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200話 「とある村の守り神伝説 その1」
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「ハッピーニューイヤー!」
「え、誰?! というかここは??」
「おやおや、どうしたんだい? まさか俺のことを忘れてしまったのかな?」
「はあ、忘れる?? 忘れるも何もあんたとは初対面だろう……」
「HA HA HA! そうかそうか。混乱しているのだな。なら名乗ろうではないか。俺の名は”アルティメット・ハンサム・キャット・テンシ・メンテ・ナンス” 記念すべきときに現れる世界で一番カッコいい存在さ!」
バサーっと羽を広げる謎の男。いや、そもそも人? なんだこいつは?? というかなんて派手な恰好をしてやがる?!
「うわあ?! なんだその羽?? こっち来るな」
「HA HA HA! 恥ずかしがるでない。もう俺たちは虎柄を着ている仲間ではないか」
「うお?! いつの間にこんなダサい姿に?!」
「猫っていいよな。お前も一緒に猫になりたいんだろう? 今年は虎がおススメだ」
「さっきから何言ってるんだよ?! うおおおお?! 身体が縮んでにゃあああああああああああああああああああああああああ」
◆
「はっ?!!!」
びっくりした。変な男に虎柄とかいう模様のタイツを着せられ、だんだん自分が猫になっていく……という変な夢を見てしまったようだ。こんなヒヤヒヤした夢を見たのは生まれて初めてだ。
んと、ここはどこだ? なんで木に寄りかかって寝ていたんだ……??
……はっ!? 思い出した。
俺はとあるCランクの冒険者。ランク、クラス、級など色々呼ばれ方があるがこの国は確かランクだったな。誰でも時間を掛けれは慣れるのがCランクだ。ベテラン冒険者は最低でもこのランクまで上がっているものだ。
Cの上のBランク以上になるには、他の人と違ったスキルや魔法が使えれば可能性がある。または特定の分野において知識や経験があればなれるものだ。という俺もそろそろBランクになれるかもって話だった。というのも俺はあるスキルを持っているからだ。
そのスキルの名は”不変”
あることに対して変化がない。それが”不変”というスキルだ。
この世界では有名な話だが、ある王は不変のスキルを持っていた。その王は毒に対して一切影響を受けないという力を持っていた。その王からすれば猛毒を持っていようが腐っていようが全ての食材が食べ物だった。この世に食べられない物はない。うまい物は後世に残すべし。こうしてこの世界中を旅して様々な食材を発見し、さらに調理方法も研究していった。後にこの世界の食文化を作ったと言われる偉大な王の名はグルメ。グルメ王は不変のスキルを持っていたという話だ。……知らなかったのか? 結構有名だと思うんだがな。
俺の場合は、目で見えるものが変わらないという力を持っている。あり大抵に言えば周囲の影響を一切受けないのだ。例えば夜であろうと明るいままハッキリと見える。太陽を見ても眩しくない。魔法で幻影や強い光を見せる技があるが、それたは俺には効果がない等々。何があろうと見え方は変わらないし、視力も上がったり下がったりせず常に一定。はっきり言って地味だが便利なスキルだ。
だが俺は冒険者になり、暗闇でもいつも通り行動出来るという大きなアドバンテージを得た。そのため偵察や夜間の環境調査などで活躍する機会が多い。そろそろBランクになれるだろうと先輩方に言われている。
そうだな。俺のことは『不変の魔眼』とでも呼んでくれ。誰がに流したのか知らないが俺の名前なんかよりこの二つ名の方が有名になった。怒っていいのか喜んでいのかは分からない。
俺の自己紹介はここまででいいだろう。ここからはある依頼について話す。
