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第十五章
春はそこまで来ている
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状況だけ見れば、草原にそびえる巨木の下で美人と対峙している感じなんだけど・・・。
実際はそんなに映画的じゃない。
なんせ勝手に竜の試練に放り込まれて過去四度も死ぬ目にあわされているんだ。
それを、『あらごめんなさいね』的な感じで終わらせるわけにはいかない。
まずは事情を聴き、それからどうするかを尋ねる必要がある。
オッケー、ビューティなマダム。
話を聞かせてもらおうじゃないか。
「別に貴方をだまそうなんて思ってなかったのよ?加護は私が一方的に貴方にあげたんだし、試験をする気だって最初はなかったの。」
「ですが現にこうやって試練は行われているわけですよね?」
「最初はって言ったでしょ?でもあの子のあの目を見ていたら試験をしなきゃならないって思いはじめて、それで始めることにしたの。元々竜の試練はどんな内容で行われるか秘密だし、始める連絡もしないから別に貴方だけに黙っていたわけじゃないわ。それは理解してもらえるかしら。」
「シルエさんの目ですか?」
「あら、貴方気が付いてなかったの?あんなに情熱的な目で睨んでいるのに・・・頭はキレるのに案外鈍感なのね。」
いや、鈍感なのねと言われても自覚は全くないんですが・・・。
それにシルエさんはお勉強中で抜け出すことはできないんじゃなかったでしたっけ?
「申し訳ありません気が付きませんでした。」
「でもまぁ無理ないか、あの子気づかれそうになったらすぐに隠れちゃったから。」
「見ておられたんですか?」
「だってここは私の森よ?どこにいても誰が何しているかなんて手に取るようにわかるわ。例えば、貴女が昨夜何をしていたのかもね。」
俺が昨夜・・・。
いや、昨夜はそういった事をしていない。
疲れ果てて眠ってしまったはずだ。
って、おい今なんて言った?
「まさか全部覗いておられるのですか?」
「覗くだなんて人聞きの悪いこと言わないで頂戴、感じるだけで見ているわけではないわ。それに、そういった事は森中で行われるんだもの人も動物も魔物も、人間ぐらいよ?そうやって恥ずかしがって隠しているのは。」
「いやまぁそうなんですが・・・。」
「もちろん気持ちはわかるわ、私だってあの子にイチャイチャしているところを見られるのは・・・別に恥ずかしくないわね。」
「それが嫌でこの前家出されたのではなかったでしたっけ?」
「あら、そうだったかしら?」
全知全能のフォレストドラゴン様も、今は人間の冒険者とラブラブな関係を気づいておられるそうだ。
どれぐらいラブラブ興味がある方は本人に聞けば一昼夜話続けてくれるだろうから覚悟して聞いてくれたまえ。
「ともかく、あの子があんな目をするようになった以上母として私には貴方を試す必要があったの。ちょうど加護を与えたところだったし、久々に竜の試練を行うことにしたわけ。ご理解いただけたかしら。」
「事情は分かりました。わかりましたが、納得するのとは話は別です。」
「納得してないの?」
「してませんよ。何度死にかけたと思っているですか。」
「四度よ。でもその度に貴方は周りの人に救われて戻ってきた、長年この試験を見てきたけどこんなことはじめだわ。」
「ちなみにあそこで死んでいたらどうなっていたんですか?」
「もちろん死ぬわね。ここは私とあなたをつなぐ精神世界のような場所なんだだけど、精神が死ねば肉体も死ぬの。」
やっぱりそうだったのか。
夢や幻、パラレルワールドなんてのも考えたけど結論は精神世界。
そしてそこで死ねば現実の世界でも命を落としていたところだった。
危なかった。
「ちなみにこれまでどれぐらいの人が成功している試験なんですか?」
「そうね、十人中三人って所かしら。」
成功率低!
