『幸せ』を掴むまで

峠 凪

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第 1 章

9, フォスフィライト家〔 Ⅲ 〕

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 予告した町でのことをお伝えします。


 ☆   ☆   ☆


「ミーナ、疲れていないか?休憩がてらそこのカフェに入るか?」
「いえ、大丈夫です。フォスフィライト様こそ大丈夫ですか?」
「俺は1日中走っても疲れないから大丈夫だ。だてに、騎士団長しているわけではないからな」
 

 私達は少し仕立ての良い服を着て町を散策しています。完全な平民のふりは俺達は出来ないから、ちょっといいところのふりをして町に行こうというフォスフィライト様の案にて少し仕立ての良い服を着て行くことになりました。フォスフィライト様に仕立ての良い服ではなく平民が着る服をお願いしたのですが、俺が浮くから却下と仰り、私も仕立ての良い服を着ます。フォスフィライト様のお金を消費させてしまったことが申し訳ありません。

 そんなことを思いながら町を散策しておりますと、フォスフィライト様が休憩するか?と、仰ったのです。足が重く感じていますので、おそらく疲れているのでしょう。ですが、よろしいのでしょうか。
「フォスフィライト様は疲れていらっしゃらないのですから、私の都合で休憩をするのは・・・」
 訥々と話しておりますと、
「なら、休憩しよう。今日はミーナが主役だから」
と、仰ったのです。ですが、フォスフィライト様が、今のご主人様が主役なのです。ご主人様に気を使わしてしまうことはいけないことであり、最も許されないことです。前のご主人様は・・・と、考えておりますと、不意に視界の端に見覚えある姿を捉え、そちらを見ました。

 一気に周囲の音が消え、色も褪せ、視線の先にいる男性から目を逸らすことが出来ません。ご主人様が、フォスフィライト様が何か仰っていらっしゃっているようですが聞こえません。とても焦っていらっしゃっているようでどうしたのでしょうか。何もわかりません、わかりたくない。私は『何』?



 ☆   ☆   ☆



 視線の先にいらっしゃる『主様』がお気づきになりこちらへ向かって来ました。


『また』私は置いて行かれてしまうの?置いて行かないで、・・・痛いのは嫌だ。・・・寂しいのも嫌・・・!

 足元が崩れたように感じ目の前が黒で塗りつぶされ、その後の記憶はございません。
 
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