162 / 259
162話 「1歳7か月」
しおりを挟む
「それー!」
「きゃきゃきゃ!」
「えへへへ!」
仲良く走り回るアーネとメンテ。その様子を眺めるレディー。
「二人とも仲が良いわね。でも動き回っているせいか汗だくね。……フフッ、丁度良さそうだわ。アーネ、メンテちゃん。二人ともこっちに来なさい」
「なにママ―?」
「きゃきゃー」
「二人とも汗をかきすぎよ。シェフさんがお茶を作ってくれたから飲みに行くわよ」
「わかったー」
「えぐぐ!」
そして、食堂に向かう3人。
「いっぱいあるー!」
「ちゃ?」
「フフッ、そうよ。これは全部シェフさん達が作ったお茶よ」
食堂には、お茶の葉っぱとお茶の入った容器がいっぱい並べてあり、シェフが子供たちが来るのを待っていた。興味津々な二人にシェフが解説を始めた。
「なんたって今はオイシイチャノキの収穫時期ですからね。この葉っぱがオイシイチャノキです。全部うちで採れた葉っぱなんですよ」
「これ全部?!」
「こえちゃ?(これお茶?)」
「すごい量でしょ。この葉っぱがお茶になるんですよ」
「すっごーい! これ全部お茶になるんだー」
「ちゃー!」
「いっぱいあるのでいろいろ試してみました。ここに出来たてのお茶がありますよ」
「何したのー?」
「えぐぐ?」
「まずはこれをどうぞ」
シェフはお茶の入った容器を持つと、コップに注ぎ込んで二人に渡した。メンテのコップにはストローが付いている。これがないとよくこぼすからだ。
「なんかこれ黒いよー?」
「ちゃー?」
「発酵させたり加熱の違いで色や味が変わるんですよ。ほら、飲んでみてください」
「ごくごく……あ、ちょっと違うー! これ飲みやすい」
「えぐ……(なんか前世のお茶を思い出す味だなあ)」
「おいしいでしょ。みんなで作ったんですよ。ほらあそこに」
食堂の入口を指差すシェフ。そこには一緒にお茶を作った料理人達がいた。
「フフッ、みんな隠れてないで出て来なさい。一緒に飲みましょう」
『ざわざわ』
「えへへ、みんなで飲むとおいしいね」
「えっぐ」
それからみんなでお茶を飲み比べるのであった。汗だくなアーネとメンテはごくごくと飲みまくっていった。
「フフッ。二人ともおいしかった?」
「おいしかったー。私はこれが一番好き! だって甘かったもん」
「それは良かったわね。また作って貰いましょうか」
「やったー!」
「ひゃっほおおおおおお」
アーネに好きと言われた料理人はめっちゃ喜んだ。
「メンテちゃんはどれかな?」
「ん~……おぱい?」
「あらあら、おっぱいが一番なの? フフッ、どれが要らないかってママ聞いていたのよ。これで卒業かしら」
「……」←スッっと無言でお茶を指差すメンテ
「あら、どうしたのメンテちゃん? 急に指差して。ママのおっぱいじゃなかったの? ほら、もう1回言ってみなさい。遠慮せずにほら!」
「……」
泣きそうな顔をしながらテキトーなお茶を指差すメンテ。必死である。
「……」←無言でレディーを見つめるメンテ
「フフッ、冗談よ。次ふざけたら本当に卒業させるけどね。……それでこれがおいしくなかったの?」
「えぐえぐ」コクコク
「う、嘘だろ……」
近くで副料理長のクックが愕然とした表情でこちらをメンテを見ていた。彼はメンテがとてもおいしそうに飲んでいたのを見ていたのだ。しかも何回も飲んでいるのも知っている。それなのに一番まずいお茶だと断定されるとは思わなかったである。可愛そうなことに彼はメンテのおっぱい被害を受けたのであった。
「何回も飲んでいたのに……」
「だ、大丈夫ですよ。大人には分かる味なんで」
「そうですよ。これおいしいですから!」
「これ他の料理で使えそうですよ!」
「おう……」
まずいと言われたせいで急に老け込んだおじさんみたいになったクック。あまりの落ち込みように周りの人達が必死にフォローしたという。
