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83話 「噂の新人冒険者 その1」

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「はっはっは、よく来たな! 遠慮せず上がってくれ。中で話そうじゃないか」
「き、恐縮です」
「ありがとうございます。おお、広いお屋敷……」

 トマとマトの2人が客間に通されました。ここは屋敷でなくちょっと大きいお家なのですよ? 母が言うのだから間違いありません! それと近くでタクシーさんが監視していたせいか、2人は震え上がっていました。僕にはただ微笑んでいるだけに見えたのですが。別に怖い人じゃないのに大げさだね。


 そして、客間に着きました。


 ナンス家からは僕、父、母、兄貴、イブシじいじの5人が。あとタクシーさんとレンタカーさんの2人が揃っていますので、合計で7人です。アーネとメイクばあばとカフェさんは、みんなで遊びに出かけていますよ。兄貴もアーネと遊びに行くかなと思ったけど、俺は冒険者に会いたいからと残ったらしいです。


 まずは自己紹介が始まります。

「僕はトマ。今年で15歳になります。隣は妹のマトです」
「こう見えて私たち双子なの。今日はジャンケンで負けたから私が妹なんだよ。そうだよね、お兄ちゃん」
「うん。まあそうだね」

 へえ、この二人は男女のペアではなく双子だって。毎日ジャンケンで上の子がどちらかを決めるみたいです。兄であり弟、姉であり妹。何でも出来る属性のキャラですね!

 トマさんは、さわやかそうな青年だけど緊張してガチガチです。マトさんは柔らかい雰囲気を感じますが、言葉は子供っぽいですね。まあ僕の方が子供なんだけどさ。特徴としては、2人ともやや黒っぽい毛並みをした耳としっぽがあります。それ以外はいたって普通の人間ですかね。彼らなら僕のスキルについて何か知っているかもしれません。


「ほほっ。レンタカー、彼らについて説明しなさい」
「はい、父さん。彼らは最近王都で有名になってきた冒険者ですね。二人一組で息のあった戦いをすることからトマト兄弟と呼ばれていますね。特にには圧倒的に強いそうです。今の王都では、最も期待されているルーキーとの評判ですよ」
「はっはっは、そうなのか。王都は久々だから知らなかったよ」
「いえ、僕らはダンディさんほど有名では……」
「にゃは。私達の噂がナンス家にも伝わってるんだって! すごいねお兄ちゃん」

 レンタカーさんが二人について詳しく教えてくれました。へえ、有名人なんだね。王都に住んでいないのでも全く知りませんでした。チラッと横を見ると兄貴の目が輝いています。何だか僕より期待しているような……? これ僕のスキルを知る依頼だよね?



「さて、依頼について話そう。この子のスキルについてなんだが……」

 父は僕について話し始めました。ユニークスキルの"猫魂"を調べており、似たようなスキルを持っている可能性が高い人を探していたいうこと。そして、まだしゃべることの出来ない赤ちゃんなのでテレパシーの力を使いたいということを。さらに、僕がいかに可愛いらしい赤ちゃんなのかと。

 後半はただの親バカじゃない? と思ったのと無駄に長いので聞いてませんでした。僕のスキルの説明より長いんだもの。飽きちゃうよね。

「はっはっは、というわけなんだ。可愛いだろう?」
「「そうですねー」」

 あ、やっと終わりました。僕だけでなく兄弟も関係ない話をされて暇そうでしたよ。でもご機嫌をとろうと頑張っていました。父が親バカでごめんねえ。

「そういえば今日来たのはあなた達だけだが、テレパシー系の能力もあるってことかい?」
「いえ、僕たちはアニマルパワーですね。テレパシーの能力がある人をギルドで探したらしいのですが、今王都にはいないようでした」
「そうか。まあ精神系のスキルはいっぱいあるから仕方あるまい」

 この世界では同じ名前のスキルでも効果は違うのです。

「ん~、メンテにギフトの使い方を教えたかったけど難しいか。テレパシーなら赤ちゃんでも伝えられるかと思ったのだがな」
「メンテちゃんはまだおしゃべり出来ないから難しいわよね」
「えっぐ~」
「はっはっは、そうだな。成長するまで待つしかないか」

 それは残念ですね。僕もお話出来る人を探していたけどいないんだよねえ。会話出来るのは猫だけなのですよ。

「実は、僕達兄弟も一応精神スキル持ちなのです。テレパシーとは違って言葉まで読み取れませんが……」
「うぐぅ?!」「え?! それ何ってスキルなの!」
「え? えっとですね」
「えぐうううう!」「早く早く!」バンバン

 僕と兄貴はバンバン叩いて暴れます。僕は母をイスのようにして座りながら抱っこをされているので、母の腕をバシバシと叩きます。

「こらこら、2人とも静かにしなさい。静かにしないと話が聞こえないぞ?」
「……んぐ」「わかりました」

 父に怒られ、僕と兄貴はぴたっと止まります。

「メンテちゃん、言葉は理解しているのかしら……?」
「はっはっは、アニーキ―の真似をしていただけじゃないか?」
「――?!」ビクッ

 うお、危なっ?! 普通に言葉を理解してるの感を出しすぎちゃいましたね。でも父が勘違いしてくれましたので助かりました。急いで僕は兄貴をじぃーっと見て真似してたという演技をします。これで母の疑惑も誤魔化せました。えへへ、僕はただの赤ちゃんだお!

「にゃははははは。二人とも可愛いね!」
「こらマト、笑っちゃダメだよ」
「だって~、にゃはは!」
「……はぁ。じゃあ僕達のスキルについて説明しますね。僕達二人は”メンタルチェック”というスキルを持っています」
「えぐえっぐ?(何それ?)」「メンタルチェック?」

 名前的に精神系って感じですね!

「言葉ではなく感情の起伏を読み取る力ですね。僕は良い感情だけ読み取れます。さすがに何を考えているまでは分かりませんが……」
「私は悪い感情だけを読み取れるの。戦闘のときは相手の嫌なところをつくのがコツね」
「僕達二人のスキルを使うことで、相手の弱点を調べることが出来ます。感情のある相手なら僕達は有利に戦えますよ」
「だから私達は二人で冒険者してるの」
「えぐうううう」「うおおおおおおおおお」バンバンバンバンッ!

 おお、すごい便利そうですね! 二人の力が合わさることで完成されたスキルになるようです。さすが双子です。

「というかイブシさんー。さっきから笑ってないで助けてくださいよ」
「……がははは! 緊張しているのが面白くてのう」

 ずっと黙っていたイブシじいじが笑い出しました。どうやらトマト兄弟とは知り合いみたいですね。さすがギルドの人気者。

「私達のこと知ってるのに黙っててひどいの!」
「がははは! なら帰りに稽古でもつけてやろう」
「「お願いします!」」

 イブシじいじは良い先輩をしているようですね! そんなイブシじいじには、あとで甘えながらペロペロしちゃいましょう。僕なりのご褒美です。

「うむ。ではわしの孫と遊んでみてくれないか? その方がスキルも使いやすかろう」
「「わかりました!」」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんが遊んでくれるんだって。良かったわね、メンテちゃん」
「えっぐ!」


 僕はメンタルチェックとやらを見たいです。さあ、遊んでください!

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