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177話 「猫の縄張り その6」
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「特になにもないや」
「どこも普通の部屋なの」
ギルドの2階を見回った結果、予想通り個室があるだけでした。これでは普通すぎて面白味はありませんね。そんなわけでギルドの建物を隅々まで調べました。広々としてるし、追い込まれて困るような場所も楽しそうな部屋もありませんでした。一般的な建物と変わりませんよ。
「もし逃げるなら窓でも割ればいいかなあ」
「メンテはどこにでもドアを作れるじゃない。わざわざ割らなくてもいいと思うのよ」
「まあそれはそうだね。もう全部見回ったし帰ろうか」
「そうしましょ」
ギルドの安全性は確認出来たね。もういいかなと僕達が帰ろうとしたときです。
「……ん?」ピクッ
「急に立ち止まってどうしたの?」
「全部見回ったけど、頑張れば今すぐにでもオープン出来る状況だったよね? 何で1週間後なんだろう? 何かおかしい」
「そう? 別に何もなかったと思うわよ??」
「ん~……」
……ん~、何だろう? 僕の勘が何かが変だ、気づけと告げているのです。これは僕の……、いや猫の力かもしれません。
「……」
「帰らないの?」
「ちょっとだけ待って。少し魔法で探ってみるから。僕がよく使う猫探知って魔法はさ、生き物の気配を感じる猫の魔法なんだ。でも生き物じゃなくて違和感も探れると思うんだよね。だって僕猫だから野生の勘が働きそうだし」
「ならやってみたらいいんじゃない?(また変なことを言い出したの……)」
「じゃあやってみるよ。猫探知!」
僕の体から魔力が溢れ出します。例え生き物だろうと無機物だろうと猫探知には効果があるのでね。なら違和感の正体だって探せるはず。魔法はイメージ。集中、もっと集中しろ。今の僕は猫だから出来るはず。自分の魔法を信じろ!
しばらくすると頭の中に何か見えてきました。お、魔法が成功したのかな? えっとこれは……。
「……まだ見ていない部屋? があるのを感じる」
「え?」
「あっちだよ、シロ先生!」
「ちょっと待ってなの」
無事違和感の気配を探ることが出来ました。さすが猫魔法。猫っぽいことなら何でも出来ちゃいますね!
魔法の通りなら僕たちがまだ見ていない部屋があるはず。それに正しく魔法が発動していたのか気になりますしね。だから走って移動しちゃう僕なのです。
「あった、ここだ!」
「ここって廊下の突き当り? ……でもどこを見ても部屋なんてなさそうよ? 今の魔法失敗したんじゃないかしら??」
「あれれ? 確かにここから感じたんだけど……」
もう1回猫探知で周囲を探ってみましょう。するとやっぱりこの突き当りから何かを感じますね。間違っていなかったようです。
「うん、やっぱりここだよ。どこかに隠し通路があるのかも。その奥に部屋があるよ」
「私には壁にしか見えないわね」
「でも感じるのはここからなんだよ。よいしょっと」ぐにょにょ~ん
僕は魔法でしっぽを伸ばし、ぺたぺたとそこらじゅうの壁を触ります。すると、しっぽに何か石のようなものが当たりましたよ。
「……ん、ここに何かある」
「あら、そこ何か出っ張ってるわね。それがどうしたの?」
「あ!? 僕これ見たことあるよ。これ魔力認証を使ったドアだ!」
僕が見つけたのは小さな石のようなもの。そう、これは魔石ですよ。ちょうど人間の手が触れやすい位置にありますね。壁にくっ付いているのです。
「ド、ドア? いったいどこにあるの??」
「多分これはドアが見えないように細工されているんだ。僕の家に魔力を流すとドアの鍵が開く仕掛けがあったでしょ? それと一緒でこの石に魔力を流せばドアが現れるはずだよ」
「あー、確かにそんなドアがあったような気がするの」
※140話 「子猫は外に出たい その4」
これが僕の中でこの世界がファンタジーと感じた要素の1つ、魔法のドアですね!
