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第十七章
突然届いた手紙
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とりあえず現状で話し合える部分は話し合った。
後は野となれ山となれだ。
監禁部屋もとい会議室から出るともう外はお昼前。
モア君達はというと新たな依頼を受けて早々と出て行ってしまったようだ。
まぁ仕方ないよね。
明日からは強制休日になってしまうわけだし、稼げるときに稼ぐのが冒険者というものだ。
「ではイナバ様また詳しい事がわかり次第ご連絡します。」
「よろしくお願いします。あと、話していた見取り図についてもお願いしますね。」
「それでしたら後でもっていかせます。レイハーン家でしたよね?
「量が多いとかですか?」
「かなり多いです。でも、本当に見取り図だけでわかるんですか?」
「おおよそですけど。それでも闇雲に探すよりかはマシだとおもいます。」
「情報が少ない現状では頼りになるのはイナバ様だけです、目星だけでもつけてください。」
「善処します。」
そんじゃま、その大役をこなすために一先ず戻りますかね。
ギルドを出て大通りを北上する傍ら、ちょっとゆっくりと歩きながら周りの会話に耳を澄ませてみる。
皆思い思いの会話に花を咲かせているようだ。
少し前を歩く冒険者は明日からの陰日について。
今右を通り過ぎた主婦は春節で食べ物の値段が下がったことについて。
後ろから聞こえてくるのは先日のレティシャ王女の結婚式についてのようだ。
誰に聞いてもあの結婚式はすごかったっていうし、見たかったなぁ。
そんなことを思いながら歩いていると、突然信じられない内容の会話が飛び込んできた。
「今噂になってる冒険者が襲われたってやつ、あれはお前がやったんだろ?」
はい?
今なんて言った?
慌てて後ろを振り返るもどの方向から聞こえてきたのか聞き取れなかったために断定が出いない。
話しかけていたって事は二人組のはずなんだけど・・・。
そんな風に考えているうちに周りの人は流れのままどこかへ行ってしまった。
くそ、人が多すぎてわからなかった。
でも確かに『お前がやったんだろ?』って言ったよな。
つまり初心者冒険者の襲撃は決して噂なんかじゃない。
実行犯がすぐ近くにいる。
それってつまり例の連中が水面下で活動しているという事じゃないのか?
今はおとなしくしている。
そんな風に見えるだけで実は容赦なく冒険者を狙っている。
どうする、ギルドに戻って報告するか?
でも、今戻って奴らに怪しまれるのもあれだし・・・。
仕方ない、ここはおとなしく戻ろう。
聞き間違いという可能性もゼロじゃないし、ちょっと落ち着く時間も必要だ。
勢いに流されず冷静に考えること。
それが作戦を立案する時にもっとも重要とする部分だ。
そう自分に言い聞かせると、先程よりもより慎重に周りの会話を聞きながら流れに任せてホンクリー家へと戻るのだった。
昼食前に戻れたので軽く食事を済ませ、夕刻までマリアンナさんの鍛錬に付き合う。
鍛錬を開始してそろそろ十日。
最初と比べれば変わってきたのが一目でわかるな。
まず雰囲気。
今までは貴族のお嬢様宜しく柔らかい感じだったが、今はピリッとした緊張感に包まれている。
イライラしているとかそういうのじゃない。
何をするにしても集中している、そんな感じだ。
次に体力。
これに関してはさすが若いだけあるわ。
最初はヒーヒーいっていたジョギングも今はある程度余裕を持ってついてくるようになった。
筋力も少しずつだがついてきている。
継続は力なりをまさに地でいっているわけだな。
「はい、今日はこれぐらいにしましょう。」
「ありがとう・・・ござい・・・ました。」
