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208話 「職場体験 その4」
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俺はミチオ。ただいま職場体験でコノマチにいる。
魔道具職人として有名なダンディさんに個人的な悩みを聞いてもらった。全く嫌な顔をするどころか真剣に相談に乗ってもらえた。噂と全然違って尊敬出来るタイプの人だと思った。だいぶ心が少し軽くなった気がする。
ただ魔道具に関しては考え方が異次元すぎてついていけなかった。攻撃力? それは生活を便利にする魔道具に必要なことだろうか。
ナンスと言えばただの魔道具の店でありながら圧倒的な武力を持つことで有名だ。貴族が喧嘩を売れば蹴散らし、国の軍隊が出てきてもお構いなし。戦争が始まれば新魔道具の実験だと呼ばれてないのに勝手にやって来る。学園でそう教わったが真実は俺には分からない。
すでに世界中で恐れられているのに更なる攻撃力を求めるのか。天才の考えはよく分からないな。
そんなダンディさんに息子であるメンテくんを紹介され、そのまま預けられた。学生たち全員で面倒を見ろって言われたんだが……。
「なにちてう? あちょぼー!」
遊んで欲しいのかグイグイと俺の服を引っ張って来る。なんたってメンテくんはまだ1歳。仕事してようがしまいと関係なく遊んで欲しいようだ。人懐っこくて可愛い、そこにいるだけで周りが明るくなるムードメーカー。それがメンテくんの印象だ。
気に入られたのだろうか? やたらと俺にばっかり甘えて来る。俺何かしたっけ? 丁度いいからと育児を押し付けられた気しかしない。これも仕事のうちと言っていたが本当か? 育児も仕事とかそういう話じゃなければよいのだが……。
今の俺のようにメンテくんに邪魔されても集中出来る人いるのだろうか? それが出来れば職人だとダンディさんは言いたいのかもしれないな。ポジティブに考えよう。
「はあく(早く)」グイグイ
「ちょっと待ってくれる? もう少しで終わるから」
遊べ遊べと服を引っ張って離さないからまともに課題に取り組むことが出来ない。集中したいときとか忙しいときに限って話しかけて来る気がするな。そんな俺をしり目に他の学生は課題を進めていく。このままだと出遅れてしまうな。
「うし、今から町行って来るわ。誰か一緒に行こうぜ」
「あちょぼー!」
「え? 待ってくれ。あとで遊んであげるから。な? 兄ちゃんは外に行くだけだから」
「うぐぅ……」
「うそうそ。遊ぼうか!」
「きゃきゃ!」
町に行こうとする他の学生を見つけると急にくっ付きまくり、店の中に連れ戻そうとするメンテくん。無理に行こうとすると泣くから困ったもんだ。おかげで誰も外に行けない。課題が進まないから俺たちはみんな困っていた。
「とりあえず木材だけでも見に行かない? ここにあるって話だし」
「そうだな」
「はーい!」←メンテ
俺たち学生は店の中にある素材置き場までやって来た。なぜかメンテくんは店の中なら俺たちの行動を邪魔する気配がない。メンテくんからあまり遠くに離れなければいいのかな? とんでもなく甘え上手な子だ。
「ええ?! これ割と良い木だぞ。本当に全部自由に使ってもいいのか?」
彼はジュモク。全身がゴツイ木みたいな体のわりに繊細な作業が得意な男だ。”木魔法”のスキルを持っている。ジャンル的には植物魔法の一種で木に特化したタイプ。だから木材について深い知識を持っている。木の魔道具について知りたいから参加したらしい。
「余裕で全員の分があるじゃない。20個どころか一人100個作っても余るでしょうね」
彼女はケイ。短めのフワッとしたショートカットで黄色っぽい髪色の女性だ。なんとなく大人っぽい。彼女は”計算魔法”というスキルを持っている。頭の回転が早くなるらしい。みんなにケイさんって呼ばれている。
「それで私思ったんだけど、この課題って一人でやるのは無理だと思う。だから……」
「ねー、こえは?」
「ちょっと待ってね。メンテくん。今話をしているの」
「あえは? あちもあえも」
「……聞いてないわね。このこと(メンテくんの面倒)も含めてみんなで協力しない?」
「いいんじゃない?」
「しょうがない」
「まあそんな気がしてた」
ケイさんからメンテくんが邪魔して課題が進まないからみんなで協力しないか? という提案が出た。即採用された。
これでメンテくんを皆で平等に扱える。今のままだと気に入られた俺が一番面倒を見る時間多くなるもんな。正直俺としては願ってもないことだった。ありがとうケイさん!