そんな鬼畜な試練に自分が望んでもいないのに参加させられて、もし死んでたらエミリアたちはどれだけ悲しんだことか。
まじで勘弁してよ。
「事情は分かりました。ですが今後何かをするときは必ず一声かけてからでお願いします、一方的に加護を与えられて一方的に試練をさせられて、もし死んでいたらどうするつもりだったんですか。」
「それはそれ、これはこれ。試練を超えられないような者に加護を受け取る資格はないわ。でも、貴方はこうやって戻ってきたそれでいいじゃない。」
「結果論ではそうですが・・・、いえもういいです。」
そもそもお互いの考え方が違いすぎるんだ。
向こうは何千年も生きるドラゴンで、こっちはただの人間。
考え方が同じ方がおかしい。
ともかく試練は無事に終了して俺は生きて戻れる、それでいいじゃないか。
っていうかそう納得させるしかないよね。
「これで試験は終了ですよね?」
「えぇ、貴方は自分で考え行動して結果を出した。私を見つけられたのは貴方で二人目よ。」
「私以外にもいるんですね。」
「それが愛しいあの人なのよ。ねぇ聞いて、あの人ったらね樹に触れた瞬間に私が化けてるって気づいたのよ。これはもう運命よね?」
「運命かどうかは存じ上げません。」
「もぅ、冷たいんだから。奥さんが二人もいる男を好きになるなんてシルエちゃんもなかなか厳しい道を歩くのね。」
はい?
さっきから爆弾発言連発されてますけど、シルエさんが俺を好きに?
ってかそんな要素今までありましたか?
力の差を徹底的に見せつけてぎゃふんと言わされた相手ですよ?
恨む事はあっても好きになることなんてないでしょ普通。
「シルエ様が私を?」
「そうよ。あの子ったら私に怒られるのを承知で勉強を抜け出して追いかけて行ったんだから。貴方が試練に挑むたびに近くに寄り添って心配そうな目で見つめていたの。あの子もあんな目をするようになったのね。」
「もしかして森で感じたあの目は・・・。」
「そう、それがあの子。恥ずかしくて隠れるなんてそこはまだ子供なのね。」
信じられない。
俺が試練に挑んでいる間にそんなことがあったなんて。
森の中で俺とシルビア様が感じた視線、あれはシルエさんのだったんだな。
でもさ、やっぱり信じられないんだけど。
どこにそんな要素があったのさ。
もしかしてシルエさんてそっちの趣味があったりするの・・・?
「仮にそうだとしても、私には妻も家族もいますからシルエさんの気持ちにこたえるわけには・・・。」
「あら、あんなに女性を囲んでおいて一人ぐらい増えても構わないでしょ?」
「いやいや、まだ子供じゃないですか。」
「私の自慢の娘に不満があるの?」
「不満とかそういうのじゃないですけど、流石に子供はちょっと。」
「見た目は子供だけど年齢はアナタよりずーーーっと上よ?」
え、そうなの?
いつもの人は見た目によらないってあれですか?
さすがドラゴン、年齢も規格外だ。
「仮に年齢が上だとしても流石に娘さんはちょっと・・・。」
「失礼ね。もう一度試練をやらせようかしら。」
「何でそうなるんですか!ともかく、娘さんにはまだ早いと思います。もちろん、好いて下さる事に嫌な気はしませんしありがたいとは思いますが。」
「まぁいきなり言われてもそうなるわよね。それに、あの子の気持ちに関しては親の私じゃなくて本人がちゃんと伝えるべきだわ、それもまた愛よね!」
「愛かどうかはなんとも・・・。」
「もぅ、あの人ならそうだよってすぐ言ってくれるのに。ダメよ、女性の求めていることにちゃんと反応してあげなくちゃ。今は好かれててもすぐに愛想つかされるんだから。」
余計なお世話だ。
ともかく事情は把握したし、試練が無事に終了したのであればそれでいい。
生きて帰れる、それで十分だ。
「ちなみに加護にはどんな効果が?確か過酷な環境でも耐えられるとか何とか子爵は仰っていましたが。」
「毒や痺れ、呪い、熱や寒さなんかに強くなるわね。多少の衝撃にも強くなるし魅了なんかの魔法にも耐えやすくなるわ、どうすごいでしょ?」