息も絶え絶えながらとうとう今日は座り込むことなく挨拶することが出来た。
すごいなぁ。
「夕食はまだ先のようですからゆっくり柔軟してからお戻りください。」
「イナバ様・・・は?」
「私はもう少し体を動かしてから戻ります。おそらく冒険者ギルドから資料が来ていると思うのでそれに向かう前にある程度考えをまとめておきたいので。」
「まだ・・・されるんですね。」
「冒険者は体が資本、お陰様でこの一年でだいぶ鍛えられました。大丈夫です、マリアンナ様も私みたいになれますよ。」
「がんばり・・・ます。」
それだけ言うとその場にへたり込んでしまった。
うん、流石に限界が来たようだ。
そんなマリアンナさんにイケメン執事が素早く駆け寄り飲み物を渡している。
後はお任せして問題ないだろう。
考え事をするときは体を動かす方が効率がいいと何かの本で読んだことがある。
なのでジョギングをしながらこれからしなければならないことを考えることにした。
マリアンナさんの冒険者登録試験まで残された時間はあと三日。
仮にその試験を超えたとすると、次はいよいよ冒険者登録だ。
登録後は晴れて冒険者になるわけだが、今後継続するかどうかはその先の出来にかかっている。
もし最終試験で定められた目標を達成できなければ冒険者になる事はスッパリと諦めてもらう事になるのだが・・・。
その最終試験の項目は三つ。
一、自分一人で魔物を倒して解体する。
二、他の冒険者と一緒に行動する(野営を含む)。
三、買い物を含め一人で準備をする。
基本この三つが出来れば問題なく冒険者を続けることが出来ると思っている。
準備や行動は普通に育てば誰でもできるだろうけど、マリアンナさんに関して言えばその誰でもできるが出来ない。
それに加えて今回は魔物を一人で倒し、解体しなければならない。
そう、倒すだけではだめなのだ。
冒険者になるのであれば素材を回収するために解体が出来なければ意味が無い。
そこまで出来て一人前の冒険者だと言えるだろう。
今回はそれに至る前段階をテストするわけだが、おそらくこれは問題ない。
何故なら冒険者登録試験の内容はこの鍛錬ですべてクリアしているからだ。
鍛錬についていけなかったらその時点で諦めてもらうつもりだったのだが、それに関してはいい意味で裏切られた。
なので問題なく登録試験はクリアできるだろう。
問題があるのはその先だ。
冒険者になった後、実際に魔物と戦うようになれば必然的にダンジョンに潜ることになる。
そうなると今度は例の連中が出てくる可能性があるわけだ。
マリアンナさんに危険が及ばないようにするためにはダンジョンに潜らなければいいだけなのだが、残念ながらそういうわけにはいかない。
ダンジョンだからこそ短時間で冒険者の素質を底上げすることが出来る。
時間を掛けられないからこそ、ダンジョンを有効利用する必要があるわけだ。
危険と隣り合わせだが、今回に関しては致し方ないだろう。
そして、その危険を回避するためにギルドから大量の見取り図を貰ったわけだしね。
あと三日。
いや、とりあえずあと二日で怪しい所を全部ピックアップしてギルドに報告。
それをもとに冒険者をその場所に派遣して冒険者が襲われないように監視、さらに入場する人物をすべて把握して冒険者以外の怪しい人物が入り込まないようにする。
陰日の間中に潜んでいる可能性も否定できないので出来れば明ける前に巡回をしておきたいところだな。
これは管理しているジクロル商店にも協力を仰がなければならないから、そうなると明日までにピックアップした方がいいのか。
相変わらず時間が無いなぁ。
もっとゆっくりと準備が出来れば安心して挑めるのに、いつも時間ギリギリになってしまう。
ほんと、勘弁してもらいたい。
それもこれも全てはあのクソジジイのせいだ。
今度こそ化けの皮を剥いでやるから覚悟しろよ!