ここ最近、森の生き物が不自然な死に方をしていると報告があった。近くの住民に話を聞いてもそれらしき原因が分からず、目撃情報すらないようだ。昼に調査をしても何の異常も起こらないことから夜に何かが起きている。夜に強い冒険者といえば不変の魔眼だ! と俺にギルドから依頼が来た。誰だよギルドに俺の二つ名を教えたやつは……。
「まずは最初に報告があったから村から調べてみるぞ」
この人は俺の先輩。Bランクの冒険者で行く先々で痕跡を集め、原因を追跡するプロ冒険者だ。俺の師匠である。俺も先輩も戦闘は基本的に苦手、サポートぐらいは出来るけど逃げ足の方が早い。戦闘スタイルも似ているためかとても気が合った。今回はそんな俺と先輩の二人を中心に暇な冒険者と一緒に調査することになった。
「先輩。動物の死体を見つけましたがこれは……」
「んー。事故で死んだのだろう。他の生き物に食べられた形跡もあるからかなり時間は経っている」
「ですよね」
「特にこの森に異常はない。いたって普通だな」
「何が問題なんでしょう??」
村の近くだしランクの低い冒険者も総動員されてたが、特に何も見つかるものはなかった。夜は先輩と俺の二人で見回ったがこちらもハズレだった。
「ここにはもう何もなさそうだ。違う町に行くぞ」
こうして俺と先輩は報告のあった村や町を訪ねた。だが原因らしきものを見つけることが出来なかった。本当は何も問題がなかったのでは? 移動が怠いからこの依頼早く終わってくれないかとそのときの俺は思っていた。明日にはギルドに報告をして終わらせようと先輩と話していたからな。そんな中、ギルドから緊急の情報がもたらされた。
「魔物が死んでいる? 大きな足跡??」
「場所はどこだ?!」
どうやら調査した地域とは違う場所で不自然な魔物の死体が発見されたらしい。俺と先輩は急いで現場に駆け付けたのだが、それは想像以上にヤバいものだった。
「先輩、大きなクモが死んでますね」
「バカ、そっちじゃない! これを見ろ。なんて大きさだ……」
「嘘だろ……」
5メートルぐらいあるクモが地面に押し潰されていた。明らかに不自然な凹み。足、または腕の力だけでこんな足跡が出来るってか?? クモの死に方が明らかに事故によるものではないのは分かった。
「これは一発で仕留められたのでしょうか」
「だろうな。傷がほとんどないし抵抗した様子もない。それに周りを見ろ、やつの罠がない」
「まさか罠ごと?!」
糸を仕掛けて獲物を罠に誘うのがこのクモの魔物の常套手段である。魔法で糸を遠くまで飛ばす性質を持っているが、生態は普通のクモと変わらない。虫がエサか動物をエサがぐらいだ。そんな魔物の作る糸は強靭だ。火も使わず一撃で倒す? 俺からしたら馬鹿げた話である。
「これは10メートル以上あってもおかしくないぞ……」
「10?!」
先輩が信じられないことを言った。このクモを潰した原因がいるのだと。さらに地面に顔を近づけた先輩は何かを発見する。
「見ろ、足跡があるぞ。だがサイズがよく分からない……。叩き潰した、上からの奇襲? 相手は飛んで移動しているのか??」
「やっぱり魔物ですか」
「その可能性が高い。戦闘力も未知数だしランクに制限が必要になるかもしれん。これはとんでもないことになりそうだ」
俺と先輩は痕跡を辿ったが原因を見つけることが出来なかった。だが人間による犯行ではないことは判明した。俺と先輩の報告によってギルドが動いた。低いランクの冒険者は森に入ることが禁じられ、Cランク以上の冒険者が森の探索を始めた。
「キツネ、シカ、クマ。見つかったのはいたって普通の動物ですね」
「そいつらは魔物じゃないのか?」
「小さな魔物もいたそうですが、地元の人の話では普通の動物と変わらないようです。他にも食べられた形跡もあったありなかったりって話です」
「どういうことだ?」
「さあ。俺にも分かりませんよ」
死んだまま放置されたと思われる動物が見つかった。しかも大量にだ。何が目的なのか分からない。さらに情報を集めるために調査は続いた。連日の調査の結果、どんどん死体が見つかるのであった。明らかに異常事態なのは間違いない。
「でかいイノシシですねえ」
