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192話 「学園の過去と未来と今の話 その3」
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コーシさんに甘えたら父の学園時代の話をしてくれることになりました。
「よーし。メンテくんのお父さんのお話をしよう。これはダンディくんが学園に入学して2週間ぐらいのことだよ。私じゃなくて他の先生に聞いた話なんだが……」
◇
「ではこの問題を……」
カチカチ。カチカチ。
「これは何の音だ? ってまたお前か!」
「……んー。これは違う。こっちに繋ぐと長さネックになるのか」
「おい、今は授業中だぞナンス。おーい、聞こえているかナンス!! また先生に対してふざけた態度をとりおって! こんな物は没収だ!!」
「あ。危ないですよ」
「そんなこと知るか!!! それよりわしの授業を……」
ドゴオオオオオオーン!!
「ぐわああああああああ?!」
「だから危ないって言ったのに。でも改善点は分かったぞ。振動に弱すぎる。はっはっは!」
「きゃあああ?!」「また先生が爆発したぞ!!」「誰か治療できる先生呼んで来てー!」
◇
「これが初めての事件だったね。この日以降、全く自重しなくなったのかな? 授業中に魔道具が爆発して部屋が吹き飛ぶのが日常茶飯事だったよ。ダンディくんの作った魔道具はよく暴走するからねえ。毎日ドカーンってなるたびにまたダンディくんだなと先生方は思っていたよ」
「あの頃のパパは授業より魔道具を作ることを優先していたわね。よく爆発してたおかげで風魔法で防御する力が鍛えられたわ」
「えぐー」
へえ、母は風魔法が得意なのは父のせいなんだ。思ったよりひどい理由でしたね。
「今の話は爆発した先生本人から聞いた話だよ。教師人生で一番大変な生徒だったと言ってたねえ。実は私もねえ、ダンディくんにこれ使った感想くださいと魔道具を渡されたことがあったよ。今思うと上手におだてられたなあ……」
◇
「誰かいないかあ。……お! あの人が丁度良さそうだ。先生、少しお話よろしいでしょうか?」
「君は確かダンディ・ナンスくんだね? どうしたんだい?」
「実はあなたにしか出来ないに頼みごとがあって……」
「え、私にかい?」
「先生のカッコ良いロングヘアーに興味がありましてね」
「ほほぉ~。どうやら君はこの魅力に気付いたようだね?」
サッとサラサラな髪をかきあげるコーシ。
「はい。実は髪に使えるとっておきの魔道具があるのです。それも素晴らしい髪に使えばより魅力が上がるとっておきの物です」
「何っ?! そんな物があるっていうのかい?」
「ええ。実はこれなのですが……」
魔道具の使い方および効果を説明するダンディ。
「なるほど。君はそんな素晴らしい魔道具を作っていたのか。天才じゃないか!!」
「はっはっは。先生の素晴らしい髪と比べたらそれほどでもありませんよ」
「よし、今日の風呂の後に使ってみるよ!」
「ありがとうございます。明日感想聞かせてください」
その日の夜。風呂上りのコーシはダンディに渡させた魔道具を使用してみた。
「おおすごい。これを使えば魔法が使えなくても誰でも簡単に髪が乾くのではないか?! すごいぞこれは!! 革新的な魔道具だ。おや、なんだこのボタンは? ……思い出した。確か温度の調整も出来ると言っていたなあ。試しに少し高めでやってみるか。どれどれ」
ポチ。ドガアアアアアーーーーーーーン!!
◇
「髪を乾かす魔道具だと聞いていたのに家が吹っ飛んだときは笑うしかなかったよ。ははは……」
「急にパーマになったからみんな驚いていましたよ。本当にパパがごめんなさいね」
「いや、いいんだ。私の髪はあの魔道ドライヤーの礎になったと思ってるよ」
あー、そういえばそんな商品売ってますね。乾かすだけでなく髪のツヤ良くなるとかいう魔道具。父はコーシさんを実験に利用したに違いありません。なんかごめんなさい。
「あの頃はパパのせいでお店のイメージが最悪だったわね……。パパの借金で店が潰れそうだったとお義母様が泣いていたわ」
「作った魔道具が暴走するから”暴走のナンス”ってね。誰が名付けたのか知らないが先生はうまいと思ったよ」
「……うぐ」
二つ名の由来が分かりました。父の作った魔道具がよく暴走するから暴走のなんとかってね。よかった~。性格が暴走してるから呼ばれてるのかと思いました。ちょっと安心です!
