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91話 「噂の新人冒険者 その9」
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「それにしても驚いたのう……」
イブシじいじが僕を見つめます。
「今の稽古、わしのことが完全に見えていたようじゃ」
「んぐぅ?」
周りからも何のこと? 説明してとなりました。わかったわかった、静かにせいとイブシじいじが説明を始めます。
「最後の動きもついてきたぞ。あれはわしの本気の動きだった。まさか目が合うだけではなく、笑いながら手を振られるとは……」
「やっぱり?!」「にゃ?!」
兄貴とマト姉は心当たりがあったようです。僕には何が? という感じなのですが。
「トマ兄がビーストモードになってからかな。動きが早くて、急に消えたと思ったらどこにいるのか分からなくなるんだよ。メンテもそうかなと思って見たら、ずっと首を動かしてどこかを見てるんだ。で、メンテの見ている方向に二人がいたんだ。場所が分らなくなったら俺、メンテを見て探してたよ!」
「にゃにゃ、そうそう! 私も同じなの。最後、イブシさんが消えたと思ったらメンテくんは上を向いてたから私も上を見たの。そしたらイブシさんが落下してきてびっくりしたよ」
二人の発言にみんなでざわざわし始めます。
「メンテにそういうスキルがあるんじゃないかな。それともただ目が良いだけかもしれないけど」←アニーキー
「目が良い……、魔眼とかのスキルがあるとか?」←トマ兄
「他に候補があるとしたらあとは探知系のスキルなの?」←マト姉
「ん~、メンテにそんなスキルはなかったな」
兄貴やトマト兄弟の考えを父が否定します。
「そういえば……」
と母が語りだします。
「夜、寝るときの話なんだけどね。メンテちゃんと離れて寝ていても、朝になると私のところにいるのよね」
「はっはっは、いつものことじゃないかな?」
「最初は寝相が悪いのかなと思って、枕でこっちにこれないように塞いだの。他にもメンテちゃんが寝た後に場所を変えたりね。でも何をやっても毎朝起きるとおっぱいを吸っているのよ」
「うぐぐぅ……」
……何回かそんな日がありましたね。あれイタズラか何かかと思っていましたよ。
「ママも大変なんだな」
「暗いのになんで場所が分かったのかずっと不思議だったのよね」
「「それだ(にゃ)!」」
トマト兄弟が叫びます。
「絶対に猫の目を持っているにゃ!」
「間違いなくそう思うよ。僕たちは、普通の人と比べると暗闇でもよく見えるからね」
「それにアニマルパワーを使っている間は、視野も動きも普段よりすごくの!」
「そうだね。多分ですが、猫魂の力の一部はアニマルパワーと同じ力を秘めているのだと思います」
トマト兄弟が力説します。
「そうなのね。暗闇で見えたり、早い動きが見えたりの話を聞くとなんか納得しちゃうわ」
「そういえばタクシーもメンテの目が良いと褒めていたなあ」
「ほほっ、私もこの仮説は正解だと思いますな」
トマト兄弟の話に納得したのかざわざわします。誰も僕が夜やっている行動に触れないのでほっとしました。まあ赤ちゃんだしママのおっぱいぐらい普通だよね!
「耳やしっぽはないのですよね? アニマルパワーのスキルがあると、赤ちゃんの頃から体に多少の変化があるものです。それがないからユニークスキルなのかもしれませんね」
「うぐぅ?」
「それはどういうことだい? 詳しく教えてくれるかな」
「はい、ダンディさん」
お、トマ兄は暴走と言いませんでした。だんだん慣れてきたようです。
「アニマルパワーのスキルを持っている子供は成長が早いです。元になった動物に似るのでしょう。個人差はありますが、赤ちゃんの頃の成長速度は圧倒的ですね。1歳であれば普通の子どもの2歳ぐらいのことが出来てもおかしくないと思います。現に僕達がそうでした」
「はっはっは、メンテはまだ歩けるようになったばかりだな」
「そこが不思議なのです。だからユニークスキルなのではないかと」
ざわざわと大人たちが話し合いを始めました。聞けば聞くほど僕のスキルは少し変わっているようですね。スキルに詳しくない僕には何のことだかさっぱりですが。
「じいじが子どもの頃はどうだったの?」
「スキルの話かの?」
「うん、じいじもユニークスキルでしょ。メンテと一緒だから何かないかなあって」
「わしはそうじゃな。最初は魔力がない残念な子と言われておったから苦労したなあ。だが、このスキルを調べていくうちにどんどん可能性が見えてきたのじゃよ。一番大事なのは諦めないことじゃと思ったのう」
「じいじも大変だったんだね」
「がははは! 今では孫もおるし幸せじゃよ」
イブシじいじの話を聞くとユニークスキルを調べるのは大変そうです。効果を自分で解明するしかありませんし。でもその面倒さが面白そうです。
というわけで、今日はいろいろ知ることが出来ました!
