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167話 「たかいたか~い その3」

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 水魔法・ウォータークッション。それは巨大な水の塊を出すことで衝撃を和らげる防御魔法である。今回は上空から襲ってくると分かっているので、部下は上方向に設置した。このウォータークッションにタクシーとメンテが突入すれば、速度や威力がかなり落ちるはず。例え突破され踏み潰されたとしても痛みは軽減出来るはずだ! と期待も込められている。

 そのウォータークッションを上空から見ているのはタクシーとメンテ。タクシーはメンテにあれは何かを説明し、対処法を実践すると言い始めた。

「それは――――――――――――――――爆殺です」

 するとタクシーはターゲットである水魔法に狙いを定めた。そして急降下し、大きな水の塊に向かって突撃していく。右足の飛び蹴りのような一撃、いわゆるライダーキックである。


 ドカーーーーーーーーン!!!!


 タクシーの右足が水に触れた瞬間、全ての水が爆発によって吹き飛んだ。そして、全く速度が落ちないまま部下を踏み潰した。水魔法? そんなの役に立たなかったよ……。

「ごべええっ?!(嘘でしょ?!)」
「きゃきゃあああああああああああああああ!」

 踏み潰された部下が地面に埋まってピクピク動く中、一人だけ大変嬉しそうに興奮する赤ちゃんがいたという。

「ほほっ。このように水がないと何も出来なくなるのが水魔法ですぞ。水魔法には、まず水を生み出すという工程が最初に必要なのです。さらに時間をかければかけるほど威力が増すの特徴ですな。つまり水魔法を完成させる前に相手を爆殺すれば良いのですぞ!」
「きゃああああああああああああああああ!」
「ええっ……(とっくに魔法が完成してたなんて言えない……)」←部下
「それに訓練場の地形を利用しないのも問題ですな。すでに存在する水を活かすことが出来るのも水魔法のメリットなのです。近くに池があるのですから上手に地形を使いこなすよう心がけましょう。生み出すと同時に魔法を完成出来るのは本当の熟練者だけですからな。まだあなたには早いようですぞ」
「……イエッサー。がはっ」バタン
「ほほっ。というわけで水魔法は早めにやるのが対処法です。次は氷魔法の対処法を教えましょう」
「はあーい!」

 メンテを抱っこしたまま上昇していくタクシー。下に広がるのは氷魔法・氷壁。その名の通り使用者の周りに氷の壁を作り出し、氷の力で攻撃を防ぐ魔法である。上空からの攻撃も横からの攻撃も防げるように広範囲に広がっていた。相手がどこから来ようと耐えることが出来るであろう。そう、相手が普通であれば。

「まずメンテ様は氷というものをご存じですか?」
「んぐぅ~?」←知らないのという顔
「ほほっ、固体状態の水のことを氷と言うのです。液体のときは水ですな。これだけではどちらも水なので分りづらいですな。しかし、魔法の場合は完全に別物と考えた方が良いでしょう」
「えぐ~?」←もっと詳しく知りたいなあという顔
「氷魔法とは冷気を操る力。水を利用して氷塊を作るのが一般的です。そのせいか水魔法の派生だとかその一種、水属性の亜種やら勘違いする人もいますが根本的には違う力なのです。ここを間違えてはいけませんぞ。また寒さに強くなる人が多いのも特徴ですな。ではメンテ様、あの魔法を見てください。あれは私の部下の周りに氷の壁が出来上がっております。周囲の温度が下がっている点から考えて氷魔法なのです!」
「え、えぐぐぅ?!」←すごく驚いた顔
「ほほっ。実は水魔法と氷魔法の両方を自在に使う人も多いですぞ。どちらか一方が使えれば両方使える可能性が高いのですな。派生と言われるのはそのためです」
「きゃきゃあああ!」

 そんこと全く知らなかったと驚く演技が上手なメンテ。メンテと話していると反応が面白いため、気持ちが良くなると使用人達に評判が良い。ついつい長話をしてしまうタクシーであった。

「というわけで氷魔法の対処法ですな。氷は物理的な力を持っています。水と違って形があるため、設置するだけで障害物になる点はとても優秀です。パーティでは一人いるだけで戦略が変わりますぞ! しかし、氷は熱さに弱いとう致命的な弱点を持ち合わせています。ここまで言えばもう何をすれば良いか分りますな?」
「えぐ?」←よく分からないなあの顔
「ほほっ、ではやってみましょう。それは――――――――――――――――爆殺です」

 そう言うと、タクシーは氷の壁を目がけてライダーキックを始めた。


 ドカーーーーーーーーン!!!!


