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#4 自分ができること

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 あれから匠真は視界が光に包まれたまま、更に加えて体が浮遊するような感覚に陥っていた。

 例えるなら、遊園地にある上から下に一気に落ちる系のアトラクションのような感覚だろう。


(無重力だと、こんな感じなんだろうか?)


 そんな感覚も徐々に収まっていき、視界を包んでいた光も少しずつ晴れていく。

 そして、どこかに着地した感覚と同時に視界が開けていった。

 はっきりと見えるようになった視界で辺りを見渡すと、青々とした木々や見たこともない植物が生えている森の中だった。 

 森の中といっても、ジメジメしたような森ではなく、木漏れ日が所々差し込む穏やかな雰囲気の森だった。


(多分、フォルティが気を利かせてくれたんだろうな。 転生先が砂漠とか海の上とかじゃなくてよかったよ)


 体の自由も効くようになったので、まずはフォルティに言われた事を試してみることにした。


「えーっと、ステータス?」


 そう唱えた瞬間、目の前に何かが広がる。


「……空中ディスプレイ?」


 そう、SFの世界とかである、空中ディスプレイである。

 端っこを指で少し触ってみると、タッチパネルみたいな感じで操作できるみたいだった。


「これが僕のステータスってことでいいのかな?」



 ショーマ=ケンモチ   Lv1   男   18歳

 種族
  →ヒト種

 ユニークスキル
  →鍛冶師 Lv1 魔導師 Lv1 
   ウェポンマスター Lv1
   運命神の加護 Lv10


 スキル
  →言語理解 Lv10
     

 HP:1000
 MP:500
 力:100
 速:50
 技:100
 守:50
 魔:100
 運:10000


 スキルポイント0
                   


 色々とツッコミどころが多かったが、匠真は一つずつ見ていくことにした。

 まずはユニークスキルの鍛冶師から。

 ディスプレイの鍛冶師の部分に触れると詳細という欄が出てきたので、そこをタッチしてみた。

 すると鍛冶師の文字の下にツラツラっと説明文が表れた。



『鍛冶師 Lv1』
   ↓
・様々な素材を使って、武器や防具、その他にも物を作ることが可能

・ Lvが上がることで、加工が難しい素材を扱うことが出来るようになり、より高性能な物が作成可能

・作った物に付与効果を付けることが可能。 

・付与効果はLvが上がる事で作成物に付けることができる数と種類が増加

・現在の付与可能数は1

・ショーマ=ケンモチのユニークスキル



 文面だけ見ると、なにやらかなりスペックの高そうなスキルだった。


(ただ、付与効果ってなんだろう?)


 気になったので今度は付与効果の文字をタップしてみると、付与可能な効果がバーっと出てきた。


(Lv1でもまぁまぁあるね? 攻撃力上昇、耐久力上昇…… なるほどなるほど)

 
 匠真は説明書などを詳しく読むタイプなので、その後も鍛冶師のスキルについて色々と見ていった。

 一通り読み終えた事をざっくりまとめると、このスキルは使用可能な素材さえあれば、その素材の形を頭の中で描いた形に変える事ができるようだ。

 素材によっては圧縮して硬度を上げたり、逆に柔らかくしたりも出来るようで、かなり汎用性の高いスキルになっているようだ。


(このスキルかなり強くないか? 武器屋でも開けそうなポテンシャルを秘めてる気がする)


 色々と試してみたい気持ちもあったが他のスキルも確認しないといけないので、残りの2つも見ていくことにした。


『魔導師 Lv1』
   ↓
・全属性の魔法を使用可能

・魔法威力、魔力効率、魔力操作に補正あり

・鑑定魔法、収納魔法、空間魔法を使用可能

・多重詠唱が使用可能

・ショーマ=ケンモチのユニークスキル


(おお、強そう……)


 こちらも使用可能な魔法一覧があったので見てみると、今の段階でもかなりの数があった。


(折角なら使ってみようかな?)


 魔法と聞くとどうにもうずうずしてしまうので、我慢できずに匠真は魔法を使ってみることにした。

 使うのはなるべく安全そうな水魔法を選んだ。


「えっと、ウォーターボール?」


 匠真がそう唱えると、顔の前くらいに大きな水の塊が現れた。


(おぉ! すごい、使えた!)


 思わず歓喜の声をあげてしまったが、ここからどうすればいいのか分からない。


(うーん、とりあえず念じてみるか? あの木に飛んでけ!)