この世界には、魔力というものがあります。前世であった暗証番号やパスワードのように魔力を使って個人を識別するのです。何でこのドア開かないの? 僕知りたいと甘えまくったら大人たちが教えてくれました。僕の推測通りだったわけですな。
「パパからね、お金が掛かるけど入口のドア自体も隠すことは出来るって聞いたことあるよ。多分この壁にはそういう魔道具が使われているんだと思うよ」
「へえ。メンテって物知りね」
「僕のお店は魔道具屋だからね、そういうことには詳しいんだ。じゃあちょっと魔力を流してみるね。えいっ!」
確か魔力を流すだけで仕掛けが発動するタイプは値段が安く、特定の魔法や魔力だけを登録するタイプは値段が高いと聞きました。使われる魔石の価値が違うんだって。この壁に使われているドアはどっちかな? しっぽに魔力を集中させて魔石に触れてみましょう。
「……んー、動かない。このドアは特定の人しか使えないから高級品かな」
「そういうときは猫ドアで入ればいいんじゃない?」
「ふっふっふ、さっすがシロ先生。次に僕がしたいことがよく分かってるよ。猫ドアー!」
僕は壁に猫ドアを作って部屋に入ろうとします。ですが……。
「ん? あれ?? あれれ~????」
「どうしたの?」
「猫ドアが反応しないというかこの壁に作れないや。いつも通り使ってるんだけどなあ」
「え、メンテの魔法が?! 嘘でしょ?!!!!」
「……? どうしてそんなに驚いてるの?」
「いや。別に何でもないのよ~。ちょっとびっくりしただけなの」←なんでもありなメンテの魔法が通じなくて驚くシロ先生
う~ん、変な感じですねえ。魔法がはじかれるような不思議な感じがしますよ。
「……あ! きっとこれ僕の家で使われてるドアと同じだ。魔法を分散させる効果があるタイプかも」
「そんな変なドアがあるの?」
「うん。タクシーが玄関のドアをぶっ壊したから魔法で壊れにくい新しいドアを開発した! ってパパが言ってたよ。名前はアンチ魔法のドア? だっけな。お金持ちに売れているらしいよ」
「そ、そんなこともあったわね……」
タクシー対策なら魔法を分散させるドアが存在しても問題ない。そう思うシロ先生であった。
「よし、こうなったらぶっ壊そう!」
「あ、ちょ?!」
「きええええええええええええええええ!!」
「にゃあああああ?!」
僕はしっぽに魔力を込め、壁に叩きつけます。ドドドドドドドドドッと何度もドアを貫くように連打します。しかし、びくともしないのでした。
「にゃあああ……、あら?」
「ひゃー、このドア僕の攻撃じゃ全く壊れないや。めっちゃ頑丈だよ」
「そ、そういえばメンテのしっぽって魔法で出来てるんでしょ? それなら当たった瞬間に魔法が分散してるんじゃないの?」
「あ、そっか」
シロ先生に当たり前なことを指摘されて気付く僕なのでした。それじゃあいくら攻撃しても意味ないね。むしろ僕のしっぽの魔力が失われるだけだね。
「う~ん、どうしよう。魔法を使わずに壊す? 僕には無理かもなあ……」
「……ほっ」
メンテの魔法にも出来ないことがある。今までメンテのやることなすこと何もかもがおかしいと思っていたけど、人間の世界では普通の魔法を使っていたのね。私たち猫は魔法を使えないから今までメンテがおかしいと思ってたわ。最近猫のみんなに本当に魔王じゃない? と言われているのだけど、ただ魔法が使えるだけの普通の猫だった。私たち猫が大げさに勘違いしていたのね。
ふう、今までメンテに大げさに驚きすぎていたわ。これでハッキリしたわね。やっぱりメンテの使う魔法は普通だった。あとでみんなに魔王じゃないと伝えましょと安心するシロ先生であった。
「今日はもう帰りましょ。また今度来るときまでに方法を考えればいいじゃないの」
「う~ん、魔法を使わずにドアを開ける便利な方法? そんなのあるわけが……あるね!!」
「――ん?」
「道具が必要だ。1階にあったあれを持って来よう!」スタタタタ
「……いや。まさかね」←メンテがまた何か変なことをしそうで焦りだすシロ先生
2階から1階に降りる僕とシロ先生。目的の場所は解体の看板があったところ。あそこの奥の部屋にとても頑丈そうな物があったのですよ。
「あった。よし、この石の机を使おう!!」
「え? このでかい机を?」
「うん」
巨大な石をパカーンと刃物で水平方向に切り裂いたかのような石の机です。テーブル横の長さ約7メートル、縦は3メートルぐらいですかね。だからめっちゃ大きな作業台です。きっと魔物の重さで壊れないように頑丈な物を使っているのでしょう。
「えいやー!」ぐるぐるぐる~。
「にゃ?」
「とうっ!」スゴゴッーン!