今更だが今回職場体験に参加している学生は俺を入れて7人。みんな知り合いで顔見知りだ。授業ではどっちがいいものが出来るか勝負だ! みたいなことはあるがいがみ合うような関係ではない。どちらかといえば仲が良かったりする。
「俺この課題って協調性を試されてるのかって思ってたぞ」
「そう? 私はお金の使い方かなあ。だってみんな同じ金額だから比較されちゃうじゃん」
「ダンディさんも自分の個性を出せとか言ってたしね」
「生産する速さを知りたいとかじゃねえの?」
「違う。適応力だ!」
「総合的な力じゃないの?」
「「「「「ざわざわ」」」」」
全員で作るとなってから色々と意見を話し合った。みんなそんなこと考えていたんだ、やっぱり人によって考えが違うんだなってあらためて思った。
「木がベースになるものを作る感じ?」
「それがいいかも。飾りとか足りないものは町で各々買えばかなり節約出来そう」
「サイズはどうする?」
「全員同じサイズでいいのでは? あとはそれぞれ個性を出せばいいっしょ」
「じゃあ俺木切るわ」
「おう。頼んだ」
10分程話し合って得意な魔法や力が違うからそこだけ差別化する、ベースは全員同じものを使うと決まった。誰も異論はなかった。役割分担をし、順調に課題を進めていったと思う。
「こえ(これ)」
「どうしたのメンテくん?」
「とっどいー(丁度良いよ)」
「えっと……。そうだね。あとで使おうかなあ」
メンテくんも一緒に作りたいのか俺たちの話に積極的に入って来る。俺よりも発言数が多いが何を言っているのかはよく分からない。それっぽいことをかたことで言っているのだ。分かる範囲でみんなが相手をしたら機嫌を良くしていた。
メンテくんも1歳と思えないほど大活躍していたんじゃないかと褒めた。するともっと褒めてと顔に出ていた。可愛い。この子は大きくなっても攻撃力とか変なことは言わないと思うな。
「そういえばお客様の層って分かる人いる?」
「どうしたの急に」
「配布するって聞いたけどそれって子供が選んだりするのかな? メンテくんを見ていたら思いついたというか何というか」
「「「「「――?!」」」」」
課題の品を誰に配るのか。どうせ来店した客の誰かだろ? 得意な物作ればいいしょとみんな考えており、具体的に誰かを知っている者はいなかったようだ。まあ俺もだけど。
このままだとターゲット層が誰だか分からなくてヤバいと俺たちみんなは慌てて店に来る客層を確認し始めた。平日なのに人が多く、色々な年齢の人がいるみたいだった。すごい繁盛していることしか分からないな。
「これだと誰を対象に配布するのか分からないよね」
「メンテくんがいなかったら考えもしなかったよ」
「ありがとうメンテくん」
「きゃきゃ!」
メンテくんは構ってもらえるとすごく嬉しそうな顔をするので分かりやすい。
「私商品に何があるか見て来る!」
「俺町の店でも見て来る」
「木材の加工なら任せとけ」
「スタッフの人に何か情報を聞いて来るわ」
「メンテくんは……俺と遊ぶか?」
「はーい!」
みんなで出来ることを分けて行動し、1日目は終了した。あとになってから気付いたけどメンテくんのおかげで学生たちが団結した気がする。
◆
2日目。
初日は全員で同じ仕事を体験したが、今日から作る方と売る方と別れて行動した。俺は作る方に参加した。俺の得意なことを見つけようとこっちを選んだ。
一緒に働くスタッフの人に得意なことは? と聞かれだいたい何でも出来ると答えたらこの店で働かないかと誘われた。実力を認められたような気がして嬉しかった。
2日働いて分かったがこの店では嫌味を言うような人はいないようだ。職人の仕事だと頑固な人が多いからへこたれるなよと学園の先生に言われていた。だがそういう人は一人もいなかったな。むしろ分からないことがあれば教えてくれる優しい人の方が多かった。だから俺でもすぐ馴染めたと思う。
2日目の自由時間。今俺たち学生は、みんなで協力しながら木の加工をしている。