それから王都にあるナンスのお店に移動しました。トマト兄弟は報酬に健康器具? とキャンプに便利な魔道具をいっぱい貰っていました。トマ兄は、イブシじいじに体力つけろと言われたので体を鍛えるのかもね。マト姉はこれで家計が楽になる、やっほーいと喜んでいましたよ。それにしても王都のお店には、冒険者向きの魔道具が多かったです。僕の住んでいる町とは売れる商品が違うのでしょうか。
う~ん、僕の猫魂ってユニークスキルはどんな効果があるんでしょう。特殊能力を持っているというだけで憧れちゃいますよね。早く使いたいなあ。
最後に心のメモ。
【トマ・リコピン】
トマ兄。見た目は黒い猫。正の感情を読み取る。結構まじめ。
【マト・リコピン】
マト姉。見た目は黒い猫。負の感情を読み取る。言動は子供っぽい。
二人は双子の新人冒険者。周囲からトマト兄弟と呼ばれている。二人とも”メンタルチェック”と”アニマルパワー”のスキル持ち。身体強化が得意で、外に放出する系の魔法は苦手。
メンタルチェックのスキルで相手の感情を読み取り、息の合った連係攻撃は恐ろしいほど強いんだって。アニマルパワーを本気で使うとトマトみたいな色の猫になっちゃうぞ。風の爪はトマトのヘタの部分だ!
イブシじいじが僕を見つめます。
「今の稽古、わしのことが完全に見えていたようじゃ」
「んぐぅ?」
周りからも何のこと? 説明してとなりました。わかったわかった、静かにせいとイブシじいじが説明を始めます。
「最後の動きもついてきたぞ。あれはわしの本気の動きだった。まさか目が合うだけではなく、笑いながら手を振られるとは……」
「やっぱり?!」「にゃ?!」
兄貴とマト姉は心当たりがあったようです。僕には何が? という感じなのですが。
「トマ兄がビーストモードになってからかな。動きが早くて、急に消えたと思ったらどこにいるのか分からなくなるんだよ。メンテもそうかなと思って見たら、ずっと首を動かしてどこかを見てるんだ。で、メンテの見ている方向に二人がいたんだ。場所が分らなくなったら俺、メンテを見て探してたよ!」
「にゃにゃ、そうそう! 私も同じなの。最後、イブシさんが消えたと思ったらメンテくんは上を向いてたから私も上を見たの。そしたらイブシさんが落下してきてびっくりしたよ」
二人の発言にみんなでざわざわし始めます。
「メンテにそういうスキルがあるんじゃないかな。それともただ目が良いだけかもしれないけど」←アニーキー
「目が良い……、魔眼とかのスキルがあるとか?」←トマ兄
「他に候補があるとしたらあとは探知系のスキルなの?」←マト姉
「ん~、メンテにそんなスキルはなかったな」
兄貴やトマト兄弟の考えを父が否定します。
「そういえば……」
と母が語りだします。
「夜、寝るときの話なんだけどね。メンテちゃんと離れて寝ていても、朝になると私のところにいるのよね」
「はっはっは、いつものことじゃないかな?」
「最初は寝相が悪いのかなと思って、枕でこっちにこれないように塞いだの。他にもメンテちゃんが寝た後に場所を変えたりね。でも何をやっても毎朝起きるとおっぱいを吸っているのよ」
「うぐぐぅ……」
……何回かそんな日がありましたね。あれイタズラか何かかと思っていましたよ。
「ママも大変なんだな」
「暗いのになんで場所が分かったのかずっと不思議だったのよね」
「「それだ(にゃ)!」」
トマト兄弟が叫びます。
「絶対に猫の目を持っているにゃ!」
「間違いなくそう思うよ。僕たちは、普通の人と比べると暗闇でもよく見えるからね」
「それにアニマルパワーを使っている間は、視野も動きも普段よりすごくの!」
「そうだね。多分ですが、猫魂の力の一部はアニマルパワーと同じ力を秘めているのだと思います」
トマト兄弟が力説します。
「そうなのね。暗闇で見えたり、早い動きが見えたりの話を聞くとなんか納得しちゃうわ」
「そういえばタクシーもメンテの目が良いと褒めていたなあ」
「ほほっ、私もこの仮説は正解だと思いますな」
トマト兄弟の話に納得したのかざわざわします。誰も僕が夜やっている行動に触れないのでほっとしました。まあ赤ちゃんだしママのおっぱいぐらい普通だよね!
