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第十七章
君の(通り)名は。
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動きが止まったままの職員を眺めて早くも100カウント達成。
横を見ると他の職員が何事かと様子を伺っているも、手助けする感じはない。
あのー、そろそろ正気に戻っていただきたいんですけどダメですかね。
「ちょっと、後ろつかえてるよどうしたの?」
流石にこのままではまずいと察した別の職員がフォローに来てくれたようだ。
「私の適性を見てからこの調子でして。」
「えー、この子がこんな風になるの珍しいんだけどなぁ・・・。えっと、適性は・・・精霊師!?マジで言ってんの?ちょっと検査機器御壊れてるんじゃないの!?」
と、フォローに入った職員までもがテンパリ始めた。
そりゃ仕方ないんだろうけど、仮にも対面の仕事なんだからそのしゃべり方はどうかと思うよ?
マジでいってんの!?
とか久々に聞いたよ。
その人が騒ぐものだから何事かと後ろに控えていた職員さんまでやって来ての大騒動である。
「イナバ様、ちょっとこちらにお願いできますでしょうか。」
そしてそれだけたくさんの職員が来たという事は、その中に俺の事を知っている職員がいる可能性も上がるわけでして・・・。
どうやらそれに該当する人が慌てて俺に声をかけて来た。
「何故です?」
「詳しくお話をお伺いさせていただきます。私、現在この受付を任されておりますオーリンと申します。ささ、温かいお茶などご準備いたしますのでどうかここは穏便に・・・。」
「・・・わかりました。」
別に暴れるつもりはないので穏便にもないのだが、気づけば後ろには人だかりができており、強面の皆さんまでもが何事かとこちらを見ていた。
俺はただ話が聞ければよかったんだけど・・・。
ま、いいか。
偉い人の方が話しやすそうだし。
ギルドの奥へと誘導されながら後ろを振り返ると、職員さん達が後ろに集まって来ていた冒険者達を追い返している所だった。
ちなみに最初に対応してフリーズしてしまった職員はというと、いまだカウンターで静止中である。
そこまでフリーズする内容だっただろうか。
精霊師って、俺が思っている以上にレアな存在なのかもしれないな。
とか何とか考えているうちに案内されたのは8人ぐらいで会議するような小さな会議室。
なぜ8人かというと、四人ずつ向かい合えるように机と椅子が置いてあったから。
ちょっとお話しするにしては広い部屋だなぁ。
「すぐにお茶をご準備いたしますので、もう少々お待ちください。」
「え、いえおかまいなく。私はただ初心者冒険者についてお伺いしたくて・・・!」
「すぐ、すぐに別の者が参りますのでどうかここは穏便に、穏便にお願いいたします!」
それだけ言うとオーリンさんだっけ?その人は慌てて部屋を出て行ってしまった。
あのー、もしもし?
何でそんなに怯えていらっしゃるの?
そんなに怖く見えます?
何処をどう見ても、さっき俺を遠巻きに見ていた強面の皆さんの方が雰囲気も外見も怖いと思うんですけど。
そのまま待つこと少し。
「失礼します、お茶をお持ちしました。」
と、また別の人が部屋に入って来た。
先ほどの職員さんは昔の俺のような疲れた中間職って感じだったが、この人はちがう。
なんていうか仕事できますっていうオーラが半端ない。
でも、全然それを鼻にかけるような感じもしないんだよね。
時々いるんですよ、こういうすごい人。
俺よりかは若い感じだな、25、6ぐらい。
耳は普通だし背が低い感じでもない、ということはこの人もヒューリンか。
手荷物お盆にはカップが三つ。
もちろん俺が三つ飲むわけがないので、あと一人この部屋に来るという事かな?
