もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

文字の大きさ
上 下
16 / 259

16話 「新人メイドの教育」

しおりを挟む
 町に行ってから一週間が経過した。あの町ではたくさんの情報が入ってきて楽しかった。

 そして、現在のメンテはこうである。


「うだぁあああ(暇だあああ)」
「どうしよう、メンテくんの機嫌が悪いわ」
「ぐうううううう(町に行きたいいいい)」
「今奥様は出かけているから私たちで頑張らないとね」


 メイドたちにかなりの迷惑をかけていた。

 魔力ボールもおしゃぶりもポイポイ投げ捨て、近くにいたメイドが拾い上げていた。まさか暇だからという理由で暴れていると思うはずもない。


「よーしよしよし。私がママの変わりよ」
「んだぁ?(本当?)」
「抱っこがいいのね、ほらほら~」
「えげげげへへ(おっぱいだあ)」
「ちょっと歩きましょうか」
「ふごぉおおおお(いえーい)」


 メンテは普通の赤ちゃんではないのだ!!

 まあ本能で生きているという意味では、メンテも赤ちゃんも大差ない。そのため大人たちには、メンテはただ甘えん坊な赤ちゃんとしか思われていないのである。つまり誰も気づかないのでやりたい放題な赤ちゃんであった。


 今ここにいるのはメンテとメイドが3人の計3人。場所はメンテのお部屋である。

 よーし、ここからは僕が名前を覚えたから紹介していくね!!

 一人目はカフェさん。今まさに僕を抱っこしている人。両親がいない日によく面倒を頼まれるようになった。僕が生まれたときは何かと遠慮しがちだったけど、今では結構甘やかしてくれる。僕のお世話に慣れたのか初めの頃のぎこちない動きも減っている。僕の両親がいるときはメンテ様というけど、いないときはメンテくんと呼ぶよ。まあそれは他の使用人達も同じだけどね。やっぱりタクシーさんとキッサさんと似た匂いがするので落ち着くなあ。

 二人目のメイドはミミギ・ウーサ。白いうさぎの耳と丸いしっぽのある兎のメイドである。すでに結婚して子供がいると言っていました。僕がおもちゃを落とすとすぐ反応して拾ってくれますね。とても足が速いです。ふわふわな心地がするので大好きなメイドの一人です。

 三人目のメイドはニーホ・ヤモリン。リザードマンらしいが人間に見えます。魔法を使うと鱗が浮かび上がるとかなんとか。新人メイドなのでカフェさんに指導中だそうです。


「今日はニーホさんにメンテくんのお世話をしてもらいます。これもメイドの勉強です、分かりましたか?」
「わかりました。先輩!」
「では」


 カフェさんが僕をベットに降ろします。ニーホさんにバトンタッチしました。


「……」
「えっぐぅ?」
「……ニーホさん?」


 どうしたのでしょう? ニーホさんは僕と見つめあったまま動きません。


「先輩……、何をしたらいいかわかりません」
「子供のお世話をしたことは?」
「ありません。赤ちゃんも初めてです」


 そうでしたか。最初は誰でもそんなもんですよね。よし、僕が動こう!


「えぐぅー、うぐう。だぁ~ぶう」
「メンテくんが呼んでいますね。ミミギさん、ニーホさんにお手本を」
「わかりました」


 ミミギさんが僕を抱っこしてくれました。モフモフで気持ちいですね。


「ぐううう(モフモフ)」
「よしよし。こんなかんじで甘えてきますよ~」
「ふえ~」


 ニーホさんが関心しています。カフェさんが次はニーホさんと言いました。ミミギさんからニーホさんに僕がバトンタッチされます。


「あ、思ったより軽いです~」


 あ、思ったより胸がないです。全くないわけではないのですが崖に近いです。


「だぁあぶうー」
「あ、あれれ?メンテくんが暴れますよ先輩」
「ミミギさん、例のあれを」
「カフェちゃん、ですね。ニーホちゃん、いったんメンテくんを床に置いてください」
「は、はい」


 僕は床に優しく置かれました。この部屋の床はクッション素材でも使っているのか柔らかいですぞ。


「ニーホさん、よく見ていなさい」
「はい、先輩」


 ミミギさんは自分の耳を使って僕のほっぺをツンツンします。僕は腕をウサミミまで伸ばし、5本の小さな指で掴みとろうとします。強く握る前にウサミミは僕の手の中から脱出し、また僕の顔をツンツンします。僕の指が届く範囲をツンツンするので僕はまた手が伸びます。それをずっと繰り返しました。

 なんだか楽しい気分になっていきますね。


「こ、これは?!」
「これはミミギさんの必殺技、ウサミミ掴みゲームです。メンテくんだけでなく、幼かったアーネちゃんもこれで泣き止んだとんでもない技です」
「えぐう?!(アーネも?!)」
「すごい……」


 僕はミミギさんの耳に手が伸びてしまいます。何も考えていないのに勝手に伸びちゃいます。気づけばこれしか考えられなくなっていました。むむむ、恐ろしい技です。

 ミミギさんは耳を動かすのをやめました。そのまま僕にお尻を向けてきます。


「先輩、ミミギさんはいったい何を?」
「ニーホさん、これもよーく見ていなさい。が出るわよ」


 ミミギさんは僕を丸いしっぽの上に乗せました。モフモフしてもう動きたくありません。なんだか眠気がしてきました。


「先輩、メンテくんの目がとろ~んですよ?!」
「よく気づいたわね。あれこそミミギさんの究極奥義、しっぽモフモフ!! あの毛先まで綺麗でモフモフなしっぽの前には誰も逆らうことができないの。気づいたら夢の中よ」
「ひええええ。ミミギさん半端ないですね」
「ぐぅ~、すぴ~」


 僕は寝ちゃいました。あれは最強です。ミミギさんのお子さんが羨ましいですね。ぐ~すぴ~。


「ニーホさん、私には耳やしっぽがありません。でもあなたには綺麗なしっぽがあります。それがあなたの武器になりますよ」
「ええ?! 私にはミミギさんみたいな真似できませんよ……」
「ニーホちゃん、そこまで深く考えなくてもいいのよ。例えば、しっぽで私の耳みたいな遊びでもできるでしょ? メンテくんは何でも興味深々で喜んじゃうからね~」
「本当に私でもできるのでしょうか……、心配です」
「それぐらい大丈夫よ。私も子供が生まれるまでこんなあやし方をしようとは思わなかったわ。ニーホちゃん若いんだからやってみるものよ」
「そうですよねえ。私、頑張ってみます!」


 こうして新人メイドは成長していくのであった。ついでにメンテも寝て成長するのであった!


「どこかに素敵な旦那様いないものでしょうか……」
「カフェちゃん?」
「え、先輩?」
「いえ、なんでもありません。奥様が帰る前にお仕事を終わらせますよ。はい、早く動いて」
「いい人見がつかるといいわねえ、お仕事しましょう」
「えー先輩、そこを詳しく! 全然ごまかしてませんし(笑)」
「……クビにしますよ?」
「いえ。何でもないです。張り切って仕事しっちゃいますよー!」

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...