「学園で魔道具作り禁止されたこともあったね。学園じゃなければいいんだと王都で作っては爆発。王様に民に危険だからと禁止されたりね。そうしたら王様のお城で作っては爆発、爆発、爆発! 民に被害ないから問題ない。王様のせいだとかね」
「そうそう、あのころのパパは武器になる魔道具を作ろうとしてたのよ。戦闘において魔道具はあくまでも補助。だったらメイン武器になる物を作ってやる! って止まらなかったわね。まさかお城に入り浸るとは予想外だったわ。すぐ出禁になってたけどね」
「ははは、この行動力こそダンディくんだよ!」
「えぐぅ……」
その話どう考えても父は暴走してるよ……。魔道具が暴走じゃなくて父が暴走ですね。はぁ、暴走スキル手放したいなあ。
「お城は出禁。町も学園も禁止、なら外だ! と飛び出したのよね。パパは何が何でも作ると決めたら止められないの。そこがパパのカッコいいところなのよね」
「ああ、あれは教師生活20年で最も驚いた。王都の外で大爆発が起きたと同時にその余波がお城に直撃したあの大事件さ!」
「……うぐ」
話を聞き終わる前からヤバさが伝わってきます。母は楽しそうに笑っていますが。
「お城は崩壊したけどけが人は奇跡的な0。だからお咎めなし。ただの事故ってね。でも王都の住人から苦情殺到。魔道具作りを禁止にするからあれが暴走したんだ、王様が責任を持ってダンディくんを止めろって大騒ぎさ。仕方なく王様が暴走を止めるよう騎士団を派遣したら逆に全員を倒しちゃってさ。魔道具作りの邪魔をする者は許さないって全員病院送りさ。まさか魔道具の力だけで勝っちゃうとは誰も予想出来なかったよ。そこからは毎日お城に向けて魔道具の実験実験、どかーんと大爆発の日々さ。何かの魔法を使った魔道具だと言っていたかな? 確かすごい貫通力だったよ」
「えぐ、えぐえぐえぐ!」
「ん? そこが詳しく聞きたいのかな? ははは、そんな怒らないでよメンテくん。結構前のことだから覚えてないんだよ」
それ破壊魔法の実験じゃないですかね。僕のベビーカーにある防衛機能のひとつです。あの威力の攻撃を城に向けてね……。
父が逮捕されないのが不思議です。
「そのあとは王様が学園で魔道具作れるように掛け合うからやめてくれ、本当に願いします、一生のお願いと土下座してたよ。実際魔物の討伐で大活躍したからね。天才的な発明家だから追い出すと国の損失になる、我慢するしかないとお偉いさん方は嘆いていたよ」
「よく王様が泣いているのを見たわよ。パパだけじゃなくタクシーさんも王様はおもちゃだから何をしてもいいと言ってたしね。王様がパパを逮捕しようとしたから悪いのよ。あの泣き虫は何も分かってないから何をしても問題ないのよ。メンテちゃんも分かったわよね?」
「うぐ~?」
母も王様をディスり始めました。ママ何言ってるの? という顔で赤ちゃん感を出します。僕、絶対父みたいに暴走したくないと思いました。
「いろいろあったねえ。おかげでダンディくんは学園の伝説の人だよ。彼に憧れて魔道具作りをする人が増え始めたね。そのおかげで新たに魔道具を作る授業が誕生したといっても過言ではないよ。これを目当てに学園で学びたいって生徒が一気に増えたんだよ」
父のマイナスの面よりプラスの面が上回ったようです。暴走怖いなあ。
「今ではダンディくんが一部の生徒からヒーローの扱いを受けているんだよねえ。この頃からだっけなあ。この国が魔道具大国と呼ばれるようになったのは」
「パパって本当にやんちゃでカッコいいのよねえ」←うっとりしてるレディー
「う~ん、レディーくんも昔からこうだったなあ……」
「うぐ……」
やだもう。話を聞けば聞くほどやんちゃの範疇超えてますって。暴走スキルのせいで。
「メンテくんは大丈夫だといいね。ダンディくんのせいで暴走スキル持ちは注目されちゃうよ」
「んぐぅ~?」
「おお、可愛いなあ……」
「メンテちゃんは心配しなくても大丈夫。暴走しないものね~」
「えっぐ!」ぺちぺち
「あらどうしたのメンテちゃん?」
「こーち。こーちだっこー!」
「フフッ。慣れてきたから甘えはじめたわね」
ここで僕はコーシに抱っこしろと要求します。そして、抱っこしたらぎゅっと引っ付きます。いかに可愛いらしい赤ちゃんなのかをアピールします。僕が暴走するわけないじゃんか~。こんなキュートなんだよ?
