安が良さそう。
「本日はどのようなご用件で?」
「しばらくコノマチで活動しようと思う。よろしく頼む」
受付では普通の対応をされる。王都だと嫌な顔をする受付嬢もいたりするのだ。しばらく世間話をしていると、ギルドの受付嬢が変なことを言い出した。
「王都からはるばる……もしかして初心者講習の参加者でしょうか?」
「初心者講習?」
「はい、このギルドには新米冒険者のための訓練施設があって……」
詳しく話を聞くと、ここでは冒険者の訓練出来る場所があるらしい。他にも冒険者の基礎的な知識を教える座学コースもあるそうだ。
王都ではそんな手厚いサポートがあるのを聞いたことがない。確か地域によってギルドのサポート体制が違うと聞いたことがある。新たな拠点探しで訪れた他の町は王都と大した違いはなかった。ここだけ明らかに運営が違うみたい。
もしかするとここは冒険者に悪い条件が揃った町なのかもしれない。聞いてみる。
「コノマチのギルドは手厚いサポート行うのですね。しかも無料だなんて聞いたことがない。いろいろ国中のギルドを見てきたがここが初めてかも」
「はい、ここは冒険者が不足していることが多い町です。観光で訪れる冒険者も多いのですが、なかなかここをメインとして活動する方は増えないのが現状ですね。そこで冒険者の環境を良くすることで少しでも多くの冒険者を移住させたいとコノマチのギルドマスターが動きました。若い人材が長く活動して欲しいと始めたのが初心者講習ですね。ベテランの方々にも手伝って貰っています。クラベルさんも参加してみませんか? 強制ではないのですが」
「いや、私はDランクなのだが……」
「え、Dランク?!」
すごい驚かれた。どうやら新米冒険者が王都からやって来たと思われていたようだ。私は年齢とか見た目で勘違いされることが多いので慣れている。問題ない。
その後、面白そうなので明日の初心者講習に参加することにしてみた。どんなことをするのか楽しみだ。
受付嬢と話が終わり、ギルドから出ようとしたところに飲み食いをしていた冒険者が話しかけて来た。ここのギルド内には酒場があるのだ。
「嬢ちゃんDランクなんだって? その年ですげえな。俺はマトメル。一応Bランクだ。それでここにいるのは皆Cランクの冒険者だ。よろしくな」
丁寧に一人ずつ自己紹介をされた。どうやらここに集まっているメンバーはコノマチで長く活動する先輩冒険者らしい。ただの中年飲んだくれ連中かと思ったが違うらしい。
今日はもう仕事が終わっているぞと笑いながら教えてくれた。酔っているので誇張している可能性は捨てきれないが。まあ丁度良いと思いコノマチの冒険者を探ってみることにした。
どうやらコノマチの冒険者はソロ活動が多く、一人じゃ無理という場合はパーティを組むという協力関係を築いているらしい。仲が良いやつらはパーティで常に動いているが無理な勧誘はしないという。
嘘か本当かは分からないけど面白い話を聞けた。ついでに若いから食え食えと食べ物も貰えた。昼時だったので丁度良かった。だがお酒は遠慮しておく。この後観光したいので。
「そういえばクラリス嬢ちゃんはなんでコノマチに来たんだ?」
「クラリスじゃなくてクラベルです。酔い過ぎですよ。コノマチに来た理由は特にありませんね。ここは仕事がし易く住みやすそうなところだとよいのですが」
色々コノマチについて教えて貰った。どこの店がどうだとかおススメの宿はどこだとか。長く住むなら私が最初に来た農村あたりが良いらしい。あそこの空いている家を拠点にするのもいいかもしれない。
「てっきり魔道具でも買いに来たのかと思ったよ」
「魔道具?」
「ん、違うのか? だいたいここに来る人の目的はそれだよな」
「それ何の話ですか?」
『えっ?!』
急に先輩冒険者の皆さんが凍り付いた。私何か変なことをいったのだろうか? さらにこの話を聞いていただろう受付嬢までこっちに押しかけて来た。よく見渡すとギルド中の人間が集まっている。