「確かにすごいですがあまりご縁がありませんね。」
「どうして?」
「冒険者であれば魅力的ですが、私はただの商人です。そういった場所には行きません。」
「じゃあどうして精霊の加護を三つも受けてるのよ。」
「色々あったんです。それに関してもよくご存じなのでありませんか?」
「そういえばそうだったわね。」
そういえばって、さっき手に取るようにわかるって自分で言ったじゃないか。
まったくそれでも全知全能のフォレストドラゴンなんだろうか。
あの娘ありてこの母あり。
一癖も二癖もある親子だなぁ。
「さて、そろそろ家に帰してもらえますか?今日は色々と予定が立て込んでいるんです。」
「そうね、話は済んだし返してあげる。シルエの件よく考えるのよ。」
「前向きに検討しつつ善処いたします。」
「こんな男を選んだのはあの子だし、私は何も言わないけど・・・。泣かせたら承知しないんだから。」
いや、承知しないんだからって言われても。
と、文句を言おうとした次の瞬間には世界が大きく歪み、あまりの変化に思わず目を閉じてしまう。
そして次に目を開けた時には、井戸の縁に両手を置いた状態で元の場所へと戻っていた。
「帰ってこれたか。」
見慣れた風景に大きく息を吐き安堵する。
もうあの空間に行く事はないだろう。
「おい、シュウイチまだ顔を洗っているのか?」
「あ、シルビアおはようございます。」
「エミリアに起こされて降りてきたんだが、なんだ随分と達成感に満ちた顔をしているではないか。」
「そうですか?」
「あぁ、スッキリとした感じだ。何かいいことがあったのか?」
「後は昨日得たお金を村にもっていくだけですからそれを思い出していたんです。」
そういう事にしておこう。
本当は皆に相談して対処したらよかったんだろうけど、今思えばそれだとリェースさんを見つけることはできなかったと思う。
自分でどうにかしなきゃと追い詰められたことで最良の結果を導き出せた。
他力本願100%男だけどたまには自力で何かするのもいい物だ。
「最初はどうなる事かと思ったが、これで父も安心するだろう。」
「私はもう終わりましたからシルビア使ってください。」
「そうか、すまんな。」
後片付けをしてシルビア様と交代しようとした時、すれ違いざまに右手を掴まれた。
何事かと後ろを振り返ると真剣な眼差しでシルビア様が俺を見つめていた。
なんだ?
「何があったかは聞かないでおく。だが、私達の力が必要なのであれば何の遠慮もせず頼ってくれ、私達の事を思うのならばこそ余計にだ。」
「・・・ありがとうございます。」
「それと、剃り残しだ短剣を貸してくれ。」
「あ!すみません。」
慌てて腰にぶら下げていた短剣を差し出すと少し乱暴に顎を押し上げられ、顎の下に短剣を当てられた。
「動くなよ。」
行くりと刃が滑り残された髭をそぎ落としていく。
自分でするときは何にも思わないけど、他人に剃られるのって結構緊張するな。
ほんの少し力を込めて真一文字に刃を動かせばいい感じの部分まで切れるだろう。
本当に信頼している人以外に貸さない様にしよう、なんて勝手に決めた。
「これでよしっと。今更いうのもあれだが私たち以外に気易く刃物を渡したりするなよ?」
「それは今私も思いました、気をつけます。」
「それと、他の女にも肩を貸すな。」
「あ、覚えていたんですか?」
「酔っぱらっていたとはいえ記憶が飛ぶほどではない、少々本音が出過ぎただけだ。」
「そんなシルビアも素敵でしたよ。」
「私も出先ではあまり飲まないようにしているつもりだが・・・、お前と一緒だとつい安心してしまってな。」
俺なんかでも安心してくれるのか、嬉しいなぁ。
「光栄です。」
「まぁ、そのなんだ、次回は私が膝の上に乗っても構わんか?」
「機会がありましたら、でも座り心地は色々と良くないですよ。」
「座られ心地も良くないぞ?エミリアと違って私の尻は固いからな。」
「そんなことありません、どこを触っても柔らかくて気持ちが良いです。」
朝から何言ってんだって?
