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26話 「熱が出た」

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 今日はなぜかだるいです。僕の体はどうしたのでしょうか?


「メンテちゃん~」
「……んぐぅ」
「ほらほら、どうしたの?」
「……」


 母が僕のほっぺをとんとんします。なんだか返事をする気が起きませんね。


「ほらほらメンテ見てよ。いつもより赤い色だよ」
「……んぅ」


 兄貴ことアニーキーが魔力ボールに魔力を込めていますね。へえっていう感じです。


「犬さんだよー」
「……ぐぅ」


 姉のアーネが僕の顔に人形を押しつけてきますね。絵本よりは痛くないです。


「母さん、メンテの様子がおかしいよ」
「メンテがわたしを無視するー」
「いつもの元気がないわね……」


 僕が何らかのリアクションをしないと変に思われるようです。普通の赤ちゃんなのにね。


「カフェさ~ん、体温計持ってきて」
「っ! わかりました」


 母は僕の調子が悪いと判断したようです。多少ぼーっとするだけなのに大げさですね。


「メンテ熱あるの?」
「そういえばいつもより体温が高い気がします」
「私にはぼーっとしているように見えるのよ。一応熱を測っておきたいの」


 カフェさんがすぐに体温計を持ってきました。この部屋にあったようですね。

 うーん、何でしょうあれ。ただの棒ですよね?


「メンテちゃん、ちょっとじーっとしていてね」
「……ぶぅ」


 そういわれると体温計を取りたくなってきましたね。

 母が僕のわきに体温計を挟みます。僕がそれを取ろうと動くとカフェさんに押さえられましたよ。これでは手が体温計に届きませんね。仕方がないので諦めます。

 それから10秒ぐらいすると体温計が光りだしました。


「うぐぅ?」


 体温計の近くに数字が見えます。数字が空中に浮かんでいますね。

 もしかして異世界の定番のステータス的な何かかな? でも僕の名前はないし何だろうね。


「あら、38.4℃もあるじゃない。メンテちゃんお熱あるわよ」


 どうやら熱がありました。

 よし、僕か弱い赤ちゃんだから病気でつらいの! のアピールをしましょう。


「うぇえええええん!!」


「メンテ泣いてるよー」
「急に泣き出したね」
「ほらほらメンテちゃん、今日は休みましょうね。カフェちゃんお薬お願いね」
「急いで持ってきます」


 つらいよアピール大成功です。急にみんなが優しくなりましたよ。

 少し待つとカフェさんが飲み薬を持ってきました。


「奥様、こちらのポーションとスプーンをお使いください」
「カフェちゃん、いつもありがとう」
「うぇえええ……ん?」


 ポーション……? 本当に??

 ついにこの時がやってきました。異世界初の回復薬です!!


「えっぐー!!」


 めっちゃ興奮して暴れます。


「メンテ元気出たよー」
「いつものメンテだね」
「うぇえええええええええん!!」


 僕の様子を見ていた兄弟ことキッズが余計なことを言ったので、熱が出てつらい赤ちゃんアピールを再開しました。

 母は小さなスプーンでポーションをすくいました。そのまま僕の口に持っていきます。


「メンテちゃん、あーんしてね。お口開いてー」
「んだぁ!」


 元気よく口を開けました。体の動きを止めます。

 ポーション楽しみでしたからね!


「どうかしらね」
「……」
「メンテちゃん?」
「ん、おえぇええええ! ごほっ、ごほっ!!」


 苦っ!!! 赤ちゃんの僕には味が濃すぎてまずいようです。


「きゃあ、メンテ吐いたー」
「うおっ、大丈夫なの?」
「あららららら、カフェちゃん新しい服を取ってきてー」


 僕は飲んだポーションを全部吐いてしまいました。

 口の中はポーションではなくゲロの味ですね。次はもう少し成長してから飲みたいです。

 落ち着きを取り直した頃に、カフェさんが謝罪をしました。


「ごめんなさい、薄めるのを忘れていました」
「気にしなくても大丈夫よ、失敗は誰にでもあるからね」
「本当にすみませんでした……」


 そういえばカフェさんもポンコツっぽいところがありましたね。執事のタクシーと親子ですしね。最近忘れてましたよ。


「もう治ったのー?」
「フフッ、まだよ。今日メンテちゃんと遊ぶのはやめましょうか。明日になれば元気になるからそのときに遊んでね」
「うん、わかったー。メンテまたね」
「メンテ元気になってね」


 今日はアーネと兄貴とはお別れです。

 僕はベットに連れて行かれてそのまま寝ることになりました。みんな僕を心配しています。明日には元気な笑顔で笑わせたいものですね。



 よし、しっかり休もう!



 大きくなったらポーションの味を変えたいなあと思いました。だってまずいんだもん。

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