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120話 「シロ先生は物知り」
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「じゃあパパは仕事に行くからな」
「うぇえええん!」
「はっはっは。よしよし、メンテは可愛いなあ」
「ママも今日はいないからね。カフェちゃん、メンテちゃんのことよろしくね」
「かしこまりました」
「うわあああああああああああああん!」
仕事に出かけたダンディとレディー。泣きじゃくるメンテをカフェが大丈夫ですよと必死になだめていた。
そして、この様子を猫達は眺めていた。そのうちの1匹がシロ先生に話しかけた。
「ねえ、メンテ大丈夫なの?」
この猫はクリーム。メンテのお家にたまたま遊びに来ていたが、泊まるのは今回が初めての猫である。泣いているメンテを見て心配になる心が優しい猫だ。
「あ~、それなら大丈夫。あれはただの日課だから」
「日課?!」
「そうなの。ああやって毎朝嘘泣きするのよ。パパママ大好きってアピールしているそうよ」
「あれ嘘泣きなの?!」
「私も最初は騙されたわ。でももう慣れたけど」
「嘘でしょ?! え? さっきからみんな落ち着いているけど、もしかしてこのこと知ってるの?」
「「「「「もう慣れたにゃ」」」」」
「え、慣れてるの?! みんなしてあれが当たり前のようなことを言ってて怖いんだけど……」
よく遊びに来る猫にとってはいつもの光景である。だがクリームには衝撃でしかなかった。そのためツッコミが止まらない。
「でもさ、今のメンテ見てよ。すごく落ち込んでいるよ? かわいそうじゃない?」
「目の付け所がいいわね。あれも演技よ」
「演技?!」
「ころっと態度が変わると嘘泣きとバレてしまう。だからわざと落ち込んでいるとメンテが言ってたわ。嘘泣きも笑顔も可愛い声も全てが演技。それが赤ちゃんだって」
「そんな赤ちゃん聞いたことないけど?!」
クリームはいたって普通の猫である。疑問を抱いて当然であった。対して他の猫はこの家に馴染んでいるため、メンテの行動をよく理解していた。
「でも実際に通じてるでしょ?」
「……まあ」
「あれはメンテなりのボディーランゲージなの。クリームも覚えておいた方がいいわよ」
「あー、うん。そうなんだ」
普通の猫と違い、シロ先生にとって人間の基準はメンテなのだ。そのためか価値観がかなりずれている。残念ながらそれを指摘出来る猫は存在しないのである。こうしてメンテが普通の人間だと認識されていくのであった。
「これも知っておいた方がといいわね。実はメンテってまだ人間の大人とはしゃべれないの。でもこうして私たちが家に遊びに来れるのは、メンテがああやって頑張っているおかげよ」
「え、普通に僕らとしゃべってるよね?」
「ええ。猫語は大丈夫だって。でも人間と猫は話す言葉が違うから発音が難しいと言ってたわね。何で分かるの? と聞いたら、生まれたときからそういうスキルを持っているそうよ。人間の持つ特殊能力なんだって」
「「「「「へえ」」」」」
シロの話はためになる。そのため猫達も興味を持ちながら聞いているのだ。まさに先生である。
「そういえばメンテって子猫とも話せるって知ってた?」
「それはさすがに嘘だあ~」
「私も信じたくなかったんだけどね。実際にメンテが教会で子猫と会話したことがあるのよ」
「え、それどうなったの? すごく気になるんだけど」
「子猫は言葉を理解してない。でも感情はあるって言ってたわ。ここまでは普通の猫と一緒の考えね。でも……」
「でも?」
「何がしたいか親猫より当てちゃうの。特におっぱいに関しては100%正解してたわ。それはもう恐ろしいほどに。さすがおっぱいの魔王ね!」
「「「「「まじかよ?!」」」」」
「いやいや。レッドとブルーは一緒に見てたじゃないの!」
「そうだっけ?」「えへへ、忘れちゃったよ」
メンテは猫の言葉だけでなく、猫の感情も何となく分かるという力を持っている。なお対象は猫限定と範囲は超狭い。
「まあいいわ。猫のことは猫、赤ちゃんのことは赤ちゃんに聞くのが一番ってことよ。メンテは人間と猫を繋ぐことが出来る貴重な存在なの。私達とメンテが組めば、この世界はもっと面白くなるんじゃないかしら」
「さすが先生!」
「にゃふぅうううううー!」
「先生ー!」
「よ、先生」
「せんせーい」
「「「「「先・生! 先・生!」」」」」
「ちょっと、みんなして先生とか言わないでくれる?! せめてシロは付けて欲しいわ」
日に日に先生っぷりが増すシロ先生であった。こうしてメンテのことを詳しく話した結果、猫達から人間に物知りな猫がいると噂されるようになるのである。シロが知らぬうちに教会の猫だけでなく、コノマチの猫達に伝わっていったという。