「んおおい、軽いねえ。こんな可愛い子が暴走するわけないでちゅね~。勘違いしちゃってごめんねメンテくん」
「えっぐ」すりすり
「おほぉ……。なんだか早く娘に会いたくなってきたよ。最近忙しくて会ってないんだ」
僕のあまりの可愛らしさに家族に会いたくなってきたコーシ先生でした。
◆
ここだけ少し未来の物語。
ごごごごごっごごごごごっごごごごおごおごごごおごごごごおおおおおおおおおお。
「な、何だこの音は? 魔物か?!」
ここは王都にある学園。コーシは職員室にいた。
「た、たいへんです! 誰が喧嘩を止めてください!」
職員室に1人の生徒が入ってきた。
「喧嘩か。みんな血気盛んなお年頃だからねえ。こういうことはよくあるんだよ」
「その声はコーシ先生ですか?! 早くしないと相手が大変なんです」
「なあに、私に任せなさいってね。で、誰と誰が喧嘩しているんだ?」
「メンテくんですよ!!!」
「……メンテくん? それはナンス家のメンテくんのことかな?」
「そうですよ、早くしないと……」
ごごごごっごごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
「早くしないと猫が……。猫がいっぱい来ちゃいます!」
「猫? 何を焦っているんだい?」
「いいから外を見てください! 見たらわかります!!」
「あははは、猫の1匹や2匹ぐらい……」
「メンテくん暴走しちゃってますから!!! もう時間がないんですってば!」
「ん、暴走……? はっ!」
バーンと勢いよく窓を開くコーシ。何事だと他の先生達も窓を覗き始めた。
「「「「「「「「「「にゃーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
「「「「「なんだあれは?!」」」」」
先生たちは驚いた。王都から猫の群れが学園に向かってやってきていたのだ。その数は……全然わからない。それほどすごい地鳴りである。この異常な数は何事だ?! と職員室は大パニックになった。
「大丈夫ですよ、この学園には結界があるからね。早く喧嘩を止めに行きましょう……」
ドゥゴーーーーーーン!
「「「「「け、結界が壊れた?!」」」」」
「みんな落ち着いてください。まだ防壁があります。あの高い壁がある限り猫なんて入れませんよ」
ドガァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!
「「「「「――え!?」」」」」
たくさんの猫たちは壁をぶち破って入ってきた。そして、一直線にメンテの元に走っていく。
「待て、あれ本当に猫か??」
「浮いてるというより翼で飛んでるような……」
「あれはどう考えても猫じゃなくて……」
「そ、そんなことより止めますよ! ……ぎゃああああ?!!!!」
明らかな異常事態に頭がついていけなくなる先生達。一部の先生は窓から飛び出し、魔法を使って猫の動きを封じようとしたが全く効果なく、逆に猫の群れに飲み込まれ犠牲者になっていった。
そのときコーシはふと思った。ああ、この感じは懐かしいなあ……。そうか、ダンディくんがいたあの頃か! 騒がしい事件が毎日のようにあったからなあ。それにしてもあの可愛いかったメンテくんは父親そっくりに育ったんだねえ。あはははははは。
「ちょっとコーシ先生、意識戻ってきてくださいよ。早く止めないと命が危ないです」
「はっ?! い、急ごう」
コーシ・レゴ。メンテが入学してから急激に老け出したという。
「あの頃は……。あの頃は本当に可愛かったなあ」
===========================
次回から学園! ……ではなく今まで通り1歳に戻ります
「よーし。メンテくんのお父さんのお話をしよう。これはダンディくんが学園に入学して2週間ぐらいのことだよ。私じゃなくて他の先生に聞いた話なんだが……」
◇
「ではこの問題を……」
カチカチ。カチカチ。
「これは何の音だ? ってまたお前か!」
「……んー。これは違う。こっちに繋ぐと長さネックになるのか」
「おい、今は授業中だぞナンス。おーい、聞こえているかナンス!! また先生に対してふざけた態度をとりおって! こんな物は没収だ!!」
「あ。危ないですよ」
「そんなこと知るか!!! それよりわしの授業を……」
ドゴオオオオオオーン!!