「あ、どうぞ奥のお席におかけください。すみませんこんな狭い場所で。」
「いえ、それはいいんですけど、時間かかりますか?」
「もう来るかと思うんですけど・・・あ、来ました。」
その人の後にすぐ入ってきたのは、この日一番の怖い顔をした男性だった。
歳はガンドさん位だろうか。
あの、なんでこんな圧迫面接的な状況に追い込まれているんでしょうか。
その人はジロリと俺を睨むと無言で一番手前の椅子に腰かけた。
「もぅ、駄目ですよジンさん威嚇するようなことしちゃ。」
「そんなことしていないぞ、マッチ。」
「しましたよぉ。あ、イナバ様気にしないでくださいね、怒っているわけじゃないので。」
「あ、はい。」
「申し遅れました、私はマッチ。ここ全体のお手伝いをさせてもらっています。それで、この怖い顔の人が・・・。」
「ジンだ、一応ギルドの長をしている。」
って、まさかのギルド長登場ですか。
そりゃ怖い顔だわ。
あ、そんなこと言ったらティナさんに失礼だな。
あの人は冒険者なのに可愛い。
そして強い。
「一応って何ですか一応って!」
「仕事のほとんどはお前に任せているからな、俺は飾りみたいなものだ。」
「確かに仕事をしているのは私ですけど・・・って、イナバ様が呆れた顔でこちらを見てるじゃないですか!」
いや、あきれてないよ?
むしろ漫才みたいで面白いなーなんて思ってたりはするけど。
カップを置きながらの冷静なツッコミ。
やはりこの人、できる
「えっと、そんなにすごい方が私に何の用でしょうか・・・。」
「それはこちらのセリフだ。精霊師の素質があるやつがいると聞いてきてみれば、あのイナバ=シュウイチがうちに何の用だ?」
「私はただ初心者冒険者としての教本や、資料があれば見せていただきたくて来ただけなんです。ですが、あれよあれよという間に気づけば冒険者登録までさせられてしまって、それで・・・。」
「つまりここを監視しに来たわけではないのか?」
「監視するわけないじゃないですか!というか、監視されるようなこと何かしているんですか?」
「してませんしてません断じてしてません!ってこんなに必死になったら怪しく見えると思いますけど本当に何もしていませんから!ここは王都シュメリアの冒険者ギルドにして本部も兼ねているんです。そんなところで悪さなんてできるわけないじゃないですか!ねぇ、ジンさん。」
「そうなのか?」
「いや、そうなのかって私に聞き返されても。もういいです、聞いた相手が間違いでした。」
あ、やっぱりこれ漫才だったの?
身長差が結構あるし、デコボココンビ『マッチジン!』とかで売り出しているとか?
しらんけど。
「私がここに来た理由は先ほどお話しした通りです。仕事で王都まできまして、そこで冒険者についての資料が必要になったものですから、ここなら何かあるのではないかと思ってきただけなんです。」
「そうだったんですね。それはうちの職員が大変失礼をいたしました。そういうことでしたら先ほどの登録は取り消しさせていただいて・・・。」
「あ、冒険者にはなりたかったので登録はそのままで大丈夫です。」
「冒険者になりたかった、だと?」
「ダンジョン商店を経営する身としては冒険者の皆さんについて知るのもまた大切なことですから。これを機に基礎からしっかり学ばせていただければと思います。」
「盗賊殺し、ダンジョン単独制覇の称号を持つ人間の発言とは思えんな。」
「あれは成り行きといいますか、別に私一人の功績ではありません。私はただの商人で、先ほど冒険者になったばかりの新人ですよ。」
「ティナから話を聞いた時は耳を疑ったが・・・、どうやら嘘は言っていないようだ。」
先ほどよりも鋭い視線で俺を見てくるジンギルド長。ガンドさんと知り合っていなかったらこの視線だけでビビッて漏らしていたかもしれない。
でもさ、人を二・三人殺したってこういう目にはならないんじゃないかな。
目線だけで人殺せそうだけど、こういう人程根は優しいってきくし。
現段階では判別つかんな。
「ティナギルド長をご存じなのですか?」
「昔一緒に旅をしたことがある。あの出来損ないの下で煮え湯を飲まされていたのは知っていたが、まさかあいつをギルド長に押し上げたのはお前か?」
「まさか、たまたま前ギルド長が心の病に倒れられて療養されたので順当に上がられただけですよ。」
