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第5話
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私は精霊の国に来ていた。
前から来たいと思っていたが、陛下に色々仕事を与えられていたので忙しくて今まで来ることが出来ないでいた。
そのときに婚約破棄をされ、国を出ていく決意をした時にどこに行こうか考えていた。その際にこの国のことを思い出したので来たというわけだ。
「ノエル」
私は呼ばれて振り返った。
そこには美しい青年が立っていた。
「エル、どうしたの?」
私がエルと呼んだ青年は私の精霊だ。こう見えてもこの国の精霊王の孫で、人の姿にもなれる上位種の精霊なのだ。普段は普通の鳥に姿を変えていもらっている。私が鳥の姿でいるように説得したんだよ。エルは誰もが振り返るほどの美貌だからだ。
前に一度一緒に街を歩いていたら、女子に囲まれて大変だった……
あのときの苦労はもう二度としたくないね(笑)
「ノエル、どうしたの?」
「あっ、大丈夫だよ。エル、顔が近いよ」
私がボーとしていたので、心配したエルが私の顔を覗き込んで話しかけてきたので顔の距離が近かった。
「ほんとだ。ごめんね」
これだから困るんだよね。エルはなんていうか人との距離感がおかしい。前に一度指摘したこともあったけど、直らなかったんだよね……もう諦めたよ。
「それより私になにか用事があったんじゃないの?」
「そうなんだよ。おじい様がノエルのことを呼んでたんだ」
「クロード様が?」
「うん。ノエルに話したいことがあるんじゃないかな?おじい様が呼ぶって言ったら、そういう時だけだから」
「確かにクールな方ですものね」
「それじゃあ、ノエル行こう」
「ええ」
私がそう答えるとエルは私の手を掴み、進み出した。
「ノエル、本当に国を出てよかったの?」
エルは心配そうに私を見て言った。
エルは国を出ていったことを気にしているのだろう。
確かに両親やユリア、ライ王子のことは許せなかったけど、あの国の民は無関係だもんな……
でもあの出来事がなくてもらいずれあの国を遅かれ早かれ出ていっていたと思う。
「うん。今エルと一緒にこの国にいるほうが楽しいもん」
「そっか……それは良かった」
エルは嬉しさが溢れた笑顔をしていた。
きっとこの笑顔にみんな惹き付けられるんだろうな……
自然と私も笑顔になれる。
本当にエルには今まで助けてもらってばかりだった。
今度は私が何かしてあげたいな……
「エル、ありがとう」
私はお礼を言った。
エルは一瞬驚いた顔をした。
「これぐらい当たり前だよ。ノエルと僕は家族でしょ」
エルが突然驚きの声を上げた。
「どうしたの!!ノエル……」
「えっ」
私は気づいたら涙を流していた。
あぁ、きっとこの涙は……
私はエルに家族と言ってもらえたのがとても嬉しかったんだな。
こんなにも涙を流したのはいつぶりだろう。
小さい頃以来じゃないかな?
今までは、泣くまいと我慢してたから。
久しぶりに泣いたせいか、なかなか涙が止まらない。
そんな様子を見ていたエルが私を優しく慰めるように私を自分の胸に抱き寄せた。
「好きなだけ泣けばいいよ。僕しか見てないから」
私は一瞬戸惑ったが、エルの優しさに甘えることにした。
「エル……本当にありがとう」
私が泣き止むまで、エルはずっと抱きしめていてくれた。
「ごめんね。こんなに泣いて……もう大丈夫。早くクロード様の元に行かないと」
私はエルに背を向けて歩き出した。
ヤバい、ヤバい。めちゃくちゃ恥ずかしい!!
なんであんなに泣いちゃったんだろう。
ほんとどんな顔をしてエルを見たらいいの?
しかもエルに抱きしめられたとき、一瞬ドキッてしちゃったな……
一体どうしたんだろう?
