もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

文字の大きさ
上 下
85 / 259

85話 「噂の新人冒険者 その3」

しおりを挟む
 脱ぎ脱ぎタイムが見れなかったので、僕は泣きそうになりましたがなんとかこらえました。おかげでトマト兄弟ともう少し遊べます。もし泣いていたら長い長いおっぱいタイムが始まっていたことでしょう。僕とても繊細なので。

 話を戻します。いちいちスキルに反応ありと言うのでは時間が掛かりますね。そこで僕に感情の起伏が起きた場合は、手を上げて知らせることになりました。兄のトマさんの場合は正の感情、妹であるマトさんは負の感情となります。どちらも上げない場合は反応なしです。


「メンテくん、他の遊びをしようか。何が好きなのかお兄さんに教えてくれるかな?」
「トマ兄さん、メンテが喜ぶのは魔法だよ!」
「魔法? じゃあ次は魔法を見せようかな」
「えぐぐううう?!」


 トマ兄さんは手を上げます。正の感情ですね。

 兄貴はトマさんのことをトマ兄さんと呼んでいました。トマとマトでは分かりづらいので僕も真似しましょう。トマ兄さんとマト姉さんでいいかな? 今度からそう呼びますよ。心の中でね。


「……今、”魔法”って言葉が出た瞬間にすごい反応があったよ。びっくりしたね」
「にゃは、私も見ていて分かったの」
「そうでしょ? メンテは魔法が大好きなんだ!」←アニーキ―
「にゃはは。アニーキ―くんはメンテくんのことよく知ってるんだね」
「まあね!」


 俺は弟のことよく知ってるぜ! と兄貴が誇らしげにします。僕の家族からもやはりそうなんだという声がちらほら聞こえますよ。僕ってそんなに表情に出てたかなあ。


「はっはっは、その単語は理解しているだろうな」
「メンテちゃんは”魔法”という言葉にいつも反応してるわ。フフッ、やっぱりねえ」
「魔法だけじゃないよ。最近は”スキル”も興味あるみたいだよ」
「”魔法”と”スキル”という言葉にびくびくっと反応がありましたよ」
「んぐぅ?(本当?)」


 トマ兄さんは手を上げます。正の感情ですね。そりゃ僕は魔法もスキルも興味あります。この異世界で、僕が使えるかもしれない力だから知っておきたいよね。


「俺思うんだけど、メンタルチェックしたらいろいろ分かるんじゃないかな?」
「はっはっは、そうかもしれないな」
「あら、アニーキ―は面白いこと考えるのね。私も気になるわ」
「うむ。そうじゃの」


 ナンス家のみんなは魔法よりこっちの方が気になる様子です。


「ほほっ、レンタカー」
「はい。私はメモを持っているので反応のあったことを記録します。みなさん、知りたいことはどんどん聞いてください」
「はっはっは。さすがレンタカーは気が利くな」
「いえいえ。これぐらい当然のことですよ」


 タクシーさんに名前を呼ばれただけで、レンタカーさんは何をすればいいのか分かったようです。さすがこの親子は優秀ですね!


「俺、メンテに聞いてみたいことあるんだよね! レンタカーさん、後でメモ見せてね―!!」
「僕、赤ちゃんにそういった用途でスキルを使うのは初めてです。不安ですが頑張りますよ」
「にゃは、面白そうだからチェックしちゃうね!」
「フフッ、何だかメンテちゃん楽しそうね」
「きゃきゃ!」


 そしてみんなが僕に質問をし始めましたよ。もしかすると簡単な会話が出来るチャンスかもしれません。ふむ、なら魔法は後で見ればいいね。





 まずは兄貴からです。

「アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―」
「……?」


 僕は、兄貴何を言ってるんだ? という顔で見つめます。トマト兄弟はどちらも手を上げません。変化なしです。


「アーネ、アーネ、アーネ」
「……?」


 トマト兄弟はどちらも手を上げません。変化なしです。


「じゃあ母さんは?」
「うぐぅ」ぷいっ
「父さん」
「うぐぅ」ぷいっ
「じいじ」
「うぐぅ」ぷいっ
「じゃあメンテのお兄ちゃん」
「うぐぅ」ぷいっ


 僕は言われた名前の順番に顔を見ます。


「今の見た?! メンテがみんなの名前に反応したよ!!」


 その後も兄貴は今ここにいる人の名前を言います。そのたび僕は振り向きます。


「ほらほら、ね?! そうでしょ!」
「はっはっは、間違いなく名前は覚えているようだ」
「メンテちゃん、いつの間にかに覚えたのね。よしよし偉いわよ」
「きゃきゃきゃ」
「ほほっ。メンテ様も成長しましたなあ」
「いや~、お孫さんは賢いですね」
「うむ」←名前を呼んだら振り向かれて嬉しいイブシ


 トマ兄さんはイブシじいじを見ながら手を上げます。正の感情ですね。あははと笑いに包まれました。イブシじいじが表情を隠してもばれちゃいますね。なるほど、メンタルチェックは大人にも普通に効果があるようです。


「レディーさんに頭を撫でられたときも反応がありましたね。メンテくんは、撫でてもらうのが好きなのかもしれませんよ」
「あら、やっぱりそうなのね。いつも気持ちよさそうにするのよ」
「きゃきゃきゃ!」


 もっと甘やかしてもいいんだよ~?


「にゃは、私たちの名前も分かってるんだね。何だか嬉しいの。お兄ちゃんもそうでしょ?」
「そうだね。僕も覚えられたと思うと嬉しいよ」


 僕は名前を理解し始めたのが伝わったようです。こうやって少しずつ成長したふりをしましょう。やれやれ、赤ちゃんの演技は大変なのですよ。



 その後、兄貴は僕に魔法を見せてきました。

 ダサ~い魔法名を聞くたびにマト姉さんは手を上げます。負の感情ですね。でも発動した魔法を見るとトマ兄さんは手を上げます。正の感情ですね。

 みんな魔法が嬉しいのか嫌がっているのかどっちなんだと謎だったようです。兄貴はどの魔法が好きなのか確認したかったようですが失敗したご様子。

 まあ赤ちゃんだから気まぐれなんじゃないの? とまとめられました。赤ちゃんはコロコロ気分が変わっちゃうのですよ。それより誰か兄貴のダサ~い魔法名をどうにかしてよー。残念ながらこの気持ちは伝わることはありませんでした。



 こうしてみんながメンテに色々な質問をしていくのであった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...