使う木材のサイズは、縦横厚さが全部7センチ。これを道具や魔法を使い好きな形に削っていく。最終的にメンテくんみたいな小さな手のひらでも掴めるようなサイズになる予定である。この加工の差で各々の個性を出し、20個作る課題をクリアするのだ。
ものづくり中は無口になる人がいるが、俺たちはおしゃべりが多い方だ。会話を楽しみながら作業を進めている。働いているスタッフはいい人が多いよねとみんなで盛り上がった。さて、そろそろ俺も何かを作ろう。
「これどうだ?」
「それただの木じゃん……」
「違うぞ? これは木で出来たリアルな木だ。カッコいいだろ~?」
「へえ。そ、そうか。頑張れよ。そっちは何作ってんの?」
「もちろん武器だぜ。木刀だ!」
「お前らしいな」
木で木を作る、木製のアクセサリー、小さな人形、武器など。各々個性豊かな小物を作っていた。
みんな作りたいものがすぐ見つかっていいな。俺はまだ何にしようか決まっていない。一度みんなが作ったものを真似してみたが上手くいかなかった。俺のはパチモンにしか見えない。はあ、俺は何が得意なんだろう。
「なにちてう?(何してるの?)」
今日も遊びに来たメンテくん。連れて来た人の話によると、お昼寝をした後なので元気が有り余っているらしい。
「みう(見る)」
「ちょと待って、危ないよ?!」
みんなの懐に強引に入り込むメンテくん。膝の上に座ってみんなの作業を見たり、加工中の小物を奪ったりと手が付けられない。この赤ちゃんが近くにいる間は作業が中断されるのだ。中断している人がメンテくんのお世話係になるのがルールである。
「こえは?」
「これは火の魔法だよ。ちょっと炙るといい感じになるんだ」
「きゃきゃ!」
次々とみんなが作った小物に興味を示すメンテくん。子供の興味を引くという点で一応参考にはなっている。まあ悪くはないんだけど作業の邪魔になっているのがなあ。
誰もがメンテくんのことをただただ可愛いくて無邪気な子だと思っていた。そう、このときまでは……。
魔道具職人として有名なダンディさんに個人的な悩みを聞いてもらった。全く嫌な顔をするどころか真剣に相談に乗ってもらえた。噂と全然違って尊敬出来るタイプの人だと思った。だいぶ心が少し軽くなった気がする。
ただ魔道具に関しては考え方が異次元すぎてついていけなかった。攻撃力? それは生活を便利にする魔道具に必要なことだろうか。
ナンスと言えばただの魔道具の店でありながら圧倒的な武力を持つことで有名だ。貴族が喧嘩を売れば蹴散らし、国の軍隊が出てきてもお構いなし。戦争が始まれば新魔道具の実験だと呼ばれてないのに勝手にやって来る。学園でそう教わったが真実は俺には分からない。
すでに世界中で恐れられているのに更なる攻撃力を求めるのか。天才の考えはよく分からないな。
そんなダンディさんに息子であるメンテくんを紹介され、そのまま預けられた。学生たち全員で面倒を見ろって言われたんだが……。
「なにちてう? あちょぼー!」
遊んで欲しいのかグイグイと俺の服を引っ張って来る。なんたってメンテくんはまだ1歳。仕事してようがしまいと関係なく遊んで欲しいようだ。人懐っこくて可愛い、そこにいるだけで周りが明るくなるムードメーカー。それがメンテくんの印象だ。
気に入られたのだろうか? やたらと俺にばっかり甘えて来る。俺何かしたっけ? 丁度いいからと育児を押し付けられた気しかしない。これも仕事のうちと言っていたが本当か? 育児も仕事とかそういう話じゃなければよいのだが……。
今の俺のようにメンテくんに邪魔されても集中出来る人いるのだろうか? それが出来れば職人だとダンディさんは言いたいのかもしれないな。ポジティブに考えよう。
「はあく(早く)」グイグイ
「ちょっと待ってくれる? もう少しで終わるから」
遊べ遊べと服を引っ張って離さないからまともに課題に取り組むことが出来ない。集中したいときとか忙しいときに限って話しかけて来る気がするな。そんな俺をしり目に他の学生は課題を進めていく。このままだと出遅れてしまうな。
「うし、今から町行って来るわ。誰か一緒に行こうぜ」
「あちょぼー!」
「え? 待ってくれ。あとで遊んであげるから。な? 兄ちゃんは外に行くだけだから」