「えぐえぐー(お菓子食べに行くよー)」
「みんな行くわよ」キリッ
「「「「「行くにゃー!」」」」」
「うぇえええん!」
「はっはっは。よしよし、メンテは可愛いなあ」
「ママも今日はいないからね。カフェちゃん、メンテちゃんのことよろしくね」
「かしこまりました」
「うわあああああああああああああん!」
仕事に出かけたダンディとレディー。泣きじゃくるメンテをカフェが大丈夫ですよと必死になだめていた。
そして、この様子を猫達は眺めていた。そのうちの1匹がシロ先生に話しかけた。
「ねえ、メンテ大丈夫なの?」
この猫はクリーム。メンテのお家にたまたま遊びに来ていたが、泊まるのは今回が初めての猫である。泣いているメンテを見て心配になる心が優しい猫だ。
「あ~、それなら大丈夫。あれはただの日課だから」
「日課?!」
「そうなの。ああやって毎朝嘘泣きするのよ。パパママ大好きってアピールしているそうよ」
「あれ嘘泣きなの?!」
「私も最初は騙されたわ。でももう慣れたけど」
「嘘でしょ?! え? さっきからみんな落ち着いているけど、もしかしてこのこと知ってるの?」
「「「「「もう慣れたにゃ」」」」」
「え、慣れてるの?! みんなしてあれが当たり前のようなことを言ってて怖いんだけど……」
よく遊びに来る猫にとってはいつもの光景である。だがクリームには衝撃でしかなかった。そのためツッコミが止まらない。
「でもさ、今のメンテ見てよ。すごく落ち込んでいるよ? かわいそうじゃない?」
「目の付け所がいいわね。あれも演技よ」
「演技?!」
「ころっと態度が変わると嘘泣きとバレてしまう。だからわざと落ち込んでいるとメンテが言ってたわ。嘘泣きも笑顔も可愛い声も全てが演技。それが赤ちゃんだって」
「そんな赤ちゃん聞いたことないけど?!」
クリームはいたって普通の猫である。疑問を抱いて当然であった。対して他の猫はこの家に馴染んでいるため、メンテの行動をよく理解していた。
「でも実際に通じてるでしょ?」
「……まあ」
「あれはメンテなりのボディーランゲージなの。クリームも覚えておいた方がいいわよ」
「あー、うん。そうなんだ」
普通の猫と違い、シロ先生にとって人間の基準はメンテなのだ。そのためか価値観がかなりずれている。残念ながらそれを指摘出来る猫は存在しないのである。こうしてメンテが普通の人間だと認識されていくのであった。
「これも知っておいた方がといいわね。実はメンテってまだ人間の大人とはしゃべれないの。でもこうして私たちが家に遊びに来れるのは、メンテがああやって頑張っているおかげよ」
「え、普通に僕らとしゃべってるよね?」
「ええ。猫語は大丈夫だって。でも人間と猫は話す言葉が違うから発音が難しいと言ってたわね。何で分かるの? と聞いたら、生まれたときからそういうスキルを持っているそうよ。人間の持つ特殊能力なんだって」
「「「「「へえ」」」」」
シロの話はためになる。そのため猫達も興味を持ちながら聞いているのだ。まさに先生である。
「そういえばメンテって子猫とも話せるって知ってた?」
「それはさすがに嘘だあ~」
「私も信じたくなかったんだけどね。実際にメンテが教会で子猫と会話したことがあるのよ」
「え、それどうなったの? すごく気になるんだけど」
「子猫は言葉を理解してない。でも感情はあるって言ってたわ。ここまでは普通の猫と一緒の考えね。でも……」
「でも?」
「何がしたいか親猫より当てちゃうの。特におっぱいに関しては100%正解してたわ。それはもう恐ろしいほどに。さすがおっぱいの魔王ね!」
「「「「「まじかよ?!」」」」」
「いやいや。レッドとブルーは一緒に見てたじゃないの!」
「そうだっけ?」「えへへ、忘れちゃったよ」
メンテは猫の言葉だけでなく、猫の感情も何となく分かるという力を持っている。なお対象は猫限定と範囲は超狭い。
「まあいいわ。猫のことは猫、赤ちゃんのことは赤ちゃんに聞くのが一番ってことよ。メンテは人間と猫を繋ぐことが出来る貴重な存在なの。私達とメンテが組めば、この世界はもっと面白くなるんじゃないかしら」
「さすが先生!」
「にゃふぅうううううー!」
「先生ー!」
「よ、先生」
「せんせーい」
「「「「「先・生! 先・生!」」」」」
「ちょっと、みんなして先生とか言わないでくれる?! せめてシロは付けて欲しいわ」
日に日に先生っぷりが増すシロ先生であった。こうしてメンテのことを詳しく話した結果、猫達から人間に物知りな猫がいると噂されるようになるのである。シロが知らぬうちに教会の猫だけでなく、コノマチの猫達に伝わっていったという。
「えぐえぐー(お菓子食べに行くよー)」
「みんな行くわよ」キリッ
「「「「「行くにゃー!」」」」」
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