とかなんとか考えている間に、一体何周したんだろうか。
流石にくたびれてきたので少しずつペースを落とし正門の前で一息つく。
ふぅ、後は柔軟をして・・・。
体をほぐしている俺の前を一台の馬車が通りすぎる。
別に馬車が通り過ぎることに関しては何も違和感は無いんだけど、気になったのはその速度。
わざわざ俺の前を通る時だけゆっくりになり、通り過ぎてからはまるで逃げるように速度を上げて通り過ぎて行った。
いや、レイハーン家の正門前で見知らぬ男が息を切らしているっていうのは確かに怪しいともうけど、そんな露骨に速度を落とさなくてもいいんじゃないかなぁ。
まるで俺を品定めしているようにも感じるじゃないか。
考えすぎ?
だといいんですけど。
その後ストレッチをしながらゆっくりと屋敷へと戻り、食事前にお風呂を頂く。
え、さっきマリアンナさんが入ったばかりのお風呂にお前も入るのかって?
心配ご無用。
うちのお風呂と違って猫足バスタブ系なので毎回お湯は入れ替えられます。
なんて非効率!と思ったそこのアナタ、備え付けのお風呂の方が中々に大変なんですよ。
今はボタン一つでお湯が沸くけど、直火だと常に人が湯加減を調整しないといけないし、火事の危険だってある。
その点お湯を注ぐタイプは準備こそ大変だけどお湯さえあればそれで完結できるし、湯船の底から中身を抜けば処理も簡単だ。
浴室の床はちゃんと坂になっているので排水はそのまま用水路へ流れ込み、最終的に下水へと運ばれていくらしい。
大きな街を作る時に一番大変なのは上下水道の整備だもんな。
井戸を掘るのは簡単でも、その後の処理をどうするかが問題になる。
ちゃんとした都市計画を作らないと、下水道が迷路のようになって収拾がつかないとかいうのは良くある話だ。
そういう点では紀元前から上下水道を完備していた某帝国の技術力ってすごいよなぁ。
「イナバ様湯加減はいかがですか?」
「ちょうどいいです、有難うございます。」
「追加のお湯が必要であれば仰ってください。食事は一刻程後には出来上がります。それと、冒険者ギルドより荷物が届いておりましたのでお部屋に運んでおきました、ご確認宜しくお願いします。」
「わかりました。」
さて、変なこと考えずにやることやらなきゃ。
イケメン執事にかいがいしくお世話されるっていうのはあれだけど、ここに来てそろそろ二週間本当にお世話になっております。
使用人は他にもたくさんいるけれど、その筆頭として色々な仕事を任されているイケメン執事。
特に相手をしなければならないアニエスさんマリアンナさんにプラスして俺の相手もしなければならないんだから、いつ休んでいるんだろうか。
「結構さぼり癖がありますので適度な所で休ませて頂いておりますよ。ですがご心配ありがとうござます。」
「あ、いえ、お世話になっています。」
「着替えはこちらに置いておきますのでどうぞごゆっくり。あぁ、ゆっくりしていただける分だけさぼれますので本当にゆっくりしてくださいませ。」
俺の世話をしない時間はゆっくりと休めるわけか。
なるほどなるほど。
って、絶対違うよねそれ。
どう考えても今から食事の準備が待ってるよね。
いや、マジで俺の知っている使用人ってなんでみんな仕事が出来るんでしょうか。
出来るというか出来過ぎている?