本当なんだから仕方ないじゃないか。
無事に帰ってこれて少々気が緩んでるだけですよ。
「むぅ、さすがに面と向かって言われると恥ずかしい物だな。」
「あはは、でも本当ですから。」
「わかったわかった何度も言うな。中でエミリア達が待っているぞ、私もすぐ戻る。」
「わかりました。」
両肩を掴まれてくるりと半回転させられ、トンと背中を押される。
恥ずかしがっているシルビア様もなかなか可愛いものです。
朝からいい物、見させていただきました。
「戻りました。」
「遅かったですね、なにかございましたか?」
「いえ、水が冷たくて躊躇していたら時間かかってしまって。」
「そうですか。」
ユーリは何か言いたそうだがそれ以上は何も言わなかった。
おそらく何かを感じ取って入るんだろうけど、彼女なりの配慮なのだろう。
ありがとう。
「香茶が冷めてしまいましたね、新しいの淹れますか?」
「そんなもったいない、冷めても美味しいですよ。」
「ありがとうございます。」
「そうだ、シュウイチさんさっきリュカさんから念話が来たんですけど。」
「どうしました?」
「イラーナさんが無事男の子を出産されたそうです。」
「本当ですか!それはよかった。」
「母子ともに健康で落ち着いたので連絡があったそうです。」
ミド博士が慌てて家に帰ったのが三日前。
そうか、あれから三日しかたってないのか。
色々起きすぎてもっと前かと思っていた。
何はともあれよかったよかった。
「落ち着いたらお祝いをもってみんなで行きましょう。」
「是非!」
「人間の赤子はまだ見たことがありません、今後の参考の為に拝見したいです。」
「セレン様の予定日も夏前ですからもう少しですね。」
そうかもうすぐか。
こっちも楽しみだなぁ。
って、あれ?
この会話の流れってもしかして・・・。
分かる。
俺にはわかるぞ。
自分で考え行動し竜の加護を受け取った俺にはわかる。
これはマズイやつだ。
あ、いや、中身は決して悪い話じゃないんですよ?
でもその、皆からかかかるプレッシャーがですね・・・。
「そうなると次は奥様方、その後私たちというわけですね。」
「生まれるまでには時間がかかりますから、これから考えると来年といった所でしょうか。」
「来年ですか。御主人様の新たなノルマを考えるとあまりゆっくりもしていられませんね。」
「まずは今の目標を達成してからですけど・・・、でもユーリの言う通りです。三人産むことを考えると残された時間はあまり多くありません。」
「リア奥様が三人、シア奥様も確か三人でしたね。ニケ様は何人欲しいですか?」
「私は二人・・・、でも皆さんが三人なら三人が良いです。」
「となると合計9人、お世話は大変そうですが腕が鳴ります。」
あのですね。
朝から家族計画的な事を話すのはやめませんか?
ほら、今日は忙しくなりますしその打ち合わせをですね・・・。
「何の話だ?」
「子供が何人欲しいかという話をしておりました。今の所奥様方とニケ様合わせまして9人のお子様を予定しております。」
「9人か!賑やかになるな。」
「家を大きくしないといけませんね。」
「子供部屋だけでも今の倍以上が必要になる、離れを作る必要があるだろう。」
「幸い土地は豊富にありますから裏に作れば問題ないかと。」
シルビア様も交じって朝から大盛り上がりだ。
こうなったら手が付けられないんですよね。
朝食を摂れないのはあれだけど今のうちに店に避難して・・・。
「シュウイチさんどこに行くんですか?」
「え?」
「三人となると今以上に頑張ってもらわねばならん。朝食は一日の原動力だ、しっかり食べてもらうぞ。」
「いや、まぁ、そうなんですけど・・・。」
「9人か・・・できればあと一人は欲しいな。ユーリも一人どうだ?」
「ダンジョン妖精が人間と子を生した記録はありませんが、幸い私は人造生命体ですし子供を作れるように造られております。そうなると私も三人作る必要がありますね。」
「そうですよ。ユーリ様だけ一人ではさみしいです。」
ちょっとまって?
そうなると12人ですよ?
ダースですよ?
12人だからダースです。
って今はそれどころじゃない。
「12人か、益々賑やかになるな。」
「そのためにもいち早く奥様方には妊娠していただき私達に順番を回していただく必要が御座います。よろしいですね。」
「出来る限りの努力はしよう。」
「私も、頑張ります。」
「では体力づくりの一環としてしっかりとした朝食をご提案致します。お肉、お肉を食べるべきです。」
「では追加で焼いてきますね。皆さんはどうぞ先に食べてください。」
あのー、追加とかは別にそんな・・・。
気を遣わなくてもいいんですよ?