「うぐぅ……」
「うそうそ。遊ぼうか!」
「きゃきゃ!」
町に行こうとする他の学生を見つけると急にくっ付きまくり、店の中に連れ戻そうとするメンテくん。無理に行こうとすると泣くから困ったもんだ。おかげで誰も外に行けない。課題が進まないから俺たちはみんな困っていた。
「とりあえず木材だけでも見に行かない? ここにあるって話だし」
「そうだな」
「はーい!」←メンテ
俺たち学生は店の中にある素材置き場までやって来た。なぜかメンテくんは店の中なら俺たちの行動を邪魔する気配がない。メンテくんからあまり遠くに離れなければいいのかな? とんでもなく甘え上手な子だ。
「ええ?! これ割と良い木だぞ。本当に全部自由に使ってもいいのか?」
彼はジュモク。全身がゴツイ木みたいな体のわりに繊細な作業が得意な男だ。”木魔法”のスキルを持っている。ジャンル的には植物魔法の一種で木に特化したタイプ。だから木材について深い知識を持っている。木の魔道具について知りたいから参加したらしい。
「余裕で全員の分があるじゃない。20個どころか一人100個作っても余るでしょうね」
彼女はケイ。短めのフワッとしたショートカットで黄色っぽい髪色の女性だ。なんとなく大人っぽい。彼女は”計算魔法”というスキルを持っている。頭の回転が早くなるらしい。みんなにケイさんって呼ばれている。
「それで私思ったんだけど、この課題って一人でやるのは無理だと思う。だから……」
「ねー、こえは?」
「ちょっと待ってね。メンテくん。今話をしているの」
「あえは? あちもあえも」
「……聞いてないわね。このこと(メンテくんの面倒)も含めてみんなで協力しない?」
「いいんじゃない?」
「しょうがない」
「まあそんな気がしてた」
ケイさんからメンテくんが邪魔して課題が進まないからみんなで協力しないか? という提案が出た。即採用された。
これでメンテくんを皆で平等に扱える。今のままだと気に入られた俺が一番面倒を見る時間多くなるもんな。正直俺としては願ってもないことだった。ありがとうケイさん!
今更だが今回職場体験に参加している学生は俺を入れて7人。みんな知り合いで顔見知りだ。授業ではどっちがいいものが出来るか勝負だ! みたいなことはあるがいがみ合うような関係ではない。どちらかといえば仲が良かったりする。
「俺この課題って協調性を試されてるのかって思ってたぞ」
「そう? 私はお金の使い方かなあ。だってみんな同じ金額だから比較されちゃうじゃん」
「ダンディさんも自分の個性を出せとか言ってたしね」
「生産する速さを知りたいとかじゃねえの?」
「違う。適応力だ!」
「総合的な力じゃないの?」
「「「「「ざわざわ」」」」」
全員で作るとなってから色々と意見を話し合った。みんなそんなこと考えていたんだ、やっぱり人によって考えが違うんだなってあらためて思った。
「木がベースになるものを作る感じ?」
「それがいいかも。飾りとか足りないものは町で各々買えばかなり節約出来そう」
「サイズはどうする?」
「全員同じサイズでいいのでは? あとはそれぞれ個性を出せばいいっしょ」
「じゃあ俺木切るわ」
「おう。頼んだ」
10分程話し合って得意な魔法や力が違うからそこだけ差別化する、ベースは全員同じものを使うと決まった。誰も異論はなかった。役割分担をし、順調に課題を進めていったと思う。
「こえ(これ)」
「どうしたのメンテくん?」
「とっどいー(丁度良いよ)」
「えっと……。そうだね。あとで使おうかなあ」
メンテくんも一緒に作りたいのか俺たちの話に積極的に入って来る。俺よりも発言数が多いが何を言っているのかはよく分からない。それっぽいことをかたことで言っているのだ。分かる範囲でみんなが相手をしたら機嫌を良くしていた。
メンテくんも1歳と思えないほど大活躍していたんじゃないかと褒めた。するともっと褒めてと顔に出ていた。可愛い。この子は大きくなっても攻撃力とか変なことは言わないと思うな。
「そういえばお客様の層って分かる人いる?」
「どうしたの急に」