「えっと……、私もこれ(クックの作ったお茶)おいしいと思ったわよ。メンテちゃんは赤ちゃんだし好みの違いかしらね。じゃあメンテちゃん、一番好きなお茶はどれなの?」
「……えぐ」
「これがいいの?」
「はあい!」
メンテが指差したのは、緑色の苦いお茶である。日本のお茶だと緑茶に近い味だ。
「ん~、ママはこれ子供には合わないと思うわよ?」
「そうかなー? これ味があっておいしいかったよ」「えぐえぐ」
「え、二人ともそうなの?」
「うん!」「えぐえぐ!」
「……本当かしら? 大人でも苦いと思うんだけどなあ。二人とも変な所だけ似てるのよね。ん~、そこは兄弟らしいわね」
「今後はちょっと薄めてこのお茶を作りますね。もうちょっと大きくなってからこの味にしましょう」
「あら、シェフさんありがとう」
気が利く男。それがシェフなのである。というよりこのお茶を作ったのがシェフなのだ。ちょっと嬉しそうにしていた。
「いえいえ。最近のメンテの坊ちゃんは、味に興味を持っているようですしね。こちらとしては作っていて楽しいですからねえ。いやー、作り甲斐があるってもんですよ」
「初めて見た物でも躊躇せず食べるから私も苦労しないわ。ちゃんと成長している証かしら。……その割に小っちゃいけど」
「う~ん、確かによく食べるのに小さいままですね」
「そこが不思議なのよ。まあそこがメンテちゃんらしくて可愛いんだけどね」
「話は変わりますが、このお茶を使って新しいデザートでも作ってみたいのですが……」
「あら、面白そうじゃない。あとで私に食べさせてね」
「へい、頑張ります!」
メンテ1歳7か月。体は小さいけど順調に成長中である!
◆
「えぐぐぐぐー!(猫魂ー!)」
いつも通り夜中は猫の姿になる僕メンテ。今日もあることを頑張ります!
「ふぅ……。疲れたぁ~」
「あら今日は一人で何をしているの?」
「ちょっとシロ先生そこに止まって。猫強化!」
「えっ」
「どう? 何か違わない??」
「ど、どうって言われても……。前に掛けて貰ったときとあまり変わらないかしらねえ」
「そっか……。もっと鍛えないとね」
「どういうこと? さっきから全然事情が分からないの」
「僕ね、ギルドに行こうと思ってるんだ!」
そうなんです。僕冒険者に目を付けたのですよ。
「へえ、そうなの。夜中に出かけるのかしら?」
「うん。だから冒険者に見つかっても対処出来るように魔法を鍛えてるんだ!」
「へえ。頑張ってね」
「もちろんシロ先生も一緒に行だよ!」
「……そ、そう。そのうち行きましょうか、そのうちね。今日は嫌よ」
「うん。もっと訓練頑張るね!」
「もっとゆっくりでいいのよ? ね? ……ダメだ、全く話を聞いてないわね」
あまり行きたくなさそうなのシロ先生であった。それからシロ先生が離れて一匹になってもメンテは訓練は続いていた。
「ギフト!」
==========
【 】
年齢 1歳
性別 男
称号 なし
所持スキル
・暴走
・猫魔法
・エッグ
==========
「ん~。何も変わらないなあ」
僕のギフトに変化はありませんねえ。エッグが割れてスキル増えないかなあと毎回楽しみに開いていますよ。でも今日はもういいやとギフトを閉じて訓練を再開します。
「……」
僕は静かに魔力を体から溢れさせます。でもその魔力の大きさにはムラがあります。出力の違いとでも言えば良いのでしょうか。毎回バラバラになってしまいます。この段階から上手にコントロール出来ていないのです。まずはこのムラをなくし、魔力を毎回均一に出せるようにします。
「……ふぅ」
何回やっても上手にいきません。いやはや、これが結構難しいのですよ。魔力をいかに上手にコントロール出来るようになるのか。それが魔法を使うときに影響します。すなわち僕の猫魔法の強化につながると言う訳です。