「たまたま、それは何とも都合のいい話だ。その病とやらになったのもお前がダンジョンを一人で踏破した時と聞いているが?」
「ダンジョンに迷い込まれそれはそれはひどい目に合ったんでしょう。ですが命あっての物種と言いますから、帰れただけよかったのではありませんか。」
お前が犯人だろ?と言わんばかりの目線を投げかけてくるが本当に俺は何もやっていない。
ちょいと悲しい事故があったそれだけの話だ。
「まぁまぁいいじゃありませんか、ティナさんがギルド長になってこちらも仕事がしやすくなりましたから。それよりも、イナバ様の噂はここ王都シュメリアにも届いていますよ。」
「それはいい噂なのでしょうか。」
「もちろんですよ!単独でのダンジョン制覇、集団暴走の鎮圧、盗賊団の壊滅と実力は折り紙付き。さらにあの剛腕のガンドが商店の一員として最近加わったらしいじゃありませんか。片腕を失ってもなお、あの方の実力は衰えませんでしたからね。そんな方がイナバ様を慕っているとなれば必然的にイナバ様の株も上がるというものです。」
「それは買い被りじゃないでしょうか。」
「それに加えてティナギルド長からも絶大な信頼を得ておられる。私はあまり親しい間柄ではありませんが、あの方があそこまで人を信頼されるとは正直意外です。」
「アイツは自分以外の人間をあまり信じないからな。ついこの間挨拶に来た時は別人だと思ったぐらいだ。」
「あれにはビックリしましたねぇ。」
へぇ、なんだか意外だなぁ。
確かに初めて会った時はあまり信用してもらえていなかったけど、一緒に仕事をするようになってからはそう感じることは無かった。
そういう意味でも信頼されていたと判断していいのかもしれない。
本人からこんな話は聞けないし、ちょっとうれしいな。
「ともかく、あいつが信頼しているぐらいの男だ問題は無いだろう。どんな理由で冒険者になりたいのかは知らないが好きにやってくれ。何か手伝いが必要ならこいつに言えばどうにかしてくれるだろう。」
「えぇ!ジンさんがやってくださいよ!」
「俺は忙しいんだよ。」
「嘘です!今日していたのなんていつもの鍛錬だけじゃないですか。」
「じゃあ言い直す、鍛錬で忙しいんだ後は任せた。」
それだけ言うとジンギルド長は席を立ちマッチさんを置いて部屋を出て行ってしまった。
「もー!また面倒な事ばかり押し付けて!」
「すみません、面倒なことお願いしてしまって。」
「違います!決して悪口とかそういうのじゃないんで、ここは穏便に!穏便にお願いします!」
「別に怒っていないんですけど、その穏便にっていったい何ですか?さっきも言われて気になってたんです。」
そんなに暴れるように見えるんだろうか。
向こうではそんな反応受けたことないし・・・。
いや、別にいいんだけどね?
俺への敵意とか悪意があって言ってるんじゃないのはわかっているから。
でも、悪意は無くても怯えは感じられる。
「怒りません?」
「これから色々として頂く方に怒る理由がありませんよ。」
「あの・・・ですね。実はイナバ様が『爆炎少女』と親密な関係にあって、怒らせると本人が燃やしに来ると噂になってまして・・・。」
「はい?」
なんだそれ。
俺は昨日王都に来たばっかりで、そんな噂になるようなことしていないはずなんだけど。
親密な関係って・・・というか誰ですかその子は。
「あの、噂に全く身に覚えが無いのですが。」
「もちろん噂であることはわかっています!でも、実際噂話をしていた本人が燃やされた事もありましてですね。」
「というかどちら様ですか、その『爆炎少女』というのは。」
「メルクリア家のご息女です。」
「はぁ?」
思わずそんな声が出てしまった。
メルクリア家のご息女と言えば、メルクリア女史に他ならない。
いや、妹がいるから絶対ではないんだけどそんな称号もとい二つ名を付けられるのは、ご本人しかいないわけで・・・。
俺が、メルクリア女史と、親密な関係?
マジで何言ってんの?
「すみません怒らないでください燃やさないでください!これは噂であって、私は信じてませんから!だからどうかここは穏便に、穏便にお願いします!」
「ですから、私は別に怒る理由は無いと・・・。」
「すみません!何言ってんのと仰られたものですから。」
どうやら心の声が駄々洩れで誤解されてしまったようだ。
ドウドウ、落ち着け俺。
あくまでもこれは噂であって現実にそうなったわけじゃないんだ。
俺がメルクリア女史と親密な関係?