「ぐわああああああああ?!」
「だから危ないって言ったのに。でも改善点は分かったぞ。振動に弱すぎる。はっはっは!」
「きゃあああ?!」「また先生が爆発したぞ!!」「誰か治療できる先生呼んで来てー!」
◇
「これが初めての事件だったね。この日以降、全く自重しなくなったのかな? 授業中に魔道具が爆発して部屋が吹き飛ぶのが日常茶飯事だったよ。ダンディくんの作った魔道具はよく暴走するからねえ。毎日ドカーンってなるたびにまたダンディくんだなと先生方は思っていたよ」
「あの頃のパパは授業より魔道具を作ることを優先していたわね。よく爆発してたおかげで風魔法で防御する力が鍛えられたわ」
「えぐー」
へえ、母は風魔法が得意なのは父のせいなんだ。思ったよりひどい理由でしたね。
「今の話は爆発した先生本人から聞いた話だよ。教師人生で一番大変な生徒だったと言ってたねえ。実は私もねえ、ダンディくんにこれ使った感想くださいと魔道具を渡されたことがあったよ。今思うと上手におだてられたなあ……」
◇
「誰かいないかあ。……お! あの人が丁度良さそうだ。先生、少しお話よろしいでしょうか?」
「君は確かダンディ・ナンスくんだね? どうしたんだい?」
「実はあなたにしか出来ないに頼みごとがあって……」
「え、私にかい?」
「先生のカッコ良いロングヘアーに興味がありましてね」
「ほほぉ~。どうやら君はこの魅力に気付いたようだね?」
サッとサラサラな髪をかきあげるコーシ。
「はい。実は髪に使えるとっておきの魔道具があるのです。それも素晴らしい髪に使えばより魅力が上がるとっておきの物です」
「何っ?! そんな物があるっていうのかい?」
「ええ。実はこれなのですが……」
魔道具の使い方および効果を説明するダンディ。
「なるほど。君はそんな素晴らしい魔道具を作っていたのか。天才じゃないか!!」
「はっはっは。先生の素晴らしい髪と比べたらそれほどでもありませんよ」
「よし、今日の風呂の後に使ってみるよ!」
「ありがとうございます。明日感想聞かせてください」
その日の夜。風呂上りのコーシはダンディに渡させた魔道具を使用してみた。
「おおすごい。これを使えば魔法が使えなくても誰でも簡単に髪が乾くのではないか?! すごいぞこれは!! 革新的な魔道具だ。おや、なんだこのボタンは? ……思い出した。確か温度の調整も出来ると言っていたなあ。試しに少し高めでやってみるか。どれどれ」
ポチ。ドガアアアアアーーーーーーーン!!
◇
「髪を乾かす魔道具だと聞いていたのに家が吹っ飛んだときは笑うしかなかったよ。ははは……」
「急にパーマになったからみんな驚いていましたよ。本当にパパがごめんなさいね」
「いや、いいんだ。私の髪はあの魔道ドライヤーの礎になったと思ってるよ」
あー、そういえばそんな商品売ってますね。乾かすだけでなく髪のツヤ良くなるとかいう魔道具。父はコーシさんを実験に利用したに違いありません。なんかごめんなさい。
「あの頃はパパのせいでお店のイメージが最悪だったわね……。パパの借金で店が潰れそうだったとお義母様が泣いていたわ」
「作った魔道具が暴走するから”暴走のナンス”ってね。誰が名付けたのか知らないが先生はうまいと思ったよ」
「……うぐ」
二つ名の由来が分かりました。父の作った魔道具がよく暴走するから暴走のなんとかってね。よかった~。性格が暴走してるから呼ばれてるのかと思いました。ちょっと安心です!