「そういうことだ、しっかり食べろよシュウイチ。」
「頑張りましょうねシュウイチさん。」
「・・・頑張ります。」
その頑張りは仕事なのかそれとも子作りなのか。
もちろん、後者ですよね。
世の中ハーレムハーレムと騒いでいる昨今。
ハーレムも大変なんだなと身をもって知った冬の終わり。
春はもうすぐそこまで来ていた。
実際はそんなに映画的じゃない。
なんせ勝手に竜の試練に放り込まれて過去四度も死ぬ目にあわされているんだ。
それを、『あらごめんなさいね』的な感じで終わらせるわけにはいかない。
まずは事情を聴き、それからどうするかを尋ねる必要がある。
オッケー、ビューティなマダム。
話を聞かせてもらおうじゃないか。
「別に貴方をだまそうなんて思ってなかったのよ?加護は私が一方的に貴方にあげたんだし、試験をする気だって最初はなかったの。」
「ですが現にこうやって試練は行われているわけですよね?」
「最初はって言ったでしょ?でもあの子のあの目を見ていたら試験をしなきゃならないって思いはじめて、それで始めることにしたの。元々竜の試練はどんな内容で行われるか秘密だし、始める連絡もしないから別に貴方だけに黙っていたわけじゃないわ。それは理解してもらえるかしら。」
「シルエさんの目ですか?」
「あら、貴方気が付いてなかったの?あんなに情熱的な目で睨んでいるのに・・・頭はキレるのに案外鈍感なのね。」
いや、鈍感なのねと言われても自覚は全くないんですが・・・。
それにシルエさんはお勉強中で抜け出すことはできないんじゃなかったでしたっけ?
「申し訳ありません気が付きませんでした。」
「でもまぁ無理ないか、あの子気づかれそうになったらすぐに隠れちゃったから。」
「見ておられたんですか?」
「だってここは私の森よ?どこにいても誰が何しているかなんて手に取るようにわかるわ。例えば、貴女が昨夜何をしていたのかもね。」
俺が昨夜・・・。
いや、昨夜はそういった事をしていない。
疲れ果てて眠ってしまったはずだ。
って、おい今なんて言った?
「まさか全部覗いておられるのですか?」
「覗くだなんて人聞きの悪いこと言わないで頂戴、感じるだけで見ているわけではないわ。それに、そういった事は森中で行われるんだもの人も動物も魔物も、人間ぐらいよ?そうやって恥ずかしがって隠しているのは。」
「いやまぁそうなんですが・・・。」
「もちろん気持ちはわかるわ、私だってあの子にイチャイチャしているところを見られるのは・・・別に恥ずかしくないわね。」
「それが嫌でこの前家出されたのではなかったでしたっけ?」
「あら、そうだったかしら?」
全知全能のフォレストドラゴン様も、今は人間の冒険者とラブラブな関係を気づいておられるそうだ。
どれぐらいラブラブ興味がある方は本人に聞けば一昼夜話続けてくれるだろうから覚悟して聞いてくれたまえ。
「ともかく、あの子があんな目をするようになった以上母として私には貴方を試す必要があったの。ちょうど加護を与えたところだったし、久々に竜の試練を行うことにしたわけ。ご理解いただけたかしら。」
「事情は分かりました。わかりましたが、納得するのとは話は別です。」
「納得してないの?」
「してませんよ。何度死にかけたと思っているですか。」
「四度よ。でもその度に貴方は周りの人に救われて戻ってきた、長年この試験を見てきたけどこんなことはじめだわ。」
「ちなみにあそこで死んでいたらどうなっていたんですか?」
「もちろん死ぬわね。ここは私とあなたをつなぐ精神世界のような場所なんだだけど、精神が死ねば肉体も死ぬの。」
やっぱりそうだったのか。
夢や幻、パラレルワールドなんてのも考えたけど結論は精神世界。
そしてそこで死ねば現実の世界でも命を落としていたところだった。
危なかった。
「ちなみにこれまでどれぐらいの人が成功している試験なんですか?」
「そうね、十人中三人って所かしら。」
成功率低!