そんなバカな。
でも、噂だとして何で燃やされた人がいるんだろうか。
「先程、噂していた本人が燃やされたと言っていましたが、それも噂ですか?」
「いえ、本当に燃やされています。」
「メルクリアさんにですか?」
「はい・・・。」
おぅ、それはマジだったのか。
でもまぁ、あの人ならやりかねない。
部下と親密な関係って噂になったらそりゃ火消しに走る必要がある。
あ、今回は消さずに燃やしたのか。
ともかくあの人の立場上致し方ない処置だったんだろう。
これに関しては俺から何か言ったりしない方がよさそうだな。
「まず言えるのはその噂は間違いです。ですので、私が怒ったからといってあの方が飛んでくることはありません。」
「本当ですか?」
「えぇ、あの方とは部下と上司というだけの関係です。妻とメルクリアさんが親しいので私とも交流はありますが、そこから何故そんな噂になったのか見当がつきません。あの人の立場上あらぬ噂を立てられるのを嫌い実力行使に出たのではないでしょうか。怒らせると怖いのは間違いありませんので。それにしても『爆炎少女』ですか・・・。」
「冒険者御用達のスマート商店連合重役にして火の精霊を使役する上級魔術師兼精霊師、にもかかわらずその幼い見た目に騙されちょっかいを出して燃やされた冒険者は数知れず。そこからついた通り名がそれ、というわけです。」
「ご本人はこの通り名について何と?」
「断じて認められずまた使用した者には容赦はしないと公式で発表しておられます。」
「それはそれは・・・。」
触らぬ神に祟りなし。
俺の通り名も中々だけど、メルクリア女史の通り名には流石に負けるわ。
だめだ、思い出すだけで笑えてくる。
爆炎少女って。
どんな厨二ネームだよ。
「でも、イナバ様が否定してくださったお陰で安心できました。それで、ギルドには資料をとりに来たとか?」
「そうでしたそっちが本題でしたね。冒険者としてやっていく上での助言や補助についてどのようにされているのかなと思いまして。」
「それでしたら新人担当のオーリンさんに聞くのががいいですよ。ほら、ここにつれてきてくれた人です。」
あぁ、あの人か。
噂を信じてびびっておられたようだけど、今後のためにその辺の誤解も解いておいた方がいいだろう。
「では取り次ぎ願えますか?」
「かしこまりました、ではそのままお待ち下さい。」
そういうとジンさん同様マッチさんも部屋を出ていった。
一人になり息を吐くと体の力が抜けて行くのがわかった。
何だかんだで緊張していたんだな。
でもまぁ取り次ぎは完了したし後は話を聞いて次に移るとしよう。
まだまだやることはたくさんある。
俺は腕をぐるぐると回して肩をほぐしながら、オーリンさんが戻ってくるのを待った。
横を見ると他の職員が何事かと様子を伺っているも、手助けする感じはない。
あのー、そろそろ正気に戻っていただきたいんですけどダメですかね。
「ちょっと、後ろつかえてるよどうしたの?」
流石にこのままではまずいと察した別の職員がフォローに来てくれたようだ。
「私の適性を見てからこの調子でして。」
「えー、この子がこんな風になるの珍しいんだけどなぁ・・・。えっと、適性は・・・精霊師!?マジで言ってんの?ちょっと検査機器御壊れてるんじゃないの!?」
と、フォローに入った職員までもがテンパリ始めた。
そりゃ仕方ないんだろうけど、仮にも対面の仕事なんだからそのしゃべり方はどうかと思うよ?
マジでいってんの!?
とか久々に聞いたよ。
その人が騒ぐものだから何事かと後ろに控えていた職員さんまでやって来ての大騒動である。
「イナバ様、ちょっとこちらにお願いできますでしょうか。」
そしてそれだけたくさんの職員が来たという事は、その中に俺の事を知っている職員がいる可能性も上がるわけでして・・・。
どうやらそれに該当する人が慌てて俺に声をかけて来た。
「何故です?」
「詳しくお話をお伺いさせていただきます。私、現在この受付を任されておりますオーリンと申します。ささ、温かいお茶などご準備いたしますのでどうかここは穏便に・・・。」
「・・・わかりました。」
別に暴れるつもりはないので穏便にもないのだが、気づけば後ろには人だかりができており、強面の皆さんまでもが何事かとこちらを見ていた。
俺はただ話が聞ければよかったんだけど・・・。
ま、いいか。
偉い人の方が話しやすそうだし。
ギルドの奥へと誘導されながら後ろを振り返ると、職員さん達が後ろに集まって来ていた冒険者達を追い返している所だった。
ちなみに最初に対応してフリーズしてしまった職員はというと、いまだカウンターで静止中である。
そこまでフリーズする内容だっただろうか。
精霊師って、俺が思っている以上にレアな存在なのかもしれないな。
とか何とか考えているうちに案内されたのは8人ぐらいで会議するような小さな会議室。
なぜ8人かというと、四人ずつ向かい合えるように机と椅子が置いてあったから。
ちょっとお話しするにしては広い部屋だなぁ。
「すぐにお茶をご準備いたしますので、もう少々お待ちください。」
「え、いえおかまいなく。私はただ初心者冒険者についてお伺いしたくて・・・!」
「すぐ、すぐに別の者が参りますのでどうかここは穏便に、穏便にお願いいたします!」
それだけ言うとオーリンさんだっけ?その人は慌てて部屋を出て行ってしまった。
あのー、もしもし?