そういう人しかなれないのかもしれないけどさぁ・・・。
いつか過労死するぞ。
とはいえ、あのセリフが嘘じゃない確証も無いのでいつもよりもゆっくりと湯船につかり、少しでも疲れを落とす。
この後は精神的に疲れる作業が待っているし、今のうちに出来るだけ肉体的な疲労を落としておきたい。
その後のんびりと着替え食堂に向かう頃には美味しそうな夕食がテーブルに並んでいた。
おや、アニエスさん達はもう到着していたのか。
ちょっとゆっくりしすぎたかな。
「すみません遅くなりました。」
「いえ、私達も今来た所です。」
「マリアンナ様、お体は大丈夫ですか?」
「ゆっくり休ませていただきましたからもう大丈夫です。イナバ様こそ、あれから随分と走っておられましたけど・・・。」
「すみません考え事をしていてつい。走ってただけですから特に問題ありませんよ。」
最初は筋肉痛で呻きまくっていたマリアンんさんも今はずいぶんと余裕がある。
最初は食事ものどを通らないって感じだったのに。
若いってすごいなぁ。
「イナバ様考え事ですか?」
「えぇ、陰日明けをどうするか考えておりました。これもマリアンナ様の試験次第ですがおそらく問題は無いでしょう。」
「そうですか。」
「よろしいのですか?」
「この子がやると決めたことですから。もちろん母親としては考え直してほしいと思っています、ですが今日までの頑張りを目にするとそれも言いにくくなりましたね。」
「お母様それじゃあ・・・!
「あくまでも母親としては反対です。仮に冒険者になったとしても、最終試験で躓く様であれば即刻諦めてもらいますからね。」
「はい!有難うございますお母さま!」
とうとうアニエスさんも、娘の頑張りを認めてくれたようだ。
もちろん母親としては反対しているとの事だが、冒険者貴族レイハーン家の当主としては好ましい事ではある。
ほんと、難しい立場におられるなアニエスさんも。
一応の許可が出たことも有り疲れていたはずのマリアンナさんに元気が戻ってくる。
さぁ、しっかり食べないと!と言うと早速お肉にかぶりついていた。
いや、流石にそれは言いすぎか。
お上品にかぶりついていたと訂正しておく。
もちろんナイフとフォークでね。
今日の夕食は珍しく肉系が多い。
何かのお祝い…ではないと思うんだけど何故だろう。
「明日からは陰日ですので質素な食事に変わりますから、今日のうちにしっかりと食べておいてくださいね。」
「あ、そうなんですか?」
「レイハーン家は代々冒険者の家系ですので、貴族になった後も陰日の大変さを忘れないようにこういった食事にしているのです。申し訳ありませんがイナバ様もお付き合いお願いします。」
「そういう事でしたら喜んで。商人であると同時に私も冒険者の端くれ、陰日の苦労は身をもって知るべきです。」
郷に入れば郷に従えというやつだ。
別に断食をするわけではないんだし、それぐらい問題ない。
それじゃあ束の間の贅沢を是非楽しませてもらうとしよう。
運ばれてくる豪華な食事に舌鼓を打ちつつ、お二人に頼まれてこの一年の流れをかいつまんで説明する。
大変な目に合われたんですねと同情されるのも慣れたもの、アハハと軽く流せる当たり俺も大きくなったものだ。
そんなこんなでいつもよりも長い夕食も終盤。
最後のデザートをという時だった。
「失礼します、イナバ様お手紙が参りました。」
「手紙ですか?」
「はい。どなたかお伺いしたのですが渡せばわかるとだけ言われまして、思わず預かってしまいました。」
「誰でしょうか。」
文通をしているような知人はいなかったと思うけど・・・。
ギルドの関係者かな?
イケメン執事から手紙をもらい、差し出されたペーパーナイフで封を開く。
記名は無し。
中にカミソリ・・・なんてネタもなし。
中には入っていたのは一枚の紙だけだ。
えーっとなになに?
その中身を見た瞬間、背中にゾワゾワと寒気が走る。
「どうかされましたか?」
突然俺の表情が変わったのでアニエスさんが心配してくれた。
「いえ、何でもありません。」
俺は軽く流して手紙をしまう。
言えない。
言えるはずがない。
せっかく許可を貰えたというのに、まさかこのタイミングで・・・。
不思議そうに俺を見てくる二人に作り笑いを浮かべて場を流す。
手紙に書かれていたのは一文だけ。
『これ以上手を出すな、出せば娘とお前の命は無いぞ。』
こりゃ大変なことになってきたかもしれない。
そう、冷や汗を流しながら笑みを受かべるのだった。
後は野となれ山となれだ。
監禁部屋もとい会議室から出るともう外はお昼前。
モア君達はというと新たな依頼を受けて早々と出て行ってしまったようだ。
まぁ仕方ないよね。
明日からは強制休日になってしまうわけだし、稼げるときに稼ぐのが冒険者というものだ。
「ではイナバ様また詳しい事がわかり次第ご連絡します。」
「よろしくお願いします。あと、話していた見取り図についてもお願いしますね。」
「それでしたら後でもっていかせます。レイハーン家でしたよね?