そんな鬼畜な試練に自分が望んでもいないのに参加させられて、もし死んでたらエミリアたちはどれだけ悲しんだことか。
まじで勘弁してよ。
「事情は分かりました。ですが今後何かをするときは必ず一声かけてからでお願いします、一方的に加護を与えられて一方的に試練をさせられて、もし死んでいたらどうするつもりだったんですか。」
「それはそれ、これはこれ。試練を超えられないような者に加護を受け取る資格はないわ。でも、貴方はこうやって戻ってきたそれでいいじゃない。」
「結果論ではそうですが・・・、いえもういいです。」
そもそもお互いの考え方が違いすぎるんだ。
向こうは何千年も生きるドラゴンで、こっちはただの人間。
考え方が同じ方がおかしい。
ともかく試練は無事に終了して俺は生きて戻れる、それでいいじゃないか。
っていうかそう納得させるしかないよね。
「これで試験は終了ですよね?」
「えぇ、貴方は自分で考え行動して結果を出した。私を見つけられたのは貴方で二人目よ。」
「私以外にもいるんですね。」
「それが愛しいあの人なのよ。ねぇ聞いて、あの人ったらね樹に触れた瞬間に私が化けてるって気づいたのよ。これはもう運命よね?」
「運命かどうかは存じ上げません。」
「もぅ、冷たいんだから。奥さんが二人もいる男を好きになるなんてシルエちゃんもなかなか厳しい道を歩くのね。」
はい?
さっきから爆弾発言連発されてますけど、シルエさんが俺を好きに?
ってかそんな要素今までありましたか?
力の差を徹底的に見せつけてぎゃふんと言わされた相手ですよ?
恨む事はあっても好きになることなんてないでしょ普通。
「シルエ様が私を?」
「そうよ。あの子ったら私に怒られるのを承知で勉強を抜け出して追いかけて行ったんだから。貴方が試練に挑むたびに近くに寄り添って心配そうな目で見つめていたの。あの子もあんな目をするようになったのね。」
「もしかして森で感じたあの目は・・・。」
「そう、それがあの子。恥ずかしくて隠れるなんてそこはまだ子供なのね。」
信じられない。
俺が試練に挑んでいる間にそんなことがあったなんて。
森の中で俺とシルビア様が感じた視線、あれはシルエさんのだったんだな。
でもさ、やっぱり信じられないんだけど。
どこにそんな要素があったのさ。
もしかしてシルエさんてそっちの趣味があったりするの・・・?
「仮にそうだとしても、私には妻も家族もいますからシルエさんの気持ちにこたえるわけには・・・。」
「あら、あんなに女性を囲んでおいて一人ぐらい増えても構わないでしょ?」
「いやいや、まだ子供じゃないですか。」
「私の自慢の娘に不満があるの?」
「不満とかそういうのじゃないですけど、流石に子供はちょっと。」
「見た目は子供だけど年齢はアナタよりずーーーっと上よ?」
え、そうなの?
いつもの人は見た目によらないってあれですか?
さすがドラゴン、年齢も規格外だ。
「仮に年齢が上だとしても流石に娘さんはちょっと・・・。」
「失礼ね。もう一度試練をやらせようかしら。」
「何でそうなるんですか!ともかく、娘さんにはまだ早いと思います。もちろん、好いて下さる事に嫌な気はしませんしありがたいとは思いますが。」
「まぁいきなり言われてもそうなるわよね。それに、あの子の気持ちに関しては親の私じゃなくて本人がちゃんと伝えるべきだわ、それもまた愛よね!」
「愛かどうかはなんとも・・・。」
「もぅ、あの人ならそうだよってすぐ言ってくれるのに。ダメよ、女性の求めていることにちゃんと反応してあげなくちゃ。今は好かれててもすぐに愛想つかされるんだから。」
余計なお世話だ。
ともかく事情は把握したし、試練が無事に終了したのであればそれでいい。
生きて帰れる、それで十分だ。
「ちなみに加護にはどんな効果が?確か過酷な環境でも耐えられるとか何とか子爵は仰っていましたが。」
「毒や痺れ、呪い、熱や寒さなんかに強くなるわね。多少の衝撃にも強くなるし魅了なんかの魔法にも耐えやすくなるわ、どうすごいでしょ?」
