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第一章 何かを忘れた僕の日々

違和感

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キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
授業終了の合図であるチャイムとともに僕は眠りから目を覚ます。
今が何時間目か確認すべく、黒板の近くにある時計を確認しようと、僕は頭を起こした。すると、前の席の彼がこちらに気づいたようで、顔をこちらへ向けてきた。
「……」
僕は、彼が苦手なので、無視をしようとした。
しかし、彼は僕が何をしようとしているのか分かっているようだ。僕が時計を確認しようと右へ身を乗り出すと、彼も同じように右へ身を乗り出した。今度は反対に身を乗り出すと、彼も同じように反対に身を乗り出してきた。
(鬱陶しい……。)
そう思った僕は仕方なく彼に挨拶をした。
「…おはよう」
すると彼は眩しいほどの笑顔で
「おはよう!!!」
と、言ってきた。多少苛立ちを感じるが、正直、このクラスでよく話しかけてくれるのは彼、青崎大輝のみに等しいので、ちょっかいを掛けてくる点をのぞけば、助かっている。
挨拶もしたとこで、これ以上喋ることもないと思い、僕は再び時間を確認することにした。が。
「今はちょーど4時間目が終わって、昼飯だ。」
と、先を越されて言われてしまった。薄々感じていたが、彼はもともと僕が何をしようとしていたか分かっていたらしい。いつも、何時間目か確認しているから、正直違和感はないし、不思議だとも感じない。
…しかし、4時間目まで寝てたとなると、今日のほとんどを睡眠に使い、ほとんど授業を寝て過ごしたことになる…。さすがに聞いてなさすぎるのはまずい…。
「…はぁ」
成績が悪いのが確定し、最悪の気分の中、僕は昼食を摂ることにした。クラスは居づらいので、いつも通り大きい木の下で食べることにした。その時だった。
「なぁ、桃橋!昼飯さ、一緒に食わねぇ?」
「…は?」
青崎が一緒に昼食を摂らないかと誘ってきたのだ。
…苦手なやつと食べるのは気が進まないが、断ったら、クラスの人達に冷たいやつだと思われるのは嫌だ。
クラスの人達にそう思われるよりは、青崎と食べるほうがマシなので、僕は、彼とクラスで食べることにした。
「なぁ、夕って呼んでいいか?」
「…」
「なぁ、夕、お前授業中寝すぎじゃね?毎日寝てるじゃん!」
「…」
「なぁ、放課後遊びに行かね?!」
「青崎、うるさいんだけど」
僕らは昼食を食べるために一緒にいる。しかし、食べてるのは僕だけで、青崎はというと、ほとんど進んでいない。理由は紛れもなく、僕にずっと話しかけてくるからだ。正直、ここまでウザいとは思っていなかった…。こんなことになるなら、断っておけばよかったと、僕は後悔した。
早く弁当を食べ終わらせて、どこかへ逃げようと思い、僕は弁当の食べるスピードをあげた。その直後だ。
「なぁ、夕って好きなやつとかいるのか?」
その質問に僕の手は止まった。
…好きなやつ。…僕には居ない。…居ないのに…違和感がある。…なんでだ?僕は去年も今も、恋も青春も何もしてこなかった。…そのはずなのに、僕は答えられない。
なんで、僕は答えられない?
「…夕~?お~い、夕~?」
ほら、青崎にいないっていうんだ。いないって…
…いないはずなのに。
「…分から…ない」
「そっか~。曖昧だな!」
「……」
僕は、お弁当をまた黙々と食べ始めた。けれど、さっきの違和感のせいで、頭が一杯になってしまい、その後のお弁当は、味がしなかった。
そして、このことは、僕の大きな悩みになった。
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