「配布するって聞いたけどそれって子供が選んだりするのかな? メンテくんを見ていたら思いついたというか何というか」
「「「「「――?!」」」」」
課題の品を誰に配るのか。どうせ来店した客の誰かだろ? 得意な物作ればいいしょとみんな考えており、具体的に誰かを知っている者はいなかったようだ。まあ俺もだけど。
このままだとターゲット層が誰だか分からなくてヤバいと俺たちみんなは慌てて店に来る客層を確認し始めた。平日なのに人が多く、色々な年齢の人がいるみたいだった。すごい繁盛していることしか分からないな。
「これだと誰を対象に配布するのか分からないよね」
「メンテくんがいなかったら考えもしなかったよ」
「ありがとうメンテくん」
「きゃきゃ!」
メンテくんは構ってもらえるとすごく嬉しそうな顔をするので分かりやすい。
「私商品に何があるか見て来る!」
「俺町の店でも見て来る」
「木材の加工なら任せとけ」
「スタッフの人に何か情報を聞いて来るわ」
「メンテくんは……俺と遊ぶか?」
「はーい!」
みんなで出来ることを分けて行動し、1日目は終了した。あとになってから気付いたけどメンテくんのおかげで学生たちが団結した気がする。
◆
2日目。
初日は全員で同じ仕事を体験したが、今日から作る方と売る方と別れて行動した。俺は作る方に参加した。俺の得意なことを見つけようとこっちを選んだ。
一緒に働くスタッフの人に得意なことは? と聞かれだいたい何でも出来ると答えたらこの店で働かないかと誘われた。実力を認められたような気がして嬉しかった。
2日働いて分かったがこの店では嫌味を言うような人はいないようだ。職人の仕事だと頑固な人が多いからへこたれるなよと学園の先生に言われていた。だがそういう人は一人もいなかったな。むしろ分からないことがあれば教えてくれる優しい人の方が多かった。だから俺でもすぐ馴染めたと思う。
2日目の自由時間。今俺たち学生は、みんなで協力しながら木の加工をしている。
使う木材のサイズは、縦横厚さが全部7センチ。これを道具や魔法を使い好きな形に削っていく。最終的にメンテくんみたいな小さな手のひらでも掴めるようなサイズになる予定である。この加工の差で各々の個性を出し、20個作る課題をクリアするのだ。
ものづくり中は無口になる人がいるが、俺たちはおしゃべりが多い方だ。会話を楽しみながら作業を進めている。働いているスタッフはいい人が多いよねとみんなで盛り上がった。さて、そろそろ俺も何かを作ろう。
「これどうだ?」
「それただの木じゃん……」
「違うぞ? これは木で出来たリアルな木だ。カッコいいだろ~?」
「へえ。そ、そうか。頑張れよ。そっちは何作ってんの?」
「もちろん武器だぜ。木刀だ!」
「お前らしいな」
木で木を作る、木製のアクセサリー、小さな人形、武器など。各々個性豊かな小物を作っていた。
みんな作りたいものがすぐ見つかっていいな。俺はまだ何にしようか決まっていない。一度みんなが作ったものを真似してみたが上手くいかなかった。俺のはパチモンにしか見えない。はあ、俺は何が得意なんだろう。
「なにちてう?(何してるの?)」
今日も遊びに来たメンテくん。連れて来た人の話によると、お昼寝をした後なので元気が有り余っているらしい。
「みう(見る)」
「ちょと待って、危ないよ?!」
みんなの懐に強引に入り込むメンテくん。膝の上に座ってみんなの作業を見たり、加工中の小物を奪ったりと手が付けられない。この赤ちゃんが近くにいる間は作業が中断されるのだ。中断している人がメンテくんのお世話係になるのがルールである。
「こえは?」
「これは火の魔法だよ。ちょっと炙るといい感じになるんだ」
「きゃきゃ!」
次々とみんなが作った小物に興味を示すメンテくん。子供の興味を引くという点で一応参考にはなっている。まあ悪くはないんだけど作業の邪魔になっているのがなあ。
誰もがメンテくんのことをただただ可愛いくて無邪気な子だと思っていた。そう、このときまでは……。
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