もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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29話 「花火笹祭り」

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 現在、僕の目の前には3枚のヒモが付いた紙があります。


「メンテちゃん~。ひとつ選んでね」
「んだぁ?」


 今日はお出かけすると言っていたのですが、なぜか紙を渡されました。


「えぐ!(これだ!)」
「フフッ、メンテちゃんならこうなるわよね」
「はっはっは、普通だな」


 紙には健康という文字が書かれています。他の紙も取ってみると、金運と恋愛と書かれていました。なにこれ~?


「んぐぅ~?」
「メンテ健康だってー」
「いいんじゃない?」


 アーネと兄貴もいます。二人とも紙を似たような紙を持っていました。


「わたしはこれ。ほら見てメンテいいでしょ~」


 アーネが僕に近づいて見せてきます。ああ、近いってば。もうちょい離してよ。しばらくしてなんとか文字を読めました。読みにくにですが、そこにはようふくと書いてあります。洋服かな?


「俺はこれだよ」


 兄貴の文字は簡単に読めますね。かっこいい魔法が使えるようになりたいですだって。


「はっはっは、準備できたか。紙はベビーカーに入れると落ちないぞ」
「わかったー」
「入れますね」
「メンテちゃん行くわよ~」
「えぐう!」


 今日は家族そろってお出かけです!


 あとタクシーさんとカフェさんも一緒にね。


 ◆


 町に入るといつも以上に人がいっぱいです。とても賑やかですね。


「はっはっは、あっちだな」
「いこー!」
「ちょっとアーネ待ってー」


 アーネが急に走ったので、兄貴がアーネを止めに走りました。そのまま二人とも行ってしまいましたね。まあタクシーさんも追いかけたので危ないことはないでしょう。


「今年の花火笹祭りは人が多いわね」
「今回はお店の者が手伝っているので大規模なのですよ。今回は私も運営側として参加しています」
「だから去年より多いのね」
「はっはっは、盛大にやろうじゃないか」
「んぐぅ?」


 花火笹はなびささが何か分りませんね。花火って言葉からして爆発しそうですが。


「メンテちゃん着いたわよ」
「ばあぁ~!(すげえ~!)」


 そこは町の広場でした。結構広いというか公園みたいな感じになっています。そして、離れていてもわかる大きな笹がありました。

 日本の笹より太くてでかいです。もう木といっていいでしょう。でも笹の葉は日本でも見たことがあるような大きさですね。


「えぐううう!」


 よく見ると周りに露店らしきものが集まっていますね。完全にお祭りです。僕は興奮して叫んでしまいました。


「旦那様こちらですぞー」


 タクシーさんが呼んでいます。そこにはアーネも兄貴もいますね。無事追いついたみたいです。


「もういい?」
「フフッ、いいわよ」
「わーい」


 アーネはベビーカーから先程自分で書いた紙を取り出しました。そして、ヒモの部分を使い笹に括り付けました。


「俺はもっと高いとろに付けるよ」
「えーずるい」


 ああ、これは日本でいう七夕ですね! ということは、あの紙は短冊ですね。僕が選んだのは文字を書けないからでしょう。

 へえ。似たような祭りが異世界にもあるんだね。僕もやりたいアピールします!


「えぐうううう!!」バンバン
「メンテちゃんもやりたいのね。フフッ」
「旦那様、奥様、こちらへどうぞ。お店からメンテ様の特別な短冊を用意したので見てください」
「あら、ありがとう」
「アーネ様とアニーキ―様は父にお任せてください」←カフェ
「それなら安心だな。では行こうか」


 カフェさんの言われた場所に行くと、ありえない大きさの短冊がありました。


「はっはっは、これはいいな」
「あらいいわ。パパ、文字をお願いね」
「……んぐぅ」


 これ普通の短冊の倍以上ありますよね? 2メートルぐらいあるんですけど……。父はでかい筆を出して、この巨大な短冊に文字を書いていきます。あの黒いのは墨でしょうか?

 そして、短冊に健康と書かれました。そんなことよりこっち。健康よりも大きな字で、



 メンテ・ナンス



 と書かれています。って、めっちゃ恥ずかしいんだけど?!


「えぐうううう!(却下あああ!)」
「さすが旦那様ですね。メンテ様も喜んでいますよ」
「うぐぅ?!」


 カフェさんがタクシーさんのような発言をしました。

 ……ああ、そういうことですか。いつもの悪いが今回はカフェさんだったようですね。そりゃ親子だもん。

 そして、僕のでかーい名前の入った短冊を取り付ける作業に入りました。


「ほほっ、私も手伝いましょう」
「大きいねー」
「でか?!」


 タクシーさんは、短冊を見てすぐ気に入ったようです。笹の一番高いところに短冊をかけました。位置的にクリスマスツリーのてっぺんみたいな場所です。目立ちすぎるので止めてほしかったです。

 やはり今日は親子ともどもポンコツモードなのでは?


 ◆


 それからしばらく町を探索し、家に帰りました。帰る頃には暗くなっていました。


「はっはっは、今日はうちの庭でバーベキューをしよう!」
「「やったー!!」」
「メンテちゃんはこっちに座っておっぱいよ」
「えぐう!!」


 今日は外で夕食ですよ。使用人もいっぱい集まり楽しんでおります。


「そろそろ時間ですね」


 誰かがそう言うと、みなさん町の方を見ます。すると爆音がしました。



 ごごごっごごおごごお……ぴゅうううううううううう、ドカーン!!!



 急に花火が上がりましたよ。さらに町の外から何発も発射さているのが分ります。

 ふむ、きれいですね。これが異世界の花火大会ですか。

 最後に、町の中からどでかい物が上へ上へと飛んでいきました。



 ずどぉおおおおおおおーーーーーーーーーーーん!!!!!



「えぐうう?!」
「フフッ、メンテちゃんびっくりしちゃったわ」
「はっはっは!」


 僕がびっくりしたのは最後の花火です。が飛んでいくのが見えました。


 そうです、僕の名前が書かれた短冊が大爆発しました。木端微塵にです。


 確かこの異世界では、ささのことを花火笹はなびささというのでしたね。願いを書いた短冊を上空へとぶっとばし、ドカーンと爆発させるのがこの祭りの目玉なの?!


 変な祭りだなあと思いながらもメンテは楽しみましたとさ。

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