「クラベルさん、もしかしてここにナンス家があることを知らないんですか?!」
「ちょ、ちょっと。首しまる……ナンス家? ナンス家??」
受付嬢が首元の服を引っ張り首ながら揺らして来た。ナンス家。なんだっけ。どこかで聞いたことがあるのだけれど……。
「おお、まじかよ」
「知らない出来たのか」
「とんでもない新人さんじゃ」
「勇者か」
「それじゃあ応援しないとな」
なぜかすごーくバカにされているような気がする。
「とりあえずコノマチでは悪いことしないでくださいね。絶対です、物をポイって捨てるだけで死にますよ? 本当ですからね」
受付嬢のこの焦り方。目がヤバいし汗もすごい。どうやら嘘じゃないらしい。
他の冒険者も必死になって犯罪行為はNGだと説得してくる。私はそのようなゲス連中と違うので大丈夫だと言っておいたが、皆心配そうな顔でしてくる。
コノマチの人達は、小さい頃の私を知っているおじさんおぼさんみたいだなと思いつつ、ギルドを後にした。
コノマチには私の知らない何かがあるようだ。先輩冒険者も言っていたので調べることにした。聞いても皆う~んと口をすぼめて教えてくれなかった。まともに活動すれば問題ないんだと。
「……比較魔法」
私は魔法を使いながらコノマチを観光することにした。まずは情報集めをしよう。
王都出身の王都育ち。2年前に王都にある学園を卒業し、そのまま冒険者になった。今はDランクの冒険者として活動している。
学生時代はFランク。卒業後3ヶ月でEランクに昇格。1年経つ頃にはでDランクまで昇り詰めた。
早ければ今年中にCランクに上がれるだろうと言われている。2年でCランクになるのは滅多にいない人材らしい。Cランクになれば一人前と言われることから、まずはこれを目標にしている。
さて、私の身の上話はここまで。
「ここがコノマチ」
町が見えて来た。ガタゴトと揺れる馬車の上でどういう町だろうかと胸が弾む。
私は今、新たな拠点探しをしている。というのも王都は冒険者が多すぎるのが原因。
王都には学園があるせいで学生冒険者が多い。それとは別に若い冒険者の数も目立つ。こういう血気盛んなお年頃に限ってやたらと私に絡んでくる。初心者なくせに俺は出来ると口先だけの連中だ。
実力なんてないのにイキがるバカが多すぎて揉め事が頻繁にある。夢を求めて王都に来るやつほど問題行動が多いのだ。
それに私が女だからって近づいて来るバカも多いこと。男ども、視線でどこ見てるのか分かってるからな? こいつらはお断りすると逆ギレしてきて本当面倒臭い。
実際婚活のために冒険者になる女性が一定数いるのが悪い。私は冒険者としての仕事がしたいだけなので勘違いしないでほしい。
他にもどこへ行ってもパーティ組みませんかと声を掛けられる。基本的に冒険者は集団で動くもの。色々リスクが下がるからそれはしょうがない。だが報酬も分割されて少なくなるデメリットがある。それで私も何度か赤字になったことがある。これでは稼げない。
夢見る冒険者の大半はこういう現実を目の当たりにして止めていく。そういう世界だ。
このように王都にも色々と面倒な理由があって新たな拠点を探そうとしている。ここを訪れた理由は王都より人が少ないから。ただそれだけ。
コノマチに着いた。馬車から降り立った私はギルドを目指すことにした。
町に着いた感じだと、ここはのどかだ。王都の次ぐらいに大きい町だと噂で聞いていたが、思った以上に田舎だと思う。家の周りには大きな畑があり、農作業をしているのだろう。とても多くの人が住んでいる町には思えない。
それに子供やお年寄りの姿しか見えない。成人した若者達は出稼ぎにでもいっているのだろうか? 見渡した限りどこにもいない。
思っていたイメージと違う。情報が集まる場所といえばギルド。ここで確かめよう。