「量が多いとかですか?」
「かなり多いです。でも、本当に見取り図だけでわかるんですか?」
「おおよそですけど。それでも闇雲に探すよりかはマシだとおもいます。」
「情報が少ない現状では頼りになるのはイナバ様だけです、目星だけでもつけてください。」
「善処します。」
そんじゃま、その大役をこなすために一先ず戻りますかね。
ギルドを出て大通りを北上する傍ら、ちょっとゆっくりと歩きながら周りの会話に耳を澄ませてみる。
皆思い思いの会話に花を咲かせているようだ。
少し前を歩く冒険者は明日からの陰日について。
今右を通り過ぎた主婦は春節で食べ物の値段が下がったことについて。
後ろから聞こえてくるのは先日のレティシャ王女の結婚式についてのようだ。
誰に聞いてもあの結婚式はすごかったっていうし、見たかったなぁ。
そんなことを思いながら歩いていると、突然信じられない内容の会話が飛び込んできた。
「今噂になってる冒険者が襲われたってやつ、あれはお前がやったんだろ?」
はい?
今なんて言った?
慌てて後ろを振り返るもどの方向から聞こえてきたのか聞き取れなかったために断定が出いない。
話しかけていたって事は二人組のはずなんだけど・・・。
そんな風に考えているうちに周りの人は流れのままどこかへ行ってしまった。
くそ、人が多すぎてわからなかった。
でも確かに『お前がやったんだろ?』って言ったよな。
つまり初心者冒険者の襲撃は決して噂なんかじゃない。
実行犯がすぐ近くにいる。
それってつまり例の連中が水面下で活動しているという事じゃないのか?
今はおとなしくしている。
そんな風に見えるだけで実は容赦なく冒険者を狙っている。
どうする、ギルドに戻って報告するか?
でも、今戻って奴らに怪しまれるのもあれだし・・・。
仕方ない、ここはおとなしく戻ろう。
聞き間違いという可能性もゼロじゃないし、ちょっと落ち着く時間も必要だ。
勢いに流されず冷静に考えること。
それが作戦を立案する時にもっとも重要とする部分だ。
そう自分に言い聞かせると、先程よりもより慎重に周りの会話を聞きながら流れに任せてホンクリー家へと戻るのだった。
昼食前に戻れたので軽く食事を済ませ、夕刻までマリアンナさんの鍛錬に付き合う。
鍛錬を開始してそろそろ十日。
最初と比べれば変わってきたのが一目でわかるな。
まず雰囲気。
今までは貴族のお嬢様宜しく柔らかい感じだったが、今はピリッとした緊張感に包まれている。
イライラしているとかそういうのじゃない。
何をするにしても集中している、そんな感じだ。
次に体力。
これに関してはさすが若いだけあるわ。
最初はヒーヒーいっていたジョギングも今はある程度余裕を持ってついてくるようになった。
筋力も少しずつだがついてきている。
継続は力なりをまさに地でいっているわけだな。
「はい、今日はこれぐらいにしましょう。」
「ありがとう・・・ござい・・・ました。」
息も絶え絶えながらとうとう今日は座り込むことなく挨拶することが出来た。
すごいなぁ。
「夕食はまだ先のようですからゆっくり柔軟してからお戻りください。」
「イナバ様・・・は?」
「私はもう少し体を動かしてから戻ります。おそらく冒険者ギルドから資料が来ていると思うのでそれに向かう前にある程度考えをまとめておきたいので。」
「まだ・・・されるんですね。」