「ええええええっ?!」
しっぱでぐるぐる巻いてひょこっと持ち上げます。今の僕は猫なので物を持つのは難しいです。口で咥えようにも僕の口は小さいですからね。そこで僕は魔法で出来たこの長いしっぽを使います。
このしっぽは、自分より重い物も軽々持てます。なんたって魔法で出来ていますからね。まあ重い物ほど魔力を多く消費しますが、きっとこれは軽い方でしょう。あまり魔力を消費してないので、この机は見た目よりも軽いみたいですね。だから僕の魔法のしっぽで簡単に持てちゃいます。
※この机は10トン以上あります。
「これを2階まで運ぶよ」ズズズズズッ。ドガドガッ。ドーン!
「ちょ、動くたびに色々ぶつかってるわ?! 壊れる、いやもう壊れてるわ! ちょ、今度は階段が?!! にゃあああ?!」
今から壁を壊すのでギルドの中が多少壊れても問題ないでしょう。というわけで2階の廊下の前に着きましたよ。これでドアごと壁を壊す準備完了です!
「……はぁはぁ。まさかと思うけどこれで壁を壊すのかしら?」←嫌な予感しかしないシロ先生
「うん」
「私離れるからちょっと待っ……」
「猫魔法・机をぐるぐるぶん回して勢いをつけてドーン!」
「にゃああああああああ?! 早い、まだ離れてないからああああ?!!!」
ぶんぶんぶんぶん! ドゥゴォオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
魔法がダメなら物理的なダメージを与えればいい。この石の机は魔法で出来ていませんからね。これならアンチ魔法に触れても全く問題なし。僕は元々人間なので道具を使える賢い猫なのですよ!
「魔法がダメなら物理だね!」
「いやいや、危ないわよ!! 壁どころか隣の部屋まで壊れてるからね?! というか2階は今のでほぼ全部消えたわよ?!」
「まあまあ落ち着いて。猫結界で外に音は聞こえないし、これぐらいすぐ修理出来るよ。それよりほら、本当に部屋があったでしょ?」
「確かにあるけど。あるんだけど色々と違う問題もあるの……(メンテのご両親、ちゃんと教育してあげてね。この子、魔王の道まっしぐらなの)」
壁の向こうから新たな部屋が見えました。よし、このギルドに隠された秘密を暴いちゃおっと!
「どこも普通の部屋なの」
ギルドの2階を見回った結果、予想通り個室があるだけでした。これでは普通すぎて面白味はありませんね。そんなわけでギルドの建物を隅々まで調べました。広々としてるし、追い込まれて困るような場所も楽しそうな部屋もありませんでした。一般的な建物と変わりませんよ。
「もし逃げるなら窓でも割ればいいかなあ」
「メンテはどこにでもドアを作れるじゃない。わざわざ割らなくてもいいと思うのよ」
「まあそれはそうだね。もう全部見回ったし帰ろうか」
「そうしましょ」
ギルドの安全性は確認出来たね。もういいかなと僕達が帰ろうとしたときです。
「……ん?」ピクッ
「急に立ち止まってどうしたの?」
「全部見回ったけど、頑張れば今すぐにでもオープン出来る状況だったよね? 何で1週間後なんだろう? 何かおかしい」
「そう? 別に何もなかったと思うわよ??」
「ん~……」
……ん~、何だろう? 僕の勘が何かが変だ、気づけと告げているのです。これは僕の……、いや猫の力かもしれません。
「……」
「帰らないの?」
「ちょっとだけ待って。少し魔法で探ってみるから。僕がよく使う猫探知って魔法はさ、生き物の気配を感じる猫の魔法なんだ。でも生き物じゃなくて違和感も探れると思うんだよね。だって僕猫だから野生の勘が働きそうだし」
「ならやってみたらいいんじゃない?(また変なことを言い出したの……)」
「じゃあやってみるよ。猫探知!」
僕の体から魔力が溢れ出します。例え生き物だろうと無機物だろうと猫探知には効果があるのでね。なら違和感の正体だって探せるはず。魔法はイメージ。集中、もっと集中しろ。今の僕は猫だから出来るはず。自分の魔法を信じろ!
しばらくすると頭の中に何か見えてきました。お、魔法が成功したのかな? えっとこれは……。
「……まだ見ていない部屋? があるのを感じる」
「え?」
「あっちだよ、シロ先生!」
「ちょっと待ってなの」
無事違和感の気配を探ることが出来ました。さすが猫魔法。猫っぽいことなら何でも出来ちゃいますね!