「ぐわべぅ?!(はっ?!)」
「きゃきゃあああああああああああああああ!」

 タクシーの足が氷に触れた瞬間、全ての氷が爆発によって吹き飛び溶かされた。そして、全く速度が落ちないまま部下を踏み潰した。氷魔法? そんなのあったっけ? という半端ない威力の蹴りである。

「ほほっ。このように熱の力で溶かせば氷魔法などいちころなのです。氷魔法には、氷を生み出し加工するという工程が必要なのです。つまり水魔法を完成させる前でも後だろうと爆殺すれば氷が消える、すなわち何も出来なくなるのですぞ!」
「きゃああああああああああああああああ!」
「……え?(いやいやいや、その理屈はおかしい……)」←部下
「訓練所には寒い地方の場所もあるのです。そこで使わなければ効果が半減どころの話ではありませんぞ。分かりましたか?」
「……イエッサー。ごほっ」バタリ
「ほほっ。というわけで氷魔法は相手に有利な状況を作らせないのが簡単な対処法です。ではたかいたかいを再開しますぞ~」
「はあい!」

 こいつ何を言っているんだ。参考にしていいのかダメなのか……。いやすごいけど誰も真似出来ねえよ。そんなタクシーによる魔法教育が始まった。


 ◆

 タクシーが魔法を披露してメンテを喜ばせている中、ダンディはというと……。

「お、それは私の大好きなカステラじゃないか!」
「実はシェフ様から休憩の際はこれも一緒にと頼まれました」
「はっはっは、さすがシェフだ。では一口……もぐもぐ。おお、何だかいつもと違うぞ?! いったいこれは何が入っているんだ? 隠し味が違うのか? はっはっは、気になるなあ」

『隠し……? ダ、ダンディ様が隠れることを希望しているぞー!!!!!!』
『『『了解!』』』


 ◆

「あぐじー。あえあえ」
「ほほっ、あそこですか? ……おお、あそこに1人隠れていますな! まさかメンテ様はあれが見えたのですか?」
「はあーい!」
「なんと素晴らしい! 私は身体強化をしなければ気付きませんでしたぞ! あれはスキル”擬態”の効果ですな」
「すきう?!」
「そうです、スキルですぞ。周囲に溶け込むことで自分の姿を分らなくするのです。また毒があるぞと思わせることで敵に襲われなくすることも可能ですな。魔法を使って同じことも出来ますが、魔力で敵に居場所がばれてしまう欠点があるのです。魔法を使わずあそこまでやるのはスキル持ちぐらいです。上手に木と同化しておりますな」
「きゃきゃあああああああああ!」

 魔法以外の話も聞けて大いに喜ぶメンテである。

「あえは?」指プイ
「おお、近くにもう1人隠れていますな。あれは植物魔法です。植物を伸ばして身を隠しているのですぞ。ですが、上空見ると居場所がバレバレですぞ。これはいけません。おしおきが必要ですぞ」
「あえは~?」指プイ
「おお、あれも見つけましたか。あれは土魔法を使って岩のふりをしているのでしょう。上から見えると全く違和感がありませんな。しっかりと周囲に溶け込むような色を使っているようです。これは悪くない選択でしょう」
「きゃきゃきゃ!」
「ほほっ。3人とも森林エリアで比較的近くにいる。つまりチームを組んで動いているのでしょうな。例え誰か1人が犠牲になっても他の2人は逃げ情報を伝えられるという配置ですな。この場合、使う魔法がポイントになるのですが、メンテ様には分りますかな?」
「えぐぅ~?」
「ほほっ。ではやってみましょう。答えは――――――――――――――――爆殺です」

 そういうとタクシーは隠れている3人の部下の中心目がけてに急下降していった。タクシーの足が地面に触れた瞬間、タクシーを中心に同心円状の波紋が広がる。そして、大きな揺れを引き起こす!


 ピトッ。グラアアアア!! ゴゴゴッゴゴゴゴッゴゴゴゴゴッゴゴゴ!!


 さらに地面が光だし、タクシーとメンテを中心としたドーナツ状の爆発が発生した。魔法の影響なのか地面への衝撃の影響で爆発しているのかは不明である。地面が爆発したっていいじゃない。だってタクシーがやってるんだもん。


 キュイイイイイイイイイイイイイイイイイン、ドゥッババババアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!


「「「ぎゃあああああああ!」」」
「きいいいいいいやああああああああああああああああああああああああ!」←メンテ
「ほほっ。地面を揺らして動きを封じてからの爆発ですぞ! 身を隠すときは動かない方が見つかりにくいのですが、いったん見つかってしまえばこの通り無意味ですな。こういうときは広範囲の魔法で爆殺してしまえばよいのです!」
「きゃきゃきゃ!」
「ほほっ、メンテ様が楽しんでいるようで何よりです。ついついやりすぎてしまいましたぞ。まあ地面だろうと部下だろうと踏み潰せば結果は同じ。つまり今回も部下を踏み潰したのです!」
「きゃきゃきゃ!」
「メンテ様が喜んでいるのでセーフですな。ほほっ」
「「「――?!(……えええっ?! なにその謎理論?!!!!)」」」←部下
「ではたかいたかいを再開しますぞ~!」
「はあああい!」

 もはやルールすら爆殺し始めるタクシーであった。

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