もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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41話 「離乳食 その1」

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「そろそろメンテちゃんも離乳食にしましょうか」
「ぐぅ?」


 僕はついに離乳食を食べるようです。ミルクは拒否しましたが、離乳食となると話は別かな? 飲み物か食べ物ぐらいの違いですね。そろそろ赤ちゃん的にレベルアップしたほうがいいかもね。まあおっぱいを止めるつもりはありませんよ!

 というわけで、母はキッサさんに相談です。


「あら~、やっとなのね!」
「メンテちゃんはミルクを全然飲まないから、アーネのときより成長が遅いのよ。さすがに心配になってきたわ」
「まあミルクのことがあったから大変よね。メンテくんは離乳食なら興味が出るかな?」
「えっぐ!」


 キッサさんは僕のほっぺをツンツンしてきます。どうやら話を聞く限り、僕の成長は遅れているようです。これは問題だと思うので、いっぱい食べるのを頑張りましょう!


「確認したいのだけど、まだ歯生えてないのかしらねえ?」
「歯はまだね。この子は歯もハイハイも普通の子より遅れているのよ。最近少しだけハイハイできるようになったから、歯もそろそろ生えると思うわよ」
「ということは噛む力は全くないわね。柔らかいもの、何があるかしら……」


 キッサさんはう~んと考えます。


「シェフさんのところに行きましょうか。何があるか彼に聞けば早いわ」


 というわけで僕たちはシェフさんに会いに行くことになりました。


 ◆


 ここはナンス家の厨房ですかね。それとも調理場と言えばいいのかな? 初めて来たけど広いです。

 中では準備をしているのか料理をしているのか僕には分かりません。でも働いている人が見えますよ。ほら、あそこにシェフさんもいますね。彼を発見したキッサさんが呼びました。


「シェフちょっといい?」
「キッサさん、今行くからちょっと待ってくれー」
「んだぁあああ!」
「その声はメンテの坊ちゃん?! って奥様じゃないですか」


 シェフさんは急いでこちらにやってきます。


「急にどうしたんですか? メンテの坊ちゃんと見学ですかね」
「フフッ。ちょっと違うわ。でもメンテちゃんについての話があるの」
「二人で今日からメンテくんに離乳食を食べさせようって話をしてたの。実際に何があるか確認しに来たってわけよ」
「ついにメンテの坊ちゃんも離乳食ですか。成長早いなあ。ん~、離乳食ねえ。今日はご飯はあるからおかゆは用意出来るなあ。他はどうするか……」


 シェフさんは考えてくれます。どうやら異世界の米が食べられるようですね。


「おかゆは赤ちゃんの定番だから決定よ。野菜か魚は何かあるかしら?」
「今日の魚料理はフライングカツオだ。このカツオはメンテの坊ちゃんには早すぎると思うぜ。となると野菜だな」
「そうね。カツオはもう少し離乳食に慣れてからがいいわね」
「メンテちゃん、残念だけどお魚ないみたいよ。また大きくなったら食べようね」
「うだぁー!」


 カツオの名前が少しおかしかったけど異世界だからかな? まだまだこの世界について知らないことが多いようですね。


「食材の準備も必要になるわね。メンテちゃんのために明日から食材を増やしましょうか」
「本当ですか?!」
「他にも何か作りたいものがあったら一緒に注文してもいいわよ。今回は特別に許可するわ」
「お前らやったぜー! 奥様ありがとうございます」
「「「「「「奥様、ありがとうございます!」」」」」」
「あなた達、よかったわね。あとでリストにまとめて提出して頂戴」
「「「「「「キッサさんもありがとうございます!」」」」」」


 厨房の奥では僕が食材を運んできたとか話してますね。また変な二つ名が生まれないことを祈りましょう。


 ◆


 今日の昼から離乳食です。野菜はお楽しみにと言っていたので期待しています。

 食堂に入ると僕の椅子が増えていました。あれは赤ちゃんや子どもが座るテーブルチェアですね。木製のイスなのですがテーブルが付いています。そして、ずり落ちないようにベルトがありますね。あれは安全のためのセーフティガードでしょう。足がぶらぶらしないように足置きもあります。