魔法の通りなら僕たちがまだ見ていない部屋があるはず。それに正しく魔法が発動していたのか気になりますしね。だから走って移動しちゃう僕なのです。
「あった、ここだ!」
「ここって廊下の突き当り? ……でもどこを見ても部屋なんてなさそうよ? 今の魔法失敗したんじゃないかしら??」
「あれれ? 確かにここから感じたんだけど……」
もう1回猫探知で周囲を探ってみましょう。するとやっぱりこの突き当りから何かを感じますね。間違っていなかったようです。
「うん、やっぱりここだよ。どこかに隠し通路があるのかも。その奥に部屋があるよ」
「私には壁にしか見えないわね」
「でも感じるのはここからなんだよ。よいしょっと」ぐにょにょ~ん
僕は魔法でしっぽを伸ばし、ぺたぺたとそこらじゅうの壁を触ります。すると、しっぽに何か石のようなものが当たりましたよ。
「……ん、ここに何かある」
「あら、そこ何か出っ張ってるわね。それがどうしたの?」
「あ!? 僕これ見たことあるよ。これ魔力認証を使ったドアだ!」
僕が見つけたのは小さな石のようなもの。そう、これは魔石ですよ。ちょうど人間の手が触れやすい位置にありますね。壁にくっ付いているのです。
「ド、ドア? いったいどこにあるの??」
「多分これはドアが見えないように細工されているんだ。僕の家に魔力を流すとドアの鍵が開く仕掛けがあったでしょ? それと一緒でこの石に魔力を流せばドアが現れるはずだよ」
「あー、確かにそんなドアがあったような気がするの」
※140話 「子猫は外に出たい その4」
これが僕の中でこの世界がファンタジーと感じた要素の1つ、魔法のドアですね!
この世界には、魔力というものがあります。前世であった暗証番号やパスワードのように魔力を使って個人を識別するのです。何でこのドア開かないの? 僕知りたいと甘えまくったら大人たちが教えてくれました。僕の推測通りだったわけですな。
「パパからね、お金が掛かるけど入口のドア自体も隠すことは出来るって聞いたことあるよ。多分この壁にはそういう魔道具が使われているんだと思うよ」
「へえ。メンテって物知りね」
「僕のお店は魔道具屋だからね、そういうことには詳しいんだ。じゃあちょっと魔力を流してみるね。えいっ!」
確か魔力を流すだけで仕掛けが発動するタイプは値段が安く、特定の魔法や魔力だけを登録するタイプは値段が高いと聞きました。使われる魔石の価値が違うんだって。この壁に使われているドアはどっちかな? しっぽに魔力を集中させて魔石に触れてみましょう。
「……んー、動かない。このドアは特定の人しか使えないから高級品かな」
「そういうときは猫ドアで入ればいいんじゃない?」
「ふっふっふ、さっすがシロ先生。次に僕がしたいことがよく分かってるよ。猫ドアー!」
僕は壁に猫ドアを作って部屋に入ろうとします。ですが……。
「ん? あれ?? あれれ~????」
「どうしたの?」
「猫ドアが反応しないというかこの壁に作れないや。いつも通り使ってるんだけどなあ」
「え、メンテの魔法が?! 嘘でしょ?!!!!」
「……? どうしてそんなに驚いてるの?」
「いや。別に何でもないのよ~。ちょっとびっくりしただけなの」←なんでもありなメンテの魔法が通じなくて驚くシロ先生
う~ん、変な感じですねえ。魔法がはじかれるような不思議な感じがしますよ。
「……あ! きっとこれ僕の家で使われてるドアと同じだ。魔法を分散させる効果があるタイプかも」
「そんな変なドアがあるの?」
「うん。タクシーが玄関のドアをぶっ壊したから魔法で壊れにくい新しいドアを開発した! ってパパが言ってたよ。名前はアンチ魔法のドア? だっけな。お金持ちに売れているらしいよ」
「そ、そんなこともあったわね……」
タクシー対策なら魔法を分散させるドアが存在しても問題ない。そう思うシロ先生であった。
「よし、こうなったらぶっ壊そう!」
「あ、ちょ?!」
「きええええええええええええええええ!!」
「にゃあああああ?!」
僕はしっぽに魔力を込め、壁に叩きつけます。ドドドドドドドドドッと何度もドアを貫くように連打します。しかし、びくともしないのでした。
「にゃあああ……、あら?」
「ひゃー、このドア僕の攻撃じゃ全く壊れないや。めっちゃ頑丈だよ」
