もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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98話 「魔力の覚醒 その1」

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 僕は兄貴から借りた本を大事に読んでいます。

 そのせいで大人達からは、あの本が気に入ったのねと言われていますが。でも僕は文字が読めちゃう赤ちゃんですから内容を理解しています。このことは秘密なので、普段はこの本の感触が大好きなのと振舞っています。本にはこう書かれていました。

 ○魔力
 世界中どこにでもある魔法の源となるもの。
 人間は体内で生成が可能である。
 個人差はあるものの、1歳以降に魔力を扱う器官が発達する。

 ○魔力感知
 魔力を認識する力。

 ○魔力操作
 魔力を動かす。または別の力に変換する力。

 ○魔法
 魔力を別の力に変換することで生じる現象。
 スキルによって得意、不得意がある。

 ○スキル
 才能や技能。
 身体や心、得意な魔法に影響するなど多岐にわたる。
 後天的に覚えることもある。

 ○ユニークスキル
 特定の人だけが使えるスキル。
 詳細は不明。


 いろいろ専門的な単語が出てるけど、めっちゃゲームみたいな感じです。僕にとってこの本はいい感じの説明書なのですよ!

 最初から兄貴の勉強を見学していればよかったよ。兄貴は外で魔法の練習しかしてないイメージでした。アーネだけでなく兄貴も勉強熱心だったなんてねえ。



 専門用語が難しいとか覚えられない方には、こちらをおすすめしますよ!


 ○魔力
 なんかすごい力の源。

 ○魔力感知
 感じとる能力。

 ○魔力操作
 コントロール。

 ○魔法
 魔力を使った不思議な現象。

 ○スキル
 ノーマルな能力。

 ○ユニークスキル
 レアな能力。


 僕の考えはこんな感じなのです。いちいち難しく考える必要はないのですよ。



 この本から僕が知りたかった事も分かりました!

 僕は魔力を扱う器官が未発達みたいです。魔力を感じ取ったり、体内で作ることが出来てないから魔法を使えないってことですよ!

 この魔力を扱う器官を”魔力器官”と呼びますね。この魔力器官ですが、どこにあるのかというと不明です。身体に宿るやらただの感覚であるとか書かれていたね。つまり詳しい場所は分かってないけどあるらしいです。どうやって見つけたんでしょうかね?

 別に体内で魔力を作らなくても、そこらへんにある魔力使えばいいんじゃない? と思ったけど、魔力操作出来ない僕には無理なのです。それ以前に認識する力(魔力感知)すら発達していません。前世に魔力なんてなかったから扱い方も知らないしなあ。ましてやそういうスキルも僕になかったのですよ。




 ……あれれ? この世界の僕って、本当にただの赤ちゃんじゃない???




 うん、気のせいだね!

 まあいつかは魔法を使うことが出来るようになるでしょう。魔力が目覚める理由は、人それぞれで違うらしいのです。それまではゆっくり待ちますよ。


 それにしてもこの本はとても参考になったなあ。よし、この本を褒めちゃおう!


「ちゅぱぱ~(えらいぞ~)」
「あら、メンテちゃんが舐めてるのはアニーキ―の本よね。いいの?」
「なんかあの本を気に入っちゃってね。もう全部読んだからいいよ……」


 兄貴はこの本は読み終えたそうです。欲しいから貰っちゃいますよ。可愛い弟へのプレゼントってことで許してね!

 ちなみに僕とアーネが、勝手に兄貴の部屋に侵入したことが大人達にバレたけど問題なかったです。勝手にどこでも行っちゃうから、あまり目を外さないようにと監視が厳しくなりましたが。


「メンテよかったねー」
「えっぐ。ちゅぱ~」


 ご機嫌なメンテであった。


 ◆


 その日の夜。
 僕と母はお風呂が終わって両親の寝室にいます。そろそろ寝る時間です。


「メンテちゃん、その本邪魔なんだけど……」
「ちゅぱ~」


 今は恒例になったおっぱいタイム中ですが、この本を手離すと手の届かないところへ片づけられそうなのでずっと持っています。


「その手を離してくれないとママ痛いの。本がお腹に当たってるのよ」
「ちゅぱ~」


 これは大事な本です。僕が知りたかったことがいっぱい書かれています。だから持ちながらでもおっぱいは止めませんよ?


「……メンテちゃん」
「ちゅぱちゅぱ~」
「ママあっち行っちゃうわね。今日はおっぱいなしよ」
「ちゅぱぱ~」


 そんなことするはずないと話は聞いてませんでした。そんな脅しは僕に通じません。おっぱいの前では全てがおっぱいなのです。


「もう、メンテちゃん! 今日からおっぱいは卒業よ!! わかった?」
「えぐぅ?!」


 ななななんと、母は実力行使をしてきたのです!!

 僕におっぱいを吸わせないように押しのけ、立ち上がってしまいました。


「うっぐぅううううう!」
「泣いたってダメだからね!」
「うえええええーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
「もうママ知らないわよ!」


 母は部屋の外に行ってしまいました。


「うぐぅ……(おっぱい……)」


 外では父と母の声が聞こえますが、僕はショックでそれどころではありません。


「おや? ママ、メンテはどうした?」
「メンテちゃんが言うことを聞かないの。だからおっぱいを卒業することにしたのよ」
「はっはっは、それはいい機会かもしれないな」
「甘えさせるとわがままな子に育っちゃうわ。それにおっぱいを止める気なさそうだし、今回は丁度良いと思うのよ」
「はっはっは。パパがちょっと様子を見てこようかな」


 父が寝室に入ってきます。


「おーい、メンテ大丈夫か?」
「えっぐ、えぐ、えぐううう、えぐうう。えっぐううえぐうっぐううぐえうぐえうげうげうぐえ、えっぐううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「……」


 ……バタン。


「ママ、メンテが信じられないような声で泣き叫んでいたんだが……」
「……大丈夫よ」
「全然大丈夫そうに見えなかったぞ?!」


 急な卒業宣言により、僕は叫び狂っていました。



「えぐううううううううう……んぐぅ!?」



 そして……。



「あぐ?(何だこれ?)」





 この日、メンテはしょうもない理由で魔力が覚醒した。

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