もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

文字の大きさ
上 下
39 / 259

39話 「アニーキ―の魔法実演 その1」

しおりを挟む
「母さん、新しい魔法使えるようになったから見て!」


 僕が母のおっぱいタイムを楽しんでいると、兄貴が来てそう言いました。ついに兄貴の魔法をお披露目するときが来たようです。

 ナンス家で一番魔法が上手なのは母です。父は魔法よりも魔道具作りが専門のようですから。母のお墨付きを貰えば、父も驚くこと間違いないでしょう。

 僕は知っていますよ、両親を驚かせるために秘密の練習をしていたことを。僕と二人っきりになったときこっそり教えてくれたのでね。誰もこちらを見ていない時は、実際に魔法を使って見せてくれることもあります。まあ母はこっそり覗いていたからお見通しなのですが、それは言わないでおきましょう。

 赤ちゃんになってから分かったのですが、僕が言葉を分からないと思っていろいろ独り言のようにしゃべる人が多いのです。きっと赤ちゃんなら何をしゃべっても問題ないと油断しているのでしょうね。まだあまり動けない僕ですが、愚痴とか噂の情報は勝手に集まるのですよ。兄貴もこのタイプの人でした。

 まあ僕が言葉を完全に理解しているほうがおかしいですよね!


 それはさておき、庭で魔法を見せることになりました。楽しみですね!


 ◆


 庭にやってきました。ここは庭というよりも学校の校庭のようなひらけた場所ですね。公園にあるのようなオブジェクト? があったり、バーベキューを楽しめたりと庭ってサイズじゃない気がするよ。ナンス家の敷地はどうなってんだろう?

 今、この庭もとい校庭には僕と母と兄貴の3人だけがいます。兄貴は一番最初に両親に見てもらいたいのでしょう。まずは母にこっそりと披露するようです。

 僕は兄貴の魔法を何回か見ているので、カウントには入らないのですよ。まあ僕には屋敷の窓から誰かがこっちを見ているのが分かるけど、兄貴は気付いてませんね。兄貴はこっそりやっているつもりだろうけど結構目立ってるんだよね。

 この校庭には、魔法を当てる練習で使われる的があります。岩や木で出来たものがありますね。その他にもいろいろありますが、一番気になるのはあの動物型のやつです。猪のような人形があるけど何でしょうか?


「えぐうう!」バシバシ
「メンテちゃんはここに来るのは初めてね。あれに魔法を当てる練習をするのよ」


 僕が猪の人形に向かって手を振ると母が教えてくれました。


「俺取って来るよー」


 兄貴が走って猪型の人形を持ってきました。やはり兄貴は弟思いですね。指を差すだけだと全然気付かれないので、手を振りながら同時に指差すのが一番効果的なのです。僕は赤ちゃんだから指が小さすぎて可愛いとしか認識されていませんから。


「持ってきたよー」
「フフッ、メンテちゃんに見せてあげて」
「わかった」
「うぐぅ!」


 というわけで使い方を見せてくれるようです。


「これは動く的なんだよ。魔石をここに入れるんだ」


 兄貴が人形の胴体部分をまさぐると何かを入れる場所が現れましたね。そこに魔石を入れていきます。その前に魔石の説明をしてほしいところです。


「これだと5分ぐらい動くよ」


 ぽいっと校庭に人形を投げます。すると勝手に動き出しました。日本にあった動くおもちゃを思い出しましたよ。


「この人形は動物によって動きが違うんだよ。猪の場合は真っ直ぐに動くときが一番速いんだ」


 一直線に進んで止まる、向きを変えて一直線に進んで止まるを繰り返しています。兄貴が人形を捕まえると動きが止まりました。


「地面についているときだけ動くんだよ。ひっくり返したり、少し浮かせれば止まるんだ」
「んぐう?」バシバシ
「痛くないでしょ? 怪我がないように柔らかい素材を使っているんだって」


 人形みたいにふわふわではありませんでした。この素材はゴムのように柔らかかったです。


「フフッ、メンテちゃん興味津々ね。それは中身がスライムなのよ」
「だぁ?!」


 聞いた? 異世界のモンスターだって!!

 今のところ狼しか見たことはありません。まあ見たことは秘密です。それにスライムがいるってことは他にもたくさんいるでしょうね!

 僕が興奮していると、兄貴は猪の人形から魔石を取り出していました。ただの人形に戻ります。


「でも外に置きっぱなしはダメよ。今度からはお片づけもしましょうね」
「母さんごめんなさい。ちょっと片づけてきます!」


 校庭の端っこに小屋みたいなところがありますね。そこに道具を片づけるようですが大きくない? 日本だったら一軒家サイズなんだけど。これだから金持ちは……って僕の家でしたね。

 兄貴は小屋に片づけに行きました。戻ってくると、今度は手に大きなボールを持っていました。僕はあのボール見たことあるよ。


「母さん、安全のためにこの魔力ボールを使います」
「いいわよ。大丈夫だと思うけど、メンテちゃんも念のために守るの使いましょう」
「うぐぅ」
「ええっとこれよね? ここを押すのね。えいっ」


 母は僕が乗っていたベビーカーの防犯システムを起動します。

 これはセーフティモードですね。車のような形になる魔法の結界が出来ます。危ないので爆裂魔法もロックされていますが、解除したら使えるようになっています。父やタクシーさんがある方法で起動すると、この車みたいなボディに破壊魔法の大砲が付くことは秘密なのです。


「これでいいわね。アニーキ―始めていいわよ」
「ボール置いてきくるねー」


 兄貴は走って離れたところにボールを置きました。そして、走って戻ってきます。


 さあ、何の魔法を使うのか楽しみですね。わくわく!

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

処理中です...