「そ、そういえばメンテのしっぽって魔法で出来てるんでしょ? それなら当たった瞬間に魔法が分散してるんじゃないの?」
「あ、そっか」
シロ先生に当たり前なことを指摘されて気付く僕なのでした。それじゃあいくら攻撃しても意味ないね。むしろ僕のしっぽの魔力が失われるだけだね。
「う~ん、どうしよう。魔法を使わずに壊す? 僕には無理かもなあ……」
「……ほっ」
メンテの魔法にも出来ないことがある。今までメンテのやることなすこと何もかもがおかしいと思っていたけど、人間の世界では普通の魔法を使っていたのね。私たち猫は魔法を使えないから今までメンテがおかしいと思ってたわ。最近猫のみんなに本当に魔王じゃない? と言われているのだけど、ただ魔法が使えるだけの普通の猫だった。私たち猫が大げさに勘違いしていたのね。
ふう、今までメンテに大げさに驚きすぎていたわ。これでハッキリしたわね。やっぱりメンテの使う魔法は普通だった。あとでみんなに魔王じゃないと伝えましょと安心するシロ先生であった。
「今日はもう帰りましょ。また今度来るときまでに方法を考えればいいじゃないの」
「う~ん、魔法を使わずにドアを開ける便利な方法? そんなのあるわけが……あるね!!」
「――ん?」
「道具が必要だ。1階にあったあれを持って来よう!」スタタタタ
「……いや。まさかね」←メンテがまた何か変なことをしそうで焦りだすシロ先生
2階から1階に降りる僕とシロ先生。目的の場所は解体の看板があったところ。あそこの奥の部屋にとても頑丈そうな物があったのですよ。
「あった。よし、この石の机を使おう!!」
「え? このでかい机を?」
「うん」
巨大な石をパカーンと刃物で水平方向に切り裂いたかのような石の机です。テーブル横の長さ約7メートル、縦は3メートルぐらいですかね。だからめっちゃ大きな作業台です。きっと魔物の重さで壊れないように頑丈な物を使っているのでしょう。
「えいやー!」ぐるぐるぐる~。
「にゃ?」
「とうっ!」スゴゴッーン!
「ええええええっ?!」
しっぱでぐるぐる巻いてひょこっと持ち上げます。今の僕は猫なので物を持つのは難しいです。口で咥えようにも僕の口は小さいですからね。そこで僕は魔法で出来たこの長いしっぽを使います。
このしっぽは、自分より重い物も軽々持てます。なんたって魔法で出来ていますからね。まあ重い物ほど魔力を多く消費しますが、きっとこれは軽い方でしょう。あまり魔力を消費してないので、この机は見た目よりも軽いみたいですね。だから僕の魔法のしっぽで簡単に持てちゃいます。
※この机は10トン以上あります。
「これを2階まで運ぶよ」ズズズズズッ。ドガドガッ。ドーン!
「ちょ、動くたびに色々ぶつかってるわ?! 壊れる、いやもう壊れてるわ! ちょ、今度は階段が?!! にゃあああ?!」
今から壁を壊すのでギルドの中が多少壊れても問題ないでしょう。というわけで2階の廊下の前に着きましたよ。これでドアごと壁を壊す準備完了です!
「……はぁはぁ。まさかと思うけどこれで壁を壊すのかしら?」←嫌な予感しかしないシロ先生
「うん」
「私離れるからちょっと待っ……」
「猫魔法・机をぐるぐるぶん回して勢いをつけてドーン!」
「にゃああああああああ?! 早い、まだ離れてないからああああ?!!!」
ぶんぶんぶんぶん! ドゥゴォオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
魔法がダメなら物理的なダメージを与えればいい。この石の机は魔法で出来ていませんからね。これならアンチ魔法に触れても全く問題なし。僕は元々人間なので道具を使える賢い猫なのですよ!
「魔法がダメなら物理だね!」
「いやいや、危ないわよ!! 壁どころか隣の部屋まで壊れてるからね?! というか2階は今のでほぼ全部消えたわよ?!」
「まあまあ落ち着いて。猫結界で外に音は聞こえないし、これぐらいすぐ修理出来るよ。それよりほら、本当に部屋があったでしょ?」
「確かにあるけど。あるんだけど色々と違う問題もあるの……(メンテのご両親、ちゃんと教育してあげてね。この子、魔王の道まっしぐらなの)」
壁の向こうから新たな部屋が見えました。よし、このギルドに隠された秘密を暴いちゃおっと!
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