ではゲームで例えてみましょう。ある魔法を使うとポイントを10消費するとします。僕の場合は、その魔法を使っても10~13消費して同程度の魔法が出るのです。しかも13使っても10とたいして効果は変わらないという。とても無駄が多いと思いませんか? 30ぐらい魔力を消費するとさすがに威力は上がりますが、消耗が激しくなるので問題になるのです。どうせなら最少の10をずっと出し続けたい。今そういう訓練をしています。
魔法を使うのに必要最低限の魔力を身体から生み出す、つまり魔力の消費を最小に抑えるための訓練というわけですね。これが上手になれば無駄がなくなり、効率よく魔法を使えるでしょう。使える回数も大幅にアップしちゃいますし。
「ん~、難しい。たまにしか成功しないなあ。じゃあ今度は別のことをやってみよう」
今度は魔力をしっぽだけに集中させます。これは全身の魔力の流れを制御する訓練しているのです。こうすることによって魔力操作を鍛え、集めた魔力を無駄なく魔法に変換します。使わなかった余った魔力は、身体の中に戻らずに消えちゃいますからね。ここも無駄をカットしたいわけです。
「……結構いい感じかも?」
初めて魔法を使った時と比べると、多少はましになってきたのではないでしょうか? でもまだまだ足りない気がします。
大人の冒険者となると、魔法の使い方も一流の人が多いはずです。タクシーのようにすごい人がいっぱい集まる世界、それがギルドでしょう。冒険者のランクによる強さはよく分からないけど、町が破壊されても皆ピンピンしていました。きっとこの町には強い人ばっかりいるんだろうねえ。
「はぁ~、疲れた。でももっと強くならないと……」
僕はまだ魔法を使って半年ぐらいの子猫ですからね。しっぽや爪を伸ばしたり、結界を作ったり、変身を使えたり、近くの猫を強化させたりぐらいしか出来ません。あとはブレスやレーザーや空間を破壊するぐらいしか使えないからねえ……。これでは自己防衛も難しいはず。シロ先生も同行させるならもっと強くなるべきです。
まあ僕は天才ではないので、こうやって何度も同じことを繰り返して身体で覚えるしかありません。ギルドに行くと決めたあの日から、毎日夜中に起きて頑張ってます。もはや夜の日課です。
「よし、頑張るぞー!」
こうして秘密の訓練は続くのであった。メンテ1歳7か月。体が小さいのは、夜中にこうやってエネルギーを使いまくっているからかもしれない。
「きゃきゃきゃ!」
「えへへへ!」
仲良く走り回るアーネとメンテ。その様子を眺めるレディー。
「二人とも仲が良いわね。でも動き回っているせいか汗だくね。……フフッ、丁度良さそうだわ。アーネ、メンテちゃん。二人ともこっちに来なさい」
「なにママ―?」
「きゃきゃー」
「二人とも汗をかきすぎよ。シェフさんがお茶を作ってくれたから飲みに行くわよ」
「わかったー」
「えぐぐ!」
そして、食堂に向かう3人。
「いっぱいあるー!」
「ちゃ?」
「フフッ、そうよ。これは全部シェフさん達が作ったお茶よ」
食堂には、お茶の葉っぱとお茶の入った容器がいっぱい並べてあり、シェフが子供たちが来るのを待っていた。興味津々な二人にシェフが解説を始めた。
「なんたって今はオイシイチャノキの収穫時期ですからね。この葉っぱがオイシイチャノキです。全部うちで採れた葉っぱなんですよ」
「これ全部?!」
「こえちゃ?(これお茶?)」
「すごい量でしょ。この葉っぱがお茶になるんですよ」
「すっごーい! これ全部お茶になるんだー」
「ちゃー!」
「いっぱいあるのでいろいろ試してみました。ここに出来たてのお茶がありますよ」
「何したのー?」
「えぐぐ?」
「まずはこれをどうぞ」
シェフはお茶の入った容器を持つと、コップに注ぎ込んで二人に渡した。メンテのコップにはストローが付いている。これがないとよくこぼすからだ。
「なんかこれ黒いよー?」
「ちゃー?」
「発酵させたり加熱の違いで色や味が変わるんですよ。ほら、飲んでみてください」
「ごくごく……あ、ちょっと違うー! これ飲みやすい」
「えぐ……(なんか前世のお茶を思い出す味だなあ)」