「冒険者は体が資本、お陰様でこの一年でだいぶ鍛えられました。大丈夫です、マリアンナ様も私みたいになれますよ。」
「がんばり・・・ます。」
それだけ言うとその場にへたり込んでしまった。
うん、流石に限界が来たようだ。
そんなマリアンナさんにイケメン執事が素早く駆け寄り飲み物を渡している。
後はお任せして問題ないだろう。
考え事をするときは体を動かす方が効率がいいと何かの本で読んだことがある。
なのでジョギングをしながらこれからしなければならないことを考えることにした。
マリアンナさんの冒険者登録試験まで残された時間はあと三日。
仮にその試験を超えたとすると、次はいよいよ冒険者登録だ。
登録後は晴れて冒険者になるわけだが、今後継続するかどうかはその先の出来にかかっている。
もし最終試験で定められた目標を達成できなければ冒険者になる事はスッパリと諦めてもらう事になるのだが・・・。
その最終試験の項目は三つ。
一、自分一人で魔物を倒して解体する。
二、他の冒険者と一緒に行動する(野営を含む)。
三、買い物を含め一人で準備をする。
基本この三つが出来れば問題なく冒険者を続けることが出来ると思っている。
準備や行動は普通に育てば誰でもできるだろうけど、マリアンナさんに関して言えばその誰でもできるが出来ない。
それに加えて今回は魔物を一人で倒し、解体しなければならない。
そう、倒すだけではだめなのだ。
冒険者になるのであれば素材を回収するために解体が出来なければ意味が無い。
そこまで出来て一人前の冒険者だと言えるだろう。
今回はそれに至る前段階をテストするわけだが、おそらくこれは問題ない。
何故なら冒険者登録試験の内容はこの鍛錬ですべてクリアしているからだ。
鍛錬についていけなかったらその時点で諦めてもらうつもりだったのだが、それに関してはいい意味で裏切られた。
なので問題なく登録試験はクリアできるだろう。
問題があるのはその先だ。
冒険者になった後、実際に魔物と戦うようになれば必然的にダンジョンに潜ることになる。
そうなると今度は例の連中が出てくる可能性があるわけだ。
マリアンナさんに危険が及ばないようにするためにはダンジョンに潜らなければいいだけなのだが、残念ながらそういうわけにはいかない。
ダンジョンだからこそ短時間で冒険者の素質を底上げすることが出来る。
時間を掛けられないからこそ、ダンジョンを有効利用する必要があるわけだ。
危険と隣り合わせだが、今回に関しては致し方ないだろう。
そして、その危険を回避するためにギルドから大量の見取り図を貰ったわけだしね。
あと三日。
いや、とりあえずあと二日で怪しい所を全部ピックアップしてギルドに報告。
それをもとに冒険者をその場所に派遣して冒険者が襲われないように監視、さらに入場する人物をすべて把握して冒険者以外の怪しい人物が入り込まないようにする。
陰日の間中に潜んでいる可能性も否定できないので出来れば明ける前に巡回をしておきたいところだな。
これは管理しているジクロル商店にも協力を仰がなければならないから、そうなると明日までにピックアップした方がいいのか。
相変わらず時間が無いなぁ。
もっとゆっくりと準備が出来れば安心して挑めるのに、いつも時間ギリギリになってしまう。
ほんと、勘弁してもらいたい。
それもこれも全てはあのクソジジイのせいだ。
今度こそ化けの皮を剥いでやるから覚悟しろよ!