「こいつは特殊な力こそないが身体能力が高いやつだな。鼻もいいし厄介な魔物だぞ」
「ここってそんな魔物も出るんですね」
「死後1日も経ってないな。俺たちも調査中に出会っていたかもしれん」
これはギルドに届けられたイノシシの死体である。なぜか綺麗な状態で発見されたため、死因を調べていた。先輩は魔物の解体も得意であり、俺も弟子として一緒に手伝っていた。お金になるとギルドは浮かれていたが、こっちは真面目に調査に取り組んでいるんだよ。まったくよう。
「不変、死因が分からん」
「そんなこと言われても……」
先輩はお手上げだった。なら俺が分かるわけがない。
「じゃあ毒とか食べたんですかね」
「分からん。だが毒はないぞ。あそこで食べてる連中がいるからな」
「うわ、ずる」
ギルドでイノシシの肉料理が格安で販売されていた。これだから冒険者ってやつは……。
「……」
「どうしましたか先輩?」
「小さな穴……? これは解体中に傷付いただけか。いや何でもない」
結局この日は何も分からなかった。ちなみにこの後、俺もイノシシ肉を食べた。おいしかった。
イノシシ解体から数日後、今度は別の町から情報が入った。
「先輩、依頼していた魔物が全滅していたそうです。冒険者が向かったところ死体の山があったようですが、原因となる魔物はいなかったそうです」
「群れでもお構いなしってか。こいつはヤバいな……」
数が多かろうと隠れるのか上手な魔物だろうと何だろうと生き物なら何でも死んでいるらしい。現場の状況から同じ魔物がやったのであろうと判断された。
今謎の魔物は人里に降りてこないが、もしも人間が狙われたとしたら……。これはかなり早く対応しなくてはヤバい。緊急性が高いと俺と先輩は判断した。急いでギルドマスターに連絡し、このギルドにいる冒険者を集め、地図を見せて状況を確認していった。
「ここが最初。次に見つかった場所はここ。それから森の中を移動してこう。移動速度がかなり早いぞ。だが向かっている方向は分かった。次に謎の魔物が現れるのはここだ!」
「「「「「「おおおおお!」」」」」
ドーンと指差し、自信満々に演説する先輩は恰好よかった。そして、このギルドのマスターも動かした。
「このまま謎の魔物が町を狙ったら被害が最悪なものになるな……。まさかここまで大事になるとは。決断せねばならん。Cランク以上の動ける冒険者を集めろ。他の支部にも救援要請。緊急事態だ! 謎の魔物を討伐せよ!! 依頼料はまあそのうち出るだろう。本部に掛け合ってやる」
「「「「「うおおおおー!!」」」」」
盛り上がれば動くのは冒険者のさがである。こうして俺たち冒険者は動き出した。
「え、誰?! というかここは??」
「おやおや、どうしたんだい? まさか俺のことを忘れてしまったのかな?」
「はあ、忘れる?? 忘れるも何もあんたとは初対面だろう……」
「HA HA HA! そうかそうか。混乱しているのだな。なら名乗ろうではないか。俺の名は”アルティメット・ハンサム・キャット・テンシ・メンテ・ナンス” 記念すべきときに現れる世界で一番カッコいい存在さ!」
バサーっと羽を広げる謎の男。いや、そもそも人? なんだこいつは?? というかなんて派手な恰好をしてやがる?!
「うわあ?! なんだその羽?? こっち来るな」
「HA HA HA! 恥ずかしがるでない。もう俺たちは虎柄を着ている仲間ではないか」
「うお?! いつの間にこんなダサい姿に?!」
「猫っていいよな。お前も一緒に猫になりたいんだろう? 今年は虎がおススメだ」
「さっきから何言ってるんだよ?! うおおおお?! 身体が縮んでにゃあああああああああああああああああああああああああ」
◆
「はっ?!!!」
びっくりした。変な男に虎柄とかいう模様のタイツを着せられ、だんだん自分が猫になっていく……という変な夢を見てしまったようだ。こんなヒヤヒヤした夢を見たのは生まれて初めてだ。
んと、ここはどこだ? なんで木に寄りかかって寝ていたんだ……??