「おいしいでしょ。みんなで作ったんですよ。ほらあそこに」
食堂の入口を指差すシェフ。そこには一緒にお茶を作った料理人達がいた。
「フフッ、みんな隠れてないで出て来なさい。一緒に飲みましょう」
『ざわざわ』
「えへへ、みんなで飲むとおいしいね」
「えっぐ」
それからみんなでお茶を飲み比べるのであった。汗だくなアーネとメンテはごくごくと飲みまくっていった。
「フフッ。二人ともおいしかった?」
「おいしかったー。私はこれが一番好き! だって甘かったもん」
「それは良かったわね。また作って貰いましょうか」
「やったー!」
「ひゃっほおおおおおお」
アーネに好きと言われた料理人はめっちゃ喜んだ。
「メンテちゃんはどれかな?」
「ん~……おぱい?」
「あらあら、おっぱいが一番なの? フフッ、どれが要らないかってママ聞いていたのよ。これで卒業かしら」
「……」←スッっと無言でお茶を指差すメンテ
「あら、どうしたのメンテちゃん? 急に指差して。ママのおっぱいじゃなかったの? ほら、もう1回言ってみなさい。遠慮せずにほら!」
「……」
泣きそうな顔をしながらテキトーなお茶を指差すメンテ。必死である。
「……」←無言でレディーを見つめるメンテ
「フフッ、冗談よ。次ふざけたら本当に卒業させるけどね。……それでこれがおいしくなかったの?」
「えぐえぐ」コクコク
「う、嘘だろ……」
近くで副料理長のクックが愕然とした表情でこちらをメンテを見ていた。彼はメンテがとてもおいしそうに飲んでいたのを見ていたのだ。しかも何回も飲んでいるのも知っている。それなのに一番まずいお茶だと断定されるとは思わなかったである。可愛そうなことに彼はメンテのおっぱい被害を受けたのであった。
「何回も飲んでいたのに……」
「だ、大丈夫ですよ。大人には分かる味なんで」
「そうですよ。これおいしいですから!」
「これ他の料理で使えそうですよ!」
「おう……」
まずいと言われたせいで急に老け込んだおじさんみたいになったクック。あまりの落ち込みように周りの人達が必死にフォローしたという。
「えっと……、私もこれ(クックの作ったお茶)おいしいと思ったわよ。メンテちゃんは赤ちゃんだし好みの違いかしらね。じゃあメンテちゃん、一番好きなお茶はどれなの?」
「……えぐ」
「これがいいの?」
「はあい!」
メンテが指差したのは、緑色の苦いお茶である。日本のお茶だと緑茶に近い味だ。
「ん~、ママはこれ子供には合わないと思うわよ?」
「そうかなー? これ味があっておいしいかったよ」「えぐえぐ」
「え、二人ともそうなの?」
「うん!」「えぐえぐ!」
「……本当かしら? 大人でも苦いと思うんだけどなあ。二人とも変な所だけ似てるのよね。ん~、そこは兄弟らしいわね」
「今後はちょっと薄めてこのお茶を作りますね。もうちょっと大きくなってからこの味にしましょう」
「あら、シェフさんありがとう」
気が利く男。それがシェフなのである。というよりこのお茶を作ったのがシェフなのだ。ちょっと嬉しそうにしていた。
「いえいえ。最近のメンテの坊ちゃんは、味に興味を持っているようですしね。こちらとしては作っていて楽しいですからねえ。いやー、作り甲斐があるってもんですよ」
「初めて見た物でも躊躇せず食べるから私も苦労しないわ。ちゃんと成長している証かしら。……その割に小っちゃいけど」
「う~ん、確かによく食べるのに小さいままですね」
「そこが不思議なのよ。まあそこがメンテちゃんらしくて可愛いんだけどね」
「話は変わりますが、このお茶を使って新しいデザートでも作ってみたいのですが……」
「あら、面白そうじゃない。あとで私に食べさせてね」
「へい、頑張ります!」
メンテ1歳7か月。体は小さいけど順調に成長中である!
◆
「えぐぐぐぐー!(猫魂ー!)」
いつも通り夜中は猫の姿になる僕メンテ。今日もあることを頑張ります!