「学園で魔道具作り禁止されたこともあったね。学園じゃなければいいんだと王都で作っては爆発。王様に民に危険だからと禁止されたりね。そうしたら王様のお城で作っては爆発、爆発、爆発! 民に被害ないから問題ない。王様のせいだとかね」
「そうそう、あのころのパパは武器になる魔道具を作ろうとしてたのよ。戦闘において魔道具はあくまでも補助。だったらメイン武器になる物を作ってやる! って止まらなかったわね。まさかお城に入り浸るとは予想外だったわ。すぐ出禁になってたけどね」
「ははは、この行動力こそダンディくんだよ!」
「えぐぅ……」
その話どう考えても父は暴走してるよ……。魔道具が暴走じゃなくて父が暴走ですね。はぁ、暴走スキル手放したいなあ。
「お城は出禁。町も学園も禁止、なら外だ! と飛び出したのよね。パパは何が何でも作ると決めたら止められないの。そこがパパのカッコいいところなのよね」
「ああ、あれは教師生活20年で最も驚いた。王都の外で大爆発が起きたと同時にその余波がお城に直撃したあの大事件さ!」
「……うぐ」
話を聞き終わる前からヤバさが伝わってきます。母は楽しそうに笑っていますが。
「お城は崩壊したけどけが人は奇跡的な0。だからお咎めなし。ただの事故ってね。でも王都の住人から苦情殺到。魔道具作りを禁止にするからあれが暴走したんだ、王様が責任を持ってダンディくんを止めろって大騒ぎさ。仕方なく王様が暴走を止めるよう騎士団を派遣したら逆に全員を倒しちゃってさ。魔道具作りの邪魔をする者は許さないって全員病院送りさ。まさか魔道具の力だけで勝っちゃうとは誰も予想出来なかったよ。そこからは毎日お城に向けて魔道具の実験実験、どかーんと大爆発の日々さ。何かの魔法を使った魔道具だと言っていたかな? 確かすごい貫通力だったよ」
「えぐ、えぐえぐえぐ!」
「ん? そこが詳しく聞きたいのかな? ははは、そんな怒らないでよメンテくん。結構前のことだから覚えてないんだよ」
それ破壊魔法の実験じゃないですかね。僕のベビーカーにある防衛機能のひとつです。あの威力の攻撃を城に向けてね……。
父が逮捕されないのが不思議です。
「そのあとは王様が学園で魔道具作れるように掛け合うからやめてくれ、本当に願いします、一生のお願いと土下座してたよ。実際魔物の討伐で大活躍したからね。天才的な発明家だから追い出すと国の損失になる、我慢するしかないとお偉いさん方は嘆いていたよ」
「よく王様が泣いているのを見たわよ。パパだけじゃなくタクシーさんも王様はおもちゃだから何をしてもいいと言ってたしね。王様がパパを逮捕しようとしたから悪いのよ。あの泣き虫は何も分かってないから何をしても問題ないのよ。メンテちゃんも分かったわよね?」
「うぐ~?」
母も王様をディスり始めました。ママ何言ってるの? という顔で赤ちゃん感を出します。僕、絶対父みたいに暴走したくないと思いました。
「いろいろあったねえ。おかげでダンディくんは学園の伝説の人だよ。彼に憧れて魔道具作りをする人が増え始めたね。そのおかげで新たに魔道具を作る授業が誕生したといっても過言ではないよ。これを目当てに学園で学びたいって生徒が一気に増えたんだよ」
父のマイナスの面よりプラスの面が上回ったようです。暴走怖いなあ。
「今ではダンディくんが一部の生徒からヒーローの扱いを受けているんだよねえ。この頃からだっけなあ。この国が魔道具大国と呼ばれるようになったのは」
「パパって本当にやんちゃでカッコいいのよねえ」←うっとりしてるレディー
「う~ん、レディーくんも昔からこうだったなあ……」
「うぐ……」
やだもう。話を聞けば聞くほどやんちゃの範疇超えてますって。暴走スキルのせいで。
「メンテくんは大丈夫だといいね。ダンディくんのせいで暴走スキル持ちは注目されちゃうよ」
「んぐぅ~?」
「おお、可愛いなあ……」
「メンテちゃんは心配しなくても大丈夫。暴走しないものね~」
「えっぐ!」ぺちぺち
「あらどうしたのメンテちゃん?」
「こーち。こーちだっこー!」
「フフッ。慣れてきたから甘えはじめたわね」
ここで僕はコーシに抱っこしろと要求します。そして、抱っこしたらぎゅっと引っ付きます。いかに可愛いらしい赤ちゃんなのかをアピールします。僕が暴走するわけないじゃんか~。こんなキュートなんだよ?