とかなんとか考えている間に、一体何周したんだろうか。
流石にくたびれてきたので少しずつペースを落とし正門の前で一息つく。
ふぅ、後は柔軟をして・・・。
体をほぐしている俺の前を一台の馬車が通りすぎる。
別に馬車が通り過ぎることに関しては何も違和感は無いんだけど、気になったのはその速度。
わざわざ俺の前を通る時だけゆっくりになり、通り過ぎてからはまるで逃げるように速度を上げて通り過ぎて行った。
いや、レイハーン家の正門前で見知らぬ男が息を切らしているっていうのは確かに怪しいともうけど、そんな露骨に速度を落とさなくてもいいんじゃないかなぁ。
まるで俺を品定めしているようにも感じるじゃないか。
考えすぎ?
だといいんですけど。
その後ストレッチをしながらゆっくりと屋敷へと戻り、食事前にお風呂を頂く。
え、さっきマリアンナさんが入ったばかりのお風呂にお前も入るのかって?
心配ご無用。
うちのお風呂と違って猫足バスタブ系なので毎回お湯は入れ替えられます。
なんて非効率!と思ったそこのアナタ、備え付けのお風呂の方が中々に大変なんですよ。
今はボタン一つでお湯が沸くけど、直火だと常に人が湯加減を調整しないといけないし、火事の危険だってある。
その点お湯を注ぐタイプは準備こそ大変だけどお湯さえあればそれで完結できるし、湯船の底から中身を抜けば処理も簡単だ。
浴室の床はちゃんと坂になっているので排水はそのまま用水路へ流れ込み、最終的に下水へと運ばれていくらしい。
大きな街を作る時に一番大変なのは上下水道の整備だもんな。
井戸を掘るのは簡単でも、その後の処理をどうするかが問題になる。
ちゃんとした都市計画を作らないと、下水道が迷路のようになって収拾がつかないとかいうのは良くある話だ。
そういう点では紀元前から上下水道を完備していた某帝国の技術力ってすごいよなぁ。
「イナバ様湯加減はいかがですか?」
「ちょうどいいです、有難うございます。」
「追加のお湯が必要であれば仰ってください。食事は一刻程後には出来上がります。それと、冒険者ギルドより荷物が届いておりましたのでお部屋に運んでおきました、ご確認宜しくお願いします。」
「わかりました。」
さて、変なこと考えずにやることやらなきゃ。
イケメン執事にかいがいしくお世話されるっていうのはあれだけど、ここに来てそろそろ二週間本当にお世話になっております。
使用人は他にもたくさんいるけれど、その筆頭として色々な仕事を任されているイケメン執事。
特に相手をしなければならないアニエスさんマリアンナさんにプラスして俺の相手もしなければならないんだから、いつ休んでいるんだろうか。
「結構さぼり癖がありますので適度な所で休ませて頂いておりますよ。ですがご心配ありがとうござます。」
「あ、いえ、お世話になっています。」
「着替えはこちらに置いておきますのでどうぞごゆっくり。あぁ、ゆっくりしていただける分だけさぼれますので本当にゆっくりしてくださいませ。」
俺の世話をしない時間はゆっくりと休めるわけか。
なるほどなるほど。
って、絶対違うよねそれ。
どう考えても今から食事の準備が待ってるよね。
いや、マジで俺の知っている使用人ってなんでみんな仕事が出来るんでしょうか。
出来るというか出来過ぎている?