「確かにすごいですがあまりご縁がありませんね。」
「どうして?」
「冒険者であれば魅力的ですが、私はただの商人です。そういった場所には行きません。」
「じゃあどうして精霊の加護を三つも受けてるのよ。」
「色々あったんです。それに関してもよくご存じなのでありませんか?」
「そういえばそうだったわね。」
そういえばって、さっき手に取るようにわかるって自分で言ったじゃないか。
まったくそれでも全知全能のフォレストドラゴンなんだろうか。
あの娘ありてこの母あり。
一癖も二癖もある親子だなぁ。
「さて、そろそろ家に帰してもらえますか?今日は色々と予定が立て込んでいるんです。」
「そうね、話は済んだし返してあげる。シルエの件よく考えるのよ。」
「前向きに検討しつつ善処いたします。」
「こんな男を選んだのはあの子だし、私は何も言わないけど・・・。泣かせたら承知しないんだから。」
いや、承知しないんだからって言われても。
と、文句を言おうとした次の瞬間には世界が大きく歪み、あまりの変化に思わず目を閉じてしまう。
そして次に目を開けた時には、井戸の縁に両手を置いた状態で元の場所へと戻っていた。
「帰ってこれたか。」
見慣れた風景に大きく息を吐き安堵する。
もうあの空間に行く事はないだろう。
「おい、シュウイチまだ顔を洗っているのか?」
「あ、シルビアおはようございます。」
「エミリアに起こされて降りてきたんだが、なんだ随分と達成感に満ちた顔をしているではないか。」
「そうですか?」
「あぁ、スッキリとした感じだ。何かいいことがあったのか?」
「後は昨日得たお金を村にもっていくだけですからそれを思い出していたんです。」
そういう事にしておこう。
本当は皆に相談して対処したらよかったんだろうけど、今思えばそれだとリェースさんを見つけることはできなかったと思う。
自分でどうにかしなきゃと追い詰められたことで最良の結果を導き出せた。
他力本願100%男だけどたまには自力で何かするのもいい物だ。
「最初はどうなる事かと思ったが、これで父も安心するだろう。」
「私はもう終わりましたからシルビア使ってください。」
「そうか、すまんな。」
後片付けをしてシルビア様と交代しようとした時、すれ違いざまに右手を掴まれた。
何事かと後ろを振り返ると真剣な眼差しでシルビア様が俺を見つめていた。
なんだ?
「何があったかは聞かないでおく。だが、私達の力が必要なのであれば何の遠慮もせず頼ってくれ、私達の事を思うのならばこそ余計にだ。」
「・・・ありがとうございます。」
「それと、剃り残しだ短剣を貸してくれ。」
「あ!すみません。」
慌てて腰にぶら下げていた短剣を差し出すと少し乱暴に顎を押し上げられ、顎の下に短剣を当てられた。
「動くなよ。」
行くりと刃が滑り残された髭をそぎ落としていく。
自分でするときは何にも思わないけど、他人に剃られるのって結構緊張するな。
ほんの少し力を込めて真一文字に刃を動かせばいい感じの部分まで切れるだろう。
本当に信頼している人以外に貸さない様にしよう、なんて勝手に決めた。
「これでよしっと。今更いうのもあれだが私たち以外に気易く刃物を渡したりするなよ?」
「それは今私も思いました、気をつけます。」
「それと、他の女にも肩を貸すな。」
「あ、覚えていたんですか?」
「酔っぱらっていたとはいえ記憶が飛ぶほどではない、少々本音が出過ぎただけだ。」
「そんなシルビアも素敵でしたよ。」
「私も出先ではあまり飲まないようにしているつもりだが・・・、お前と一緒だとつい安心してしまってな。」
俺なんかでも安心してくれるのか、嬉しいなぁ。
「光栄です。」
「まぁ、そのなんだ、次回は私が膝の上に乗っても構わんか?」
「機会がありましたら、でも座り心地は色々と良くないですよ。」
「座られ心地も良くないぞ?エミリアと違って私の尻は固いからな。」
「そんなことありません、どこを触っても柔らかくて気持ちが良いです。」
朝から何言ってんだって?