「んおおい、軽いねえ。こんな可愛い子が暴走するわけないでちゅね~。勘違いしちゃってごめんねメンテくん」
「えっぐ」すりすり
「おほぉ……。なんだか早く娘に会いたくなってきたよ。最近忙しくて会ってないんだ」
僕のあまりの可愛らしさに家族に会いたくなってきたコーシ先生でした。
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ここだけ少し未来の物語。
ごごごごごっごごごごごっごごごごおごおごごごおごごごごおおおおおおおおおお。
「な、何だこの音は? 魔物か?!」
ここは王都にある学園。コーシは職員室にいた。
「た、たいへんです! 誰が喧嘩を止めてください!」
職員室に1人の生徒が入ってきた。
「喧嘩か。みんな血気盛んなお年頃だからねえ。こういうことはよくあるんだよ」
「その声はコーシ先生ですか?! 早くしないと相手が大変なんです」
「なあに、私に任せなさいってね。で、誰と誰が喧嘩しているんだ?」
「メンテくんですよ!!!」
「……メンテくん? それはナンス家のメンテくんのことかな?」
「そうですよ、早くしないと……」
ごごごごっごごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
「早くしないと猫が……。猫がいっぱい来ちゃいます!」
「猫? 何を焦っているんだい?」
「いいから外を見てください! 見たらわかります!!」
「あははは、猫の1匹や2匹ぐらい……」
「メンテくん暴走しちゃってますから!!! もう時間がないんですってば!」
「ん、暴走……? はっ!」
バーンと勢いよく窓を開くコーシ。何事だと他の先生達も窓を覗き始めた。
「「「「「「「「「「にゃーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
「「「「「なんだあれは?!」」」」」
先生たちは驚いた。王都から猫の群れが学園に向かってやってきていたのだ。その数は……全然わからない。それほどすごい地鳴りである。この異常な数は何事だ?! と職員室は大パニックになった。
「大丈夫ですよ、この学園には結界があるからね。早く喧嘩を止めに行きましょう……」
ドゥゴーーーーーーン!
「「「「「け、結界が壊れた?!」」」」」
「みんな落ち着いてください。まだ防壁があります。あの高い壁がある限り猫なんて入れませんよ」
ドガァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!
「「「「「――え!?」」」」」
たくさんの猫たちは壁をぶち破って入ってきた。そして、一直線にメンテの元に走っていく。
「待て、あれ本当に猫か??」
「浮いてるというより翼で飛んでるような……」
「あれはどう考えても猫じゃなくて……」
「そ、そんなことより止めますよ! ……ぎゃああああ?!!!!」
明らかな異常事態に頭がついていけなくなる先生達。一部の先生は窓から飛び出し、魔法を使って猫の動きを封じようとしたが全く効果なく、逆に猫の群れに飲み込まれ犠牲者になっていった。
そのときコーシはふと思った。ああ、この感じは懐かしいなあ……。そうか、ダンディくんがいたあの頃か! 騒がしい事件が毎日のようにあったからなあ。それにしてもあの可愛いかったメンテくんは父親そっくりに育ったんだねえ。あはははははは。
「ちょっとコーシ先生、意識戻ってきてくださいよ。早く止めないと命が危ないです」
「はっ?! い、急ごう」
コーシ・レゴ。メンテが入学してから急激に老け出したという。
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