今までこんなこと無かったのに……
私は深く考え込むのであった。
私はあのときの胸のトキメキがエルへの恋心だと、まだ気づいてはいなかった。
前から来たいと思っていたが、陛下に色々仕事を与えられていたので忙しくて今まで来ることが出来ないでいた。
そのときに婚約破棄をされ、国を出ていく決意をした時にどこに行こうか考えていた。その際にこの国のことを思い出したので来たというわけだ。
「ノエル」
私は呼ばれて振り返った。
そこには美しい青年が立っていた。
「エル、どうしたの?」
私がエルと呼んだ青年は私の精霊だ。こう見えてもこの国の精霊王の孫で、人の姿にもなれる上位種の精霊なのだ。普段は普通の鳥に姿を変えていもらっている。私が鳥の姿でいるように説得したんだよ。エルは誰もが振り返るほどの美貌だからだ。
前に一度一緒に街を歩いていたら、女子に囲まれて大変だった……
あのときの苦労はもう二度としたくないね(笑)
「ノエル、どうしたの?」
「あっ、大丈夫だよ。エル、顔が近いよ」
私がボーとしていたので、心配したエルが私の顔を覗き込んで話しかけてきたので顔の距離が近かった。
「ほんとだ。ごめんね」
これだから困るんだよね。エルはなんていうか人との距離感がおかしい。前に一度指摘したこともあったけど、直らなかったんだよね……もう諦めたよ。
「それより私になにか用事があったんじゃないの?」
「そうなんだよ。おじい様がノエルのことを呼んでたんだ」
「クロード様が?」
「うん。ノエルに話したいことがあるんじゃないかな?おじい様が呼ぶって言ったら、そういう時だけだから」
「確かにクールな方ですものね」
「それじゃあ、ノエル行こう」
「ええ」
私がそう答えるとエルは私の手を掴み、進み出した。
「ノエル、本当に国を出てよかったの?」
エルは心配そうに私を見て言った。
エルは国を出ていったことを気にしているのだろう。
確かに両親やユリア、ライ王子のことは許せなかったけど、あの国の民は無関係だもんな……
でもあの出来事がなくてもらいずれあの国を遅かれ早かれ出ていっていたと思う。
「うん。今エルと一緒にこの国にいるほうが楽しいもん」
「そっか……それは良かった」
エルは嬉しさが溢れた笑顔をしていた。
きっとこの笑顔にみんな惹き付けられるんだろうな……
自然と私も笑顔になれる。
本当にエルには今まで助けてもらってばかりだった。
今度は私が何かしてあげたいな……
「エル、ありがとう」
私はお礼を言った。
エルは一瞬驚いた顔をした。
「これぐらい当たり前だよ。ノエルと僕は家族でしょ」
エルが突然驚きの声を上げた。
「どうしたの!!ノエル……」
「えっ」
私は気づいたら涙を流していた。
あぁ、きっとこの涙は……
私はエルに家族と言ってもらえたのがとても嬉しかったんだな。
こんなにも涙を流したのはいつぶりだろう。
小さい頃以来じゃないかな?
今までは、泣くまいと我慢してたから。
久しぶりに泣いたせいか、なかなか涙が止まらない。
そんな様子を見ていたエルが私を優しく慰めるように私を自分の胸に抱き寄せた。
「好きなだけ泣けばいいよ。僕しか見てないから」
私は一瞬戸惑ったが、エルの優しさに甘えることにした。
「エル……本当にありがとう」
私が泣き止むまで、エルはずっと抱きしめていてくれた。
「ごめんね。こんなに泣いて……もう大丈夫。早くクロード様の元に行かないと」
私はエルに背を向けて歩き出した。
ヤバい、ヤバい。めちゃくちゃ恥ずかしい!!
なんであんなに泣いちゃったんだろう。
ほんとどんな顔をしてエルを見たらいいの?
しかもエルに抱きしめられたとき、一瞬ドキッてしちゃったな……
一体どうしたんだろう?
今までこんなこと無かったのに……
私は深く考え込むのであった。
私はあのときの胸のトキメキがエルへの恋心だと、まだ気づいてはいなかった。
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