 匠真がそう心の中で唱えると、ウォーターボールはものすごい勢いで近くの木に飛んでいくと、バキバキバキィッとものすごい音を立てて木をへし折ってしまった。


(威力強っ!? 結構太い木だったのに……)


 流石の魔法と言うべき威力だったが、ぽんぽん使えるような物でも無さそうなので、使い所は考えないといけなさそうだった。

 ただ、なんとなくさっきの水が普通の水であることは感覚でわかるので、手を洗ったり飲み水として使えそうなのはありがたい点だった。

 とりあえず、魔導師の確認も済んだので次のスキルを見ていく。


『ウェポンマスター Lv1』
     ↓
・あらゆる武具が高水準で使用可能

・武具攻撃時、攻撃力上昇

・武具防御時、防御力上昇

・レベル上昇時、これらの補正値が上昇

・ショーマ=ケンモチのユニークスキル


(うん、強いね文句なしに。 今まで使った武器というと、剣道の竹刀くらいだけど、例えば槍とか持っても使えるってことなのかな?)

 
 インパクトは魔導師や鍛冶師の方があったかと思うが、これも十分強力なスキルだろう。

 折角作った武器が使えないなんて事にならないのは普通にありがたかった。

 そして最後のユニークスキル。

 これだけはレベルがMAXの10となっており、その内容は……


『運命神の加護(隠蔽) Lv10』
    ↓
・レベル上昇のために必要な経験値量低下

・スキル使用時、戦闘時に得られる経験値量増加

・毒、呪い等の状態異常攻撃無効

・他にも何か必要になったら追加しますね!



(フォルティ……)


 なんだか最後の一文はやけに人間らしかったがそれは置いておいて、すぐにスキルのレベルが上がるのは普通にありがたいことだと思った。

 さらには状態異常も効かないというおまけにしては便利すぎる能力まで付いている。


(まぁ、なにかあったら教会でフォルティに言えばいいかな)


 とにかく、これでようやくユニークスキルの方は見終わった。

 通常スキルの方にある言語理解のスキルはシンプルにどんな言語でも理解することができるので、異世界の文字も日本語を扱うかの如く使用することができるものになっていた。

 これは恐らく、フォルティが気を利かせてつけたものだろう。

 そして、1番下にあるスキルポイント。

 説明文によると、これはレベルが上がった時にもらえるポイントで、このポイントを消費すれば新たなスキルを覚えることができるようだ。

 
(こんなシステムがあると自分がゲームのキャラになったような錯覚に陥りそうになるけど、これは夢でもなんでもないからうっかり油断して足元を掬われないように心がけよう)


 自分のステータスをとりあえず確認し終え、驚いた部分も多かったがどれも有用そうだったので一安心はできた。

 ただ、文字で見ただけでは分からない部分も多いので、街に行く前にもう少し試せるものは試しておくことにする。


(たしか、フォルティが収納魔法に色々入ってるって言ってたな。 どうやって中に入ってるもの出すんだろう?)


 発動の仕方が分からなかったので、ステータス画面から収納魔法の詳細を見てみた。


『収納魔法 Lv1』
   ↓
・使用可能魔法:アイテムボックス

・専用の異空間に物体を入れ、保管することができる

・レベルが上がることで、アイテムボックスの容量が増加

・自動整理機能搭載。 中に何が入っているかはステータス画面で確認可能。

・取り出したいものをイメージすれば取り出すことが可能

 
 発動の仕方は取り敢えず分かったので、次に中に何が入っているかを見ていく。



『アイテムボックス(使用率3%)』
       ↓
 財布(布袋)、鉄のインゴット×3、効果付与の槌



 アイテムボックスの中にはなにやら色々入っていた。

 鉄鉱石はスキルの練習用なのだろうが、効果付与の槌という物が何なのかよくわからなかった。

 なので再び、ステータス画面で調べてみようと思ったが、ふとある事を思いついた。

 それは魔導師で覚えることのできる魔法の一つである鑑定魔法だ。 


(鑑定魔法を使えばいちいちステータス画面で調べなくてもいけるんじゃないか?)


 そう思い、鑑定魔法の概要を確かめてみる。


 
『鑑定魔法 Lv1』
   ↓
・あらゆるものの詳細を見ることが可能

・人物や生物を鑑定する際に、自身の鑑定魔法のレベルを上回る隠蔽効果で隠されたものは見ることができない

 
 
(うん、いけそうだな)


 物は試しということで、とにかくやってみることにした。


(まずはアイテムボックスから槌を出すところからだな。 ……アイテムボックス)


 匠真がそう頭の中で唱えると、すぐそこの空間にぽっかりと黒い穴が空いた。


(……手をつっこめばいいのかな?)


