不便な探偵

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2-2 噂

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「気になる人?」

「ウン。ソウミタイ。」

「いやいや、全員マダムだろ。」

「サイキンノマダムハミンナワカイカラネ。」

「いや、それでいいのか。まぁ、その噂のせいでマダムたちは気合い入ってんだな。」

「ソダネ。アノカオダカラネ。ジャアモウチョイマダムニチカヅイテクル。」

そう言ってアオジは一瞬にして消えた。

マジシャンかよ。

 

 

アオジは昔とある事件に巻き込まれた時に出会ってから、意気投合して友達になった。

カフェオープンも一緒にやったうちのアルバイトでもある。

今でこそかなりの変わり者だし、あいつの多彩な能力は友達になってから知った。

 

出会った時はただの普通なちょっと元気な奴。程度にしか思わない印象の薄い存在。

 

今ではうちの大事な密偵。

メカも得意だが、最大の能力はすぐ人の内側に入れる事。

俺には絶対できない。

そこは尊敬する。

さっきの情報も普通にマダムから聞き出せたんだろう。

 

 

それにしても、なるほど。まぁ、なんか府に落ちた。

少年サッカーの練習であの状況は異常だからな。

 

ムラタの練習姿を見に来たのにそれどころじゃなくなったな。

コーチを見て、

マダムを見て。

コーチを見て、

マダムを見て。

たまにムラタ見て。

 

なんか忙しくなっちゃったな。

 

まぁ、ムラタが楽しそうにやってるからよかった。

 

まがいなりにも父親っぽいことを考えてしまった。

俺も親なんだなぁ。

 

 

あれ?ムラタが走ってきた。なぜか嬉しそうに。

 

「ねぇ。来週決勝じゃん。」

「あぁ。言ってたな。」

「勝っても負けてもそのあと集まりあるらしい。」

「集まり?」

「打ち上げだって!みんな親と行くんだって!行きたい!いい?」

「あ。んー。まぁ、いっか。」

「やったー!なんか、カラオケらしいよ!じゃあ、行けるってみんなに言ってくるね!」

 

いきなりカラオケかよ。

と、いう疑問もあったが、

嬉しそうに走ってきたムラタの姿に断る事ができなかった。

きっと友達もできてきたんだろう。

この街に引っ越してきて9ヶ月。

゛あの゛ムラタも11歳。

まぁ。たまにはムラタの為にやってやるか。

あのマダムたちに混じっておしゃべりできる自信はないが。

 

より一層ムラタの練習に集中などできなくなってしまった。

 

そして何度もコーチ、マダムを繰り返し見ていて何かの違和感を覚えた。

なんだろうか。

なんていうか、マダム達の熱量のベクトルがコーチに向いてるのはわかるが、コーチの感覚がマダム達のほうにある気がしない。

アオジの情報は確かなのか?

 

「ワカッタヨ。」

おっ、ちょうど気になった時に現れたな、我が密偵。

 

「゛ラッキー゛ダッテ。」

ん?

「ウチアゲカイジョウノカラオケノナマエ。」

いや、知りたいのはそっちじゃないよ。

 

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