ギルドはどこかと近くにいた尋ねると、おばあちゃんが優しく教えてくれた。ありがたい。
「ギルドはね、この道を真っすぐ進んで大通りに出たら右。大きい看板があるから見たらすぐ分かるわよ。あっちは賑わっているから迷子に気を付けるのよ」
おばあちゃんと話をしたところ、コノマチの昔からの住民は、この辺りに住んでいるらしい。ここはのほほんとした村。平和なのよと言っているが何のことかはよく分からない。おばあちゃんに感謝を述べて私は歩きだした。
賑わっていると教えられた場所に向かうとだんだん建物が増えて来た。先程までの農村のような光景が一変し、都市のような建物が見えて来る。
「なにあれ……」
遠くからでも分かる大きな建物が見えて来た。その周りに店が集まっている。どうやらここがコノマチの中心らしい。大きな建物の周りには店がいっぱいある。若い大人たちはここで商売をしているのだろう。近づけば近づくほど活気が伝わって来る。
だんだんと先程道を教えてくれたおばあちゃんの話の意味が分かって来た。田舎の中で突然大都心のような賑やかな場所が現れるのだ。初めてここに来る人はびっくりするのではないだろう?
大通りと呼ばれる場所にたどり着くと、そこは王都と変わらないようなごちゃごちゃ感があった。王都生まれとしては懐かしい。
「すごい……」
ここだけ別世界のようだ。栄えているなあと思った。
周囲を見回すと、私と同じように驚いている立ち止まっている人がいる。多分ここに始めて来たんだろうなあ。見るからに観光客。私も今はただの観光客。邪魔にならないように道の端っこに移動した。
歩いている人を観察していると、冒険者らしき人を見かける回数が増えてきた。皆どこに向かっているのかと様子を見ていると、でかい看板があった。あそこがコノマチのギルドがある場所らしい。確かにこれなら迷うわけがない。それぐらい目立っていた。
少し歩くとギルドが見えて来た。王都より小さいけど普通の町のギルドよりは大きい。なにより建物が新しい。最近出来たのだろうか?
ギルドまでの道すがら大声を出して飲み食いしている冒険者の姿をよく見る。こういうところは王都と変わらない。
ギルドに着いた。中に入ると最初は視線を向けて来るが絡んでくるようなバカはいなかった。女性だからと何か言うようなやつを見たら即殴っていただろう。ここは王都と比べたら治安が良さそう。
「本日はどのようなご用件で?」
「しばらくコノマチで活動しようと思う。よろしく頼む」
受付では普通の対応をされる。王都だと嫌な顔をする受付嬢もいたりするのだ。しばらく世間話をしていると、ギルドの受付嬢が変なことを言い出した。
「王都からはるばる……もしかして初心者講習の参加者でしょうか?」
「初心者講習?」
「はい、このギルドには新米冒険者のための訓練施設があって……」
詳しく話を聞くと、ここでは冒険者の訓練出来る場所があるらしい。他にも冒険者の基礎的な知識を教える座学コースもあるそうだ。
王都ではそんな手厚いサポートがあるのを聞いたことがない。確か地域によってギルドのサポート体制が違うと聞いたことがある。新たな拠点探しで訪れた他の町は王都と大した違いはなかった。ここだけ明らかに運営が違うみたい。
もしかするとここは冒険者に悪い条件が揃った町なのかもしれない。聞いてみる。
「コノマチのギルドは手厚いサポート行うのですね。しかも無料だなんて聞いたことがない。いろいろ国中のギルドを見てきたがここが初めてかも」
「はい、ここは冒険者が不足していることが多い町です。観光で訪れる冒険者も多いのですが、なかなかここをメインとして活動する方は増えないのが現状ですね。そこで冒険者の環境を良くすることで少しでも多くの冒険者を移住させたいとコノマチのギルドマスターが動きました。若い人材が長く活動して欲しいと始めたのが初心者講習ですね。ベテランの方々にも手伝って貰っています。クラベルさんも参加してみませんか? 強制ではないのですが」