「これ前のわたしのイスー?」
「懐かしいでしょ。今日からメンテちゃんがここに座るのよ」
「えー。なんで?」
「食べる練習をするのよ。アーネも練習したわよね」
「うん。でも今日はわたしがこれ使いたい」
「それだとメンテちゃん座るところがないじゃないの」
「メンテはママのおっぱい吸ってればいいでしょー!」
「……んぐぅ?!」


 久しぶりに見た椅子にアーネが座りたいようです。懐かしいものを見るとついつい使いたくなってしまうよね! 分かるよその気持ち。それより衝撃だったのは、大人どころか4歳児にまでおっぱい大好きな赤ちゃんと思われていたことです。僕ってそんなにひどいですか??

 アーネは、母が止める前に椅子に座ってしまいました。実力行使ってやつかな?


「こらアーネ、なんでそんなことするの!」
「今日はわたしが使いたいの。メンテは明日ー!」
「アーネは反省する気ないのかしら?」
「これわたしのだから悪くないの!」


「はっはっは、アーネ今日だけだぞ。メンテはこっちを使うんだ」


 不穏な空気の中、父が割り込みました。なんか手に持ってますね。


「これはテーブルに付ける椅子だ。メンテしか使えないから気にせず座ればいいぞ」


 机に取り付けるタイプのテーブルチェアですね。机に固定するため、支えとなる脚の部分がありません。そのためあまり場所をとらず便利なのです。ただ机がないと使えず、重さ制限もあるので長くは使えません。小さい頃だけ使えるタイプの椅子なのです。


「パパなんで甘やかすの!」
「まてまて、これを見てからだ」


 父が僕の椅子についていたスイッチを押しました。するとベビーカーの防犯システムみたいな魔法が発動しました。車の形ではなく、椅子の脚が出てきました。魔法で支えとなる脚を作ったのです。


 |
 |___ 

 横から見ると、こんな感じに机に固定させて座るただの椅子です。

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 |___
 |  |
 |  |

 それがスイッチひとつで、支えとなる魔法の脚を作り出すのでした。


 みんなポカーンとしていました。僕だけは目がキラキラです。


「はっはっは。テーブルに固定するだけだと不安だろ? だから脚を魔法で作ってみたんだよ。これでより安全になるわけだ。今のところ体重が10キロぐらいまで耐えられる。そして、地面の凹凸は関係ないく使えるのがこの魔道具の利点だ。まだまだ研究中だが、そのうち実用化されるはずさ」
「えっぐうううううううううううううううううううううううううう!!」
「はっはっは、メンテ嬉しいか。パパも喜んでくれて嬉しいぞ! ほれほれ~」
「きゃきゃきゃ!」


 父は僕を椅子に座らせました。これは本当にすごいです。座椅子を魔法で普通の椅子にした感じがしますよ。別の例えだと、座布団がそのまま椅子になる魔法といってもいいかもしれませんね。


「パパ……。とても素敵よ」


 なぜか母の顔が真っ赤ですね。惚れ直したっていうかあれは女の顔ですよ。子どもとしてはあまり見たくないです。まあ父がすごいっていう気持ちは分かっちゃうなあ。


「これはベビーカーと同時期に作ったんだ。メンテが全く乳離れをしないから出番がなくてな。いつになったら食べるのかと不安だったよ」


 ……父まで僕をおっぱい赤ちゃんと思っていたようですね。


「ずるーい! 私もそれ座りたいの!!!」
「アーネが反省しないからダメよ? 今日はそこに座ってなさい」
「ママ意地悪しないでよ~」
「アーネが謝らないから悪いんだぞ。それにアーネが乗ると重くて壊れちゃうなあ、はっはっは!」
「うええええええん!!!!」


 父も母の味方なようです。今回ばかりはアーネのわがままが悪いですね。まあ4歳だし仕方がないところはあります。僕はアーネのおかげで魔法が見れてラッキーとしか思ってないけどね。


「……何この状況?」


 興奮して大暴れなメンテ、ずっと泣いているアーネ、二人の世界に入った両親。遅れてきたアニーキ―に説明する人は誰もいなかったという。




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ベビーチェアやテーブルチェアで検索すると分かりやすいと思います。
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