何でそんなに怯えていらっしゃるの?
そんなに怖く見えます?
何処をどう見ても、さっき俺を遠巻きに見ていた強面の皆さんの方が雰囲気も外見も怖いと思うんですけど。
そのまま待つこと少し。
「失礼します、お茶をお持ちしました。」
と、また別の人が部屋に入って来た。
先ほどの職員さんは昔の俺のような疲れた中間職って感じだったが、この人はちがう。
なんていうか仕事できますっていうオーラが半端ない。
でも、全然それを鼻にかけるような感じもしないんだよね。
時々いるんですよ、こういうすごい人。
俺よりかは若い感じだな、25、6ぐらい。
耳は普通だし背が低い感じでもない、ということはこの人もヒューリンか。
手荷物お盆にはカップが三つ。
もちろん俺が三つ飲むわけがないので、あと一人この部屋に来るという事かな?
「あ、どうぞ奥のお席におかけください。すみませんこんな狭い場所で。」
「いえ、それはいいんですけど、時間かかりますか?」
「もう来るかと思うんですけど・・・あ、来ました。」
その人の後にすぐ入ってきたのは、この日一番の怖い顔をした男性だった。
歳はガンドさん位だろうか。
あの、なんでこんな圧迫面接的な状況に追い込まれているんでしょうか。
その人はジロリと俺を睨むと無言で一番手前の椅子に腰かけた。
「もぅ、駄目ですよジンさん威嚇するようなことしちゃ。」
「そんなことしていないぞ、マッチ。」
「しましたよぉ。あ、イナバ様気にしないでくださいね、怒っているわけじゃないので。」
「あ、はい。」
「申し遅れました、私はマッチ。ここ全体のお手伝いをさせてもらっています。それで、この怖い顔の人が・・・。」
「ジンだ、一応ギルドの長をしている。」
って、まさかのギルド長登場ですか。
そりゃ怖い顔だわ。
あ、そんなこと言ったらティナさんに失礼だな。
あの人は冒険者なのに可愛い。
そして強い。
「一応って何ですか一応って!」
「仕事のほとんどはお前に任せているからな、俺は飾りみたいなものだ。」
「確かに仕事をしているのは私ですけど・・・って、イナバ様が呆れた顔でこちらを見てるじゃないですか!」
いや、あきれてないよ?
むしろ漫才みたいで面白いなーなんて思ってたりはするけど。
カップを置きながらの冷静なツッコミ。
やはりこの人、できる
「えっと、そんなにすごい方が私に何の用でしょうか・・・。」
「それはこちらのセリフだ。精霊師の素質があるやつがいると聞いてきてみれば、あのイナバ=シュウイチがうちに何の用だ?」
「私はただ初心者冒険者としての教本や、資料があれば見せていただきたくて来ただけなんです。ですが、あれよあれよという間に気づけば冒険者登録までさせられてしまって、それで・・・。」
「つまりここを監視しに来たわけではないのか?」
「監視するわけないじゃないですか!というか、監視されるようなこと何かしているんですか?」
「してませんしてません断じてしてません!ってこんなに必死になったら怪しく見えると思いますけど本当に何もしていませんから!ここは王都シュメリアの冒険者ギルドにして本部も兼ねているんです。そんなところで悪さなんてできるわけないじゃないですか!ねぇ、ジンさん。」
「そうなのか?」
「いや、そうなのかって私に聞き返されても。もういいです、聞いた相手が間違いでした。」
あ、やっぱりこれ漫才だったの?
身長差が結構あるし、デコボココンビ『マッチジン!』とかで売り出しているとか?