そういう人しかなれないのかもしれないけどさぁ・・・。
いつか過労死するぞ。
とはいえ、あのセリフが嘘じゃない確証も無いのでいつもよりもゆっくりと湯船につかり、少しでも疲れを落とす。
この後は精神的に疲れる作業が待っているし、今のうちに出来るだけ肉体的な疲労を落としておきたい。
その後のんびりと着替え食堂に向かう頃には美味しそうな夕食がテーブルに並んでいた。
おや、アニエスさん達はもう到着していたのか。
ちょっとゆっくりしすぎたかな。
「すみません遅くなりました。」
「いえ、私達も今来た所です。」
「マリアンナ様、お体は大丈夫ですか?」
「ゆっくり休ませていただきましたからもう大丈夫です。イナバ様こそ、あれから随分と走っておられましたけど・・・。」
「すみません考え事をしていてつい。走ってただけですから特に問題ありませんよ。」
最初は筋肉痛で呻きまくっていたマリアンんさんも今はずいぶんと余裕がある。
最初は食事ものどを通らないって感じだったのに。
若いってすごいなぁ。
「イナバ様考え事ですか?」
「えぇ、陰日明けをどうするか考えておりました。これもマリアンナ様の試験次第ですがおそらく問題は無いでしょう。」
「そうですか。」
「よろしいのですか?」
「この子がやると決めたことですから。もちろん母親としては考え直してほしいと思っています、ですが今日までの頑張りを目にするとそれも言いにくくなりましたね。」
「お母様それじゃあ・・・!
「あくまでも母親としては反対です。仮に冒険者になったとしても、最終試験で躓く様であれば即刻諦めてもらいますからね。」
「はい!有難うございますお母さま!」
とうとうアニエスさんも、娘の頑張りを認めてくれたようだ。
もちろん母親としては反対しているとの事だが、冒険者貴族レイハーン家の当主としては好ましい事ではある。
ほんと、難しい立場におられるなアニエスさんも。
一応の許可が出たことも有り疲れていたはずのマリアンナさんに元気が戻ってくる。
さぁ、しっかり食べないと!と言うと早速お肉にかぶりついていた。
いや、流石にそれは言いすぎか。
お上品にかぶりついていたと訂正しておく。
もちろんナイフとフォークでね。
今日の夕食は珍しく肉系が多い。
何かのお祝い…ではないと思うんだけど何故だろう。
「明日からは陰日ですので質素な食事に変わりますから、今日のうちにしっかりと食べておいてくださいね。」
「あ、そうなんですか?」
「レイハーン家は代々冒険者の家系ですので、貴族になった後も陰日の大変さを忘れないようにこういった食事にしているのです。申し訳ありませんがイナバ様もお付き合いお願いします。」
「そういう事でしたら喜んで。商人であると同時に私も冒険者の端くれ、陰日の苦労は身をもって知るべきです。」
郷に入れば郷に従えというやつだ。
別に断食をするわけではないんだし、それぐらい問題ない。
それじゃあ束の間の贅沢を是非楽しませてもらうとしよう。
運ばれてくる豪華な食事に舌鼓を打ちつつ、お二人に頼まれてこの一年の流れをかいつまんで説明する。
大変な目に合われたんですねと同情されるのも慣れたもの、アハハと軽く流せる当たり俺も大きくなったものだ。
そんなこんなでいつもよりも長い夕食も終盤。
最後のデザートをという時だった。
「失礼します、イナバ様お手紙が参りました。」
「手紙ですか?」
「はい。どなたかお伺いしたのですが渡せばわかるとだけ言われまして、思わず預かってしまいました。」
「誰でしょうか。」
文通をしているような知人はいなかったと思うけど・・・。
ギルドの関係者かな?
イケメン執事から手紙をもらい、差し出されたペーパーナイフで封を開く。
記名は無し。
中にカミソリ・・・なんてネタもなし。
中には入っていたのは一枚の紙だけだ。
えーっとなになに?
その中身を見た瞬間、背中にゾワゾワと寒気が走る。
「どうかされましたか?」
突然俺の表情が変わったのでアニエスさんが心配してくれた。
「いえ、何でもありません。」
俺は軽く流して手紙をしまう。
言えない。
言えるはずがない。
せっかく許可を貰えたというのに、まさかこのタイミングで・・・。
不思議そうに俺を見てくる二人に作り笑いを浮かべて場を流す。
手紙に書かれていたのは一文だけ。
『これ以上手を出すな、出せば娘とお前の命は無いぞ。』
こりゃ大変なことになってきたかもしれない。
そう、冷や汗を流しながら笑みを受かべるのだった。
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