もっと甘やかして! ~人間だけど猫に変身できるのは秘密です~

いずみず

文字の大きさ
上 下
11 / 259

11話 「町にお出かけ その2」

しおりを挟む
 父とタクシーさんはガチ説教をされていた。

 言い訳をしているのを聞く限り、二人でこのベビーカーを作ったらしいよ。タクシーさんが有能なのは間違いないけど、やっぱりポンコツなところがあるよね。あの防犯システムが人に当たったら確実に死ぬと思う。

 普段の父はかっこいいけど、タクシーさんと関わったからポンコツがうつったのかな? それとも父がポンコツでタクシーにうつったのかな? おかげで少し遅くなったけど、町に行くことになりました。


「だぁ~ぐぅううう!!(へい、タクシー!!)」


 これは決してバカにしているわけではないよ? 彼の名前がタクシーだからね。今回の事件で有能なときはタクシーさんと呼ぶけど、ポンコツのときは呼び捨てにしようと思ったのは内緒ね。


「メンテ様、お待ちを」


 タクシーさんが僕をベビーカーに乗せてシートベルトをしてくれた。ベビーカーは父が押すことになったようだ。母はアーネと手をつないで歩くみたいだ。

 タクシーさんだけど、最近はメンテ様って呼ぶようになったよ。坊ちゃんがなくなったのは少し大きくなったからかな?


「では行きましょう」


 僕、父、母、兄、姉+執事。この5人で出かけることになりました。


 ◆


 正門を出ると町が見えました。大人の足で歩いて数分かかる距離でしょうか。どうやらあの町から外れたところにナンス家があるみたいです。こんなでかい屋敷が町中になくてよかったと思います。さっきのベビーカーの騒ぎは警察来ちゃうレベルだからね。この異世界に警察いるのかは知りませんが。


「父さん、さっきの魔法のことですが……」
「ベビーカーのことかい?」
「はい、それの地面を真っ黒にしたり穴をあけた魔法です。あれは何をしたのですか?」


 アニーキ―は、父に質問をしているね。さっきの魔法は僕も気になりました。


「あれは爆裂魔法といえばいいかな」
「ば、ばくれつですか??」
「正確には炎、風、爆発魔法を合わせたものだ。風の力で素早く炎を動かし、炎が当たると爆発するという仕組みだ。爆裂魔法は対象の内側から破裂させる効果があるだろ? それと似たような効果を爆発魔法で再現させたのだ。外側から内側も同時に破壊できる威力にな!」
「すごいです、あんな魔法初めて見ました!」
「はっはっは、私とタクシーで頑張って開発したのだよ。私だけでは炎があたるぐらいで燃やすことしかできないからね」


 それだけで十分だろというツッコミはなかった。それどころかフォローする執事がいた。


「ええ、燃やすだけでは相手を確実に倒すことができません。そこで、私の爆発魔法を参考にして、相手を消し炭にする魔道具の研究が行われたのですよ。証拠を隠滅するのは執事の大事な仕事ですな。ほほっ」


 へえ、タクシーさん爆発魔法を使えるのか。さらっと怖いことを言ってたような気がするが、そこは触れないでおく。


「くわあ~(眠い)」


 物騒なベビーカーであるが、めちゃくちゃ心地が良い。どんだけお金かけたんだろうってぐらいふかふかで眠たくなってくるのだ。町に着いたら起こしてもらおう。


 ◆


「メンテちゃん~。寝顔がかわいい天使ちゃん、起きなさ~い」
「メンテおきておきて~」


 気が付くとベビーカーの前に母とアーネがいて僕を起こしてくれました。男達はまだ魔法の話をしていますねえ。まだ数分ぐらいしか経っていないようです。


「うぐぅううううう!」


 すごい、これが異世界の町か!! 人がいっぱいいます。種族バラバラですし、髪の色も日本だと考えられません。お店もいっぱいあるしいい匂いがします。アニーキ―が外食したいという意味が何となく理解できました。


「お買い物の前にちょっとご挨拶に行くからね」
「え~」
「ぐぅ?」
「ちょっとだけよ。パパ、行くわよ」


 いったいどこに行くのでしょう。しばらく歩くと大きな家が見えてきました。町中では一番大きいのではないでしょうか?