本当なんだから仕方ないじゃないか。
無事に帰ってこれて少々気が緩んでるだけですよ。
「むぅ、さすがに面と向かって言われると恥ずかしい物だな。」
「あはは、でも本当ですから。」
「わかったわかった何度も言うな。中でエミリア達が待っているぞ、私もすぐ戻る。」
「わかりました。」
両肩を掴まれてくるりと半回転させられ、トンと背中を押される。
恥ずかしがっているシルビア様もなかなか可愛いものです。
朝からいい物、見させていただきました。
「戻りました。」
「遅かったですね、なにかございましたか?」
「いえ、水が冷たくて躊躇していたら時間かかってしまって。」
「そうですか。」
ユーリは何か言いたそうだがそれ以上は何も言わなかった。
おそらく何かを感じ取って入るんだろうけど、彼女なりの配慮なのだろう。
ありがとう。
「香茶が冷めてしまいましたね、新しいの淹れますか?」
「そんなもったいない、冷めても美味しいですよ。」
「ありがとうございます。」
「そうだ、シュウイチさんさっきリュカさんから念話が来たんですけど。」
「どうしました?」
「イラーナさんが無事男の子を出産されたそうです。」
「本当ですか!それはよかった。」
「母子ともに健康で落ち着いたので連絡があったそうです。」
ミド博士が慌てて家に帰ったのが三日前。
そうか、あれから三日しかたってないのか。
色々起きすぎてもっと前かと思っていた。
何はともあれよかったよかった。
「落ち着いたらお祝いをもってみんなで行きましょう。」
「是非!」
「人間の赤子はまだ見たことがありません、今後の参考の為に拝見したいです。」
「セレン様の予定日も夏前ですからもう少しですね。」
そうかもうすぐか。
こっちも楽しみだなぁ。
って、あれ?
この会話の流れってもしかして・・・。
分かる。
俺にはわかるぞ。
自分で考え行動し竜の加護を受け取った俺にはわかる。
これはマズイやつだ。
あ、いや、中身は決して悪い話じゃないんですよ?
でもその、皆からかかかるプレッシャーがですね・・・。
「そうなると次は奥様方、その後私たちというわけですね。」
「生まれるまでには時間がかかりますから、これから考えると来年といった所でしょうか。」
「来年ですか。御主人様の新たなノルマを考えるとあまりゆっくりもしていられませんね。」
「まずは今の目標を達成してからですけど・・・、でもユーリの言う通りです。三人産むことを考えると残された時間はあまり多くありません。」
「リア奥様が三人、シア奥様も確か三人でしたね。ニケ様は何人欲しいですか?」
「私は二人・・・、でも皆さんが三人なら三人が良いです。」
「となると合計9人、お世話は大変そうですが腕が鳴ります。」
あのですね。
朝から家族計画的な事を話すのはやめませんか?
ほら、今日は忙しくなりますしその打ち合わせをですね・・・。
「何の話だ?」
「子供が何人欲しいかという話をしておりました。今の所奥様方とニケ様合わせまして9人のお子様を予定しております。」
「9人か!賑やかになるな。」
「家を大きくしないといけませんね。」
「子供部屋だけでも今の倍以上が必要になる、離れを作る必要があるだろう。」
「幸い土地は豊富にありますから裏に作れば問題ないかと。」
シルビア様も交じって朝から大盛り上がりだ。
こうなったら手が付けられないんですよね。
朝食を摂れないのはあれだけど今のうちに店に避難して・・・。
「シュウイチさんどこに行くんですか?」
「え?」
「三人となると今以上に頑張ってもらわねばならん。朝食は一日の原動力だ、しっかり食べてもらうぞ。」
「いや、まぁ、そうなんですけど・・・。」
「9人か・・・できればあと一人は欲しいな。ユーリも一人どうだ?」
「ダンジョン妖精が人間と子を生した記録はありませんが、幸い私は人造生命体ですし子供を作れるように造られております。そうなると私も三人作る必要がありますね。」
「そうですよ。ユーリ様だけ一人ではさみしいです。」
ちょっとまって?
そうなると12人ですよ?
ダースですよ?
12人だからダースです。
って今はそれどころじゃない。
「12人か、益々賑やかになるな。」
「そのためにもいち早く奥様方には妊娠していただき私達に順番を回していただく必要が御座います。よろしいですね。」
「出来る限りの努力はしよう。」
「私も、頑張ります。」
「では体力づくりの一環としてしっかりとした朝食をご提案致します。お肉、お肉を食べるべきです。」
「では追加で焼いてきますね。皆さんはどうぞ先に食べてください。」
あのー、追加とかは別にそんな・・・。
気を遣わなくてもいいんですよ?
「そういうことだ、しっかり食べろよシュウイチ。」
「頑張りましょうねシュウイチさん。」
「・・・頑張ります。」
その頑張りは仕事なのかそれとも子作りなのか。
もちろん、後者ですよね。
世の中ハーレムハーレムと騒いでいる昨今。
ハーレムも大変なんだなと身をもって知った冬の終わり。
春はもうすぐそこまで来ていた。
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