……はっ!? 思い出した。
俺はとあるCランクの冒険者。ランク、クラス、級など色々呼ばれ方があるがこの国は確かランクだったな。誰でも時間を掛けれは慣れるのがCランクだ。ベテラン冒険者は最低でもこのランクまで上がっているものだ。
Cの上のBランク以上になるには、他の人と違ったスキルや魔法が使えれば可能性がある。または特定の分野において知識や経験があればなれるものだ。という俺もそろそろBランクになれるかもって話だった。というのも俺はあるスキルを持っているからだ。
そのスキルの名は”不変”
あることに対して変化がない。それが”不変”というスキルだ。
この世界では有名な話だが、ある王は不変のスキルを持っていた。その王は毒に対して一切影響を受けないという力を持っていた。その王からすれば猛毒を持っていようが腐っていようが全ての食材が食べ物だった。この世に食べられない物はない。うまい物は後世に残すべし。こうしてこの世界中を旅して様々な食材を発見し、さらに調理方法も研究していった。後にこの世界の食文化を作ったと言われる偉大な王の名はグルメ。グルメ王は不変のスキルを持っていたという話だ。……知らなかったのか? 結構有名だと思うんだがな。
俺の場合は、目で見えるものが変わらないという力を持っている。あり大抵に言えば周囲の影響を一切受けないのだ。例えば夜であろうと明るいままハッキリと見える。太陽を見ても眩しくない。魔法で幻影や強い光を見せる技があるが、それたは俺には効果がない等々。何があろうと見え方は変わらないし、視力も上がったり下がったりせず常に一定。はっきり言って地味だが便利なスキルだ。
だが俺は冒険者になり、暗闇でもいつも通り行動出来るという大きなアドバンテージを得た。そのため偵察や夜間の環境調査などで活躍する機会が多い。そろそろBランクになれるだろうと先輩方に言われている。
そうだな。俺のことは『不変の魔眼』とでも呼んでくれ。誰がに流したのか知らないが俺の名前なんかよりこの二つ名の方が有名になった。怒っていいのか喜んでいのかは分からない。
俺の自己紹介はここまででいいだろう。ここからはある依頼について話す。
ここ最近、森の生き物が不自然な死に方をしていると報告があった。近くの住民に話を聞いてもそれらしき原因が分からず、目撃情報すらないようだ。昼に調査をしても何の異常も起こらないことから夜に何かが起きている。夜に強い冒険者といえば不変の魔眼だ! と俺にギルドから依頼が来た。誰だよギルドに俺の二つ名を教えたやつは……。
「まずは最初に報告があったから村から調べてみるぞ」
この人は俺の先輩。Bランクの冒険者で行く先々で痕跡を集め、原因を追跡するプロ冒険者だ。俺の師匠である。俺も先輩も戦闘は基本的に苦手、サポートぐらいは出来るけど逃げ足の方が早い。戦闘スタイルも似ているためかとても気が合った。今回はそんな俺と先輩の二人を中心に暇な冒険者と一緒に調査することになった。
「先輩。動物の死体を見つけましたがこれは……」
「んー。事故で死んだのだろう。他の生き物に食べられた形跡もあるからかなり時間は経っている」
「ですよね」
「特にこの森に異常はない。いたって普通だな」
「何が問題なんでしょう??」
村の近くだしランクの低い冒険者も総動員されてたが、特に何も見つかるものはなかった。夜は先輩と俺の二人で見回ったがこちらもハズレだった。
「ここにはもう何もなさそうだ。違う町に行くぞ」
こうして俺と先輩は報告のあった村や町を訪ねた。だが原因らしきものを見つけることが出来なかった。本当は何も問題がなかったのでは? 移動が怠いからこの依頼早く終わってくれないかとそのときの俺は思っていた。明日にはギルドに報告をして終わらせようと先輩と話していたからな。そんな中、ギルドから緊急の情報がもたらされた。
「魔物が死んでいる? 大きな足跡??」
「場所はどこだ?!」
どうやら調査した地域とは違う場所で不自然な魔物の死体が発見されたらしい。俺と先輩は急いで現場に駆け付けたのだが、それは想像以上にヤバいものだった。
「先輩、大きなクモが死んでますね」
「バカ、そっちじゃない! これを見ろ。なんて大きさだ……」
「嘘だろ……」
5メートルぐらいあるクモが地面に押し潰されていた。明らかに不自然な凹み。足、または腕の力だけでこんな足跡が出来るってか?? クモの死に方が明らかに事故によるものではないのは分かった。
「これは一発で仕留められたのでしょうか」
「だろうな。傷がほとんどないし抵抗した様子もない。それに周りを見ろ、やつの罠がない」