「ふぅ……。疲れたぁ~」
「あら今日は一人で何をしているの?」
「ちょっとシロ先生そこに止まって。猫強化!」
「えっ」
「どう? 何か違わない??」
「ど、どうって言われても……。前に掛けて貰ったときとあまり変わらないかしらねえ」
「そっか……。もっと鍛えないとね」
「どういうこと? さっきから全然事情が分からないの」
「僕ね、ギルドに行こうと思ってるんだ!」
そうなんです。僕冒険者に目を付けたのですよ。
「へえ、そうなの。夜中に出かけるのかしら?」
「うん。だから冒険者に見つかっても対処出来るように魔法を鍛えてるんだ!」
「へえ。頑張ってね」
「もちろんシロ先生も一緒に行だよ!」
「……そ、そう。そのうち行きましょうか、そのうちね。今日は嫌よ」
「うん。もっと訓練頑張るね!」
「もっとゆっくりでいいのよ? ね? ……ダメだ、全く話を聞いてないわね」
あまり行きたくなさそうなのシロ先生であった。それからシロ先生が離れて一匹になってもメンテは訓練は続いていた。
「ギフト!」
==========
【 】
年齢 1歳
性別 男
称号 なし
所持スキル
・暴走
・猫魔法
・エッグ
==========
「ん~。何も変わらないなあ」
僕のギフトに変化はありませんねえ。エッグが割れてスキル増えないかなあと毎回楽しみに開いていますよ。でも今日はもういいやとギフトを閉じて訓練を再開します。
「……」
僕は静かに魔力を体から溢れさせます。でもその魔力の大きさにはムラがあります。出力の違いとでも言えば良いのでしょうか。毎回バラバラになってしまいます。この段階から上手にコントロール出来ていないのです。まずはこのムラをなくし、魔力を毎回均一に出せるようにします。
「……ふぅ」
何回やっても上手にいきません。いやはや、これが結構難しいのですよ。魔力をいかに上手にコントロール出来るようになるのか。それが魔法を使うときに影響します。すなわち僕の猫魔法の強化につながると言う訳です。
ではゲームで例えてみましょう。ある魔法を使うとポイントを10消費するとします。僕の場合は、その魔法を使っても10~13消費して同程度の魔法が出るのです。しかも13使っても10とたいして効果は変わらないという。とても無駄が多いと思いませんか? 30ぐらい魔力を消費するとさすがに威力は上がりますが、消耗が激しくなるので問題になるのです。どうせなら最少の10をずっと出し続けたい。今そういう訓練をしています。
魔法を使うのに必要最低限の魔力を身体から生み出す、つまり魔力の消費を最小に抑えるための訓練というわけですね。これが上手になれば無駄がなくなり、効率よく魔法を使えるでしょう。使える回数も大幅にアップしちゃいますし。
「ん~、難しい。たまにしか成功しないなあ。じゃあ今度は別のことをやってみよう」
今度は魔力をしっぽだけに集中させます。これは全身の魔力の流れを制御する訓練しているのです。こうすることによって魔力操作を鍛え、集めた魔力を無駄なく魔法に変換します。使わなかった余った魔力は、身体の中に戻らずに消えちゃいますからね。ここも無駄をカットしたいわけです。
「……結構いい感じかも?」
初めて魔法を使った時と比べると、多少はましになってきたのではないでしょうか? でもまだまだ足りない気がします。
大人の冒険者となると、魔法の使い方も一流の人が多いはずです。タクシーのようにすごい人がいっぱい集まる世界、それがギルドでしょう。冒険者のランクによる強さはよく分からないけど、町が破壊されても皆ピンピンしていました。きっとこの町には強い人ばっかりいるんだろうねえ。
「はぁ~、疲れた。でももっと強くならないと……」
僕はまだ魔法を使って半年ぐらいの子猫ですからね。しっぽや爪を伸ばしたり、結界を作ったり、変身を使えたり、近くの猫を強化させたりぐらいしか出来ません。あとはブレスやレーザーや空間を破壊するぐらいしか使えないからねえ……。これでは自己防衛も難しいはず。シロ先生も同行させるならもっと強くなるべきです。
まあ僕は天才ではないので、こうやって何度も同じことを繰り返して身体で覚えるしかありません。ギルドに行くと決めたあの日から、毎日夜中に起きて頑張ってます。もはや夜の日課です。
「よし、頑張るぞー!」
こうして秘密の訓練は続くのであった。メンテ1歳7か月。体が小さいのは、夜中にこうやってエネルギーを使いまくっているからかもしれない。
0
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる