『幸せ』を掴むまで

峠 凪

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第 2 章

10, 誘拐〔 Ⅰ 〕

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 およそ1ヶ月フォスフォフィライト家に来て経ちました。
 
 主様に会い気絶し目が覚めてから護衛としてマット様とレイ様がついて下さるようになりました。そしてフォスフィライト様にお会いする機会が無くなりました。マット様とレイ様を紹介して下さったディアン様が仰るには忙しい為この屋敷にも帰っていないとの事です。お体は大丈夫なのでしょうか。心配です。私にとって大切な『ご主人様』なのですから。


 ☆   ☆   ☆


「今日はどうするの?ミーナちゃん」
「今日は午前中図書館へ行き、午後からは部屋で刺繍等します」
「・・・たまには庭とか行かない?外に出る事も必要だよ」
「いえ、それではマット様達にご迷惑をおかけしてしまいますので」
 そう私は言い立ち去りました。後ろでマット様が複雑そうな表情を浮かべていらっしゃる事に気がつきませんでした。

 後に私はこの時マット様のお誘いにのっていれば良かったと後悔する事になるとは思いにもよりませんでした。



 ☆   ☆   ☆



 マット様達がいらっしゃってから私はほぼ毎日同じことをして過ごしています。3日に1回、家庭教師がいらっしゃいます。内容は読み書きといった勉強やマナーについても教えて下さります。時々社交ダンスも教えて下さります。私は今まで奴隷として過ごしていたということもあり、読み書きすらまともに出来ません。ですが、フォスフィライト様が家庭教師をつけて下さったことで出来るようになってきました。とてもご迷惑をおかけして申し訳ありません。ディアン様が仰るにはこれもまた1つの甘やかしだそうです。そのため、私は1日でも早く学びきりたいと考えております。
 そして、私は1日中マット様達に影から護衛してもらいながら過ごしています。



 ☆   ☆   ☆


 
 マット様達は交代制で護衛して下さっているようで今日の護衛して下さる方はレイ様です。

 いつも通り図書館へ向かっていますと、ふいに影が斜め前に出来ました。そちらを見るとレイ様がいらっしゃいました。いつもは後ろにいらっしゃるのに。問い掛けようと口を開いた時、暗転しました。

 いつかこうなると心の何処かで思っておりました。レイ様の瞳にはいつも静かに火が燃えていましたから。
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