「ここよ。アニーキ―は知ってると思うけど失礼のないように。アーネもよ」
「はい、わかりました」
「わかりました。走りません」
「はっはっはー。走ったところであいつは怒らないと思うがな」


 正門で挨拶したらお待ちしてましたみたいに言われ、みんな中に入りました。そのままデカい部屋に招待され誰かが待っていました。


「フルク待ったー?」
「お、ダンディ来たか。遅かったな」
「はっはっは、ちょっと準備に時間がかかっただけだよ」


 ベビーカー事件のことを知っているせいか何とも言えませんな。笑ってごまかしましょう!


「えっぐ!」
「その子が噂のメンテくんか、かわいいな」
「はっはっは、だろだろ? で、そっちはどうだ?」


 そっち?と思い覗き込むと赤ちゃんを抱いた女性の方が座っていますね。


「フフッ、チクバちゃん久しぶり~」
「レディも久しぶりね」
「チクバさん、こんにちは」←アニーキー
「はじめまして、アーネです。よろしくお願いします」
「あ~ぐぅう」←メンテ


 とうやら両親は目の前のは親しい間柄みたいです。僕の兄も姉もしっかり挨拶をしました。僕はしゃべれないけど頑張りましたよ。

 立ち話はなんなのでとソファに座ることになりました。タクシーは立っていますが問題ないでしょう。そのあとは最近どう? 何かあった? みたいな話をしております。僕らのような子供はちょっと暇ですが、失礼がないようにお行儀よく待っています。

 よし、ここは僕の出番ですね!


「うぐぅー!」


 ちょっと機嫌が悪そうに寝返りを打ってみます。すると大人達の話が終わって、子供達を見ましたよ。


「ごめんね~、話が長かったかな。私はチクバ・オッサーナ、よろしくね。あなた達のママと小さい頃からのお友達なの」
「退屈させてごめんな。私はここの町長をしているフルク・オッサーナだ」


 で、また長々と話が始まりました。長い話が終わるころに、チクバさんの腕でずっと寝ていた赤ちゃんが目を覚ましました。こっちを見てすごくキョロキョロしています。


「この子は娘のナジミよ。メンテくんとは同い年だからよろしくね」


 チクバさんがナジミちゃんの腕を掴んでブンブンと振っていますね。僕もよくバイバイしようねと言われて腕を掴まれ、そのままブンブンと横に振られますね。大人たちはすごく嬉しそうな顔をしますが、僕はなにやってんだコイツらって感じなのです。だから普通の赤ちゃんだとポカーンってなりますよ。

 まあ僕はなぜか普通じゃないので、腕を振る意味は完璧に理解していますがね。小さい子に手を振られてると、可愛くて胸がキュンキュンするのです。僕も真似してみます!


「えぐう~」←手をブンブンしているメンテ
「ん~?」←ナジミ


 二人とも挨拶できたねと場の雰囲気が明るくなりました。その後も少しお話をしてから帰ることになりました。今日はお別れですが、また会うことは間違いありません。今まで知らなかった情報や大事そうなことを心のメモに取っておいたので問題ないでしょう。


 挨拶が終わったので町のお出かけ再開です!





 今回は特別に心のメモを見せましょう!

【フルク・オッサーナ】
 ダンディと古くからの親友、親しみやすそうな顔のおじさん、現在はこの町長
【チクバ・オッサーナ】
 レディーの竹馬の友、優しそうな雰囲気、現在はフルクの妻
【ナジミ・オッサーナ】
 フルクとチクバの娘、年齢は僕より1か月ほど下

・フルク、チクバ、ダンディ、レディーは学生時代に知り合った
・上記の4人はパーティ組んで冒険をしていた
・卒業後も家族ぐるみで連絡を取り合う仲
・仲良くなるために媚びる必要あり

 町長とそのご家族には絶対仲良くします。権力を……グフン、強い人がいると頼もしいよね!

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...