「いや、私はDランクなのだが……」
「え、Dランク?!」
すごい驚かれた。どうやら新米冒険者が王都からやって来たと思われていたようだ。私は年齢とか見た目で勘違いされることが多いので慣れている。問題ない。
その後、面白そうなので明日の初心者講習に参加することにしてみた。どんなことをするのか楽しみだ。
受付嬢と話が終わり、ギルドから出ようとしたところに飲み食いをしていた冒険者が話しかけて来た。ここのギルド内には酒場があるのだ。
「嬢ちゃんDランクなんだって? その年ですげえな。俺はマトメル。一応Bランクだ。それでここにいるのは皆Cランクの冒険者だ。よろしくな」
丁寧に一人ずつ自己紹介をされた。どうやらここに集まっているメンバーはコノマチで長く活動する先輩冒険者らしい。ただの中年飲んだくれ連中かと思ったが違うらしい。
今日はもう仕事が終わっているぞと笑いながら教えてくれた。酔っているので誇張している可能性は捨てきれないが。まあ丁度良いと思いコノマチの冒険者を探ってみることにした。
どうやらコノマチの冒険者はソロ活動が多く、一人じゃ無理という場合はパーティを組むという協力関係を築いているらしい。仲が良いやつらはパーティで常に動いているが無理な勧誘はしないという。
嘘か本当かは分からないけど面白い話を聞けた。ついでに若いから食え食えと食べ物も貰えた。昼時だったので丁度良かった。だがお酒は遠慮しておく。この後観光したいので。
「そういえばクラリス嬢ちゃんはなんでコノマチに来たんだ?」
「クラリスじゃなくてクラベルです。酔い過ぎですよ。コノマチに来た理由は特にありませんね。ここは仕事がし易く住みやすそうなところだとよいのですが」
色々コノマチについて教えて貰った。どこの店がどうだとかおススメの宿はどこだとか。長く住むなら私が最初に来た農村あたりが良いらしい。あそこの空いている家を拠点にするのもいいかもしれない。
「てっきり魔道具でも買いに来たのかと思ったよ」
「魔道具?」
「ん、違うのか? だいたいここに来る人の目的はそれだよな」
「それ何の話ですか?」
『えっ?!』
急に先輩冒険者の皆さんが凍り付いた。私何か変なことをいったのだろうか? さらにこの話を聞いていただろう受付嬢までこっちに押しかけて来た。よく見渡すとギルド中の人間が集まっている。
「クラベルさん、もしかしてここにナンス家があることを知らないんですか?!」
「ちょ、ちょっと。首しまる……ナンス家? ナンス家??」
受付嬢が首元の服を引っ張り首ながら揺らして来た。ナンス家。なんだっけ。どこかで聞いたことがあるのだけれど……。
「おお、まじかよ」
「知らない出来たのか」
「とんでもない新人さんじゃ」
「勇者か」
「それじゃあ応援しないとな」
なぜかすごーくバカにされているような気がする。
「とりあえずコノマチでは悪いことしないでくださいね。絶対です、物をポイって捨てるだけで死にますよ? 本当ですからね」
受付嬢のこの焦り方。目がヤバいし汗もすごい。どうやら嘘じゃないらしい。
他の冒険者も必死になって犯罪行為はNGだと説得してくる。私はそのようなゲス連中と違うので大丈夫だと言っておいたが、皆心配そうな顔でしてくる。
コノマチの人達は、小さい頃の私を知っているおじさんおぼさんみたいだなと思いつつ、ギルドを後にした。
コノマチには私の知らない何かがあるようだ。先輩冒険者も言っていたので調べることにした。聞いても皆う~んと口をすぼめて教えてくれなかった。まともに活動すれば問題ないんだと。
「……比較魔法」
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