 恐る恐る手を入れてみたが、そこには何もなかった。


(あ、取り出したいものを思い浮かべなきゃいけないんだっけ)


 匠真はアイテムボックスに手を入れたまま、効果付与の槌のことを頭に浮かべる。 見たことはないのでどんな形かは分からないが、とにかく名前を思い浮かべて取り出したいと念じた。

 すると、アイテムボックスに突っ込んだ手から、何かを握ったような感触がした。


(お? これかな?)


 アイテムボックスから手を抜いてみると、打撃面が大きい片手で振るえるようなサイズと重さの槌が出てきた。
 
 アイテムボックスは使えるようになったし、次は鑑定を試していく。

 効果付与の槌をしっかり握り、視線も固定する。


(鑑定!)



『効果付与の槌』
   ↓
・武器や防具、アイテムなどに効果を付与するために使う槌

・付与したい効果をイメージし、魔力を流すことで使用可能

・魔力を流した状態でこの槌を付与したいものに打ちつけることで、効果を付与することができる


 
(よし、上手くいった!)


 鑑定魔法も特に問題なく使うことができ、魔法付与の槌の詳細もおそらくステータス画面と同じような感じで説明文だったので、何か目に見えるものを調べたい時はこちらの方が手っ取り早そうだった。

 
(これからは実物があるものは鑑定で、スキルなどの目に見えないものはステータス画面で、という感じで使い分けをしよう)


 そんな感じで連続で魔法を使ってみたが、鑑定魔法も収納魔法も大して魔力は使わないらしく、500あったMPはまだ485残っていた。


(ウォーターボールが10、鑑定魔法が3、収納魔法が2ぐらいかな?)


 効果付与の槌も問題なく取り出せたので、アイテムボックスからさらに鉄のインゴットも取り出した。


(3つあるのは失敗した用にフォルティが用意したのかな?)


 魔法が使えるといっても、やはり、武器の類は一応持っていたいので、早速鍛冶師のスキルでオーソドックスな剣を作ってみることにした。

 収納魔法から出した鉄のインゴットを近場にあった切り株に置き、鍛冶師スキルを発動していく。

 使い方を読んだ感じ、頭の中でイメージすればいいらしいので、シンプルなロングソードを頭の中でイメージした。

 そのイメージが固まった瞬間、鉄のインゴットが光を放ってみるみる内に形を変えていく。 

 そこまで強い光じゃないため、シルエットでどんな風に変化してるのかも見ることができた。

 その光も30秒ほどで収まり、そこにあった鉄鉱石はイメージ通りの形のロングソードへと形を変えていた。

 刀身は鉄のインゴットの色をそのままに少し灰色で、しっかりと真っ直ぐな刀身をしている。


(うん、イメージ通りの形で出来てるね。 イメージさえしっかりしてればなんでも作れるのかな?)


 試しに出来た剣を鑑定してみることにした。


『鉄の剣』
  ↓
・シンプルな鉄の剣

・製作者の技術力により、全体的に性能が向上


(作るものの性能は技術のステータスが関わってくるんだな……)


 何はともあれ、剣は出来たので次は効果付与を試してみる。


(えーっと、効果付与の詳細は……)


『付与可能項目』
   ↓
・物理攻撃力上昇 防御力上昇 魔法威力上昇 消費魔力減少 耐久力上昇 斬撃強化…………


(……多いな)


 色々あってどれを付与しようか迷った匠真だったが、最終的には耐久力上昇を選んだ。

 せっかく護身用に作った剣がすぐに壊れてしまっては意味がないので。


(付与したい効果をイメージして、魔力を流す…… そして、付与したいものに打ち付ける!)


 先ほど作った鉄の剣に、魔力を込めた効果付与の槌を打ちつけると、キィンッと小気味良い音が響き渡った。

 更に、鉄の剣に打ちつけた槌の打撃面から無数の幾何学模様が一瞬刀身全体に広がっていった。

 それから槌を離して剣を見ても、見た目は特に変化は無かったが、再び鑑定してみたところ、



『鉄の剣』
  ↓
・シンプルな鉄の剣

・製作者の技術力により、全体的に性能が向上

・付与効果:耐久力上昇



(しっかり付いてる!)


 どうやら無事に付与は成功したようだった。

 
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