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48話 「執事のお仕事」
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「ママがイベントを開催するようなんだ。タクシーも参加しないか?」
「参加したいのはやまやまですが、今日は用事で町に行かねばならないのですよ」
「それは残念だ。今日はメンテと遊ぶよ」
「ほほっ、せっかくのお休みですからのう。楽しめるとよいですな」
今日は休日。何やらレディー主催のイベントがあるらしい。だがタクシーには外せない予定があった。ダンディとの会話を終えたタクシーはいつもの部屋にやって来た。
中に入ると黒い影がサッとタクシーに近づいた。タクシー直属の部下達だ。
「タクシー様、賊は2名。現在コノマチにて追跡中です」
「最近多いですなあ。すぐに終わらせましょう」
「ははっ」
こうして、タクシーの裏の仕事が始まった。
◆
ここはコノマチ。ナンス家の住む町である。メンテがこの町の名前を知るのは、もう少し先の話である。
「へへ、ここがコノマチか」
「本当に町かよってな。なんでこんな大きいのに誰も街って言わねえんだか」
「そんなのどうでもいいぜ。お宝はすぐそこだ」
「「ぎゃははははは」」
コノマチの人通りの少ない裏路地。ここに二人の男が立っていた。
「のんきな町だな。こんなの盗み放題じゃねえか」
「ぎゃははは。今回は楽そうだ」
この二人は盗みを得意としており、今回はコノマチで悪事を働こうとしていた。裏の世界ではそこそこ有名である。
「ベビーカー作ってるのはここだよな。あれを売れば俺たちも大儲けだぜ」
「あれを欲しいやつは多いからな。1台入手するだけでも十分遊べるぞ」
「それにあの店は美人が多いらしいぜ」
「ぎゃははは。今晩の楽しみが増えそうだ」
ベビーカーは大人気商品であった。そのため品薄状態が続いていたのである。この二人の狙いは、ナンス家のお店であった。
「そろそろ着くぜ。それにしても誰も守ってねえぞ? どうなってんだよ」
「問題ねえよ。何があっても俺達なら楽勝だろ?」
「ぎゃはは。そうだな」
「……ん? 俺の武器がねえぞ」
「あ? 何やってんだ。早くしろよ」
「おおう。どこいったんだ」
「どっか落としたんじゃねえだろな?」
「……あ、後ろにあったぜって…………はあ?」
「おい、まだか……ん? なんだあれは」
そこには武器を探していた男の剣が落ちていた。だが、その剣の柄には何かが付いていた。その何かの周りには赤い液体が水溜りのように広がっていた。
「っおい、誰のだあれは。おい、聞いてるのか!!」
「……誰の? いや俺のは……う、うわああああああああああああああ」
「さっきから何言って……嘘だろ?!」
騒ぎ出した男には腕がなかった。あそこに落ちていたのはこの男の腕であったのだ。
「くそっ! 何が起きやがった」
「うわああああ!!!! 俺の腕がああああああ!!!!!!」
「うるせえ黙れ、気付かれるだろうが!」
「ああああああ!!」
そのとき、二人の男の後ろからコツコツコツと足音がした。男達は、ばっと後ろに振り向いた。
「ほほっ。どうかなさいましたかな?」
「て、てめええええ!」
「お前が俺の腕を?! 殺す、絶対に殺してやる!!!」
2人の男が白髪の老人に殺意を向ける。だが、老人が指を鳴らすと二人とも跪いた。
「て、てめえ何しやがった?!」
「ひええええええ?」
「……足が動かねえって、……はああああ?!」
二人の男の両足はなくなっていた。まるでそこに何もなかったかのように忽然と消えていたのだ。二人に得体のしれない恐怖が襲ってきた。
「おやおや、手ごたえのないお客様ですな」
「ま、待ってくれ。俺たちは何もしてねえ……」
「ほほっ。うるさいですなあ」
指を鳴らす。ただそれだけのことで男の頭が突然消滅した。まるで爆発したかのようであった。だが何の音もしなかったため、残った男はパニックになった。男に何が起きたのかは全く理解出来なかったのだ。
「ひええええええええ?!」
「あなた方はコノマチのルールを知らないようですね。今月だけでもう何人目でしょうな」
「……もうなんなんだよおおおおおおおお。いったい俺たちが何をしたって『シュッ』」
こうして男の姿は完全に消え去ったのであった。老人は男に人差し指を向け、クルクル回して手を開いただけである。
「はぁ、時間の無駄ですな。もう後片づけしてもいいですよ」
「「「「「「「はっ」」」」」」」
老人の周りに男たちが現れた。そして、残った死体とその痕跡を完全に消し去った。
「まだイベントとやらに間に合いそうですね。あとは任せますよ」
「「「「「「「はっ」」」」」」」
コノマチには、あるルールが存在する。そのルール自体は公に公表されていないため存在しないが、町の人たちには黙認されている。ナンス家に害をなすと”サイレントボム”がやってくると。
ちょっかいや冗談程度なら警告、殺害の意志があると判断された場合には裁かれるのである。そのため、コノマチで犯罪はご法度なのだ。今回は武器を出そうとして警告、その後明確な殺意を放ったため完全にアウトと判断されたのであった。
ナンス家はお金を持っていると悪人に狙われたりすることが多い。ナンス家の安全と平和を守るため、このような悪い人達と戦う護衛部隊がある。その部隊のトップに立つのがタクシーなのだ。これも執事の大事なお仕事なのである。
そして、仕事を終えたタクシーはイベントに間に合った。ナンス家の執事は、ナンスファミリーを裏から支える頼もしい男なのである。このことをメンテが知るのはずいぶん先の話だ。
======================================
タクシーは悪い人からナンスファミリーを守っています。