「まさか罠ごと?!」
糸を仕掛けて獲物を罠に誘うのがこのクモの魔物の常套手段である。魔法で糸を遠くまで飛ばす性質を持っているが、生態は普通のクモと変わらない。虫がエサか動物をエサがぐらいだ。そんな魔物の作る糸は強靭だ。火も使わず一撃で倒す? 俺からしたら馬鹿げた話である。
「これは10メートル以上あってもおかしくないぞ……」
「10?!」
先輩が信じられないことを言った。このクモを潰した原因がいるのだと。さらに地面に顔を近づけた先輩は何かを発見する。
「見ろ、足跡があるぞ。だがサイズがよく分からない……。叩き潰した、上からの奇襲? 相手は飛んで移動しているのか??」
「やっぱり魔物ですか」
「その可能性が高い。戦闘力も未知数だしランクに制限が必要になるかもしれん。これはとんでもないことになりそうだ」
俺と先輩は痕跡を辿ったが原因を見つけることが出来なかった。だが人間による犯行ではないことは判明した。俺と先輩の報告によってギルドが動いた。低いランクの冒険者は森に入ることが禁じられ、Cランク以上の冒険者が森の探索を始めた。
「キツネ、シカ、クマ。見つかったのはいたって普通の動物ですね」
「そいつらは魔物じゃないのか?」
「小さな魔物もいたそうですが、地元の人の話では普通の動物と変わらないようです。他にも食べられた形跡もあったありなかったりって話です」
「どういうことだ?」
「さあ。俺にも分かりませんよ」
死んだまま放置されたと思われる動物が見つかった。しかも大量にだ。何が目的なのか分からない。さらに情報を集めるために調査は続いた。連日の調査の結果、どんどん死体が見つかるのであった。明らかに異常事態なのは間違いない。
「でかいイノシシですねえ」
「こいつは特殊な力こそないが身体能力が高いやつだな。鼻もいいし厄介な魔物だぞ」
「ここってそんな魔物も出るんですね」
「死後1日も経ってないな。俺たちも調査中に出会っていたかもしれん」
これはギルドに届けられたイノシシの死体である。なぜか綺麗な状態で発見されたため、死因を調べていた。先輩は魔物の解体も得意であり、俺も弟子として一緒に手伝っていた。お金になるとギルドは浮かれていたが、こっちは真面目に調査に取り組んでいるんだよ。まったくよう。
「不変、死因が分からん」
「そんなこと言われても……」
先輩はお手上げだった。なら俺が分かるわけがない。
「じゃあ毒とか食べたんですかね」
「分からん。だが毒はないぞ。あそこで食べてる連中がいるからな」
「うわ、ずる」
ギルドでイノシシの肉料理が格安で販売されていた。これだから冒険者ってやつは……。
「……」
「どうしましたか先輩?」
「小さな穴……? これは解体中に傷付いただけか。いや何でもない」
結局この日は何も分からなかった。ちなみにこの後、俺もイノシシ肉を食べた。おいしかった。
イノシシ解体から数日後、今度は別の町から情報が入った。
「先輩、依頼していた魔物が全滅していたそうです。冒険者が向かったところ死体の山があったようですが、原因となる魔物はいなかったそうです」
「群れでもお構いなしってか。こいつはヤバいな……」
数が多かろうと隠れるのか上手な魔物だろうと何だろうと生き物なら何でも死んでいるらしい。現場の状況から同じ魔物がやったのであろうと判断された。
今謎の魔物は人里に降りてこないが、もしも人間が狙われたとしたら……。これはかなり早く対応しなくてはヤバい。緊急性が高いと俺と先輩は判断した。急いでギルドマスターに連絡し、このギルドにいる冒険者を集め、地図を見せて状況を確認していった。
「ここが最初。次に見つかった場所はここ。それから森の中を移動してこう。移動速度がかなり早いぞ。だが向かっている方向は分かった。次に謎の魔物が現れるのはここだ!」
「「「「「「おおおおお!」」」」」
ドーンと指差し、自信満々に演説する先輩は恰好よかった。そして、このギルドのマスターも動かした。
「このまま謎の魔物が町を狙ったら被害が最悪なものになるな……。まさかここまで大事になるとは。決断せねばならん。Cランク以上の動ける冒険者を集めろ。他の支部にも救援要請。緊急事態だ! 謎の魔物を討伐せよ!! 依頼料はまあそのうち出るだろう。本部に掛け合ってやる」
「「「「「うおおおおー!!」」」」」
盛り上がれば動くのは冒険者のさがである。こうして俺たち冒険者は動き出した。
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