しらんけど。
「私がここに来た理由は先ほどお話しした通りです。仕事で王都まできまして、そこで冒険者についての資料が必要になったものですから、ここなら何かあるのではないかと思ってきただけなんです。」
「そうだったんですね。それはうちの職員が大変失礼をいたしました。そういうことでしたら先ほどの登録は取り消しさせていただいて・・・。」
「あ、冒険者にはなりたかったので登録はそのままで大丈夫です。」
「冒険者になりたかった、だと?」
「ダンジョン商店を経営する身としては冒険者の皆さんについて知るのもまた大切なことですから。これを機に基礎からしっかり学ばせていただければと思います。」
「盗賊殺し、ダンジョン単独制覇の称号を持つ人間の発言とは思えんな。」
「あれは成り行きといいますか、別に私一人の功績ではありません。私はただの商人で、先ほど冒険者になったばかりの新人ですよ。」
「ティナから話を聞いた時は耳を疑ったが・・・、どうやら嘘は言っていないようだ。」
先ほどよりも鋭い視線で俺を見てくるジンギルド長。ガンドさんと知り合っていなかったらこの視線だけでビビッて漏らしていたかもしれない。
でもさ、人を二・三人殺したってこういう目にはならないんじゃないかな。
目線だけで人殺せそうだけど、こういう人程根は優しいってきくし。
現段階では判別つかんな。
「ティナギルド長をご存じなのですか?」
「昔一緒に旅をしたことがある。あの出来損ないの下で煮え湯を飲まされていたのは知っていたが、まさかあいつをギルド長に押し上げたのはお前か?」
「まさか、たまたま前ギルド長が心の病に倒れられて療養されたので順当に上がられただけですよ。」
「たまたま、それは何とも都合のいい話だ。その病とやらになったのもお前がダンジョンを一人で踏破した時と聞いているが?」
「ダンジョンに迷い込まれそれはそれはひどい目に合ったんでしょう。ですが命あっての物種と言いますから、帰れただけよかったのではありませんか。」
お前が犯人だろ?と言わんばかりの目線を投げかけてくるが本当に俺は何もやっていない。
ちょいと悲しい事故があったそれだけの話だ。
「まぁまぁいいじゃありませんか、ティナさんがギルド長になってこちらも仕事がしやすくなりましたから。それよりも、イナバ様の噂はここ王都シュメリアにも届いていますよ。」
「それはいい噂なのでしょうか。」
「もちろんですよ!単独でのダンジョン制覇、集団暴走の鎮圧、盗賊団の壊滅と実力は折り紙付き。さらにあの剛腕のガンドが商店の一員として最近加わったらしいじゃありませんか。片腕を失ってもなお、あの方の実力は衰えませんでしたからね。そんな方がイナバ様を慕っているとなれば必然的にイナバ様の株も上がるというものです。」
「それは買い被りじゃないでしょうか。」
「それに加えてティナギルド長からも絶大な信頼を得ておられる。私はあまり親しい間柄ではありませんが、あの方があそこまで人を信頼されるとは正直意外です。」
「アイツは自分以外の人間をあまり信じないからな。ついこの間挨拶に来た時は別人だと思ったぐらいだ。」
「あれにはビックリしましたねぇ。」
へぇ、なんだか意外だなぁ。
確かに初めて会った時はあまり信用してもらえていなかったけど、一緒に仕事をするようになってからはそう感じることは無かった。
そういう意味でも信頼されていたと判断していいのかもしれない。
本人からこんな話は聞けないし、ちょっとうれしいな。
「ともかく、あいつが信頼しているぐらいの男だ問題は無いだろう。どんな理由で冒険者になりたいのかは知らないが好きにやってくれ。何か手伝いが必要ならこいつに言えばどうにかしてくれるだろう。」
「えぇ!ジンさんがやってくださいよ!」
「俺は忙しいんだよ。」
「嘘です!今日していたのなんていつもの鍛錬だけじゃないですか。」
「じゃあ言い直す、鍛錬で忙しいんだ後は任せた。」
それだけ言うとジンギルド長は席を立ちマッチさんを置いて部屋を出て行ってしまった。
「もー!また面倒な事ばかり押し付けて!」
「すみません、面倒なことお願いしてしまって。」
「違います!決して悪口とかそういうのじゃないんで、ここは穏便に!穏便にお願いします!」
「別に怒っていないんですけど、その穏便にっていったい何ですか?さっきも言われて気になってたんです。」
そんなに暴れるように見えるんだろうか。
向こうではそんな反応受けたことないし・・・。
いや、別にいいんだけどね?