「耳やしっぽはないのですよね? アニマルパワーのスキルがあると、赤ちゃんの頃から体に多少の変化があるものです。それがないからユニークスキルなのかもしれませんね」
「うぐぅ?」
「それはどういうことだい? 詳しく教えてくれるかな」
「はい、ダンディさん」
お、トマ兄は暴走と言いませんでした。だんだん慣れてきたようです。
「アニマルパワーのスキルを持っている子供は成長が早いです。元になった動物に似るのでしょう。個人差はありますが、赤ちゃんの頃の成長速度は圧倒的ですね。1歳であれば普通の子どもの2歳ぐらいのことが出来てもおかしくないと思います。現に僕達がそうでした」
「はっはっは、メンテはまだ歩けるようになったばかりだな」
「そこが不思議なのです。だからユニークスキルなのではないかと」
ざわざわと大人たちが話し合いを始めました。聞けば聞くほど僕のスキルは少し変わっているようですね。スキルに詳しくない僕には何のことだかさっぱりですが。
「じいじが子どもの頃はどうだったの?」
「スキルの話かの?」
「うん、じいじもユニークスキルでしょ。メンテと一緒だから何かないかなあって」
「わしはそうじゃな。最初は魔力がない残念な子と言われておったから苦労したなあ。だが、このスキルを調べていくうちにどんどん可能性が見えてきたのじゃよ。一番大事なのは諦めないことじゃと思ったのう」
「じいじも大変だったんだね」
「がははは! 今では孫もおるし幸せじゃよ」
イブシじいじの話を聞くとユニークスキルを調べるのは大変そうです。効果を自分で解明するしかありませんし。でもその面倒さが面白そうです。
というわけで、今日はいろいろ知ることが出来ました!
それから王都にあるナンスのお店に移動しました。トマト兄弟は報酬に健康器具? とキャンプに便利な魔道具をいっぱい貰っていました。トマ兄は、イブシじいじに体力つけろと言われたので体を鍛えるのかもね。マト姉はこれで家計が楽になる、やっほーいと喜んでいましたよ。それにしても王都のお店には、冒険者向きの魔道具が多かったです。僕の住んでいる町とは売れる商品が違うのでしょうか。
う~ん、僕の猫魂ってユニークスキルはどんな効果があるんでしょう。特殊能力を持っているというだけで憧れちゃいますよね。早く使いたいなあ。
最後に心のメモ。
【トマ・リコピン】
トマ兄。見た目は黒い猫。正の感情を読み取る。結構まじめ。
【マト・リコピン】
マト姉。見た目は黒い猫。負の感情を読み取る。言動は子供っぽい。
二人は双子の新人冒険者。周囲からトマト兄弟と呼ばれている。二人とも”メンタルチェック”と”アニマルパワー”のスキル持ち。身体強化が得意で、外に放出する系の魔法は苦手。
メンタルチェックのスキルで相手の感情を読み取り、息の合った連係攻撃は恐ろしいほど強いんだって。アニマルパワーを本気で使うとトマトみたいな色の猫になっちゃうぞ。風の爪はトマトのヘタの部分だ!
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