もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

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17話 「お客様と遊ぶ」

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 僕メンテ。ええっと何歳だっけ?

 今日の僕はお昼寝を満喫していました。目が覚めると目の前に初めて会うお婆さんがいました。なんでしょうかこの状況??


「この子が次男で末っ子なメンテ・ナンスよ。まだ半年なの」
「メンテくん、こんにちは~」


 どうやら母が近くにいますね。そして、僕の年齢は半年でした。

 寝起きもあるけど僕は完全に混乱してました。母を見つけたら気持ちが落ち着いてきましたね。


「ぐぅ~?」
「かわいい声だねえ」
「フフッ、まだ上手にしゃべれないのでちゅよ~」


 母が僕の手を持ってブンブン振り回します。いつもなら何やってんだコイツと思うところですが、今回は意味が分からず本当にポカーン顔です。これは本当にただの赤ちゃんですわ。

 状況を確認するため周りをキョロキョロと見てみます。ここはメンテ家の客間ですね。確か屋敷をお散歩したときに連れてもらったことがあります。ということはこのお婆さんはお客様でしょう。


「フッフン」


 お婆さんが僕のおでこを撫でまわします。笑顔ですが、少しだけ違和感がありますね。まるで何か感情を隠しているようなそんな顔をしています。

 しばらく二人の話を聞いてみますが、特に難しい話はしていません。ただの世間話ですねえ。退屈に感じたので僕はスルーします。とはいっても僕は母に抱っこされたままなので、嫌でも内容が聞こえてしまうのですがね。


「うぐぅ」
「どうしたのメンテちゃん? お腹すいたの? それともおむつの交換かしらね」


 いえ、ただの退屈アピールです。

 そいうえばこの異世界には使い捨てのおむつがあるんですよね。みなさん知っていましたか? 兄貴が生まれたときに父と母が作ったらしいです。これが出来るまでは、大人がはくようなパンツを赤ちゃん用に小さくして使っていたそうです。いわゆる布おむつですね。

 今僕が使っているのは魔法のおむつです。詳しくはよくわかりませんが、魔法の力でおしっこを吸収するのだとか。

 赤ちゃんグッズにも強いのがナンス家であるそうです。あのお店を雑貨と呼んでいるので、なんにでも手を出しているって事でしょうね。僕も大きくなったら何か作ってみたいです。


「あーぐぅ」
「ん~、おむつは光ってないから大丈夫そうね」


 え? おむつ光ってたの?? それって日本のおむつとほぼ同じじゃないですか。あっちのオムツは色が変わってた気がします。何だかこの異世界は前世と同じようなものが多い気がしますね。全く文化が違う世界よりは住みやすいと思うけどね。


「ちょっといいかしら?」
「うんぐぅ~?」


 お婆さんが僕に近づいてきました。僕はお婆さんを見つめます、いったい何をする気でしょうか。


「よっこいセイヤーーー、フンッ!!」
「ひっぐうううう?!」
「えええ?!」


 僕を真上に投げたーーーからの落下ーーーーして魔法の光です。気が付くと僕は浮かんでいます。一瞬殺されるのかと思いました。母も驚いています。


「ほれ、メンテくん落ち着いたかな?」
「ぐふううー」


 すごく豪快なお婆さんです。お風呂のときも浮かびますがこんなに高く上に投げた人は初めてです。


「赤ちゃんはね、たかいたかーいをすると泣き止むんだよ」


 いくらなんでも高すぎですよね。天井に当たりそうでしたし。それと魔法失敗したら僕絶対死ぬよね? ほら母も苦笑いですよお婆さん。


「きゃはは~」
「ほらほーら。ほーい」


 その後何度も高い高いをしてくれました。楽しくて勝手に声が出てしまいますね。しばらくしたら浮いている僕がお婆さんのところに移動していきます。そのまま僕を抱っこしました。


「えっぐう?」
「……」


 お婆さんは無言で僕を見つめています。よし、これは僕の出番だね!


「うっぐうう。どぅーっぐ!」


 お礼の気持ちを込めた笑顔です。お婆さんも僕を見て微笑みました。


「あたいを慰めてくれるのかい。メンテくんは優しいねえ」
「えっぐ~」
「フフッ、メンテちゃん楽しかったねえ~」


 さらに僕はお婆さんにくっつきます。お客様だし少し媚びておきましょう!


「だああぐうううー!!」



 そんな感じで元気よくお客様と遊びました。

 結局あのお婆さんの名前は分かりませんでしたが楽しかったですね。


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