俺への敵意とか悪意があって言ってるんじゃないのはわかっているから。
でも、悪意は無くても怯えは感じられる。
「怒りません?」
「これから色々として頂く方に怒る理由がありませんよ。」
「あの・・・ですね。実はイナバ様が『爆炎少女』と親密な関係にあって、怒らせると本人が燃やしに来ると噂になってまして・・・。」
「はい?」
なんだそれ。
俺は昨日王都に来たばっかりで、そんな噂になるようなことしていないはずなんだけど。
親密な関係って・・・というか誰ですかその子は。
「あの、噂に全く身に覚えが無いのですが。」
「もちろん噂であることはわかっています!でも、実際噂話をしていた本人が燃やされた事もありましてですね。」
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「はぁ?」
思わずそんな声が出てしまった。
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俺が、メルクリア女史と、親密な関係?
マジで何言ってんの?
「すみません怒らないでください燃やさないでください!これは噂であって、私は信じてませんから!だからどうかここは穏便に、穏便にお願いします!」
「ですから、私は別に怒る理由は無いと・・・。」
「すみません!何言ってんのと仰られたものですから。」
どうやら心の声が駄々洩れで誤解されてしまったようだ。
ドウドウ、落ち着け俺。
あくまでもこれは噂であって現実にそうなったわけじゃないんだ。
俺がメルクリア女史と親密な関係?
そんなバカな。
でも、噂だとして何で燃やされた人がいるんだろうか。
「先程、噂していた本人が燃やされたと言っていましたが、それも噂ですか?」
「いえ、本当に燃やされています。」
「メルクリアさんにですか?」
「はい・・・。」
おぅ、それはマジだったのか。
でもまぁ、あの人ならやりかねない。
部下と親密な関係って噂になったらそりゃ火消しに走る必要がある。
あ、今回は消さずに燃やしたのか。
ともかくあの人の立場上致し方ない処置だったんだろう。
これに関しては俺から何か言ったりしない方がよさそうだな。
「まず言えるのはその噂は間違いです。ですので、私が怒ったからといってあの方が飛んでくることはありません。」
「本当ですか?」
「えぇ、あの方とは部下と上司というだけの関係です。妻とメルクリアさんが親しいので私とも交流はありますが、そこから何故そんな噂になったのか見当がつきません。あの人の立場上あらぬ噂を立てられるのを嫌い実力行使に出たのではないでしょうか。怒らせると怖いのは間違いありませんので。それにしても『爆炎少女』ですか・・・。」
「冒険者御用達のスマート商店連合重役にして火の精霊を使役する上級魔術師兼精霊師、にもかかわらずその幼い見た目に騙されちょっかいを出して燃やされた冒険者は数知れず。そこからついた通り名がそれ、というわけです。」
「ご本人はこの通り名について何と?」
「断じて認められずまた使用した者には容赦はしないと公式で発表しておられます。」
「それはそれは・・・。」
触らぬ神に祟りなし。
俺の通り名も中々だけど、メルクリア女史の通り名には流石に負けるわ。
だめだ、思い出すだけで笑えてくる。
爆炎少女って。
どんな厨二ネームだよ。
「でも、イナバ様が否定してくださったお陰で安心できました。それで、ギルドには資料をとりに来たとか?」
「そうでしたそっちが本題でしたね。冒険者としてやっていく上での助言や補助についてどのようにされているのかなと思いまして。」
「それでしたら新人担当のオーリンさんに聞くのががいいですよ。ほら、ここにつれてきてくれた人です。」
あぁ、あの人か。
噂を信じてびびっておられたようだけど、今後のためにその辺の誤解も解いておいた方がいいだろう。
「では取り次ぎ願えますか?」
「かしこまりました、ではそのままお待ち下さい。」
そういうとジンさん同様マッチさんも部屋を出ていった。
一人になり息を吐くと体の力が抜けて行くのがわかった。
何だかんだで緊張していたんだな。
でもまぁ取り次ぎは完了したし後は話を聞いて次に移るとしよう。
まだまだやることはたくさんある。
俺は腕をぐるぐると回して肩をほぐしながら、オーリンさんが戻ってくるのを待った。
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2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
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