冗談で話すぐらいなら警告で済みますが、それ以上のことは罰を受けます。
「参加したいのはやまやまですが、今日は用事で町に行かねばならないのですよ」
「それは残念だ。今日はメンテと遊ぶよ」
「ほほっ、せっかくのお休みですからのう。楽しめるとよいですな」
今日は休日。何やらレディー主催のイベントがあるらしい。だがタクシーには外せない予定があった。ダンディとの会話を終えたタクシーはいつもの部屋にやって来た。
中に入ると黒い影がサッとタクシーに近づいた。タクシー直属の部下達だ。
「タクシー様、賊は2名。現在コノマチにて追跡中です」
「最近多いですなあ。すぐに終わらせましょう」
「ははっ」
こうして、タクシーの裏の仕事が始まった。
◆
ここはコノマチ。ナンス家の住む町である。メンテがこの町の名前を知るのは、もう少し先の話である。
「へへ、ここがコノマチか」
「本当に町かよってな。なんでこんな大きいのに誰も街って言わねえんだか」
「そんなのどうでもいいぜ。お宝はすぐそこだ」
「「ぎゃははははは」」
コノマチの人通りの少ない裏路地。ここに二人の男が立っていた。
「のんきな町だな。こんなの盗み放題じゃねえか」
「ぎゃははは。今回は楽そうだ」
この二人は盗みを得意としており、今回はコノマチで悪事を働こうとしていた。裏の世界ではそこそこ有名である。
「ベビーカー作ってるのはここだよな。あれを売れば俺たちも大儲けだぜ」
「あれを欲しいやつは多いからな。1台入手するだけでも十分遊べるぞ」
「それにあの店は美人が多いらしいぜ」
「ぎゃははは。今晩の楽しみが増えそうだ」
ベビーカーは大人気商品であった。そのため品薄状態が続いていたのである。この二人の狙いは、ナンス家のお店であった。
「そろそろ着くぜ。それにしても誰も守ってねえぞ? どうなってんだよ」
「問題ねえよ。何があっても俺達なら楽勝だろ?」
「ぎゃはは。そうだな」
「……ん? 俺の武器がねえぞ」
「あ? 何やってんだ。早くしろよ」
「おおう。どこいったんだ」
「どっか落としたんじゃねえだろな?」
「……あ、後ろにあったぜって…………はあ?」
「おい、まだか……ん? なんだあれは」
そこには武器を探していた男の剣が落ちていた。だが、その剣の柄には何かが付いていた。その何かの周りには赤い液体が水溜りのように広がっていた。
「っおい、誰のだあれは。おい、聞いてるのか!!」
「……誰の? いや俺のは……う、うわああああああああああああああ」
「さっきから何言って……嘘だろ?!」
騒ぎ出した男には腕がなかった。あそこに落ちていたのはこの男の腕であったのだ。
「くそっ! 何が起きやがった」
「うわああああ!!!! 俺の腕がああああああ!!!!!!」
「うるせえ黙れ、気付かれるだろうが!」
「ああああああ!!」
そのとき、二人の男の後ろからコツコツコツと足音がした。男達は、ばっと後ろに振り向いた。
「ほほっ。どうかなさいましたかな?」
「て、てめええええ!」
「お前が俺の腕を?! 殺す、絶対に殺してやる!!!」
2人の男が白髪の老人に殺意を向ける。だが、老人が指を鳴らすと二人とも跪いた。
「て、てめえ何しやがった?!」
「ひええええええ?」
「……足が動かねえって、……はああああ?!」
二人の男の両足はなくなっていた。まるでそこに何もなかったかのように忽然と消えていたのだ。二人に得体のしれない恐怖が襲ってきた。
「おやおや、手ごたえのないお客様ですな」
「ま、待ってくれ。俺たちは何もしてねえ……」
「ほほっ。うるさいですなあ」
指を鳴らす。ただそれだけのことで男の頭が突然消滅した。まるで爆発したかのようであった。だが何の音もしなかったため、残った男はパニックになった。男に何が起きたのかは全く理解出来なかったのだ。
「ひええええええええ?!」
「あなた方はコノマチのルールを知らないようですね。今月だけでもう何人目でしょうな」
「……もうなんなんだよおおおおおおおお。いったい俺たちが何をしたって『シュッ』」
こうして男の姿は完全に消え去ったのであった。老人は男に人差し指を向け、クルクル回して手を開いただけである。
「はぁ、時間の無駄ですな。もう後片づけしてもいいですよ」
「「「「「「「はっ」」」」」」」
老人の周りに男たちが現れた。そして、残った死体とその痕跡を完全に消し去った。
「まだイベントとやらに間に合いそうですね。あとは任せますよ」
「「「「「「「はっ」」」」」」」
コノマチには、あるルールが存在する。そのルール自体は公に公表されていないため存在しないが、町の人たちには黙認されている。ナンス家に害をなすと”サイレントボム”がやってくると。
ちょっかいや冗談程度なら警告、殺害の意志があると判断された場合には裁かれるのである。そのため、コノマチで犯罪はご法度なのだ。今回は武器を出そうとして警告、その後明確な殺意を放ったため完全にアウトと判断されたのであった。
ナンス家はお金を持っていると悪人に狙われたりすることが多い。ナンス家の安全と平和を守るため、このような悪い人達と戦う護衛部隊がある。その部隊のトップに立つのがタクシーなのだ。これも執事の大事なお仕事なのである。
そして、仕事を終えたタクシーはイベントに間に合った。ナンス家の執事は、ナンスファミリーを裏から支える頼もしい男なのである。このことをメンテが知るのはずいぶん先の話だ。
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タクシーは悪い人からナンスファミリーを守っています。
冗談で話すぐらいなら警告で済みますが、それ以上のことは罰を受けます。
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